ソロアート・オフライン   作:I love ?

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最近のマイブームはダンまちですね。……いきなり何言ってんだ? 作者にもわかりません!
まぁ、その魔力に逆らえず投稿遅れました。すいませんっしたー!


謎なことに、比企谷八幡の周りの人間は比企谷八幡のあらぬ噂を流している。

俺の必要性が疑われた瞬間から三十分後、俺の嫌な予感は見事に当たってしまった。

 

「……どんな難易度だよ。レベル七十五って、最前線のフィールドボス並みだぞ……」

 

強大な顎で俺を噛み砕かんと迫ってくる蛇――《ペインフル・スネーク》。しかも厄介なことに、牙に掠るだけで麻痺にするという特殊効果を持っていると、レインが《鼠》から買った情報にあったらしい。

距離を取り、ジワジワチクチク投剣スキルで削っているが、まだ二割くらいしか減ってない。

いっそのこと相討ち覚悟でやった方がうまくいきそうな気もするが、SAOでそれは禁忌だ。

なら、方法は一つ。

 

「……なぁ、一つだけうまくいけばすぐに終わる作戦を思い付いたんだが……」

 

「なっ、にっ!」

 

前衛にいるレインが辛そうな顔をして応答する。なにせ自分と同等クラスの敵と戦っているのだから当然だが……

 

「あぁ、俺たち二人で重攻撃スキルを使って、相手をディレイさせて一気に倒す、って手段なんだが……」

 

「いいと、思うよっ!」

 

ペインフル・スネークの噛みつき攻撃をバックステップで避けたレインとは正反対に、すでに発動させていた《ヴォーパルストライク》で蛇に肉薄。強靭な鱗を切り裂き、ノックバックさせる。

 

「スイッチ!」

 

「え、あ、う、うん!」

 

いきなりの出来事で呆然としていたレインが一呼吸遅れてスイッチし、三連重攻撃《サベージ・フルクラム》を、横から腹を裂くように斬り、剣を刺したまま九十度回転。ねじ込むように押し込み、そのまま斬り上げる。そのまま先ほどとは真逆の斬り下げを、俺の攻撃からようやく立ち直った巨蛇に叩き込む。次は俺だ。

「「スイッチ!」」

 

今度は声が重なり、数刻前より遥かにスムーズにスイッチ。

一、二、三、四、五連続突きから斬り下ろし、斬り上げの後の全力上段斬り。片手剣上位ソードスキル《ハウリング・オクターブ》。片手剣最上位スキル《ノヴァ・アセンション》の十連撃にも迫る大技だ。

 

「ラス、トオォォォ!」

 

レインの気合いの入った声と、赤い光を纏った剣によって繰り出された五連撃スキル《スター・Q・プロミネンス》は余すこと無く蛇のHPを削り切り、塵に還す。

 

「フゥーッ」

 

思わず息を吐き、安全確認をする。このしんどい戦闘が、あと何回あるのやら……

 

「……な? 昨日無理して行かなくてよかっただろ?」

 

「う、うん。そうだね……」

 

相当神経を使う戦闘だった上に、自分と同等クラスの敵と戦うことなどあまりないであろうレインにはかなり辛かったのか、息を切らしている。ふえぇ、息遣いが艶かしいよぉ……

 

「よし、次いくぞ」

 

「ちょ、ちょっと休ませて……」

 

「甘ったれるな、キビキビ動け! 敵は待ってはくれないぞ!」

 

「いや、乱獲が目的じゃないよ?」

 

知ってる。男なら一回教官みたいなのに憧れるじゃん? だから艦○れも人気なんだろうし……違うか? 違うな。

 

「ま、俺が見張ってるから少し休んでろ」

 

「う、うん……」

 

虚を突かれたためか、少し驚いた顔をして石造りの迷宮に座り込み、壁に寄りかかる。「ププッ、何あいつかっこつけてんの? キモーイ」とでも思っているのか、口で赤い頬を隠している。見えてるから。ほんのちょっぴり傷つくから。

また余計な過去(トラウマ)を思い出してしまい、少しドンヨリしながら俺は索敵スキルを起動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五分くらい経ったときにレインが立ち上がり、翁曰くこの迷宮の首領捜索及びダンジョンの探索を再開した。

どうもこのダンジョンは生物系が多い。蜂然り、鼠然り、蛇然り……あれ? 蜂→八→エイト→俺。鼠→アルゴ。蛇→……ないな……。惜しい。雨型モンスターだったら完璧だったのに。……雨型モンスターってなんだ?

