緋弾のアリア~二丁拳銃の猛犬~   作:猫預かり処@元氷狼

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Re:EpisodeⅠ‐Ⅱ

――――――――――――それでは酒を飲もう。

 

 

 

 

 

 

 

 

始業式。漫画でもよくある校長の長い話は無く、新入生代表と二年の代表である白雪が歓迎と宣言的なことを話しただけだ、実質は。俺が気になったのはその時に貴希が俺の方に手を振ってくるから困った。ものすごく。そして今は、二年のこれから一年間世話になる部屋である2年A組の教室の窓側に座っている。

結局幼馴染のキンジは始業式に間に合わなかった。クラス表を見ると一応同じクラスだったのでそろそろ来るだろう。それにしても……貴希を戦姉妹に、ねぇ……。どうしようか。テストとかあるんだよな、内容は酒のアルコール耐性?―――――いや、それは流石に駄目だろう、うん。

 

「あぁーもう嫌だ」

 

二年初日の教室での初台詞がネガティブ発言、俺の幼馴染遠山キンジの登場だ。

 

「キンジ」

 

「ん?ああーカズか。おはよう」

 

スゲェ疲れ果ててる、肉体的ではなく精神的に。アレ(・・)を使ったな。

 

「お前、朝っぱらからなんでアレ使ってるんだ」

 

「…………武偵殺しに襲われて、空から女の子が降ってきた」

 

うーん、これは流石に

 

「あ、もしもし?矢島精神病院ですか?「待て待て待て‼」……さすがに最初のは信じるが空から女の子は降ってこないだろ」

 

それは漫画やアニメの世界だけだ、少なくとも俺は信じたくない(・・・・・・)

絶対に。空から女の子が降ってくるなんてことは信じたくない。

現実逃避?厨二病と呼ばれるよりはましだ。

 

「俺も逃避したい、カズ。助けてくれ」

 

「泣いて懇願して今日俺の代わりにビールを一箱買ってきてくれるならいいだろう」

 

何をどう助ければいいのか分からないけどな。

 

「分かった。ここでは話せない、もうすぐホームルームだから終わったら屋上行こうぜ」

 

買ってきてくれるのかよ。

 

「ああ、分かった。吸えるしな」

 

屋上とは俺が一番学校の中で落ち着く場所、煙草を吸っても風で自動的に流れていく。

雨の日は無理だが、今日みたいな晴れの日は最高だ。

 

「はーい、みなさーんHR始めますよ~」

 

教室の前の方から入って来たのは2年A組の担任で、「何故武偵高に入れたか分からない」と1年の頃キンジが苦言する程の気が弱いため、一部男子の癒しとなっている先生である。

 

「うふふ。じゃあ去年の三学期に転入してきたカーワイイ子から自己紹介して貰っちゃいますよ~」

 

三学期に転入?そんな奴いたっけ?

廊下から入って来たのはピンク色の髪をした赤目の小学生だった。入ってくるときに現実が見言えてないキンジに目線を向けたのは気のせいだろうか?

 

「なぁ武藤、インターンにあんな奴いたか?」

 

とりあえず、女子に結構詳しいモテたい男の子武藤剛気に聞いてみる。

 

「カズ、知らないのか?去年転校してきた……ってもカズだから知らんか」

 

「いいから、誰なんだ?」

 

「神崎・H・アリア。去年転校して強襲科所属のSランク武偵だ。ちなみにあいつは高2だ」

 

「そりゃあ書類上は高2だろ、にしても小学生でSランクか。将来有望なガキだな」

 

「だから違うって、あいつは……」

 

俺はもう一度その神崎とか言う少女を見る。

 

「神崎・H・アリアよ。よろしく」

 

「俺等と同じ17才だ」

 

どうやら此奴がキンジをアレにしたらしいな。常に今絶賛アレになったことを悔やんで周りが見えてないキンジを睨んでいる。それでわかる。

 

「おい、聞いてるか?」

 

「あ?」

 

「だから、あいつは17才。小学生じゃねぇんだよ。ちゃんと聞け」

 

17才?いやいやいや、それは無いだろ。どこの漫画の中の少女だよ。

呆れたように武藤の目を見てみると、嘘はついていなかった。いや、なんでそんな真剣な目してるんだよ。

 

