緋弾のアリア~二丁拳銃の猛犬~   作:猫預かり処@元氷狼

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Re:EpisodeⅠ‐Ⅶ

――――――――――――俺の燃料は酒である。

 

 

 

 

 

 

 

 

一般教科の授業が終わり、神崎から俺は逃げてうまくキンジの方に誘導した後、俺は装備科の第一倉庫に置いていたハーレーを出して、車両科前に愛車のハーレーで向かっていた。というのは今日の朝合同依頼を受けると約束した二人を待つためだ。武藤妹である武藤貴希、そして貴希のルームメイトである樋山玲歌とのある民間傭兵企業からの依頼である火力支援車(テクニカル)の調整、及び修理だ。

しかしその依頼人の元に行く為には、三人分の移動手段を確保しなければならない。

俺のハーレーは乗れるとしても二人が限度、三人乗れることには乗れるが依頼人がいる銀座のバーまでは長い道のりとなるため、無理だろう。そういう事なので最初は車両科から武偵車両を借りようとしたのだが、貴希からある提案があった。俺のハーレーにサイドカーを付けよう。という提案だ。

一応この前の調整の時にサイドカーを連結できるようにも改造したらしく、見た目は全然変わっていないように見えたが左側部にサイドカー連結用にレバーが格納してあったのを貴希の手により分かり、改めて貴希の規格外さを思い知らされた。そしてその時、貴希が将来東京武偵高の車両科の担当教師となり綴と蘭豹と仲良くしてるのが安易に想像できた。

 

「なに失礼な想像をしてるの和久」

 

人の心を読める時点で人外の仲間入りだと俺は思う。

 

「人外は貴方でしょ」

 

どうやら俺は危険な人間の誕生とあらぬ誤解を受けているようだ。

 

「いや、銃弾を噛み止めた逸話がある和久は立派な人外よ」

 

「あれはだな、死に際でアドレナリンが超分泌されたからだ。あれを普通にできるわけないだろ、あの後顎外れかけて病院行きだったし」

 

「それでも止めたのは本当なんだ……」

 

「……一応な」

 

確かに俺が強襲科時代のお台場にある銀行を占拠したテロリスト手段を鎮圧するために動いた時に俺は被害者の一人である女子高生を庇って撃たれた、其の時に歯で噛んで銃弾を停めたのだが……

 

灰花梗(はいばなきょう)今は楽しく高校生活を謳歌してるらしいよ」

 

あれから5か月、一つ上だったので今は高校三年か

 

「てかなんであの子の名前知ってる?」

 

「…………ライバルの名前ぐらい覚えるよ」

 

ライバル?なんの?確か梗はテニスやってるからテニスの?

 

「お前テニスやってんのか」

 

「やってないよ!」

 

だったらなんのライバルだろうな。よく分からん。

 

「まぁそんな事はどうでもよくないけどいい」

 

どっちだよ。

 

「サイドカーとの連結をする、怜歌がもう少しで来るから」

 

玲歌、とは朝いたルームメイトの事だろう。

二分ほど貴希と話しながら待っていると、女子が車両科棟内から走ってくる。

 

「こんにちわぁ、樋山玲歌です。よろしくおねがいします」

 

ものすごい京都弁だった。

 

「おう、よろしく」

 

「灯央先輩ハァハァハァハァ……」

 

そしてものすごい変態だった。

 

「いや、ちょっと待て。何興奮してる」

 

「この子腐女子なの、それじゃあ玲歌、作業始めるよ。一分で終わらせる」

 

「うん」

 

紹介短い‼腐女子なの?俺の一番不得意な人間だ!

一見黒い長髪靡かせる漆塗りをした様な白雪の様な大和撫子なのだが……

 

「灯央先輩ハァハァハァハァ……」

 

その作業の横目で俺の胸筋あたりを見る目は変態の物だ。

無理無理無理、俺とこの子は相性が悪すぎる‼…………この合同依頼中は常に一緒に行動するのだが

 

「ちょいと落ち着いて玲歌」

 

ガンッ!っと俺が止める間もなくペンチを樋山の頭に殴るように当てる。

おい、それ鉄……

 

「大丈夫、この子すっごい石頭なの。これくらいじゃ傷もつかないわ」

 

本当にそのようで、俺を見る変態的な眼つきは変わっては無い。

なにこの新種の生物……人外だ、此処に本物の人外がおる⁉

 

「灯央先輩ハァハァハァハァ……」

 

「この子はね、こういう鈍器による衝撃には人外さながらの耐久力を持つから……こうするの」

 

