ソロアート・オフライン   作:I love ?

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祝!!お気に入り登録四百件突破!これからもソロアート・オフラインをよろしくお願いします!!
余談ですが、最近、八幡が主人公のココロコネクトを書きたいと思うんですよね。
はい、未だにテスト期間な作者ですが、第二十五話、どうぞ!


ささやかながら、彼らは二層開通のパーティーをする。

迷宮区の攻略(というより、ボスの攻撃対処)を終えた俺達は、ボス攻略の拠点となるだろう《タラン》の方向に歩いている。

空白がない迷宮区一、二階のマップは、キリトが《鼠》に無償提供するらしい。俺は金を取ろうかと思ったが、キリトが無償でというためやむなく了承した。

……まあ、そのマップが載っている攻略本は俺達は五百コルで買わなくてはいけないのだが、その金で攻略本を増刷して、ミドルプレイヤーに無料配布するらしいので、文句は言えないが……

 

「今日は、十二月九日……向こう側ではもう冬かしら……」

 

ああ、もうそんな季節か……あのリア充どもがうるさい季節ね。春は新しい友達(笑)ができてうるさく、夏は夏休みという長期休暇があるからうるさく、秋は友情(笑)を深める体育祭やら文化祭があってうるさく、冬はクリスマスとかバレンタインやらがあってうるさいな。……リア充って一年中うるさくね?

……そのくせ俺みたいなボッチは根暗だの、卑屈だの、独りだの……あれ?後半、俺に特定されてね?

 

「前にネットの記事か何かで見たけど、アインクラッドって層によっては季節が再現されるらしいよ」

 

「……嬉しいような、嬉しくないような話ね。あ、でも……」

 

あー、季節があるのか……確かにリア充どもがうるさいから、あまり嬉しくはねーな。

キリトが首を傾げてアスナを見ていた……アインクラッドってカメラないの?凄く写真撮りたい。

 

「別に、たいしたことじゃなくけど、クリスマスまでに攻略したいったら、雪が見れるかなって」

 

これは首を傾げたキリトへの回答だろう。ここで「アスナさん、ロマンチストですね」なんて言ったりしない、睨み付けられるから。

 

「そうだねぇ……クリスマスかぁ……クリスマスまでには二層を攻略したいねぇ……」

 

「なによ、志低いわね。あと一週間……いや、五日で二層は突破したいわね」

 

……そういえば、本当にアスナは俺の思考を読んでいるのか?無意識に顔に出てたとかないよな……実験してみるか。

えーと、んじゃあ……俺に言われたらキモく感じる言葉ランキング(相手の反応から調べた)第一位!!アスナさん、凄く可愛いです!!……どうだ!?

ちなみに、この言葉を言われた女子は例外なく引いた。……正直心の中とはいえ、こんなことを言うのは恥ずかしい(というよりキモい)が、俺の心のプライバシーが保たれているかの実験なのだから、やむを得ない。

俺がアスナの反応を見ていると、急にアスナが早足で歩き始めた。

フッ、証明終了。引かれるといった反応ではなかったため、アスナは思考を読めない。……どうやら俺の心のプライバシーは守られていたようだ……

俺が心の中で安堵の息を吐いていると、HPがギリギリ減らない強さでキリトが足を踏んできた。……え?俺が何かしましたか?

 

「フンッ」

 

怒ったようにキリトも早足で歩いて行くため、俺も早足で二つの背中を追いかけるのだった。

……俺、何かした?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから約二十分程極力戦闘を避けて歩いていたら、ようやくマロメの村に着いた。中ボスが討伐されているからか、プレイヤーもちらほらいるため、違和感ありまくりのフード付きパーカーを再び着ている。アスナもフード付きローブを、キリトは新しく買ったらしいアスナとペアルックの黒のローブを着ている。

……とはいえ、顔を隠している理由は正反対なのだが。というか怪しいな、顔を隠した三人組なんて。

 

「あー、その、俺《鼠》に用があるから……」

 

「ちょうどいいわ。わたしもアルゴさんに用があったし」

 

「私も付き添うよ?アルゴにマッピングデータ渡したいし」

 

