Century of the raising arms   作:濁酒三十六

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小説四話目となります。ストーリー進行が緩いです。

※後書きにショート小説有り。


悪巧みはヴェッフェの前に…

 横須賀要塞港…。防御壁に囲われた日本屈指の城塞で船舶ドッグは地下にあり、前世界にて“蒼き鋼”はこの港で“霧の艦隊”に対抗出来る兵器…振動弾頭を預かり、まだ“霧”に所属していたハルナとキリシマと戦い勝利した。

 そしてハルナとキリシマは敗北後に運命の少女と出会ったのである。

 

「ヨタローーーーゥッ!!」

 

 凱旋した皆、特にキリシマを待ち受けていたのは元気な少女の激しいタックルであった。

 

「グハウッ、まっ、蒔絵無茶するな!?」

「大丈夫だよ、ヨタロウがクッションになってくれたから。」

「……そうか。」

 

 因みにクルー達はイ401のメンテナンスと物資補給作業でドッグに居り、此処には千早群像・イオナ・コンゴウ・キリシマ…、そして結城友奈・東郷美森・三好夏凛・犬吠崎風・犬吠崎樹がいた。

 

「ワッシー、みんな、お帰り。」

 

 刑部蒔絵に続いて皆を出迎える少女がいた。友奈達と同い年くらいで何故か巫女装束を纏い、清らかさを醸し出していた。美森は彼女に笑いかけ、言葉を返す。

 

「ただいま、ソノッチ。」

 

 彼女は乃木園子。大赦に属し、今は“新世界樹ユグドラシルの神女”を務めていた。

 そしてまた、皆を出迎える人物が近衛隊を二人引き連れ園子の隣に立った。

 

「皆様、今度の戦の勝利…本当に御苦労様です。そしてこの関東エリアを守って頂き、ありがとう御座います。」

 

 群像は一瞬、相手の女性があまりに白のドレスが似合う美少女だったので見取れてしまい、それに気付いたイオナは少し不機嫌な表情をする。

 

「改めて初めまして、私はこの関東エリアの政を司る聖天子と申します。

今後とも、宜しく御願い致します。」

 

 聖天子は軽く一礼をし、友奈達も一礼を返す。

 

「“蒼き鋼”には本当に感謝致します。

貴方方のガストレア群の情報がなければこの新しき世界の地でまた大規模な戦いが起きる所でした。」

「礼には及びません、此方も“下心”あっての提供と行動ですから。」

「そうですか、なら物資の方は約束より少し多めにお渡し致します。」

「ははっ、ありがたいですが…後がコワいですね。」

 

 其処へ今度は友奈達の後ろから六人の男女が現れた。民警…里見蓮太郎のアジュバントである。

 

「何か狐と狸の化かし合いみたいな会話だな。」

 

 憎まれ口を訊いたのは短髪に黒服の少年…里見蓮太郎である。右後ろにいた天童木更があまりの暴言に蓮太郎を窘める。

 

「ちょっと里見君、仮にも関東エリアの当主に狸って…!?」

 

 しかしポロッと出た失言に聖天子がピクリと眉毛を動かした。

 

「木更社長、貴女の中では“私”が…“狸”なのですね…?」

 

 普段見れないであろう…苦笑としかめっ面の混ざった聖天子に問われ、“しまった”とばかりにタジタジとなり、天童木更は聖天子に謝罪した。

 

「申し訳ありません、聖天子様…。」

 

 そして一礼をしてその格好で蓮太郎にキッと突き刺す視線を送り、彼は即座に顔を反らした。

 

(俺のせいじゃねえよ!)

 

 そんなやり取りを見ていたイオナは暫し思考する。

 

「…聖天子が狸なら群像が狐…、でも何故…群像も聖天子も人間なのに?」

 

 霧であったメンタルモデルの彼女がこの例えに疑問を持つのは当たり前で、口には出さないがコンゴウとキリシマも興味を持ちアクセスをして検索を始めるとこの疑問に群像が答えてあげた。

 

「日本の昔話では年経た狐や狸が人等に化けて悪さをする伝説が多くあるんだよ。

そんな話とずる賢い者同士が騙し合うのを繋ぎ見て例えたことわざが狐と狸の化かし合いなんだ。」

 

 彼の説明にイオナは成る程と頷き、コンゴウとキリシマも同じく頷く。聖天子は困りげに溜め息を吐き、この話に区切りを付けた。

 

「狐と狸の話は其処まで致しまして…、彼方に御食事…ヴェッフェを御用意させましたのでどうぞ。」

 

 ヴェッフェと聞いて目を輝かせたのは民警…イニシエーターの三人の幼女達である。延珠とティナ、弓月は円満な笑顔を自分のプロモーターである蓮太郎、木更、片桐玉樹に向けた。

 

「れっ、蓮太郎、ヴェッフェ、食べ放題じゃぞ!

