はい、という訳で記念として何か番外編で書きたいんですけど……何が良いですか?(作者が知らないキャラとのデートとかはちょっと…)
一回目の会議は、実務的な議論は交わされなかったものの、モチベーションを上げるのには役立ったらしい。
すごい勢いで迷宮区の二十階は攻略され、十二月三日の土曜日に、ついにボス部屋前の巨大な二枚扉を(ディアベルのパーティーが)発見した。
俺も攻略していたため(もちろんソロで)、レベルが十二になった。
ボスの名前は《イルファング・ザ・コボルドロード》、取り巻きは《ルインコボルド・センチネル》だ。
ボスの特徴は、一本体力ゲージが減るごとに、センチネルが三匹ポップして、最後の一本になると、武器をタルワールに変える---------と書いてある《鼠》の攻略本曰く、【情報はSAOベータテスト時のものです。現行版では変更されている可能性があります】とのことだった。
「まあ、また随分攻めこんだな…」
《鼠》は基本、《誰ともしれないβテスターから情報を買い取っている》というスタンスを保っている。
……俺?俺はキリトと《鼠》がホルンカで話していた時点で気付いてましたが?
……ボッチの観察眼なめんな。
攻略本を読み終わった約四十人は、どう反応すべきかをリーダーに求めるかのように、リア充(笑)を見た。
「――みんな、今は、この情報に感謝しよう!」
ざわざわ、と聴衆がざわめいた。元βテスターとの対立ではなく、融和を選んだのだ。
しかし、リーダーの決めたことには文句はないのか、誰も反論を出さないためリア充(笑)は続ける。
「出所はともかく、このガイドのお陰で、二、三日はかかるはずだった偵察戦を省略できるんだ。正直、すっげー有り難いってオレは思ってる。だって、一番死人が出る可能性があるのが偵察戦だったからさ」
よっ、ナイト様!とちゃかすような声が色々な所から聞こえてくる。
しかし、ディアベルのリーダーシップは確かにすごいと素直に思う……リア充だから爆発して欲しいとは思うけどな……だが、だからこそディアベルが死んだとき、このレイドは大丈夫か、という懸念もある。
そんなことを思っているときに、リア充(笑)は俺にとって最大の試練になることを言う。
「――それじゃ、早速だけど、これから実際の攻略会議を始めたいと思う!何はともあれ、レイドの形を作らないと役割分担もできないからね。みんな、まずは仲間や近くにいる人と、パーティーを組んでみてくれ!」
………………なん、だと………?
体育の授業を思い出すが、当然いつもペアを組んでいる、ざ、ざ…財津?はここにはいない。
もうソロの遊撃手でいっかーと思い、リア充(笑)に言いに行こうとしたところで声をかけられる。
「おーい、エイトー!」
……無視だ、無視。きっと違うエイト君だろう。
「エイトってばー!」
……まあ、わかってましたけどね?同じプレイヤーネームの奴がいないってことくらい。
「……おう、久し振りだな……キリト」
「うん、久し振りだね、エイト」
そう言ってはにかんでくるキリト。可愛い。
……じゃなくて、
「……で、何のようだ?俺リア……ディアベルにソロで遊撃やっていいか聞くところなんだけど…」
「いや……私もアブれちゃったからエイトとパーティー組もうと思って……ダメだった?」
こら、目を潤ませるな。可愛いだろうが。中学までの俺だったら危うく惚れて撃沈するレベル。
「わ、わかった……」
というか、何でアブれたのん?キリト程の容姿だったら真っ先に頼まれそうだが……
「うん、よろしく。じゃあ、他にもアブれた人は…」
……見つけてしまった。アブれた奴。というか、フェンサーだった。
「……おい、キリト。あそこにもいるぞ」
そう言ってさりげなく誘う役割を押し付ける。
……だって、あのふぇんさーこわいんだもん!
と、心の中で幼児退行しているとキリトがフェンサーを誘っていた。
「え、えーと、あなたもアブれたの?」
「アブれてない。周りがみんなお仲間同士みたいだったから遠慮しただけ」
うんうん、分かるぞフェンサーさん。
俺も
「アブれたの?」
って聞かれたら
「い、いや、周りが仲良さそうだから遠慮しただけ…」
って答えると思うからなー。
……というか聞かれたことすらなかった。
「な、なら私逹と組まない?レイドは八パーティーまでだから、そうしないと入れなくなるし……」
するとフェンサーは、
「……そっちから申請するなら受けてあげないでもないわ」
……うわー、可愛くねー。というか雪ノ下みたいだなコイツ……
キリトはパーティー申請をフェンサーに出して、フェンサーはそれを了承した。
するとやや左側にもう一本HPゲージが追加され、レイピア使いの名前が判明した。
【Asuna】。それが流星のような【リニアー】を繰り出すフェンサーの名前だった。
騎士ディアベルの実務能力は中々のものだった。
彼は、出来上がった6×7パーティーを検分して、それぞれを最適な形にした結果、壁(タンク)部隊が二つ。攻撃(アタッカー)部隊が三つ。支援(サポート)部隊が二つだ。
で、ボッチ(俺)とボッチ(キリト)とボッチ(フェンサー)の部隊の役割というと…
「君たちは、取り巻きコボルドの潰し残しが出ないように、E隊のサポートをお願いしていいかな」
……まあ、露払いだ。
フェンサーが不機嫌な空気を出しているため
「了解だ。潰し残しを倒せばいいんだな?」
「ああ、頼んだよ」
……SAOには歯がキラッとするオプションでもついているのか……?
「……その役割ってボスに一回も攻撃できないじゃない」
「まあ、いいじゃねーか。楽させてくれるって言ってるんだから」
……まあ、邪魔だから引っ込んでろ、って意味の方が強いと思うが…
「それにしょうがないよ。スイッチでPOTローテするにも三人じゃ時間がないし…」
「……スイッチ?ポット……?」
……マジか、知らないのかよ…
「お前…本当にリニアーだけ頼りに迷宮区行ったのかよ…」
事情を知らないキリトは、頭に?を浮かべているが俺は続ける。
「……まあ、後で全部詳しく説明する……キリトが」
「私なんだ……」
いや、だってお前の方が詳しいじゃん……
その後の第二回攻略会議は、各隊のリーダーの短い挨拶と(俺逹の隊のリーダーはキリト)、ボス戦でドロップをした金とアイテムの分配を確認して終了した。
元βテスターに敵意を燃やすキバオウに、キリトが若干涙目になっていた。
ちなみにドロップ品の分配は、コルは全員で均等に、アイテムはドロップした人のもの(変にギスギスしないため)という非常にシンプルなものだった。
最後にリア充(笑)の
「頑張ろうぜ!」
「オー!」
という掛け声で(俺はしてない)解散、約四十人のプレイヤー逹は散り散りになった。
――こうして第二回目のボス攻略会議は終わった。
次は(忘れてるかもだけど)アルゴの依頼です。