ソロアート・オフライン   作:I love ?

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へっ、後半何書いてんのか、自分でも解らねえぜ……まあ、取り敢えず、第四十七話、どうぞ!


こうして比企谷八幡は穴に落ち、フィリアはレッドプレイヤーと会合する。

ダンジョンに設置されていたデカイ転移結晶で転移すると、さっきまでとは打って変わって暗いダンジョンだった。

ダンジョン名は《虚ろなる者達の修練場》というらしく、あちこちに武器のオブジェクトが立て掛けてある。

 

「なんか……薄気味悪いね」

 

「……そうだな」

 

明かりは頼りなさげな壁にある松明だけで、周りは石でできている壁や床のせいか、閉塞感がある。アンデット系やアストラル系モンスターが出てきそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という俺の予想は、見事に外れた。

黒い鎧を着ている――と言うより中身がないので、黒い鎧そのものが片手剣スキル《スラント》を放ってくる。

 

「セ……アアアッ!」

 

掛け声とともに《バーチカル・アーク》を繰り出し、一撃目でスラントを相殺する――のではなく、攻撃の軌道を逸らす。続く二撃目の斬り上げは鎧に当たる。

初期ソードスキルの撃ち合いは俺の勝ち、更にフィリアが既に毒にしていたため、相手のHPバーが一定量減る。

 

「めんどくさいね……」

 

「ああ、せめて誰か筋力値が高い奴を連れてくるべきだったな……」

 

真っ先に思い付いたのはフレンド(といってもキリト、エギル、クライン、《鼠》、そしてなぜか副団長殿の五人しかいない)で一番筋力値が高いエギルだが、アイツ店があるしなあ……

次に思い浮かんだのはキリト。……そうじゃん、キリト連れてくれば俺は天使と行動でき、攻略も進む。バカ!俺のバカ!

このやるせなさをどこにぶつければいいのか考えていると、目の前に丁度いい鎧騎士(ターゲット)が。

完璧な八つ当たりだが、片手剣最上位十連撃スキル《ノヴァ・アセンション》を左右の手足に二発ずつ、胸に一発、最後に頭に一発喰らわせると鎧騎士は硝子片へと姿を変えた。

 

「……そんな凄い技あるなら、最初から使ってよ!」

 

い、いや、切り札は最後までとっておく物なんでせうよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、あの切り札(ノヴァ・アセンション)を見せてしまったせいで、戦闘で前衛に……働きたくないでござる。

 

「あの……フィリアさん、そろそろ前衛を替わっては……」

 

「うーん、じゃあ次の戦闘が終わったら交代ね?」

 

フィリアも怒っている訳ではないので了承してくれる。

それにしても、『次終わったら』という言葉で人にやる気を出させようとするフィリア、恐ろしい子!

……了承してくれたのは嬉しいんだが、俺達は今、巨大な二枚扉の前にいます。

 

「あの……ところでフィリアさん?次の戦闘というのは……」

 

「ん?勿論ボス戦だけど?」

 

いや、そんな薄暗いダンジョンを照らすような明るい笑顔をされても……

 

「じゃあ、行こう!」

 

ネパーランドヘ!……じゃなくて、ボス部屋へ……

フィリアが扉を開ける。開けた後、また直ぐにシルエットが見えるかと思ったが、何もない。

 

「……あれ?」

 

拍子抜け、といったような声を出すフィリアとは正反対に、俺は安堵の息を吐く。前衛しなくて済んだ……

ボス部屋(らしきもの)は、俺達が入ってきた扉の他にも左右に扉があり、奥には特に何もない。

 

「今度こそ終点、か?」

 

「うん、そうかもね」

 

これで終点なら、結局六十層クラスの装備があるという噂はデマということになる。

 

「……ん?エイト、あれなにかな?」

 

「……何だよ?」

 

また転移結晶で、まだダンジョンが続くようなら、流石にエスケープしよう……という俺の決意は無駄だった。

トレジャーボックスだ。終点にあるということは、あれが噂の六十層クラス装備なのかもしれない。

途端、フィリアの目がキラキラと輝く。

 

「エイト、あれ開けていい?いいよね?」

 

「お、おう……いいんじゃないか?」

 