早く行こっ、行こう!!」

「ごめんなさい社長、私も、お腹が空いてしまって…。」

「兄貴、高級料理がアタシ達を待っているぞ!

行かない訳にはいかないじゃないさ!!」

 

 興奮気味に足踏みまで始めてパートナーの許可を待つ三人に蓮太郎達はOKを出した。

 

「いいぜ、行ってこい延珠。」

「お腹一杯に食べちゃってね、ティナちゃん。」

「弓月~、オレッチの分も取っておけよ~?」

 

 そして気が付けば刑部蒔絵の背が低くなったかと思いきや、どうやらクマのヌイグルミであるキリシマの上に座り持ち上げれていた。

 

「ヨタロウ、わたし達も行こう!

遅れを取っちゃダメだよ。」

「大丈夫だ蒔絵、ワタシに任せろ!

戦艦キリシマ、発進っ!!」

「ゆけーっ、ヨタローウ!」

 

 キリシマはテンションの高い声で蒔絵をバランス良く運ぶと物凄い早さで通路を駆けて行き、延珠達もパートナー達の了承を貰うと物凄い勢いで駆け出して直ぐに見えなくなってしまった。

 友奈はその光景のあまりの微笑ましさに笑い、美森と夏凜も連られて笑うと風は樹の手を掴み足踏みを始めていた。微かに口端から涎が見えるのは気のせいか。

 

「ちょっとアンタ達何笑ってるのよ、じゃりん娘達に先越されたんだからワタシ達も走るわよ!?」

「ふええ~、お姉ちゃん大人気ないよ~。」

「大人の気醸し出して腹が膨れるかーっ!」

 

 最早制御不能とばかりに風は樹を振り回して駆け出してしまい、友奈達は樹の悲鳴を聞きながらその後ろ姿を見送った。園子はその光景が面白くて腹を抱えて笑い出す。

 

「あはははは、やっぱり風さんは面白いね~、ワッシー?」

「えっ、えぇ…、でも時々恥ずかしいかも…。」

「イオナ、タカオとハルナに帰還命令と…僧達に物資の積み込みが終わったら聖天子様がヴェッフェを用意してくれたから此方に来る様に伝えてやってくれ。」

「りょーかい。」

 

 二人の会話が終わり、残った面々は特に口を訊く事なく…少しの間その場に留まった。園子は美森にアイコンタクトを取り、其れを理解した彼女は友奈と夏凛の手を掴んだ。

 

「二人共、私もお腹が空きましたから風先輩達の後を追いましょう?」

「東郷…?」

 

 ふと夏凛は美森の発言に違和感を感じた…が、今残っているメンバーを見て気付いた。

 

「そうね…、ワタシ達も先に行きますか。」

「なら、園子ちゃんも一緒に…?」

 

 …と、言いかけた友奈だが、何時の間にか東郷から離れた夏凛が隣に来て友奈の手を掴んでおり、二人に挟まれた状態になる。そして美森と夏凛はタイミングを取る様に目を見合わせ、同時に駆け出した。

 

「ウエエエエッ、何、なあああにいいいい!?!?」

 

 二人に引っ張られる様に友奈は悲鳴を上げながら走り、その声は曲がり角からコダマしていた。

 

 それを見つめていた園子は切なげな微笑で呟いた。

 

「ごめんね…、みんな…。」

 

 その場には蒼き鋼の艦長…千早群像、ユグドラシルの神女であり大赦の代表を務める乃木園子、そして関東エリアの統治者である聖天子。一人は人類の裏切り者と称される男を“父”に持ち、一人は神の声を聴く最強の勇者であり、そしてこのエリアの最高権力者の一人が一ヶ所に集まった以上…、親睦を深める為の食事会で済む訳はない。三人は友奈達とは別の部屋へと赴き、聖天子達が中へ入ると扉には相談した訳でもなく片桐玉樹とコンゴウがガードに付い、扉は固く閉ざされた。

 




~百合熊嵐・その1~

イオナ「コンゴウは何でピーマンが嫌いなの?」

コンゴウ「ふん、勘違いをするな、401。
私がピーマンを嫌っているのではなく、ピーマンが私に食われまいと頑張るのだ、解るな?」

イオナ「んっ、コンゴウは可愛いね。」

コンゴウ「ばっ…馬鹿な事を…言わないでよ…。」

ヒュウガ「何、コンゴウのその反応はっ!?」

イオナ「コンゴウ、ピーマンは食べられる様にしようね。
ハイ、“あ~ん”ってして?」

コンゴウ「なっ、401貴様何をっ!?」

イオナ「あ~んってして?」

コンゴウ「イヤだ、誰がするもの…」

イオナ(ジ………ッ)

コンゴウ「……こっ、今回…だけだぞ。」

イオナ「うん、食べられる様になるまで頑張ろうね。」

コンゴウ「……ハイ。」

ヒュウガ「だから何なんだコンゴウのその反応はっ!!?」


…お粗末…。

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