そのキリトの言葉に頷くアスナ。……俺としては、一層の件があるのでアルゴとアスナが一緒にいるところに居合わせたくないのだが、自分から言った以上やっぱいいわとも言えない……失敗したな。

仕方なく待ち合わせ場所である酒場に行こうと思ったとき、何日か前に聴いた、カン、カンというリズミカルな音が聴こえた。

発生源は――恐らく、タランの東広場。

 

「――――!!」

 

二人は顔を同時に見合わせて、全力ダッシュはさすがに自粛しているが、かなりの早足で東広場へと歩いて行っている。

……無視して酒場に行っていいかな?俺。いやいや、待て、俺。ショートケーキのことを思い出せ。プロのボッチは同じ失敗はしない。

俺、逃走→阿修羅×2降臨……うん、逃げないのが賢明だな。

そう結論付けた俺は、さっきと同じように黒と赤のローブを追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言おう。阿修羅(のなりかけ)が二人から一人になっただけでした。

ウルバスからは警戒してか移動をしたものの、未だ《強化詐欺》を続けていることに怒りの炎をたぎらせる阿修羅(アスナ)さん。

俺が何気なく「さすがに攻略部隊は狙わないだろうな」と言ったら更に激おこプンプン丸。どうにか(キリトが)宥めたが、なぜか話題は攻略部隊のことに。

ちなみにキ、キ……なんだっけ?は、アスナ曰く、自分でチームらしきものを組んだらしい。恐らくそれが『ワイのやり方』だろう。……どうでもいいが。

連想ゲームの如く、今度は攻略しているプレイヤーの名前は?という話題になり、《最前線攻略プレイヤー》や、《前線組》やら《攻略集団》だの《トッププレイヤー》だの……うん、多いな。で、キリトが《鼠》は《フロントランナー》と呼んでたことを思いだし、ようやく《鼠》に会いにいくという用事を(二人が)思いだしたのだった……アスナが怒ったときは、阿修羅さんと(心の中で)呼ぶことを決めたのは……どうでもいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう〜ン」と《鼠》。

「違うぞ」と俺。

ちなみに、詳しく言うと、

 

「ふう〜ン、『ビーター』(笑)が美女二人を無理矢理パーティーにしてるとはナ〜」

 

「違うぞ。無理矢理されたのはこっちだ」

 

となる。……まあ、《鼠》のは予想だが。

で、その《鼠》はなぜかジョッキを持ってこちらを見てくる……何?中身をぶっかけるタイミングでも見計らってんの?

キリトもアスナも同じように見てくる。

……なんか見たことある光景だな……なんだったか……

俺が脳内検索していると、見事にヒットしたものがある……それっきり誘われなくなった打ち上げ……

つまり、これは……

 

「え、えー……それでは二層開通おめでとう……か、乾杯……」

 

「かんぱーイ!!」

 

「乾杯!」

 

「……乾杯」

 

……どうやら当たってたようだ……というか、このために集合場所酒場にしやがったのか?《鼠》の奴……

当の本人である《鼠》は、「ぷっはァ〜!!」とかいういかにも親父臭い声を出していた……お前はミサトさんか。

社畜みたいに「イッキ、イッキ」とも言ってないのに一気飲みをした《鼠》は、空になったジョッキを机に戻すとお代わりを注文してから口を開いた。

 

「ゲート開通から五日で迷宮区到達、カ。随分早かったナ」

 

「まあ、そうだね。一層で時間がかかった分、レベルが十を越えている人も多いだろうしね。二層のクリアレベルって本来なら7、8くらいでしょ?」

 

……その分二層でレベルが上がりにくいんだけどな……

SAOみたいなレベルがあるゲームで一番めんどくさいのは?と聞かれたら、大半の人は「レベリング」と答えるだろう。ちなみに俺はボス戦。作業ゲーは心を無にしてやればいいからな。

 

「まァ、数字の上ではナ……あくまでクリア可能ってだけの話だゾ」

 

……つまり、レベル8くらいのレイドでボスに挑めば、クリアはできるが死者がでる、ということか……

 

「ふぅん……ベータテストの時、二層のボスって何回挑戦したら倒せたの?」

 

「えー、と、初挑戦からでは私が参加しただけでも十回以上壊滅(ワイプ)したかなぁ……最初はレベル5とかで挑戦してたし……」

 

どんな無謀なチャレンジだよ……勝てない戦いは俺はしないぞ?

