緋弾のアリア~二丁拳銃の猛犬~   作:猫預かり処@元氷狼

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Re:EpisodeⅠ‐Ⅸ

――――――――――――酒は事件の御供です。

 

 

 

 

 

 

 

朝、今日の東京人口浮島は無慈悲な雨で覆われていた。

台風一号の影響だ、この雨が全て酒だったらいいのに、と思いながらレインコートを着てハーレーを運転する。今日は何故か嫌な予感がした、だからキンジも俺と共にバスに乗らずに後ろに座っている。『嫌な予感、それは確実にあたるものだ』そう俺の父は言っていた、それはもう自信満々に満ち溢れているように。今回は俺もキンジもそれぞれの学科には用がないので、そのまま一年一組に向かう。レインコートを着ていたおかげかどこも濡れてはいない。

 

「はぁー寒い」

 

だがしかし冷たさはそのまま感じていて、体に鳥肌が立つ。

 

「寒いー」

 

今教室に居るのはキンジと俺だけ。現時刻は8時5分。、そろそろバスの奴らが来るころだが……

其の時、キンジの携帯が鳴る。

 

「はい……神崎?あ、ああ。C装備で女子寮の屋上?今武偵高……カズのハーレーで来いだ?この雨の中⁉ざけんなよ、なんで⁉」

 

どうやら事件が起こったらしい。

 

「キンジ、電話を切れ。行くぞ」

 

「お、おいカズ待てよ‼分かった、分かったから神崎。行くから」

 

電話を切って俺を走って追いかけるキンジ。

 

「ちょ、なにがなんだかわかんねぇんだけど」

 

「レインコートを着てヘルメットを付けろ。すぐにだ」

 

二分ほどで屋内駐輪場に着き、ハーレーのハンドルに掛けてあるヘルメットをかぶりレインコートを着る。

 

「よし、行くぞ。飛ばすから気を付けろ」

 

今月一番のスピードで俺は女子寮に向かった。

途中、やはり嫌な予感は当たったと自分の一族の第六感に嫌悪感を抱いた。

C装備、そんなものに気を取られてる暇はない、キンジは律儀にC装備で行こうとしているが俺は嫌な感じがする。これが全ての混乱へと始まりのような、物語の入り口の様な……俺はハーレーを女子寮の屋根下に置いた後、ハーレーの物入れから防弾チョッキとオープンフィンガーグローブを付ける。ちなみにキンジもバッグの中に今日は依頼を受けるという事で、装備は持ってきていたらしく、オープンフィンガーと防弾チョッキはレインコートに下から着込んでいた。

 

「行くぞ」

 

「おう」

 

女子寮に入り、途中管理人がギャーギャー騒いだが無視して進む。

屋上の扉を開けて、外を確認すると神崎が鬼気迫る表情で無線機を片手に大雨に打たれていた。

そして屋上の廂の下では俺もよくパーティーを組んだことのある狙撃科(スナイプ)Sランクのレキが体育座りしていた。身体は細く、身長は神崎より頭半分大きいだけ。つまり170ある貴希と比べるとチビで外見も美少女の部類に位置しているのだが無表情、常にレキは無表情なのだ。そしてレキ、コイツは俺とキンジと同じく入試でSランク認定された人外……いや、天才少女。言うなれば天外ともいうべき存在である。こいつの狙撃の絶対半径(キリングレンジ)は2051メートル。

絶対半径とは、放たれた銃弾が確実に命中する半径という事。簡単に言えばレキの周りで半径2051メートル以内にいる人間はいつ心臓を撃ち抜かれてもおかしくない、という事だ。

 

「レキ」

 

俺がレキに声をかけるが、反応しない。

ヘッドホンを付けているからだろうか、俺はトントンと肩をつつく。

するとやっと気づいたようで、俺の方をちらっと見て、ヘッドホンを外す。

 

「久しぶりだな、レキ」

 

「お久しぶりです和久さん」

 

「ああ、調子は?」

 

「好調です」

 

「そうか、お前もどうせ神崎に呼ばれたんだろうし。よろしく」

 

「こちらこそ」

 

その細い指と俺の聞耐えたごつい指が合わさり、俺はレキを引っ張り上げて立たせる。

そうするとキョトンとした顔になるレキ。

 

「もうそろそろ出発だ、最後を頼むかもしれん、頼む」

 

「いえ、それが仕事ですから」

 