貴希はペンチを整備服の腰のベルトに仕舞って、手を樋山の腰につっこみ……

 

「アハハハハハハハハハハハ‼」

 

くすぐりを仕掛ける。

 

「やめっ、分かった、ちゃんとやるからギャー‼」

 

最後に耳に息を貴希が吹いて、樋山はダウン。さっきとは別人のようにサイドカーの取り付けに取り組む。サイドカーの取り付けは、簡単にバイク側の固定レバーとサイドカー側の固定レバーを連結するだけなのですぐ終わる。

 

「よし、怜歌はサイドカーに乗って。運転は和久、私は後ろに乗る」

 

車両科から借りてきたのかヘルメットを貴希が被り、怜歌がサイドカーに乗る。

 

「わかった」

 

俺もヘルメットを付けて一応教習所以来初めてのサイドカーとなった相棒にまたがる。

乗り心地はやっぱり左寄りに重心が寄っているため、動きにくい。

 

「ちょっとそこらで試運転な」

 

「そりゃあしないと駄目だよ。いきなり本番とかはダメ」

 

やっぱり貴希もそう言うところには敏感らしい。

樋山もすっかりさっきの変態モードに戻っているが、頷いている…………何か書きながら。

 

「何書いてるんだ?」

 

俺はこの5秒後、聞かなければよかった。と慟哭するだろう。

 

「灯央先輩をベースにしたBL同人です」

 

…………聞かなければよかったァァッ‼

そのせいで一瞬運転がふらつき、貴希が放り出されようとするのを俺が貴希の腰を左腕を伸ばして止める

 

「危なかったー、もう和久‼もうちょっと運転はしっかりしろ‼」

 

「すまん」

 

俺はもう樋山を気にしないことにする、横から聞こえる興奮した息づかいも。ノートに書いているBL同人も。絶対に……‼

 

「ということで、もう行くぞ。運転も慣れてきた」

 

「何がという事でなのか分からないけど、了解」

 

樋山は何かを書いていて聞こえていないようなので、そのまま俺はアクセルを踏んだ。

地響きのような轟音がマフラーから聞こえて、速度が一瞬にして上がった。

目的地はここから約30分ほどの銀座のバー。なぜ銀座のバーなのかというと其処がその民間傭兵企業が日本で経営するバーであり、拠点であるからだ。

民間傭兵企業の名前は『フヴォースト・ドラコーン』Хвост драконаといい、意味は竜の尾。

なんか日本の暴走族みたいな名前だが、ロシアでは結構有名な傭兵企業らしい。

……と、いう事で

 

「着きました銀座」

 

まだ太陽は出ている、現在の時刻は4時31分。

うまくいけば暗くなる前には戻れるだろう。

 

「えーっと、バーの名前はフヴォーストだったよね」

 

企業の名前からそのまま尻尾と取ったのか。いいセンスだ。

その名前を探して辺りを見回すと……

 

「あった、フヴォースト‼」

 

貴希が指差す方向には「BAR フヴォースト」と出ている。

ある場所は、結構新しい外見のビルだ。

 

「それじゃあ行くか」

 

ハーレーをバイク用駐輪場に置いてキーを取って先に向かう貴希を追いかける。

 

「ここの二階か?」

 

遠く見たのと同じで本当に綺麗なビルだった。

 

Привет,(こんにちは) Мистер armed детективный♪(武偵さん)

 

いきなり俺に抱き着き、ロシア語で挨拶をする20代全般のモデル体型の金髪の女性。

 

「日本語話せるんだろ?そして離してくれ依頼人、一人の女子に睨まれてるんだ」

 

「あら、残念」

 

素直に離れてくれるクライアントの女性。

この人が民間傭兵企業「竜の尾」の人だろうか

 

「クライアントのユーリア・セリアビッチ・フェルベイナだな?」

 

「そうよ、私がユーリア。ユーリアと呼んでね赤髪のイケメンさん?」

 

「了解ユーリア、それじゃあテクニカルを早速見せてくれ」

 

「ええ、付いてきて」

 

随分陽気な人だな、そう思った。

ビルの中に入り、バーの看板は上の階段を誘導しているのに対し、ユーリアはそのまままっすぐ歩いていく。階段の横に道があるのでそこを通っていくと、固い鉄の扉がある。

その重々しい扉を重そうに開けるのを俺が手伝って、中に入ると……

 

「oh……」

 

ロシアの軍用重機関銃であるKord重機関銃五艇。

サブマシンのUZIが約二十艇。

そして固定されたRPGが3艇装備されている。

これはすごいな……

 