許可を出した瞬間、フィリアが瞬間移動をしたかのようにすっ飛んでいき、早速開錠作業に移る。

修練場っていうのは雰囲気的に解るけど、結局虚ろなる者達ってどういうことだったんだろうなーと考えつつ、フィリアが作業している姿を眺める。

三十秒ほどカチャカチャやっていると、カチッという音が辺りに広がった。

開いたのか?と訊こうとしたら、浮遊感が襲ってくる。おそるおそる下を見ると、石畳がなく、下が見えない暗闇――明らかに、落ちている。

 

「えっ?うお……ワアアァアアアァァァ!?」

 

「エイトーーーーッ!」

 

暗い、底無し沼のような暗闇に、俺の姿は完全に消えた。

 

side out

 

 

フィリアside

 

「そんな……」

 

私のせいだ、私の……

既に閉じてしまった落とし穴に手を伸ばすが、当然エイトには届かない。

 

「Wow……偶然来たダンジョンだが、とんだサプライズがあったもんだ……」

 

「ッ!誰!」

 

反射的に声がした方へ向くと、黒ポンチョの長身な男に、髑髏のようなマスクを被っている男、頭陀袋の様なものを被っている男の三人がいた。

コイツらは……

 

「アンタら……笑う棺桶(ラフィン・コフィン)……!」

 

殺人ギルド《ラフィン・コフィン》。

結成されたのはSAO開始から約一年後。それまではソロ、あるいは少人数パーティーを大人数で襲っていただけの一部のオレンジプレイヤー達が、ある過激な思想のもと集まって出来たギルドだ。

その思想とはつまり――《デスゲームならば殺して当然》。

現代日本では許されるはずがない殺人が、この世界(アインクラッド)なら可能になる。なぜなら、現実世界の自分の体はナーヴギアによって囚われていて、無意識状態だからだ。

日本国の法律では、プレイヤーを殺したのはナーヴギアと計画者たる茅場晶彦であって、HPバーを減らしたプレイヤーではない。

――ならば殺そう。ゲームを愉しもう。それは全プレイヤーに与えられた権利なのだから。

そんな考えを持つ奴等を前にして、警戒せずにはいられない。私は短剣を構えた。

しかし武器を向けても男達の態度は変わらなかった。

 

「クク、そんなに、構える必要は、ない。同じ、人殺し同士、仲良く、やろうじゃないか」

 

髑髏マスクの男――《赤眼のザザ》が、しゅうしゅうと耳障りな音をたてて言ってくる。

 

「同じ……」

 

違う、そんなわけない。でも……エイトがそう思ってなかったら?私を人殺しだと思ってたら?

そんな嫌な考えが頭をよぎる。

 

「だって、そうでしょー?トレジャーボックス開けようとしてぇー、罠にかけてー、おめでとう!これで君もレッドの仲間入り!」

 

子供のような無邪気な声だが、おぞましい内容を話している頭陀袋の男――《ジョニー・ブラック》は、嬉々とした様子で言ってくる。

 

「そういうことだ。一度この道を来たらもうもう引き返せねえ……だが、No problem、問題ない……なにせここは『ゲーム』だからな」

 

そう言ったのは、ラフィン・コフィンの首領《PoH》。ポンチョの中で口を歪ませ、静かに笑い声をあげる。それに同調するかのように配下の二人も笑い声をあげている。

――狂ってる。

思うのはそれだけだ。そして、故意的にせよ、故意的じゃないにせよ、アイツらと同じようにエイトを殺した私も同じ……?

直接死亡確認をした訳ではないが、あの高さだ。エイトみたいな軽装では生きていまい。

カーソルはグリーン。だがそれが重く乗しかかっているようだ。

両目から涙が零れる。どうすれば人一人殺した罪を償えるのか、解らない。

 

「あれー?ヘッドォ、コイツ泣いてますよぉ」

 

「ほうって、おけ、どうせ、まぬけな、ビーターのことでも、思って、いるんだろう」

 

「Oh、disappointed……いい駒になりそうだと思ったんだがな……使い物になりそうにないな……殺すか」

 

殺す。自分の命の危険が迫っているが、体が動かない。

PoHに首を掴まれるが、そもそもこの体は酸素を必要としないため息苦しくはないが、不快感はある。

そのままPoHの魔剣――友切包丁(メイスチョッパー)が持ち上げられ、僅かに首に食い込む。

 

「ごめんなさい……」

 

生への執着を捨てて、私は目を閉じた。

 




次回!『虚ろなる者との戦い』です!

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