そして前半、何か風邪の時に書いたからワケわからなく……あ、風邪は完治しました。お待ち頂いてありがとうございます。
何かサチ編次回終わりそう……早いな。
あと、今回初めてオリジナルソードスキル出しました。
それでは、第三十七話、どうぞ!
ギルド加入の話を蹴ってから約一週間。二十八層狼ヶ原でレベリングをしていたのだが、いつの間に来ていたのかキリトとクラインがなにやら話しているのが聞こえてきた(たまたま聞こえただけで盗み聞きではない)。
会話内容は……なんかクラインがキリトがギルドに入ってよかった!!的な感じだったな。
クラインよ……お前はキリトの親父か?……歳的にそれはないか。
あれから更に一ヶ月後。俺は最前線三層下の二十七層迷宮区で探索をしていた。
理由としては、ここはトラップ多発地帯であるため、まだ開けられていないトレジャーボックスが多くあると思ったからだ。
もちろん、トラップが発動しないに越したことはないが、トラップにかかっても大丈夫なようにレベルもちゃんと上げてある。現在のレベルは五十だ。
一時間で未開封のトレジャーボックスを三つ開けて、さあ帰ろうと思ったところで大音量のアラームが鳴り響いてきた。
「な、なんだぁ?」
こんな音、今回の探索中はおろか、この層が最前線だった時にも聴いたことがなかった。
音は帰り道の方から聴こえたため、一応様子を見ていこうと思い、走り出す。
戻っていくにつれ、大きくなっていくアラームの音が聴こえる。音が一際大きくなった扉の前で立ち止まり、外からは簡単に開くのか、中から開ける暇もないほど切羽詰まっているのか知らんが、扉は簡単に開いた。
「は……?」
そこにいたのは、五十匹にもなろうかというMobの大群に、黒猫団の四人……いや、たった今ポリゴンになって消えたダッカーを除けば三人と、キリトだった。明らかにピンチだ。
「クッ……おい!三人とも、お互いに背中合わせになって、目の前の敵にだけ集中しろ!キリトはトラップを破壊しろ!」
指示を出しながら三連撃技《シャープ・ネイル》を繰り出し、三本の鋭い爪で引っ掻かれたようなダメージエフェクトを残して敵の一体が爆散する。が、圧倒的に手数が足りない。
「チッ……」
技後硬直をなくすかのように投剣貫通スキル《ピアスシュート》を放ち、名前の通り五匹を貫通するも、貫通するにつれ威力が落ちるので、倒せたのは二体だけ。
残った三体が黒猫団のテツオを刺す、刺す、刺す。
「うわあぁぁぁぁ!!」
絶叫を残して、プレイヤーのHPが無くなった証であるポリゴンに体を変えた。
それでも嘆く暇は与えられず、敵は迫ってくる。キリトがトラップを破壊するまで、まだ少し掛かるだろう。
「二人とも!範囲攻撃ソードスキルを交互に繰り出せ!!技後硬直は互いのソードスキルで埋めろ!!」
単純だが、この混戦状態で出せる指示はこれくらいだ。何回も繰り返しやっていたらいずれ対処されるが、時間稼ぎにはなる。
「やあぁぁぁぁっ!!」
キリトも片手剣上位スキルを使って、獅子の如く、連続で敵を葬り去っている。
「うわあぁぁぁぁッ!」
段々と敵AIが対処してきたのか、敵にソードスキルを避けられ、逆にソードスキルをモロに喰らったササマルは、その身をポリゴンへと変えた。
「やあぁぁぁぁ!」
発狂しているような声で叫びながら、もはや繰り出しているとも言えないようにソードスキルを乱発しているキリトから目線を外し、サチに目を向けると、十体ほどの敵に囲まれている。
「なっ……」
驚愕、からすぐに頭を切り替える。
あの状況で、一番適切な行動は――
頭で結論を出した行動をするべく、壁に走り出し跳躍。そのまま壁を蹴る。システム外スキル《壁蹴り(ウォールキック)》だ。
壁蹴りで天井スレスレの高さまで跳んだ俺だが、ここから更に《シングルシュート》を数十発も放つ。
これは《鼠》曰く、俺しか使えるのを見たことがないらしく、システム外スキル《シングルシュート・レイン》とか言ってたな。
雨のように降り注ぐ投げナイフを何発も喰らった約十体の敵は、一斉に四散する。
「ハアァァァァァッ!!」
