Century of the raising arms   作:濁酒三十六

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魔法科高校の劣等生とクロスアンジュ参戦です!

魔法科高校の最初の登場は何故か九島のオジイサマ。


禁断のレジスタンス…

 東京湾沖を千早群像の指示で哨戒していたタカオとハルナは現在6km先で戦闘行為が行われているのを探知し、其方へ向かっていた。

 

「もうっ、やっと帰港命令が出て群像が待ってるのに何でワタシ達のいる海域で戦闘なんかしてるのよ!?」

 

 不満を露わに文句を口にするタカオにハルナが珍しく同意する。

 

「全くだ、横須賀港には蒔絵が居るのだ。また命を狙われるかも知れないのに、こんな所で寄り道など!!」

 

 不機嫌を露わにした二人は海上で起きている戦闘行為を視覚出来る場所まで近付き、所属不明の両陣営の機体を調べた。

 

「大型潜水艦一機に戦闘機八機、見た事のない機体ね。」

 

 タカオのデータ照合では確認出来ず、ハルナが更に自身のデータバンクで機体照合をすると、戦闘機の正体が分かった。

 

「“パラメイル”だと、九州エリアの“ミスルギ皇国”の戦闘機!?」

「ウソッ、何で九州エリアの機体同士で争ってるのよ!?」

 

 二人はこの状況に対する対処に少々悩むが、群像ならば何より戦闘を止める方法を取るであろうと判断した。

 

「ハルナ、簡潔な方法は一つね。」

「そうだな、先ずは“我等が手を出せる相手”を押さえよう!」

 

 タカオ、ハルナは正体不明の大型潜水艦を標的に決め、双方の停戦作戦に乗り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋の中は明るく其処には高級なテーブルと他に老齢な紳士と鋭い視線に口と顎を被う立派な髭を持った老人が席に座っていた。群像は髭の老人を見、少々顔をしかめる。

 

(北…良寛…!)

 

 彼、北良寛は以前の世界で群像達から霧の潜水艦であるイ401…イオナを接収しようとした因縁を持つ相手である。

 

「お久し振りです、北良寛先生。」

「あぁ、本当に久し振りだな…千早群像。」

 

 

 互いに睨み合う二人だが、特に恨み言を言う訳でもなく群像は席に付き、良寛も視線を聖天子に向けた。

 此処に秘密裏の会議が始まり、聖天子…千早群像…北良寛…乃木園子と自己紹介を終えて一見穏やかな老紳士が自己紹介を始めた。

 

「私は“魔法協会日本関東支部”の会長をやっております“十師族”九島家の当主…九島烈と申します。」

 

 

「まっ、魔法協会!?」

 

 あの冷静な群像が声を出して驚き、園子は目をパチクリして惚ける。

 魔法協会とはファンタジー小説や漫画にしか存在しなかった魔法を現実の物とし、科学と融合させて現実の技術として運用した世界よりこの魔法技術を管理して来た組織で魔法を扱う者達を魔法師、そしてこの日本で彼等の頂点に立つ者達の家系を十師族と呼んでいた。

 聖天子は個人の努力で彼…九島烈と親睦を深め、この場に参上してもらったのである。

 

「では、お話を始めましょう?

私が皆様方にお越し戴いたのはこの日本の行く末について…、私の提案と皆様の御意見を聞きたく願った次第で御座います。」

 

 彼女の提案と言う物に北良寛…九島烈が反応する。

 

「ほう、聖天子様の提案とな。それは興味深いですな。」

「若いながらもこの融合世界にて日本の今後を憂う姿勢、感服致します聖天子殿。」

 

 二人には明らかに聖天子を見下している節が見えた。この場にいる誰もがそれを感じ取ってはいるが口には出さず、彼女本人が何より気にしてはいない。この御老体達はこの場で聖天子を試す気でいるのだ。

 しかし、彼女からして見れば老人の御遊戯に付き合っている暇はない。故に聞き流し、本題を突きつけた。

 

「私はこの一年の間に、“日本統一政府”の復興を確立…実現したいと思っております。

両先生方にはその御協力をお願いしたいのです。」

 

 彼女は自身の人生を賭けた決意表明であった。しかし北良寛も九島烈も予想していたのか、気難しい表情となり…黙り込んだ。…そして彼女の提案を真っ先に否定したのは意外にも彼女の後ろに立つ里見蓮太郎であった。

 

「一年の間に統一政府の確立なんざ無理だな。」

「ちょっ、里見君場所を選びなさいよ、今は…っ!?」

 

 またも彼の悪い癖が出たとばかりに天童木更は止めようとするが、それを九島烈が制した。

 

「構いませんよ、お嬢さん。」

 

 蓮太郎は聖天子を見、彼女も上目遣いながら彼を睨む。そんな彼女に溜め息を吐き蓮太郎はハッキリと言い放った。

 

「世界が融合を果たして一年と半年くらいしか経っていない中で自分の足元すらまだ覚束ないのに日本全土に尺度を広めるのはあまりに“危険過ぎる”。」

 

 彼の話に対し、九島と北…群像までもが頷いた。聖天子は俯き…肩を窄めてしまうが、北良寛が彼女の姿勢に於いては賞賛した。

 

「だが彼女の提案は決して無視してはならない案件ではある。

近い未来、霧やガストレアの脅威が消えた時、我々は嘗てのこの日本国を纏めあげなくてはならないのだからな。」

「それなら、今こそが各エリアの元首を集め話し合う時なのでは…っ!」

 

 此には乃木園子が否定をした。

 

「聖天子様、北海道と東北はともかく、関西~九州は決して会談には応じないと思います。今四国エリアがどれだけ関西…“五翔会”の脅威に晒されているのかを貴女には一杯話した筈です。

