Century of the raising arms   作:濁酒三十六

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永遠を語り継ぐ乙女達…

 アウラの民に迫るバーテックスをたった二人で抑える友奈と美森、戦闘力は遥かに口だけのバーテックスを凌駕して瞬く間に数百ものバーテックスを打ち倒していた。そしてバーテックスもまた二人に群がり荒波の如く押し寄せ襲い来る。そんな中で城下側よりタスクの小型飛行艇とヴィヴィアンのピンク色のパラメイル・レイザー戦闘機形態が合流、二機による機関銃と対ドラゴン用アサルトライフルの銃弾、そしてタスクの飛行艇に同乗…と言うより端に掴まっていた黒一色のフルフェイスと戦闘スーツに身を包んだ大黒竜也が飛行艇から離れて飛び、魔法攻撃が二十体近くを撃破した。友奈と美森は彼がバーテックスを倒した事より空を飛んだ事実に目を剥いてしまった。

 

《友奈ー、美森ー、疲れてないー!?》

 

 戦闘機の剥き出しのコクピットからヴィヴィアンが通信機を使い二人を心配して声を掛け、首元に付けた小型通信機から彼女の声を聴いて友奈が笑顔を向けて応えた。

 

「大丈夫だよー、ヴィヴィアンさんも気を付けてーっ!」

 

 ヴィヴィアンは無邪気な笑顔を友奈に見せて右手でピースをしてバーテックスの群れに突っ込んだ。友奈はヴィヴィアンのパラメイルとタスクの小型飛行艇がバーテックスを撃ち落とす様を見て一つの疑問がよぎり通信機で美森に訊く。

 

「東郷さーん、バーテックスって私達勇者にしか倒せなかったんじゃなかったっけ?」

 

 美森はバーテックスを撃ちながら彼女の疑問に答えた。

 

「多分だけど、あの口だけのバーテックスなら通常の物理攻撃でも倒せるのかも知れない。前に延珠ちゃんが物理攻撃で倒したのは単純に強力な打撃だったんだと思う!」

 

 美森の考えはあくまで憶測ではあった。それに竜也の右手の拳銃型のCADを向けてバーテックスを塵にして滅した戦法はあくまで魔法なので細かい説明は必要ない。…だが彼の力に美森は不確かではあるが暗く深い畏怖を感じずにはいられなかった。

 何はともあれバーテックスを倒せるならば二人はとても心強い援軍であった。…しかし此処でバーテックスの動きが変わってきた。先程までは二人の勇者に襲い群がって来ていたバーテックスが彼女達を相手にしなくなり再び城下へと進み始めたのである。美森は一番に気付いて皆に通信を送った。

 

「いけない、バーテックスが狙いをアウラの人達に定めたわ!

まだ千体も倒してない、このままでは大きな被害が出てしまう!!」

 

 自分達を無視して過ぎ去るバーテックスを撃破し続ける友奈と美森…ヴィヴィアンとタスクだが最早一体も攻撃しては来ず、此処に来てバーテックスの物量が痛恨となり始めた。奴等が友奈と美森を標的としていたならまだ良かった。だが遠ざかっていくバーテックスに対して射撃武器である美森やヴィヴィアン、タスクは未だしも友奈は追い付きながら撃破しなければならない。更に言うなら友奈と美森は今は飛べず脅威的なジャンプによりバーテックスの背に乗り移動しながら撃滅する戦法を取っている為に敵が近くにいなければならず、遠ざかるバーテックスを倒し切る前にかなりの数のバーテックスがアウラの国に辿り着いてしまう。そうなってしまえば大惨事になるのは必至である。

 

「不味いな、早く奴等を倒さなきゃっ!!」

「殲滅は可能だが()()()を犠牲なく守り切るのは不可能だな。…だが動かなければその犠牲も増すばかりだ。」

 

 タスクが焦りを見せ、竜也の相変わらずの冷たい言葉を吐きながらも一人で数十ものバーテックスを消滅させる。その魔法による攻法は正に無限発である。友奈と美森はバーテックスを地上から追いかけながらジャンプを繰り返しながら次々とバーテックスを撃墜し、タスクもヴィヴィアンも容易く何体と討ち果たすがその物量はなかなか減らない。やはり千単位の数は計り知れない現実に疲れが滲んでしまう。そして追い討ちの様に友奈と美森の携帯端末よりアラートが鳴り始め、携帯を見た二人の顔が険しくなった。

 

「新手…、大型バーテックスです…友奈ちゃん!」

「乙女型…、其れも三体!?