 

「でも、倒せたときのレベルは7を越えてたかなぁ……」

 

「ふぅん……。――今回の攻略だと、平均十はいくわよね?」

 

だからといって油断はできない。事実、安全マージンを充分にとっていたであろう一層ボス戦でも、死者が一名でたのだから。

 

「うん、十は越えるだろうね……数値的ステータスだけ見れば充分安全圏だけど、フロアボスには常識が通用しないからね……」

 

そうなのだ。一層ボス、《イルファング・ザ・コボルドロード》は、カタナスキルの三撃――いや、正確には四撃か――で俺と同レベルであったディアベルのHPを削り切ったのだ。あれが俺だったら――恐らく一撃で半分以上削られていただろう。

だからフロアボスにおいて、《安全圏》など存在しないのだ。特に俺にとっては。

黙り込んでいるキリトとアスナ(俺は一回しか喋ってない)の向かいで、すでに二杯目のジョッキの中身を七割飲み干した《鼠》が、追い打ちをかけるように言った。

 

「それに、ここのボスはレベルよりも装備の強化が大事だからナー」

 

「そうなんだよねぇ……」

 

ボスが使ってくる(らしい)《ナミング・デトネーション》は、ダメージを主体としたものではないため、装備の強化で阻害(デバフ)耐性を上げる必要があるそうなのだが――

 

「あ……」

 

ここにきて思い浮かんだ仮説。ネズハは強化をしにくる攻略部隊をターゲットにして、《レジェンド・ブレイブス》が、もし鍛治屋ネズハを見限るつもりなら、信用は度外視で攻略プレイヤーの武器を詐取して一躍攻略プレイヤーのトップに――

人は簡単に裏切るものであると、俺は自分の身を以て知っているため、この仮説は存外外れてはないだろう。

 

「アルゴ、これ迷宮区の一、二階のマップデータ」

 

キリトの声で、邪推とも、的を射てるとも言える考えをひとまず止める。

 

「いつも悪いナ、キー坊。前から言ってるケド、規定の情報料ならいつでも……」

 

「いや、いいよ!!マップデータがなくて死んじゃう人がいるのは嫌だし……」

 

おお……天使がいる。小町よ……お兄ちゃんは、家での天使(小町)と学校での天使(戸塚)と仮想空間での天使(キリト)の三人の天使を見つけちゃったよ……

しかし、ただでやるのも癪だ。金は取らんが依頼は見返りは貰う。

 

「《鼠》、金は取らない代わりに一つ条件付きで依頼があるんだが」

 

「ふぅン?オネーサンに言ってみナ?」

 

お前のほうが多分年下だろ……という突っ込みは抑え、さっさと内容を伝える。

 

「《レジェンド・ブレイブス》の情報が欲しい。条件は、誰にも俺が知りたがっていると言わないことだ」

 

正直ここまで俺が《強化詐欺》について調査する必要はないが、人の生死にも関わることかもしれないので調査をしている。さすがに人が死んでもいいとは思わないしな。

《鼠》の辞書に《秘密厳守》という言葉はないどころか《金を払うなら何でも売ります》といった感じだ。……元ベータテスターの情報や前にあったエクストラスキルなどの時みたいな例外はあるが。

「ン、ン〜〜」と唸っていたが、やがて「ま、いっカ」と了承した。

……このあと余計な一言を付け加えなかったら感謝の一つでもしていたが……

 

「でも、これは覚えておいてくれよナ。オネーサンが、商売のルールよりもハッチへの私情を優先させたってことをナ」

 

瞬間――――前方からメラッという擬音が聴こえたのは気のせいだな、うん。SAOにそんなサウンドエフェクトなかったしな、うん。

 

「んデ、アーちゃんも何かオイラに依頼があるのカ?」

 

どんなときでも平常運転なところは見習いますよ……ホントに……

 




次回!『ネズハを監視、詐欺のトリックを見破れ』です!

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