ソロアート・オフライン   作:I love ?

53 / 133
はい、オリジナル話第二話です。作者はホロウフラグメントをやっていますが、フィリア難しい……
そして前回の次回予告が早速外れました、すいません……何も戦闘してない……
どうやってフィリアを落とすか考えながら書いた第四十五話、どうぞ!


五十層主街区アルゲードは、まるで迷路の様な街である。

二〇二四年、三月三日。

朝起きると、キリトから《フレンド・メッセージ》、フィリアから《インスタント・メッセージ》が来ているとあったため、ウインドウを開いてメッセージを見る。

フレンド・メッセージとインスタント・メッセージの違いは、フレンド・メッセージは、受信先がフレンド、ギルドメンバー、結婚相手だったら送れて、迷宮区にいない限りはどの層からでも届くが、インスタント・メッセージは名前を知っていたら送れるが、同じ層にいないと届かないのだ。

キリトからの一緒に攻略しようという誘いに即座にOKと返事をしようとしたが、昨日のことを思い出し、一言謝っておいて断る。

フィリアからは……午前九時に、五十層主街区《アルゲード》転移門広場に集合、か。

了解と返信し、時計を見る。八時丁度。……一時間って二度寝するには短いし、もて余すには長い時間だよな……

暇なので、メンテをしたばかりの装備やアイテムを確認していると、あることに気づく。

……あ、ヤベ。昨日ダンジョンから出たままで、何の整理もしてねえ。

どこで売ろうか……エギル……はダメだな。あいつアコギな商売しやがるし。となると……普通にNPCショップか。

昨日取った中に六十層クラスの装備やらアイテムやらはなかったが、五十層クラスの物ならドロップしたためそれなりの値段は付くだろと思いながら、まだ眠気が抜けない体で宿屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

あまり抑揚がないNPCの、来店した時にかけられるを言葉を聞きながら俺は入店する。

それから看板娘らしきNPCに話し掛け、アイテムを売却。そこそこの値段となった。なったのだが……

 

「……迷った……」

 

アルゲードは脇道や裏道、分かれ道など、道が入り組んでいるため、迷うのだ。

ここが最前線だった時は、もう少し造りが解ったのだが……今は懇意にしていた今のNPCショップ、エギルの店、そして転移門広場しか解らない……のだが、ここから転移門広場には行ったことが数える程しかないため、すっかり忘れている。時刻は八時五十四分。

転移結晶を使えば転移門広場まで行けるが、こんなことで高価な転移結晶を使うのはもったいなすぎる。

となると……

《隠蔽》スキルを発動させ、横幅三メートルくらいの裏道に入る。

軽く助走をつけ、跳躍。最高到達点に至ってから右の壁を思いっきり蹴る。すると左の壁が近づいてくるので、さっきと左右対称に近い体勢で蹴る。

……マ○オみたいだな。何てことを考えながら右→左→右→左……と交互に蹴り、どんどん壁を上っていく。

十メートルくらい上ったところで左の建物の天辺に着き、壁がなくなる。最後に右の壁を蹴り、着地。こうすることで普通に階段を上るより早いのだ。

辺りを見回し高い建物に飛びうつる。隠蔽スキルを発動していなかったら、どこの敏捷力自慢だよとか言われていただろう。

高いところから見下ろすのは、野蛮的だが有効な手段だ。事実、転移門広場を見つけた。……南西か。

広場を視界から外さないようにピョンピョン建物から建物へと飛びうつる。距離約百メートル、時刻は八時五十九分。

最後にこの建物から飛び降りればいいのだが……超怖い。

恐怖心を乗り越え、なんとか飛び降りる。足から全身に衝撃。

心なしかビリビリする体を動かし、辺りを見回す。フィリアーフィリアはっと。いた。

転移門の右斜め前あたりにいたので近づいていくが、一向に気づく気配がない。

遂には目の前まで着て、顔の前で手を振るがまだ気づかない。

 

「おーい?」

 

なぜか疑問系になってしまった……

 

「ヒッ!」

 

……あれ、まだ気づかないの?……あっ、隠蔽消すの忘れてたわ。八幡ウッカリ、テヘペロ。

 

「うわあっ!」

 

今度は驚かれて尻餅までついている。いや、そりゃいきなり目の前に現れたら驚くだろうけど、尻餅つくほどか?