「このUZIは熱感知して、認識装置を持っていない私たちが以外の敵を自動で撃つわ」

 

これは……

 

「すごいな、それで?これの何処を調整するんだ?」

 

「…………RPGをね、反動除去と自動UZIをもうちょっと正確にしてほしいの」

 

「ふーん、まぁなんか裏がありそうだけどいいぞ、やってやる」

 

「ちょ、和久⁉依頼と違うわよ⁉」

 

「いいんだよ、その代りユーリア」

 

「なにかしら?」

 

「そこの陰に潜めている数人の武装している馬鹿共を落ちつかせろ」

 

「御見通しね……」

 

ぞろぞろと奥にAKを構えた男たちが出てくる。

 

「なんで……」

 

貴希は絶句している。

 

「まぁ、武偵にテクニカルの調整を頼むような傭兵企業なんかはいないわな」

 

まだAKは下げられてはいない。

 

「ユーリア」

 

「何かしら?」

 

「ここまで来てもらって悪いがその二人は帰らせろ。ここに車両科はいらないだろ」

 

「無理ね、連絡されたら困るもの」

 

「だよなー、んじゃその二人は俺が終わるまで縛っておけ」

 

「それ仲間が言う言葉かしら?」

 

ユーリアが呆れたように言う。

 

「だって、どうせそうするつもりだろ?それに二人はまだ入学して間もないんだ」

 

「まぁ、いいわ。縛っておきなさい」

 

「ちょ、和久⁉」

 

「ひ、灯央先輩⁉」

 

二人が二人の男に手首を縛られる。

 

「で?もう初めていいのか?」

 

「ええ」

 

「おかしいでしょ和久⁉なにこの状況!」

 

「これが縛られる……参考になります。ハァハァハァハァ……」

 

一人はどうやら満喫しているようなのでいいが

 

「おいそこの男、貴希の口にガムテープを」

 

「ういっす!」

 

俺の命令に男がガムテープを持ってきて貴希の口に張り付ける。これって外す時がメッチャ痛いんだ。静かになったので作業を始める、まずは無造作に取り付けられているだけの3艇のRPGを取り外し、改造していく。改造と言ってもテクニカルに取り付けられてもスムーズに玉入れができるようにするよう荷の改造。これは流石俺Aランク。という事で1艇を七分ほどのスピードで仕上げていく。

21分後……

 

「ほい、RPGはこれでいいか?」

 

テクニカルの車台天井に一つ、後ろの荷台の手すりに左右二艇づつ。

先程の三つ並べているよりはまだこちらの方が使い道がある。全方位的な。

装填もこちらの方が楽になっているし、俺の改造でテクニカル向き(走行中の装填)にも特化できるように砲身を短くしたために、装填速度は確実に上がっているだろう。

 

「次はUZIか……20艇もいらねぇよ、んなもん」

 

そう言ってそのうちの12台を横で見てる顔を隠した男に投げる。

 

「なっ⁉」

 

「バカやろう。こんなことしたらテクニカルじゃなくて武装トーチカだ。それにこのUZI20艇どこで手に入れた?」

 

「…………知り合いからよ」

 

「どうせ裏ルートだろ?傷物ばっかりだ、中身もイカれてる。すぐ弾詰まり起こすから絶対に使うな。暴発すんぞ」

 

優先回路を弄り、12艇分のコードを引き抜く。そして熱感知システムを弄って感知能力を高める。

これまで20艇分の感知を任せていたため、8艇に減ってシステムも軽くなり反応がよくなる。

 

「さて、試射だ。あんたらその専用の認識装置ってのを全員装着させろ」

 

「ええ」

 

渡されたのは小さなバッチ、一応俺達が付ける分を見てみたがしっかり作動しているようだ。

そのバッチを俺は貴希と悶えている樋山の整備服のポケットに入れて、煙草を付ける。吸い終えた瞬間感知システムの電源を入れて煙草を投げる。

刹那8艇のUZIから放たれた銃弾が俺の煙草に集中し、煙草が粉々になる。

 

「わーお」

 

電源をオフにして、精度を高め過ぎてしまったことを後悔する。

 

「これじゃぁ、熱のある者すべてに銃弾が炸裂しちまう」

 

さて、どうしようか。熱感知を改造するか?