その後レキはキンジとも少し話しくるりと神崎が無線機からこっちに意識を向けたところで俺等が神崎に注目する。まずは最初に説明が欲しい。

 

「うん、ちょうどいいわね。Sランク3人。とてもいいわ」

 

「そんな事はどうでも良くないけどどうでもいいから、何が起きたのか説明しろ。一つ言っておく、此処は一人での行動じゃない、お前ひとりじゃないんだ。お前は現在仕切っているという事はリーダーという事だ、お前に命を預けることになるかもしれない。それを考えろ。状況説明(ブリーフィング)位しっかりしろ」

 

「……バスジャックよ」

 

少し不貞腐れた様に言う神崎、お前は子供か…………いや、考えるまでも無いな

バスジャック、ねぇ……本当に俺の第六感は気色悪い域だな。

 

「―――バス?」

 

キンジが問う

 

「武偵高の通学バスよ。あんたの寮にも7時58分に停留したはずのやつ」

 

「バスの状況は?」

 

「最悪ね、乗客は満員状態」

 

「犯人はバスに乗っているのか?」

 

「それはないわね、バスには爆弾が仕掛けられているわ」

 

確かに最悪だ、ものすごく。バスジャックと言ったら速度規定とかあるのだろう。

 

「それとキンジ、これは『武偵殺し』アンタの自転車をやった奴とどういう人物よ」

 

「待て神崎、『武偵殺し』はこの前逮捕されたはずだぞ」

 

「それは真犯人じゃないわ」

 

最近武偵内で話題の一つとなっていた連続殺人犯『武偵殺し』。

しかし此奴はもう逮捕されて国際裁判に出廷されている。そいつの名前は……神崎……かなえ……!

そういう事か、やっと掴めた。こいつは多分逮捕された母親である神崎かなえの罪を翻す為に。

神崎は『武偵殺し』を捕まえようとしている。真の武偵殺しである今バスジャックを起こして、キンジをチャリジャックに落した犯人を‼なぜ気づかなかった、アイツが転入してきたのは去年の三学期頃だと言っていた。武偵殺しの犯人と言われる神崎かなえが逮捕され国際法廷に出廷したのも一年が終わる一か月前だった。こいつは母親を助けるために……!いや、待て此奴の母親が神崎を利用していると考えるべきか……?待て、俺。難しく考えるな、今はバスジャックの事を考えろ。

 

「なんだって?待て、神崎。お前は何の話をしているんだ?」

 

俺と違い、なにも掴めていないキンジが怒りだす。

そうか、アリアはパートナーが欲しかったんだ。こいつが東京武偵高に転入したのは神崎かなえの罪を無実にするためでもあり、自分に釣り合うパートナーを探す事。理由は知らんが神崎は今自分という天秤のもう片方に釣り合う人間を探していた。その理想像がヒステリアモード化したキンジだった。入学時早々に体育倉庫でなってしまったキンジに、アリアは魅せられた。

 

「背景の説明をしてる暇はないし、アンタは知る必要もない、パーティーのリーダーはあたしよ」

 

いや、パートナーが欲しい理由ならある。推理しろ俺、頭を冷やせ、雨の音を聞くな……

神崎の家はオルメス、後で調べたがこれはホームズのフランス語読みだ。神崎のホームズというのはやはりシャーロック・ホームズで間違いはない。理子とのバラ園の後、俺もネットで調べたから確実だ。そしてホームズには長年医者でもある相棒が居た。J・H・ワトソンだ……シャーロック・ホームズの子孫が居るのであればワトソンの子孫が居るのも必然的というが、それは今の状況からしてうまくいっていないのだろう。重要なのは、たぶん神崎の家、H家ではパートナーが重要視されるのではないか?そうだ、そうなんだ。だから此奴はパートナーを、相棒を、俺のハーレーの様な長年を共にするサポーターでありパートナーを探していたんだ。

 

「待て……待てよアリア‼――――お前‼」

 

これをキンジに伝えるべきか?否、ダメだろう。今の状況でキンジにこんな事を言っても混乱するだけだし、神崎自身がこのことを伝えなければならない。だから俺は今、何もしてはいけない。これは神崎の問題だ、キンジや俺の問題じゃない。神崎の問題だ‼

 

「事件はすでに発生しているの‼バスは今爆破されるかもしれない‼ミッションは車内にいる生徒たちの救助(セーブ)よ、以上‼」

 

