Century of the raising arms   作:濁酒三十六

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後書きにオマケ小説あります。


事情聴取にカツ丼を…

 ガストレアとの東京湾海戦から10日が過ぎ、大赦の勇者として海戦に参加した結城友奈達は未だ横須賀に滞在を余儀なくされていた。友奈は朝6時にセットしていた目覚まし時計に起こされて目を覚まし、上体を起こすと、まだ眠い目を擦りながら二段ベッドの下の段で眠っている東郷美森を上から逆さになって覗いた。彼女は起きており上体を起こした格好で笑顔で挨拶をしてきた。

 

「おはよう、友奈ちゃん。」

 

 友奈も笑顔で挨拶を返した。

 

「おはよ、東郷さん。」

 

 あの日…、拿捕された大型潜水艦からは百名には満たない女性達が乗艦しており、どうしてだか皆が皆昏倒していてその中には酷い怪我を負っていた者も居て彼女達を救助した後にまだ“元気”な戦闘機のパイロットに事情聴取を行う事となっていた。 担当も各パイロットには別の者が付き始めに行ったのは“蒼き鋼”のリーダーである千早群像で助手にイ401のメンタルモデル…イオナが付いた。一人目はヴィヴィアンと云う少女だが…、正直に言うなら群像は彼女の象徴的な言動の意味が解読出来なかった。

 

「アタシ達は“ノーマ”なんだけどアタシは実は“ドラゴン”でずっと戦ってたドラゴンとは実はお仲間で、攻めて来た人間の軍隊と戦った後にアンジュの力で別の地球に行っちゃって其処でお母さんに会って来たんだよ。」

 

 円満な笑顔で話す彼女には悪いが…群像は苦笑いをする事しか出来なかった。

 二人目はアンジュと云う女性で聴取担当者は里見蓮太郎で助手は天童木更…と、無理矢理付いて来た相原延樹。自称アンジュの付き人だと豪語するメイド姿のモモカと言う少女も付いて来ようとしたが、遠慮をしてもらった。蓮太郎と木更はアンジュの話を聴いては見たが彼女が言うには自分は元ミスルギ皇女で実はノーマであった事実がバレてしまい、国で革命が起こり、彼女はドラゴンと云う敵と戦う羽目になったのだと言う。

 

「本当に最悪よね、自分も知らない事実を公衆の面前でぶちまけられた挙げ句にドラゴンと命懸けで戦わされて今度は身内に命を狙われ極めつけはドラゴンは平行世界の人間だったんだからね。」

 

 蓮太郎は眉間に皺を寄せ、アンジュにこう言った。

 

「わりい、アンタの言っている話は理解出来ねぇ…。」

「何ですって、コレだけ詳しく話してあげているのに何で解らないのよっ!?

全く、コレだから男って奴はっ!」

 

 其処へチョンチョンと延樹がアンジュを突っついて此方へ振り向かせた。

 

「なっ、何で此処に子供がいるのよ…?」

「のう、其方と木更の乳はドチラが大きいかのう?」

「…このエロガキ…。」

「えっ、延樹ちゃんこっち来なさい!?」

 

 アンジュは眉をひくつかせ、木更は声を裏返させて動揺する。そして蓮太郎は思わず二人の胸を見比べてしまい、それに気付いた“二人”の拳が強く握られた。

 

「待て不可抗力だ!?」

『ドコ見てんのよスケべ野郎!!!!』

 

 アンジュと木更の右ストレートは同時に蓮太郎の顔面を捉え、挟み込んだ。

 そして最後の一人である男性…タスクを聴取するのは…、結城友奈で助手は東郷美森となった。理由は群像と蓮太郎が匙を投げて他に誰も名乗り出ず…、かと言って軍隊に任せるのは聖天子が何故か許さなかったのである。

 しかしいざ聴取が始まると二人だけでは心配だと風と樹…夏凛も聴取に同行した。

 

「ははっ…、随分と大所帯だね…。」

 

 タスクと云うは一目で見るなら大人しそうな少年であった。

 

「そりゃ当然よ、大事な後輩二人だけを男と云う狼のいる部屋へなんか入れさせられないわ。」

 

 風はそう言って意気込むが、樹は姉の真意を見抜いていた。

 

(お姉ちゃん、最近“肉食系”だからな~。)

 

「俺、信用ないんだね…。」

「いやいや、男子は危険なくらいが丁度良いのよ。」

 

 全く意味のない二人だけの会話になりそうになので夏凛が即座に肘で風を突っついて会話を止めさせた。

 

「アンタ話が進まないから黙ってなさい!」

「…ちぇっ。」

 

 少し落ち着きが室内に戻り、友奈は真剣な顔でタスクを見据えて両肘を机の上に付き両手を組んだ。

 

