Century of the raising arms   作:濁酒三十六

16 / 18
破壊神の襲来…

 勇者へと変身した結城友奈と東郷美森が城内部を駆け抜け、アウラの兵士を全て回避して外部へと脱出…そのまま城下を南方へ向かって駆け走った。天高く飛び上がり空を弓矢の如く行く二人の姿を見たアウラの民達は目を点にしてポカーンと口を開いていた。

 そして迫り来るバーテックス四千の大群から数十km 間の場所で止まった友奈は大群を睨み拳を構え、美森は両手にトンファーの様な逆持ちの銃を握った。

 

「友奈ちゃん、敵バーテックス軍を目視で確認っ!」

「東郷さん、大群の両側から攻めるよ!」

 

 美森は友奈に「ハイッ!」と力強く返事を返し、二人は瞬時に離れてバーテックスの大群の両端から同時に突っ込んだ。友奈の突貫で一度に数十体を撃破し、美森の逆手型の銃はバーテックスを一体ずつではあるが散弾となり大ダメージを与え、戦闘装束の四本ある細帯の内二本が二挺拳銃を扱いやはり数十体を撃破した。バーテックスの群は美森の放つ弾幕を突破出来ず友奈は飛び跳ねながらも格闘にて一体また一体と連続で撃破していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アウラの民のパラメイルとヴィルキスをがある格納庫をイオナが監視カメラをハッキングしてタスクと竜也、ヴィヴィアンが警備兵達を一蹴して制圧をした。タスクは専用の小型飛行艇ヴィヴィアンは即座に自身のパラメイルに乗り、イオナがハッキングによる操作でハッチを解放した。すると竜也がイオナの側に立つ。

 

「イオナだったな、城内全体にアラート…城下には避難勧告を鳴らしてくれ。」

「りょーかい。」

 

 タスクは竜也の考えを理解した。今城内城下と深睡中である。恐らくは総司令室すら誰も居ないかも知れない。イオナが一部のシステムを掌握しても騒ぎにはなっていないのが証拠の様だ。今、この時点で戦いは始まったばかりで未だバーテックスの襲来に気付いた者はいない筈である。そして城内のアラートに城下の避難勧告を鳴らす事でアウラの民達を早い内に避難させられる。一時的な混乱は起こるが其処はアラートにより総司令室に来た者達が上手くやるであろう。

 大黒竜也は専用の拳銃型CADの確認をし、黒いフルフェイスを被ると腰に付いた飛行魔法CADを叩いた。すると何と竜也の浮き上がりハッチの外へと飛び出した。ヴィヴィアンとタスク、イオナも言葉を無くして呆けてしまう。

 

「・・・ウオッ、先を越された!?」

「その様だ、行くよヴィヴィアン!」

 

 タスクに“アイッ!”と返事を返して小型飛行艇~パラメイルも発進、友奈と美森への支援に向かった。残されたイオナは普段のポーカーフェイスに戻り三人が飛んで行ってしまったハッチの外を見つめる。

 

「…指令室かな。」

 

 そう呟くとイオナは格納庫から城内へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンジュの拳銃が何度もマズルフラッシュを起こしサラマンディーネは何と自分を狙った弾丸を全て太刀にて弾き反らす。撃ち終えたマガジンを取り換えようした隙にサラマンディーネがアンジュの懐へ飛び込み斬り込むがアンジュはコンバットナイフで防御、彼女の斬撃を反らした。互いの視線が重なりドチラも微笑んでサラマンディーネは太刀による連撃を繰り出してアンジュに攻め入るがアンジュもコンバットナイフを巧みに操り、襲い来る太刀を何度も受け流して隙を作り銃のマガジンを交換してパンパンッと二発放って間合いを開けた。

 二人の攻防に大巫女は息を呑み、瞬くのも忘れている事にも気付いていなかった。

 

(なっ…何なのだあ奴等は、まるでダンスを楽しむ男女の様じゃ!

何故…その様に互いに…殺し合う事が出来るのじゃ!?)

 

 今、二人に大巫女は見えていない。互いが互いしか見ていない。アンジュとサラマンディーネにとっての命のやり取りはまるで互いの体を絡ませる行為に等しい行為となっていた。アンジュは弾切れとなった拳銃をサラマンディーネに投げつけコンバットナイフを逆手に構え突進、拳銃を長刀で叩き落としたサラマンディーネは構え直し迎え討つ。しかしその時部屋に飛び入り二人の間に割り入る影が二つ…赤い目が輝きサラマンディーネの長刀を蹴り飛ばし、アンジュのコンバットナイフの刃を握り締め彼女の突進を受け止めた。

 アンジュとサラマンディーネは呆気に取られ二人を止めた里見蓮太郎と藍原延樹に視線を移した。アンジュは蓮太郎が握るコンバットナイフから手を離し正気を取り戻したかの様に顔を蒼白にさせて叫んだ。

 

「ばっ、馬鹿じゃないのアンタ、早くナイフ放して傷の手当てを!!」

 

 慌てるアンジュは大巫女が寝ていた床の間から掛け布をひっぺがし止血に使おうとしたがナイフを放した手からは血は垂れてないだけでなく傷も全くなく…代わりに人工皮膚が破け黒い金属が露出していた。アンジュは其れを見るや掛け布をポイッと捨てる。

 

「何よ、鉄の義手ならそう言いなさいよ。紛らわしいわね!」

「何で其処で怒れるんだよ。それに此は鉄じゃなくバラニウム合金だ。」

 

 …と言った痴話喧嘩はさておき、アンジュとサラマンディーネの死闘を止められた蓮太郎は大巫女に向き直る。

 

「大巫女、この城下にバーテックスの四千近くの大群が迫ってる!

今俺達の仲間が奴等を抑えているが敵は四千だ、直ぐに増援を出してくれ!!」

 

 其れを聴いたアンジュは表情を険しくさせる。

 

「ロリペド、ヴィルキスはっ!?」

「誰がロリペドだ!!

ヴィルキスは格納庫ごと確保済みだ、タスクとヴィヴィアンも出撃してくれている!」

 

 其れを聞きアンジュは即駆け出しヴィルキスの元へ向かう。そしてサラマンディーネは大巫女に向き、彼女を察した大巫女は頷き「行けっ!」と一言を命じた。

 

「ハッ!」

 

 サラマンディーネはアンジュを追う様に部屋を出て行き、同時に城下へけたたましいサイレンが鳴り出した。いざと云う時に備えられた緊急避難用のサイレンである。此は城にある総司令室からしか鳴らせられず、現在バーテックスの襲撃をいち早く知り得ているのが蓮太郎達である事からサイレンを鳴らしたのは彼等の仲間であろう。つまりは指令室は占拠された事になる。

 大巫女は険しい顔を蓮太郎に向ける。

 

「お前達の動きが早過ぎる。やはり話し合いとは建前で腹に一物抱えていたな!?」

「そりゃあ抱えるさ。何せドラゴンの一族と同盟組む為に来た様なもんだ、色々と思考は巡らせるに決まってる。

其れにアンタには今の俺達の現状を直に見てもらいたいんだ。」

 

「何、其れは一体どういう…」

「大巫女には俺達の世界…、いや、関東エリアへお越し願いたい!」

 

 里見蓮太郎は大巫女の顔を真っ直ぐに見据え、彼女は驚きを隠せずに口を噤み彼の言葉を受け止めた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。