…東郷さん、“ゲージ”は充分に溜まってる?」

「えぇ、何時でも“満開”出来ます!」

 

 友奈と美森は覚悟を決めたかの様に小さく見える大型バーテックス三体を睨む。…とその時、友奈・美森・ヴィヴィアン・タスク・竜也の通信機にイオナの声が入り込んだ。

 

《各機、その場より戦線離脱。此よりヴィルキスと焔龍號の広範囲出力兵器によるバーテックス殲滅を行う。ヴィルキス~焔龍號二機によるバーテックス殲滅を行います。友軍は戦線離脱して。》

 

 友奈と美森、竜也はイオナの言う意味がイマイチ解らずにいたがタスクからも通信が入りその慌てぶりに只事ではないと悟った。

 

「あの二機なら確実にバーテックスを全て一瞬に吹き飛ばせる!

支持通り此所から離れるぞ!!」

「でもバーテックスが…」

 

 友奈は腑に落ちない様子だったが、通信機から不思議な歌が聴こえて来て皆…耳を澄ます。その歌声は確かにアンジュのものでその綺麗な歌と声に友奈 は思わず聴き惚れてしまう。

 

「アンジュさん…すごく上手い…。」

「綺麗な歌声、この歌はサラマンディーネさん?」

 

 美森の言う通り、サラマンディーネも共に歌いアンジュの歌声と重なる。大黒竜也は今度はヴィヴィアンのレイザーに掴まり、アンジュとサラマンディーネの歌を聴きながら友奈達とは違い…、この歌が強大な破壊の力を解放する鍵なのだと思考していた。

 

(ラグナメイル…、恐らくはあのアウラの巫女姫が乗るのもアンジュと同じ物。バーテックスの殲滅をするなら確実にこの歌は広範囲破壊兵器のパスワードとなる物の筈だ!)

 

 タスクとヴィヴィアンも離脱した所で二人の歌に聴き入り、バーテックスの大群が迫り其所に白銀のラグナメイルと赤の龍神器が立ち塞がった。

 重なり合う歌と思いが禁断の力を解放する。ヴィルキスと焔龍號が金色に輝き出し、両機の両肩が開き、各二門の砲門が現れた。

 

“…永遠を語らん…♪”

 

 歌が終わるとアンジュとサラマンディーネは力一杯に叫び、ヴィルキスと焔龍號の両肩より激しく荒れ狂う稲妻を伴った凄まじい竜巻が前方のバーテックスの大群に発射された。

 

「いっっけえええええええええぇええ!!!!」

「我等が敵を薙ぎ払え、収斂時空砲(しゅうれんじくうほう)!!!」

 

 二機によって造り出された荒れ狂う雷と竜巻は隙間ないバーテックスの大群を空間事撹拌して丸ごと消滅させて行き、広範囲に広がっていた魔獣の群れは悉く塵も残さず消滅していった。友奈と美森…竜也はその破壊力に絶句しながらも感嘆を覚え、タスクとヴィヴィアンも何度と見ていてもやはり畏怖を感じずにはいられなかった。そして小型のバーテックスの大群は全滅し、残りは新手として現れた大型バーテックス…三体の乙女型だけである。

 友奈と美森はヴィルキスのディスコード・フェイザーと焔龍號の収斂時空砲の威力を目にして畏怖を抱いてしまうが、今の迎撃で友奈達は標的を大型バーテックスにしぼれた。

 

「東郷さん、“満開”を使うよ!!」

「ハイ、友奈ちゃん!!」

 

 二人は三体に向けて駆け出し、今一度超人的な跳躍力を見せて高らかに叫んだ。

 

『満っ開っ!!!!』




次回の満開に関しては捏造設定アリアリです。(じゃなきゃ出せないですよね)

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