それに九州エリアのミスルギ皇国は“ノーマ”と呼ばれる女の人達を奴隷よりも辛い“兵器”として扱う国。数ヶ月前のクーデターで前国王が失墜してからは何の情報も得られない鎖国になっています。

それに…、四国エリアも一枚岩ではありません…。」

 

 其処まで話し、園子は俯いた。聖天子は彼女から今の四国エリア…大赦の状況を聞いていた。その組織は神樹の神女を掲げ、五人の大宮司、百人の宮司、その下に政会と四国内の企業群が連なる大教団となっている。

 その教団を統べる大宮司とその下の宮司達は現在、鷹派と穏健派に分かれ意見をぶつけ合っている。穏健派は“バーテックス”が出現しない今、他のエリアの脅威に備える為に五翔会と手を組む提案を押し通そうとし、鷹派は勇者システムを受け取った少女達を軍隊として関西エリアへの侵攻を進言していた。園子は神樹の神女としてその権威で形上穏健派に付いて鷹派の頭を抑えてはいるが、五翔会に組みするなど微塵も考えてはいない。どちらにしても手を汚し傷つくのは年端もいかない少女達だ。

 

「私は…、もう友達を泣かせたくない。失いたくないんです。」

 

 その言葉は権力者らしからぬモノではあったが、年相応の少女の心からの訴えであった。

 

「…園子さん、私は…。」

 

 聖天子は何を言って良いのか分からず、口を噤む。彼女は為政者としてこの国の未来を憂いたからこその提案ではあったが、まだ其処まで進む事が出来ないのだと…園子を見て実感した。

 

「分かりました…。

私が急いてしまっていた様です。皆様に御詫び申し上げます…。」

 

 聖天子は立ち上がり、深々と頭を下げた。しかし九島も北も心中では彼女の提案をしかと受け止めていた。日本統一政府…、国の一致団結は世界に対し武力すら越える最大の武器と成り得る。群像もまた、其れがこの国の最終的な政策になるのだと考えていた。

 其処にイオナがハルナからの受信を貰い、群像に内容を話した。

 

「群像、緊急事態。ハルナとタカオが所属不明の大型潜水艦と戦闘中だったミスルギ皇国の戦闘機と遭遇。

双方の戦闘行為を停止させて潜水艦を拿捕。此方に運んでるって…。」

 

 それを聞いた群像は驚きを隠せず、しかし冷静さを失わずに聖天子に目配せをした。彼女は緊張感を露わにしていたが群像が彼女からの指示が欲しい意図を汲み、群像に無言で頷き、群像は了承を得たと判断してイオナに指示を出す。

 

「イオナ、タカオとハルナには大型潜水艦の全ての制御系を掌握したままで帰港。地下ドッグへの入港後は包囲完了まで搭乗者全員外に出すな。と伝えてくれ?」

「りょーかい。」

 

 ガストレアとの戦いが終わっても未だアクシデントは続き、ヴェッフェで食事中の友奈達や延樹達も緊急事態として地下ドッグへと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京湾から所属不明の大型潜水艦の制御システムを全てハッキングし、“牽引”しながら三浦水道へと入るタカオとハルナ。高雄の甲板上には二機の戦闘機…榛名の甲板上には一機の戦闘機が着地しており、榛名の方では一人のショートヘアの少女楽しげに駆けずり回っていた。ハルナは蒔絵で慣れているせいか、特に気にせず戦艦と潜水艦の制御をしている。

 

「広いひろーーい、この戦艦カッコイイよハルナ♪♪」

「そうか…、カッコイイか、ヴィヴィアン。」

 

 何時の間にか打ち解けている二人に比べ、高雄の甲板では当たり前の状況となっていた。甲板上で仁王立ちのままのタカオの背を銀色の戦闘機の下で両手を拘束され胡座をかいて座る金髪ショートボブの女性が敵意剥き出しに睨みつけ、その隣で右の頬に赤々と紅葉マークを滲ませた頼りなげな青年が同じく両手を拘束され胡座で座っていた。

 

「ねえ、貴女…。」

「何よ、軍艦娘!?」

 

 タカオに話しかけられ、ショートボブの女性はキッと睨みを効かせて言葉を返す。…が、タカオは相手の態度を気にせず、何故だか顔が僅かに火照っている様であった。

 

「その…、男性の……顔を、まっ、“股”に挟んで埋める…って…どんな気分?」

「なっ、さっ、最悪な気分に決まってるじゃない!!

分かってんのこの“万年発情期”、アンタ見境無さ過ぎよタスク!!」

 

 女性は立ち上がるとタスクと呼んだ青年をものスゴい形相で見おろしてゲシゲシと力任せに蹴り始めた。

 

「いっ、イタいっ、イタいってば“アンジュ”、本当に不可抗力なんだよ!」

「その不可抗力が出会ってから今日までに何度繰り返してると思ってんのよこのスカポンタンッ!」

 

 捕虜の二人が暴れている間、タカオは千早群像と自分がとっても危険で甘美な“体位”でクンズホグレツしている妄想に浸り、“乙女プラグイン”を暴走させていた。

 

「群像…、好き♪」




ストーリーは18話の続きみたいな形で繋がります。
物語前でクロスアンジュの世界も他の世界と同じ時期に融合していますがあまり他のエリアとの繋がりを持たないまま物語の数ヶ月前にアンジュリーゼが失墜して革命が起き、ほぼ鎖国状態となります。建国場所が九州なのは単に関東には東京があるのでストーリー上九州の方が都合が良いので変えました。

後2タイトル程ありますがコチラはもう決めてありまして小説登場までは伏せておきます。

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