持っている原作は一巻と二巻とプログレッシブ一巻だけでアニメは一期とGGOを少しだけなので教えて下さい。
青い光に包まれた俺逹(後にキリトに聞いたら《転移》らしい)は眩しさのあまり目を閉じた。
そして、次に目を開けたらそこは草原ではなかった…
え?どこ、ここ?うっすら見覚えがあるような…。
「ここ……ゲーム開始地点のはじまりの街じゃねぇか?」
解説ありがとう、クライン君。
しかし…何で俺逹は集められた?
ざっと辺りを見回すと数千…いや、一万人近くいる。
ふぇぇ、人が多いよぉ…。
プレイヤー逹は最初は黙ってキョロキョロしていたがやがて、ざわざわ、ざわざわという声がどこかしこから聞こえてきた。
「どうなっているの?」
「これでログアウトできるのか?」
「早くしてくれよ」
しかし、何も起こらないので遂にプレイヤー逹の不満が爆発した。
「ふざけんな!」
「早くGM出てこい!」
などとプレイヤーが叫んでいる中、誰かが言った。
「あっ………上を見ろ!」
その声につられるように上を見る俺逹。
そこには、【Warning】、そして【System Announcement】と読めた。
他のプレイヤーが運営か、と安心する中、俺は考えていた。
(おかしい……さっきも言った通りこの場合さっさとプレイヤーをログアウトさせ、後日謝罪、というのが妥当だが…まあ、これから説明があるだろ)
と思い、上を見た。
しかし次に起きた現象はプレイヤー全員の期待を裏切るものだった。
空を埋め尽くすパターンの中心から、まるで血の様な赤い雫が高い粘度を持った液体の様に滴り、しかし落下することなく空中でその形状を変えた。
出現したのは、20メートルになろうかという、フード付きの巨大な真紅のローブを来た巨人……いや、顔が無いからローブだけなのかもしれない。
横でキリトが
「βテストの時の……」
とか呟いていることから βテストの時に見た事があるのだろう。
そんなことはどうでもいい。
他のプレイヤー……いや、ビギナーは何なのかすら分からないのだろう。βテスターも何故赤ローブが出てきたのか分からないようだ。
「あれ、GM?」
という声がそこかしこから聞こえてきた。
そんな声を抑えるかのように赤ローブは腕を動かし、声を発した。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
何?《私の世界》だと?GMなら納得するが今更それを宣言してどうしようというんだ?
思わず二人と顔を合わせると赤ローブは更に続けた。
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』
「なっ--------」
思わず息を呑んだ。他のプレイヤーも同様だ。
茅場晶彦-------知ってる、いや、知らないはずがない。
数年前まで数多くある弱小ゲーム会社だった《アーガス》が最大手まで呼ばれるようになった最大の要因にして、天才量子物理学者。
しかもこのSAOの開発ディレクターにして、ナーヴギアの基礎設計者でもあるのだ。
だが…彼は裏方に撤し、メディアへの露出を極力避け、ゲームマスターの役回りなどやったことがないはずだ。そんな奴が何故------------。
そんな様子を気にしてないかのように赤ローブ――茅場晶彦は続ける。
『プレイヤー諸君はすでにメインメニューにあるログアウトボタンが消滅していることに気付いてきると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これはゲームの不具合ではなく、《ソードアート・オンライン》本来の仕様である』
「し、仕様…だと」
クラインが戦慄したように繰り返す。しかし、気にしている余裕は俺にもない。
『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、自発的にログアウトすることはできない』
この城、城という単語は説明書にも1つしか書いてなかった。
----アインクラッド、この鋼鉄でできた城を最上層である百層までクリアしろと言っているのだろう。
明確な目的があることで少し冷静になれた俺は茅場の言葉に耳を傾ける。
『……また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合――』
わずかな間。それがどれだけの人を不安にさせただろうか。
『――ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』
-----思考が停止した。
ようやく思考を開始した脳で把握したのは1つの言葉。
-------死
死ぬということだった。
認めたくない。信じたくない。そんな気持ちは同じなのかクラインが声が聞こえた。
「はは……何言ってんだアイツ、おかしいんじゃねえのか。んなことできるわけねぇ、ナーヴギアは……ただのゲーム機じゃねぇか。脳を破壊するなんて……んな真似ができるわけねぇだろ。そうだろキリト!エイト!」
後半はもうほとんど掠れていた。
茅場の言ったことは原理的には電子レンジだ。
感情では認めたくないが、理屈では理解している---------可能だと。
クラインの問いにキリトが答える。
「………原理的には、有り得なくもないけど……でも…ハッタリに決まってる」
希望的観測なキリトの言葉。
違う。有り得なくもないんじゃない、可能なんだ。
「いや……ハッタリなんかじゃない。たとえケーブルを引っこ抜こうと内部電源がある。それにアイツは日本一の天才だ。アイツ以上にナーヴギアを理解している奴はいない」
「じ、じゃあどうするんだよ!瞬間停電でもあったら!」
そんなクラインの疑問ともただの叫びともとれる声が聞こえたのか茅場晶彦は言う。
『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試み――以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果』
機械のように淡々と事を述べる茅場はそこで一回言葉を切り、
『――残念ながら、すでに二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』
残酷な事実をそう述べた。
二百十三人――言葉で聞くと少なく感じるが現実でそんな人を殺したら、まず間違いなく死刑だろう。
そんな風に信じられずにいたらクラインが
「信じねぇ……信じねぇぞオレは」
「ただの脅しだろ。できるわけねぇそんなこと。くだらねぇことぐだぐだ言ってねぇで、とっととだしやがれってんだ。いつまでもこんなイベントに付き合ってられるほどヒマじゃねえんだ。そうだよ……イベントだろ全部。オープニングの演出なんだろ。そうだろ」
オープニングの演出だったらこんな趣味が悪い事はない。しかし、オープニングじゃない分だけ余計たちが悪い。
しかし、そんな望みを踏みにじるかの様に茅場は実務的に言った。
『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に除装される危険はすでに低くなっていると言っていいだろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとにおかれるはずだ。諸君には、安心して……ゲーム攻略に励んでほしい』
「な……」
茅場からのゲーム攻略をしろという言葉に遂にキリトが吼えた。
「ふざけないで!ゲームを攻略しろ!?ログアウト不能の状態で呑気に遊べっていうの!?」
キリトは一度言葉を切って、
「こんなのもうゲームでも何でもない!」
と言った。
そして、その声が届いたかのように、茅場晶彦は告げた。
『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは消滅し、同時に』
それは、現実の終わりと共に、
『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』
----デスゲームの開始を告げたのだった。
八幡を喋らせることができない……だと!?