「――――リーダーをやりたきゃ勝手にやれ。だがな、リーダーならメンバーにきちんと説明しろ‼さっきカズも言ったろ‼俺達はお前に、命を賭けてるんだぞ‼俺や、カズ、それにレキもお前の奴隷じゃないんだよ‼」

 

ついに怒りが爆発、ありったけの思いを込めてキンジが叫ぶ。

 

「武偵憲章一条!『仲間を信じ、仲間を助けよ』被害者は武偵高の生徒よ。それ以上の説明は必要ないわ‼」

 

その言葉を最後に、この大雨が降る空にヘリの音が響く。

コイツ、ヘリまで呼んだのか……確かに屋上まで連れ出してここから降りて車なんて遅くなるだけだが

 

「……クソッ‼いいよ、やってやるよ。やりゃあいいんだろ!」

 

「キンジ、これが最初の事件になるのね」

 

「とことんついてねぇよ‼ったく‼」

 

「約束は守りなさい、アンタが実力を見せてくれるのを楽しみにしてるんだから」

 

すまんな神崎、今のキンジには精々BランクからAランクの実力しか出せないさ。

 

「言っとくけどな、お前が期待しているような、思い込んでいるような力は俺にはないぞ?ブランクも長い、そんなEランク武偵を大事件に連れてっていいのか?」

 

「安心しなさい、ピンチの時はあたしが守ってあげるわ」

 

さて、今の言葉を忘れるなよ神崎。俺の第六感が容量オーバーで悲鳴を上げているんだ。

インカムを付けて、俺とキンジと神崎、そしてレキは降りてきたヘリに乗り込んだ。

ヘリに乗り、バスに急行する。途中通信科(コネクト)からのインカム越しの情報でジャックされた生徒たちが乗る60人テインオーバーのバスは学園島を一周し青海南橋を渡り台場へと入ったという。

 

「警視庁と東京武偵局は何をやってるんだ⁉」

 

『動いてる、だけど相手は走るバス。運よくスピードみたいに凄腕の警察が乗っているわけじゃないの』

 

轟音が鳴り響くヘリの中で神崎とインカムを通して話す。

 

「ったく、ざけんなよ。可愛らしい未来ある武偵高校生の未来を足蹴りにはするなよな」

 

『どこが可愛らしいよ、猛犬みたいな野蛮な顔して』

 

「黙れロリ野郎」

 

『なんか意味が解らないけどムカつく事を言われた気がする』

 

そう言いながらもアリアは俺と同じコルト・ガバメントを整備している。

俺はもうホルスターに整備済みの二丁拳銃が入れてある、予備マガジンが左右12個ずつ太もものマガジンホルスター6段に入れてある。これが俺の強襲科時代の装備である。

 

『ねぇカズヒサ』

 

「あ?」

 

突然神崎が俺に話しかける。

 

『アンタのコルト二丁のスライドに刻まれてる犬?は何?』

 

「これは犬に見えるが立派な灯央家の家紋だ。馬鹿にするなよ」

 

俺はそう言ってその家紋を撫でる。今は無き灯央家の家紋。

それを中に刻んだ時の俺の心境を心に刻みながら

 

『見えました、バスはホテル日航の前を右折中です』

 

レキの言葉に俺もつられてヘリの窓を除くと、確かにそこに有った。

 

「オレも目視確認」

 

『み、見えないけど……』

 

『同じく、カズお前視力いくつだっけ?』

 

「左右共に3.0だがレキの方がヤバい」

 

『……6,0です左右とも』

 

俺の二倍、すごいですねー。

それには神崎も引いてしまい、俺はというと人外がまた一人俺の頭に認識されたことに苦痛を覚える。只でさえ気持ち悪いほどの第六感に神経が磨り減らされてるってのに。

 

『バス上空まであと10秒』

 

バスの操縦者がそう告げる。

 

『了解、レキはここに残りなさい。二人は私と一緒に空から降りるわよ』

 

「俺は不必要だっ‼」

 

ここまで来たらとことんやってやる。俺はヘリの扉を開けてパラシュートなしで飛び降りる。

 

『ちょ、カズヒサ⁉』

 

神崎が心配した声を掛けるが俺は無事にバスの上に着地。ドンッ!という音がバスの濡れた屋上が振動して伝わる。

 

「ふー……ビビった」

 