「それじゃあタスクさん、“カツ丼”食べたいなら出前頼めるよ?」

「因みに自腹ですよ。」

 

 友奈と美森はニコリと笑い、やっぱりタスクは苦笑いしか出来ずにいた。

 

「君達もノリノリなんだ…。」

 

 友奈達とタスクの事情聴取はにこやかに始まりはしたが、彼の話が進むに連れ…友奈達の顔は曇っていく。“マナ”と云う異能を自在に操る人間、マナの光が使えない上に寄せ付けない非人間なる存在…ノーマ、平行世界より攻めて来るドラゴン、そしてノーマによる反乱と現ミスルギ皇国を治める“神”と呼ばれる男…“エンブリヲ”。

 聴取を終えたアンジュ達は別々の部屋へ軟禁され、友奈達は蓮太郎と群像の聴取内容と照らし合わせ深刻な表情で話し合った。

 

「つまりは虐げられたノーマによる反抗作戦が露見してミスルギ皇国は彼女達を排除をしようとして戦闘になり…、此処まで逃げて来た。」

 

 …と顔の腫らした蓮太郎が言い…。

 

「その際、アンジュ達三人は“ヴィルキス”と云うあの戦闘機の未知なる力で平行世界へ飛び、敵であったドラゴンと和解した…。」

 

 彼の話に群像が続き、最後に友奈が収める。

 

「…でも、帰ったらアンジュさんとノーマのリーダーのジルさんって人とケンカしてまた仲間達と離れる事になってしまった…。

何か、とても…もどかしいですね…?」

 

 分かり合えずに…只そのまま彼女達が遠回りをし続けている様に友奈には思え、胸が苦しくなる様な感覚を覚える。蓮太郎や群像もまた友奈と同じ事を考えていた。

 その時、遠くより銃声の様な音が聴こえ基地内を緊急アラートが駆け廻った。友奈達は何事かと驚き、同時にイオナはタカオより連絡を貰う。

 

「タカオ、何があったの?」

『拿捕した潜水艦のクルーが何人か逃げ出して自分達の潜水艦に立て籠もったわ。彼女達は兵士の銃を奪って銃撃戦も起きてる状況よ。』

 

 銃撃戦と聴いて友奈達は真っ青になるが、蓮太郎と群像達は冷静に対処を始める。群像はタカオ達メンタルモデルに自衛隊員をノーマ達の銃撃から守るよう指示を出し、蓮太郎は友奈達に軟禁室のカードキーを渡した。

 

「犬吠崎はこのキーであの元姫さん達を連れて来てくれ!」

 

 そのキーを風は預かり、蓮太郎に返事を返す。恐らくは彼女達に説得をお願いするつもりなのだろう。…しかし元姫さんであるアンジュは横須賀港に辿り着く前にジルとの決闘に勝って決別をしているので彼女の説得が上手くいくとは思わなかった。

 

(多分、何らかの対処を取る為の時間稼ぎね。)

「友奈、東郷、夏凛は里見君達に付いていて、樹行くわよ!」

「ハイッ!」

 

 

 風は樹を連れてアンジュ達の軟禁室へ向かい、友奈達は群像と蓮太郎達に付いて地下ドックへと向かった。




 冷たい風が吹き荒ぶ中、勇者の姿になった結城友奈は一人の男と対峙していた。赤と黒の忍者装束に“忍殺”と刻まれた“面ポ”、その出で立ちはまさしく“ニンジャ”のものであった。

友奈「アナタは…誰なんですか…?」

ニンジャ「ドーモ初めまして結城友奈=サン、“ニンジャ・スレイヤー”です。」

 男は手を合わせ頭を下げて挨拶、友奈も戸惑いながらニンジャの真似をして挨拶をした。

「えっ、あっ、どっドーモ初めまして、ニンジャ・スレイヤー=サン。
…結城友奈です。」

ニン・スレ「例え“幼女”と云えどニンジャであれば容赦はせぬ、では死合おうか結城友奈=サン!!」

友奈「はっ!?死合うってどういう…、えっ、いやっ、わたし“忍者”じゃなくて“勇者”ですから!!」

ニン・スレ「忍者も勇者も同じ“者”、逝くがいい結城友奈=サン!!」

友奈「ちがうっ、絶対違うから!!」

ニン・スレ「ニンジャ殺すべし!!」

友奈「話を聞いてええ!!」

 しかしニンジャ・スレイヤーは聞く耳持たず、結城友奈に踊りかかった。

ニン・スレ「ニンジャ・スレイヤーのアニメ放送は一体いつなのだ!?」

友奈「知るかあっ!!」


“続く”

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