という掛け声とともに、何かが破砕される音。とともに、まだ二十体以上もいたMobが姿を消す。
生き残った……という安堵の息も吐けず、ただサチの泣き声とレベルアップのファンファーレが虚空に溶けていった。
あの後、自失呆然とした二人に着いていき、待っていたらしいケイタに何故ここに俺がいるのか、何故他の三人がいないのかの全てを聞いたケイタは、一言だけ言い放った。
『ビーターのお前たちが、僕たちに関わる資格なんてなかったんだ』
と。
……考えてみればおかしな話だ。俺は深く関わってないし、キリトはそもそもビーターではない。
だが、キリトは悲壮感を、残った黒猫団の二人は喪失感を漂わせているのを見て、ケイタの言った通りなのではないか?と思ってしまった俺は、動けなかった。
あれから、更に半年。
俺はレベリングの為に、最も経験値稼ぎの効率がいい最前線から三層下の四十六層のダンジョンに来ていた。
このダンジョンは巣穴から、ぞろぞろと蟻が出てきて、その蟻は攻撃力が高くHPと防御力が低いというモンスターで、敏捷極振りの俺にとっては戦いやすい敵だ。
そんな蟻二匹をつい最近、スキル熟練度が九五〇になって会得した、単発重攻撃突進系スキル《ヴォーバルストライク》を放ち、続けて《ホリゾンタル・スクエア》を二発ずつ当てて残り二割程度だったHPを削りきる。
「ふう……」
息を吐き、鞘に剣を収める。
このダンジョンは効率はいいのだが、攻撃力が高いため囲まれた時には非常に危険で、HPを一気に持っていかれるのだ。――特に、俺みたいな軽装プレイヤーは。
そろそろ一時間経つかと思い、出口へと歩き出す。
効率がいいので人気であるこのダンジョンは、一パーティー一時間まで、という制約があるのだ。
ダンジョンを出た俺は、新鮮な空気を吸い深呼吸。適当に手を振りどうぞ行ってくれとジェスチャーしてから、大量に手に入れた戦利品をどう処理しようか考えていると、錆びた声が聞こえた――というよりクラインだった。
「ちょっとお前らとレベル差がついちまったから、オリャあ今日は抜けるわ。いいな、円陣を崩さないで、両隣の奴のカバーを常に意識するんだ。危なくなったら遠慮せずにすぐに呼べ。女王が来たらすぐ逃げろ。いいな」
それぞれの返事を返した六、七人はざくざくと靴音を鳴らして歩いていった。
「……で、何の用だ?クライン」
野武士面の趣味の悪いバンダナを額に巻いている刀使いは、こっちに向き直るとニカッと笑う。……これでイケメンなら様になるのになぁ……
「いや……用ってほどじゃ……いや、ううーん、ええーいメンドクセェ!」
……一人で会話を進めないで貰いたいんだが……まあ、大体言いたいことは解るけど……
「はあ……大方、俺がフラグMobを狙っているか聞きたいんだろ?」
フラグMob。フラグMobとはクエストを進めるためのキーモンスターのことを指す。基本的に倒されてから数時間から数日でリポップするが、今回俺が指したフラグMobは、クリスマスイベントボスとでも言うべき、一度倒したらリポップしないというボスだ。
当然、そのモンスターは強大な強さを誇っており、フロアボスとフィールドボスの間くらいだ。
「あ、ああ……で、どうなんだ?」
「……別に狙ってはない」
そして強大な強さを誇るボスにふさわしいアイテムが入手できるとあちこちで噂になっているのだ。
「そうか……死者蘇生アイテム、本当にあると思うか?」
「ハッ、ないだろ」
思わず嘲笑をしてしまう。
過ぎた時間は巻き戻せない、失くした物は戻ってこない、死んだ人は帰ってこないのだ。
時間は全ての薬というが、それは違う。
時間とは悲しみに慣れさせ、その悲しみを背負っているのを普通にし、知らず知らずのうちに傷を抱え込ませる物だ。
「そうか……お前ェもそう思うか……実はな、キリトがそのフラグMob狙ってんだよ、無茶なレベリングまでしてな」
「……そうか」
そのあとクラインから聞いたキリトのレベルに驚いた。六十九。俺より五レベル上だ。
「頼む!キリトを、キリトを止めてくれねぇか!?」
コイツは本当ににお人好しだ。
そんなお人好しに俺が返せる言葉は一言だけだ。
「……断る」
次回!『クリスマス』です!