遅れてキンジと神崎もパラシュートでやってくるが俺はすでにバス車内に入っている。

 

「うっす、武藤。馬鹿め。ジャックに会ってやがんの」

 

「うるせっ!轢いてやる‼」

 

目の前に居たのは武藤剛気、そしてその兄の横に居たのは

 

「か、和久」

 

武藤貴希だ。

 

「めんどくせぇからパパっとすませるぞ。お前等を救助(セーブ)しに来た。やることは分かっているよな――――――っと⁉お前ら伏せろ‼」

 

俺の忠告で全員が伏せる。

刹那俺達のさっき胴があった場所に無数の銃弾が通り抜ける。

 

「ひ、ひ、灯央先輩‼」

 

一人の一年女子が無数の弾丸が上を通る時に俺に近寄る。

 

「どうした」

 

「こ、これ。いつの間にか私の携帯とすり替わっていたんです‼そ、それで喋りだしてっ‼」

 

『速度を落とすと 爆発しやがります』

 

近頃ネットで話題のボーカロイドの声で話し出す携帯。

 

「チッ……神崎、屋上から見た状況を」

 

『UZI載せたルノーがバスに撃ちまくってるわ‼私は側面から爆弾を確認しに行くッ‼』

 

「おい無茶するな馬鹿野郎‼…………チッ!」

 

俺は煙草を一つ、イライラしながら取り出して火をつける。

ちょいと本気だそうか、こんな時に手を抜くとか馬鹿のすることだよな‼

 

「お前等、絶対に動くな」

 

俺はしゃがみこむ生徒をかき分け銃弾が飛んでくる窓から上に体を出す。両腕を顔の前に出して防弾制服で銃弾に耐える。普通だったら防弾加工でも吹っ飛ぶのだが、俺はそんな柔じゃない。というより吹っ飛ぶのが普通なのだが……

プロの武術化が放つ拳が亜音速で当たっているような感覚が体の上半身に当たる。

そして一瞬弾が途切れた瞬間、俺は二丁拳銃をホルスターから取出し50メートルほど先のUZIをマガジン一つで撃破する。ひとまず銃弾の雨がやみ、今度はキンジとの通信を始める。

 

「おいキンジ、お前今どこにいる?」

 

『お前の後ろだ』」

 

後ろを振り向くと、被弾した運転手をキンジが応急処置をしていた。

 

「カズが防いだおかげで運転手のこれ以上の被弾がまぬがれた」

 

「そうか。それはよかった、神崎‼」

 

『わかったわよ‼爆弾の種類はカジンスキーβ型のプラスチック爆弾(C4爆弾)、武偵殺しの十八番よ‼見た限りでは炸薬の容積は3500立方センチあるわ‼』

 

其れだとバスだけでなく電車まで吹っ飛ぶぞ……‼

 

『潜り込んで解体を試みる』

 

「馬鹿!やめろ‼」

 

その時、先程のUZIとルノーのコンビが近づいてきている。バスはトンネルへと入っている。

クソがァ‼俺はルノーが載せるUZIの銃口が神崎がいる車体の下であることに気づき走って放たれた銃弾を転がり込んで背中で受ける。馬鹿、野郎‼

 

「自分勝手な行動は、慎めや‼」

 

トンカチで思いっきり背中をぶっ叩かれてる感じだ。これじゃあ背骨何本か逝っちゃてるな。

 

『カズヒサ⁉』

 

『カズ‼』

 

流石に撃たれるだけじゃ終われねぇよな。

俺は痛む背中を無視して左腕でバスの角を掴み片方の右腕でコンバットコマンダーを構えて撃つ。銃弾はルノーのタイヤに命中。ルノーはスピンしてもう一つかました銃弾が運よくガソリンタンクに命中し炎上して爆発する。

 

「クッ…………!」

 

左腕だけで起き上がる時にバリバリ、と骨が折れるような音がして激痛に悶えてバスの車内に転がり込む。其の時に被弾していた運転手に変わって運転していた武藤がギリギリまでスピードをブレーキで落としたため、うまく転がる事が出来た。

 

「こ、こりゃ……ァ、骨が……どっ……かの内臓に……突き刺さ……ってんじゃ……ね?」

 

少し内臓が気づ付けられたことによって血を吐きながら言う俺。

中に居た女子生徒が悲鳴を上げる。

 

「大丈夫か、カズ!」

 

「だい…じょう……ぶなわけ……ねぇ…………だろうがッ‼」

 