いや、下手に手を出すと逆にノロくなっちまう。

 

「お前ら、これ何に使うつもりだ?」

 

「…………」

 

「テロだったらこの国でやるな、俺達武偵が動かなければならなくなる。やるんだったら血の気の多いアメリカででもやりな」

 

「テロじゃないわよ!」

 

「だったらなんだ、この馬鹿みたいな装備搭載してやがるテクニカルで何をしでかす」

 

そう言いながらも感知装置に手を付けることにしたので、今は俺が持っていたパソコンに繋いでシステムを弄っている。てかこんなスゲェ制度の熱感知システムどこで手に入れた?裏では流通するような代物じゃないぞ。

 

「仕事よ、ある組織からこれを武偵に調整させろと言われてるの」

 

依頼された奴が依頼するのか、変だな……

 

「ある組織?」

 

「組織の名前は聞いていないわ、けれど依頼人は……女よ、カナって人」

 

⁉か、カナ……だと…………⁉

 

「ど、どんな奴だった‼」

 

「え?茶髪を三つ編みにしてる私とは比べ物にはならないほどの美人だけど」

 

「他は⁉」

 

「さ、さっきからどうしたの貴方」

 

「…………!いや、いい。分かった、調整してやる」

 

俺はその後は一気に調整と改造を終わらせて重機関銃のKordの方は12艇のUZIとは違い綺麗なものだったので、煙草を吸いながら取り付けて行った。

 

「終わりだ、帰るからその二人の拘束を解け」

 

「…………」

 

俺が終わって、四本目の煙草を灰皿に押し付けて二人を解放するように言う。

男たちは二人の拘束を解き、真っ先に貴希が俺の頭を殴ってくる。鉄が当たったかと思うわどの音が俺の頭に響いて俺は痛みに悶える。ちなみに樋山は縛られてたロープを名残惜しそうに見て、拘束を解いた男たちの顔を引かせて、其処の二人が絡み合う……とか言うため、その二人が絶叫する。

 

「痛―――――ッ‼」

 

これでも痛いのに。ペンチで殴られた樋山は本当に人か⁉と最近自分の身近な所に人外が増えてきていることに恐怖を覚える。

 

「助かったわ。お名前を聞いていいかしら?」

 

「ちょっと場面を考えろ、助かったと思うのなら何か冷やすものを」

 

「へぇ、カズヒサ・ヒオウというのね。覚えたわ」

 

俺の頭の事は無視ですか⁉

 

「ユーリア」

 

「ん?なにかしら?」

 

「冷やすものを……」

 

「嫌だ、乙女心をもてあそぶ奴は死ぬがいいわ」

 

さっき俺が調整していた時に貴希は何を言った⁉

 

「意味わかんねぇ……」

 

「ありがとうございますクライアント、私達は全然出番がなかったけど」

 

「ごめんなさいね、全てはカズヒサの所為よ」

 

責任転嫁かよ⁉可笑しいだろうが‼

 

「という事で、報酬。60万とお騒がせ代100万」

 

は?それ480万

 

「最初の報酬の8倍か、悪くない」

 

「はい」

 

という事で、何か忘れている気がするが依頼は終了。

さて、カナか……キンジに話すべきか。それとも……

煙草を取り出して火をつける、見ると箱には既に残り一本。

 

「ふー……」

 

カナ……

 

「カナ……「さっきからカナカナ五月蠅いわよ⁉」イデッ!さ、さっきからって?」

 

「和久調整中もずっとカナカナ呟いて……知り合い?」

 

「い、いや知り合いじゃない」

 

「嘘はつかないで」

 

「本当に何でもない」

 

「灯央先輩、貴希ちゃんを見くびらない方がいいですよ」

 

「見くびってはいない、本当になんでもないんだ」

 

俺は逃げるようにヘルメットを装着してハーレーにまたがる。

鍵を差し込んでエンジンをかける。それを見て慌てて二人も乗る。

 

「行くぞ」

 

頭の中にある『カナ』という物を打ち消す様に俺は運転に集中した。

これから何かが起きる。そう感じて、今依頼を受けているだろうキンジの事が少し心配になった。

行きより道は混んでいて女子寮に着いて貴希と樋山を降ろした時の時刻は7時16分。男子寮についた時間は7時25分。そろそろ晩飯が食いたい時間だ。

ハーレーをいつもの場所においてカバーをかけて、俺は寮の下にあるコンビニに入る。

そこで焼きそばパンとから揚げ弁当を買って煙草も買う。俺の財布を確認すると万札がまだ二十枚ほど入っていた。そこでまた財布の中身の値段を把握していない俺に溜息をつき、寮室でキンジが帰ってきていなかったので一人さびしく食べる。

 

「カナか……少し調べねぇと行けねぇな」

 

焼きそばパンを食べながら、俺はそう呟く。

 

「キンジには……今は話さない方がいいか」

 

ったく、マジで。こんな所で…………

 

 

 


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