「先生、あたしはアイツの隣に座りたい」

 

神崎が指を指して、そう告げる。その方向は……遠山キンジ、俺の幼馴染だった。

キンジは何が何だかわからないというような顔をして、興奮したクラスメイトの感性とほぼ同時に派手にイスからずり落ちる。絶句している、今のキンジの顔は『唯一の頼み綱を断ち切られた』様な奴の顔だ。

 

「な、なんでだよ……!」

 

やっと出てきた声は疑問の声だった。それを打ち消す様にキンジの隣の武藤が

 

「よ……良かったなキンジ!なんかしらんがお前にも春が来たみたいだぞ!先生!オレ、転入生さんと席変わりますよ!」

 

余計な事をする!とキンジが武藤を睨みつける。

 

「あらあら、最近の女子高生は積極的ねぇー!じゃあ武藤君、変わってあげて」

 

武藤が席を一番窓側の俺の席の後ろ側に移動し、神崎の席がキンジの横に移動される。

それをキンジは怖いものを見る様に「……やめろ」と呟く。

なんだかよく分からんが、ご愁傷様だ。一応予想はついてるけど

 

「キンジ、これ。さっきのベルト」

 

神崎が狼狽えるキンジに何かを投げ渡す。…………ベルト?

 

「理子分かった!分かっちゃった!――――これフラグばっきばきに立ってるよ‼」

 

俺の目の前に座る理子、フルネームは峰理子という金髪の、武偵校の制服をひらひら満載の改造制服にしているお調子者が何かを悟ったようにガタンと席を立つ。

 

「キーくんベルトとしてない!そしてそのベルトを神崎さんが持ってた!これは……」

 

『これは?』

 

「キーくんは神崎さんとベルトを取る様な何らかの行為をした!そして彼女の部屋に忘れてきた!つまり二人は……」

 

『二人は?』

 

「熱い熱い、恋愛の真っ最中なんだよ!」

 

コイツを冷静に四字熟語で表すと『大馬鹿者』だ、うん。

キンジはなわけないだろ、というように発言しようとするがここは生憎馬鹿共の巣窟である武偵高だ。それだけでクラスは盛り上がってしまった。

 

「お、お前等なぁ……」

 

キンジが頭を抱え、机に突っ伏した時

 

ずぎゅんずぎゅん‼

 

発砲音、そしてバン!という固い小さなものがそれよりかたい者に当たった音が俺のすぐそばで聞こえる。だって、俺の心臓の部分、左胸の所で防弾征服によって中に当たる事は免れたが、銃弾が落ちているんだもん。カチンと来たね、滅茶苦茶ウゼェ。左の胸ポケットに入っていた煙草がつぶれる音も確かに聞いた。取り出すと、綺麗に煙草はひん曲がっていた。

 

「れ、恋愛なんて……くっだらない!」

 

真っ赤になった神崎が発砲したのだ、二丁拳銃で抜きざまに。

十字架の様に左右の腕を伸ばした先には、右側の壁には穴があり。左側には鉄が曲がった跡がある。

左に撃たれたのは跳弾して俺の胸に直撃したんだから。

周りは静かになり、生徒たちの顔は青くなる。キンジも、武藤も、理子も。

それは神崎が発砲したからではない、俺の胸に弾が当たったという事に対してだ。

 

「そう言う馬鹿なこという奴は…………風穴開けるわよ‼」

 

その言葉を神崎が言い終えるのと同時に俺は静かに席を立つ。

 

「おい、転校生」

 

「な、なによ」

 

俺は煙草の箱から残っていた四本を取出し、空き箱を握り潰す。

 

「この世には、やっていい事と。やってはいけない事。またはやってもいいが場を考える事、場を考えてもやってはいけない事がある」

 

「おい!カズ落ち着けよ!神崎はちょっと興奮しただけなんだよ、なっ?なっ?神崎!」

 

キンジが俺の様子をいち早く察知し、神崎を庇う。

 

「は?何言ってんのキンジ。私は悪くないわ」

 

「駄目だ、カズ!」

 

武藤も俺に制止の声を掛けるが、もう遅い。

 

「確かに武偵校では、『射撃場以外での発砲は必要以上にしない事』となっている。まぁ、少なからず撃ってもそんなに罰は受けない。注意ぐらいだろう」

 