やべぇ、死にはしないけど俺一回落ちるわ。

そうして俺の意識は闇に落ちた。

 

「クソが‼神崎ィ……‼」

 

キンジはカッとなり、バスの屋上に上ると神崎も屋上に上っていた。

 

『か、カズヒサは?』

 

「今は気を失ってる‼」

 

『有明コロシアムを 右折しやがれ です』

 

無慈悲なボーカロイドの声がさっきの一年女子から渡された携帯から聞こえる。

 

「黙れよ‼――――――チッ、またきやがった」

 

三台目のルノーが追い上げてくる。

そして今回は遠慮なく発砲。俺達に銃弾が向かってくる。

 

「親友撃たれたままで撃たれるかってんだァッ‼」

 

キンジのベレッタM92Fのフルオートが火を噴く。

銃弾は流れるようにルノーの前方タイヤに当たり、一台が奥にスピンして消えていく。

だが、その後ろには四台目が迫ってきている

 

「しまっ――――‼」

 

四代目のルノーが積んでいるUZIから放たれた9x19mmパラベラム弾が俺の肩に被弾する。俺はその衝撃でバス前方に飛ばされる。ギリギリバスの天蓋にベルトに仕込んだワイヤーを撃ち込み、踏みとどまる。

そして神崎も銃弾に被弾、寸前に放った二発でUZIは破壊したが神崎の被弾した場所が頭だったため気絶したのか意識を失った神崎が俺の方に飛んでくる。その瞬間バスはトンネルを抜けて外の光に覆われる。このままいくとレインボーブリッチだ。そしてそのレインボーブリッチには通行者が一台も無い、警視庁の手回しだろう。

 

「神崎⁉」

 

気絶している神崎を見ると、額に大きく傷が入っている。

被弾時のショックで気絶したのだろうか、だが今は気にしている暇はない。

スヤスヤと寝息を立てている小獅子に目を向けるよりは

 

『……レ、レキ』

 

カズ⁉

 

『はい』

 

レキが応答してほぼ同時に、レインボーブリッチを走行するこのバスに後ろから追いかけるように先程まで乗っていたヘリが近づく。

 

『撃てる……な』

 

『はい――――――――私は一発の銃弾』

 

完璧にヘリがバスと並行して進む。

 

『銃弾は人の心を持たない、故に何も考えない――――』

 

これは……レキがいつも敵を弾く時に使う

 

『――――ただ、目的に向かって飛ぶだけ』

 

詩の様なまじない。強襲科で何度か聞いたことがある。レキの癖だ。

まじないが終わった刹那、ヘリからパッ、パパッ!っと白い閃光が三回銃口から光らせる。

光るたびにバスにバッ、バッババッ!と衝撃が伝わり遅れて銃声が聞こえてくる。

何か黒光りしている部品の様ななものがバスから勢いよく飛び出し空中に浮かぶそれを……

 

『チェック、メイトだ』

 

今度はバスの中からの発砲音と二発の銃弾がその部品に直撃。

レインボーブリッチから少し離れた海の上で特大のオレンジ色の花火が爆ぜ魅せた。

 

『事件は終了した、お疲れ。キンジ、レキ。神崎は……お眠り中か』

 

最後に締めたのはカズだった。

 

『俺、寝るわ』

 

それを境にインカム越しからカズの寝息が聞こえた。

 

 

【武偵高通学バスジャック調査報告書類】

 

担当教務科(マスターズ)教師 蘭豹

 

『事件解決武偵』

 

強襲科(アサルト)所属Sランク:神崎・H・アリア

探偵科(インケスタ)所属Eランク:遠山キンジ

装備科(アムド)所属Aランク:灯央和久

狙撃科(スナイプ)所属Sランク:レキ

 

負傷者二名。

 

『以下詳細』

 

神崎・H・アリアは額に銃弾の傷を負ったが特に異常なし、念のためMRIも使用したが異常は見当たらず。

灯央和久は重傷、銃弾直撃時の過多衝撃で内臓と一部血管組織を一部。命に別状はなく、二週間安静。他二名は無傷、この事件を解決した四人の武偵に敬意を表する。

 

…………以上。

 

 




ということでバスジャック話でした。
和久は二週間安静ですがそうも待ってくれないのも現実。
さて、次は原作通り進めていきたいと思います。
それでは感想宜しくお願いします‼

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