いくら隠蔽スキル熟練度が最高の一〇〇〇だとしても、ここまで気づかないものなのだろうか。

どうやらステルスヒッキーは仮想世界でも健在のようである。

 

「え、え、え、え、エイト!い、いつからそこに?」

 

「いや……ついさっきだが……」

 

驚きすぎだろ……思わず『餅つけ!』って言っちゃうところだったわ。

 

「な、な、な、何で声掛けなかったのよ!」

 

ごめんなさい、目の前でガン見してました……とは言えずに、適当にでっち上げる。

 

「いや、掛けたぞ?おーい?って」

 

「え?あれってエイトだったの?」

 

「ああ、まあな……それよりそろそろ行かないか?」

 

待ち合わせ時刻から十三分経っている。これ以上だらだら喋る必要もない。……というか、会話に発展がない。

リア充の『それマジないわー』『それな』『あーあるわー』の会話くらいにはない。あるのかないのかハッキリしろよ。

 

「うん、そうだね。そろそろ行こっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道中、フィリアが訊いてきた。

 

「ねえ、エイト。……って、何で後ろにいるの?……まあいいや、で、攻略組って、どうなの?」

 

「どうってどういうことだ?」

 

質問に質問で返したが、何を指しているのか全く判らないのでしょうがない。

 

「うーん、なんだろう、雰囲気とか……思想とかかな」

 

「俺は攻略組、って言っても下っぱみたいなもんだから、詳しいことは分からんが、雰囲気は……そもそもボス戦以外に普段組んでるパーティー以外と共闘することがないから、余程険悪な空気じゃない限り、あってないようなもんだな」

 

ふーん、と適当に流しているような返事をするフィリア。

 

「思想は……三大ギルドを例にあげると、《血名騎士団》は有能なプレイヤーの勧誘にゲームクリアだな」

 

なんせあそこの副団長様は攻略の鬼だからな……

その攻略の鬼に命令権を二回も握られている俺は、会うたびに冷や汗ダラダラです。

 

「で、《聖竜連合》は効率のいい狩り場の独占、レアアイテムの強奪とかいい噂は聞かないが、まあ最大ギルドで居続けるためだろうな。

最後に《アインクラッド解放軍》だが……あそこは二十五層で痛手を受けてからは前線に出てこなくなったからな……今は、一層のはじまりの街を根城にして、自軍強化ってところじゃないか?」

 

軍は恐らくもう一度最前線に戻ってくるだろう。

根拠は信頼……などという綺麗に見えるがウソっぱちなものではなく、単純に忘れられないだろうからだ。

攻略組と呼ばれ、畏怖され、尊敬され、羨望の眼差しを向けられ……そんな快感が忘れられない、だから戻ってくるだろうと思うのだ。

それは軍だけに限らず、攻略組……いや、SAOに限らず、ネトゲのトッププレイヤー殆どのモチベーションと言ってもいい。

俺もレア武器をゲットして自慢できるとか思ってテンションを上げていたところを小町に見られて引かれ、更には自慢する相手もいないことに気づき、軽くネトゲが嫌いになった……あれ?何か快感得るどころか鬱になってね?

うん、まあ、キリト曰くそうらしいのだ。

 

「攻略組と言えばお前、昨日俺が攻略組だと知った瞬間飛び付いてきたのは軽く引いたぞ……」

 

「うっ、あれはその……テンション上がっちゃって……」

 

どんだけ宝探し好きなんだよ……と心の中で呟いていると、目的のダンジョン……の一歩手前まできた。

昨日の《欲望の金廊》に行くためには、この洞窟……《欲望の金窟》の最奥にあるデカイ転移結晶から行かなくてはならない。

転移結晶は四角錐の底辺をくっつけた様な形をしていて、金色の台座に収まっているのだ。

初めて見たとき――といっても昨日だが――は、何これ?ラ○ュタにあるデカイ飛行石?とか思ったものだ。

ラピ○タって異常に放送数多いよな……ゲドやれ、ゲド。あれ面白かったから。

横を見ると、まだ見ぬ宝に目を輝かせているフィリアがいた。お前もうワ○ピース探してこい。そして海賊王になってこい。

 

「それじゃあ、探索開始ね!」

 

走り出しそうなフィリアが急かす様に言ってきたため、俺達は金が沢山埋まっている(といっても持ち帰れないただのオブジェクトだが)洞窟内へと足を踏み入れた。

 




次回!『八幡、トレジャーハンターに振り回される』です!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。