「それが何よ」

 

「お前、あともう少しで武偵を重傷にさせたかもしれないんだぞ」

 

俺は防弾制服を脱ぎ、白シャツ姿になる。俺の左胸のあたりに防弾制服では相殺されなかった威力によってできた後がついている。それを見た瞬間、神崎のハッと表情を変える。

 

「やってはいいが、場所を考えようぜ?」

 

そのまま流れる様にチビッこい背の神崎の頭を片手で掴み上げる。

 

「お前、此処は自分の縄張りだとでも思ってんのか?あ゛ぁっ⁉」

 

ヒィッ!っと声を上げて、涙を潤ませる神崎。

 

「泣けばいいってもんじゃねぇンだよ‼」

 

「カズ、もう止めろ‼」

 

キンジが俺を止めようと、神崎の頭を掴んでいる左腕どかそうとしているが。生憎訓練もまともにしていない奴に止められるような柔な体のつくりはしていないんでね。

 

「チッ……キンジに免じて今は許すが…………あまり調子には乗るなよ?転 校 生?」

 

泣きながらコクコクと細かくうなずく転校生の頭を放して席に座る。

すっかり教室内は静まり、最初の盛り上がりは薄れた。

 

「高天原先生、申し訳ありません。続けてください」

 

「はい、それではHRを終わります。皆さん、仲良くね?」

 

何事も無かったかのように終わらして、教室を去っていく先生。

段々とさっきまで高ぶっていた神経が急速冷凍されていくようにクールになっていく。

 

「また、やっちまった」

 

「馬鹿カズが!なにがやっちまっただ⁉」

 

武藤が俺の呟きに突っ込んでくる。他の奴らも既にいつもの雰囲気に戻っている。

 

「早く謝れ神崎さんに!」

 

俺は教室の床でなく神崎に歩いて行き、頭を下げる。

 

「すまん、強く言い過ぎた。頭大丈夫か?」

 

俺が神崎の目線に合わせるため、座った時。

 

「クッ!」

 

バシンッ‼睨み付けと共に、ビンタが俺の頬に飛ぶ。

神崎はそのまま廊下に飛び出して、走って行く。

 

「ああ、無理。俺アイツと仲良くできねぇよ先生」

 

戻った雰囲気がまた底冷えた空気に戻る、たぶん俺は今、狂う猛犬の様な眼つきをしているだろう。

 

「キンジ、屋上行くぞ」

 

「あ、あぁ‼」

 

俺はバックから新しい煙草を取り出して胸ポケットに入れる。当然、屋上で吸うためだ。

 

「カズ‼」

 

教室を出る前に、武藤が俺に声を掛ける。

 

「心配すんな、俺はあいつとは関わんねぇ。関わりたくもねぇよ」

 

「お、おう」

 

そして俺はキンジと二人で屋上へ向かった。

たぶん教室は俺がいなくなったことで、またいつもの雰囲気に戻っているだろう。そう言う学校だからな、此処は……

階段を上がって、屋上に出る。俺とキンジ以外は誰もいない。

煙草を一本取り出して、愛用のライダーで火をつける。

 

「ふー…………」

 

吐いた白い煙が屋上を流れる風によって飛ばされていく。

 

「俺の推理は武偵殺しに何らかの方法で追い込まれ、アイツが登校中に助けに来てそして何らかの偶然と必然によってお前はヒステリアモードになった。どうだ?」

 

ヒステリアモード、別名ヒステリアサヴァンシンドロームといい。

簡単に言えば『強化モード』。難しく言えば『性的興奮によって一定以上βエンドルフィンが分泌されると、神経伝達物質を媒介し大脳、小脳、精髄といった神経の活動を高める』という物だ。

要するに、エロいことすればスーパーマンってわけだ。

しかも唯の強化じゃない、思考力・判断力・反射神経などが通常の30倍にまで上がるのだ、人間じゃない。其の時に、性的興奮した対象の女性にきざな態度を取ってしまうという欠点もあるのだが。

これはキンジの家、要するに遠山家の祖先から伝わる遺伝らしい。

ちなみに俺の家である灯央家は遠山家と江戸時代から好敵手……ライバルでもある。

だが俺にはそんな遺伝は無い、それに今ではその灯央家も俺だけだが。

あ、一つ遺伝はある。この血の様に紅い髪の毛だ。

 