自分でも意味の解らないことを言ってしまったことの羞恥心から少し早足で歩く。ヤバイ、超はずかちい……キモいな、うん。

まぁ、とにかく生物型モンスターが多いならば、現実世界での知識も少しは役立つ。蜂だったら針に注意、鼠だったら前歯に注意、蛇だったら牙に注意とか。

友達皆無系男子だった俺にとって辞書は先生、図鑑は師匠だったためそれなりに知識はある。そのうち天童式戦闘術が使えちゃうまである。

 

「ねぇ、最前線ってこれ以上強い敵が出てくるの?」

 

「あ? ああ……今ん所は同じくらいだな」

 

少し詰まりながらも回答する。俺も少し訊きたいことがあったので、流れにのって質問した。

 

「お前こそ、なんで攻略組にいないんだ? 人との相性にもよるだろうが、パーティーを組めば最前線でも戦える……いや、ソロでも十分戦えるくらい強いだろ?」

 

俺の問いがなにかの核心に触れたのか、少ししどろもどろになって答えた。

「えっ、うーん、ソロに必須の索敵スキルとか取ってないからかな、アハハ……」

 

それが嘘であることはすぐに判ったが、会って一日のやつがそこまで突っ込むのもおかしいだろう。

 

「……そうか」

 

それ以上はどちらからも何も言わず、ただ黙々と敵を警戒するだけだった。このダンジョンの全容は未だ判らないが、階段を降りてきた時間から察するに、ここはそんなに広くはない。多分、登ってきた山の中がこのダンジョンになっているのだろう。そう考えると、あの爺さんはかなりの大地主……? いや、だからなんだって話だが。

 

「それにしても、お爺さんが授けてくれるっていう剣術ってなんだろうね?」

 

「さぁ……けど、こんだけ難易度が高いダンジョンのボス討伐がクリア条件だから、相当強いんじゃないか?」

 

「うん、あの人凄い貫禄だったもんね……」

 

そしてまた沈黙。積極的に喋りたいわけでもないけど、会話が続かねぇ……

 

「あー、あれだ。ボス見つけたらすぐに挑むか? それとも一回撤退して、アイテム買ってから挑戦するのか?」

 

「うーん、臨機応変に、で良いと思うよ」

 

「そうか……」

 

「………………」

 

「…………………………」

 

…………なんだこれ。俺達はこんな気まずい雰囲気を作るためにパーティーを組んだんだっけ。違うよね?

一、二回キャッチボールをしたところで、コントロールを誤って川に落ちたみたいに言葉が続かない。別に沈黙自体は辛くないが、重苦しい雰囲気ら辛いというか、苦手だ。なんせ、そんな雰囲気になったら学級会(と言う名の吊し上げ)だったからな……なんでなんも悪いことしてないのに、悪いことをしたのが俺になってんの? 違います先生、花瓶を壊したのは真君です!

そんな俺の暗く澱んだ気持ちを晴らすように、レインが明るい声で訊いてきた。

 

「そ、そう言えばエイト君って、下層とか中層で自分がなんて呼ばれてるか知ってる?」

 

「……知らん」

 

というか、知りたくない。《鼠》のせいで、変なアダ名が広まってるからな……

例.女たらし、百人斬り、食い荒らし、挙げ句の果てには女の敵! だそうだ。……冤罪過ぎる。

 

「色々あるよ? 《侍の右腕》とか、《侍の刀》とか、《侍の》……」

 

「ねぇ、ちょっと待ってちょっと待って? 何? 侍? 右腕? まさかとは思うが、それ、誰が言ってた?」

 

「え? 私も偶然聞いただけだけど、なんか和服っぽい……それこそ侍みたいな格好をしてた人が、女性プレイヤーに攻略組について訊かれたときに答えてたよ?」

 

……確定である。クゥーラァイーンくぅーん? 何俺を勝手に自分の右腕とか、お前の武器にしちゃってくれてんのォ? 思わずどこぞの学園都市第一位みたいな口調になっちゃったでしょうがァ。

「そりゃガセだ。赤いバンダナ着けた野武士面だろ? そいつの言うことは八割嘘だから信じんでいい」

 

「そ、そうなんだ。アハハ……」

 

然り気無くクラインの株を落としておき、更に自らの汚名を返上しておく話術。我ながら惚れ惚れするな……

株を落とした上で、《鼠》に加えてクラインもしばいておくことも決意し、取り敢えずこの鬱憤をいつの間にか目の前にいたワイバーンにぶつけることにした。

 

 

 

 

 

 

 

……というか《攻略の鬼》さん? 俺の生活パターンを把握して無理矢理攻略させる前に、合コン行ってる野武士侍無精髭刀使いに攻略に参加するように言ってくれよ……

 


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