「大当たりだ、武偵殺しの方法はチャリジャックだ」

 

どうやら当たったらしい。

 

「そうか、ほとんど小学生相手に興奮するとかお前ロリコン?」

 

「ちげぇよ!なわけないだろうが‼」

 

「まぁいい、それで?」

 

「あぁ……なんか目付けられたみたいだ」

 

「そんなの見てれば分かる」

 

「すげぇ嫌だわ、あの性格。完璧に厄介ごと持ってくる奴の典型的だぞ」

 

「だったら助けられるなよ馬鹿野郎、チャリジャックの爆弾ぐらい解除できるだろ」

 

「無茶言うな‼後ろにUZI(ウージー)載せたセグウェイに銃口向けられてたんだ‼」

 

UZI。イスラエルIMI社の傑作短機関銃(サブマシンガン)だ。秒間に10発の9mmパラベラム弾ぶっ放す。傑作の名に反しない威力を誇る。

 

「それはきついな、それで?女の子が降って来たって転校生がだろ?」

 

「パラシュートで隣のビルの屋上からピューだ」

 

マジかよ……

 

「まぁ、目立つ行動はここに週間は控えろ。何か企んでるぞアイツ」

 

「なんで?」

 

「昔から俺の感は当たるんだ。犬の鼻並みにな」

 

「ったく、それで思い出したが。神崎のやつ不憫だなぁ……転入早々カズ怒らせるのは」

 

自殺もんだ、そう言うキンジ。

 

「まぁ、カズは気にしなくていい。さっきのは全面的に誰から見ても神崎が悪い」

 

「悪いとか良いとかそういう問題じゃないんだよ」

 

「そりゃこの血液すぐ沸騰する様な奴等が集まる此処で胸撃たれたらワザとじゃなくてもキレるさ」

 

キンジは屋上に来る前に買ったコーラを飲んで一度息をつく。

 

「それにすぐ興奮するのは灯央家の遺伝だってお前の親父さん言ってたぞ」

 

そう、灯央家にはこの紅い髪ともう一つ。遺伝?されたものがある。

例えば怒りを覚えればすぐに興奮して激昂し、激しい戦闘が繰り広げられれば戦闘狂になる。そう動物に例えれば犬、その中でも猛犬の様な性格を持つ。その反動か、普段の生活では普通なのだが……。

 

「ハァ…………」

 

「そう言えば、なんでカズ。お前強襲科二年になって辞めたんだ?」

 

「…………」

 

そう、俺は一年の頃は強襲科に所属していた。ランクはS、入学試験で試験官である教師を五人沈めたことが理由だ。そしてキンジも……一年のときは強襲科でSランク。俺と同様に入学試験で試験官を五人沈めた。

 

「気分だ」

 

「気分って……蘭豹が最近ストレス溜まって強襲科の奴等が迷惑してるってよ」

 

「関係ねぇよ」

 

「変わらないな、カズ」

 

「お前は変わったな、キンジ。金一先輩の一件から」

 

「…………」

 

顔を背けるキンジ。

 

「言ってなかったが、俺は来年の四月に武偵高を辞める」

 

「あっそ」

 

反応薄って顔するな、変人みたいだぞ。

というより気付いてたっての、お前が。武偵であるキンジの兄金一先輩を亡くしてから、武偵に嫌悪感を示していたことぐらい。

 

「まぁ、好きにすればいい。教室戻るぞ」

 

吸い終えた煙草を携帯灰皿に入れて、尻ポケットに入れる。

携帯の時計を見ると授業開始の1分前だった。

 

「やべっ、キンジあと一分だぞ‼」

 

「マジかよ、流石に初日の最初の授業をさぼりたくねぇぞ‼」

 

「初日に遅刻してきたお前が言うな、馬鹿」

 

「うっせ!」

 

「あ、それとビール一箱奢れよ」

 

「それマジだったのかよ⁉」

 

俺とキンジは走って教室に戻った。

 

 




二話でした。
いきなりアリアアンチはいりました。これからもちょくちょく、いや結構出てくるので
本当にアリアアンチ嫌いな方は、読むのをお止めください。それではまた次話。
感想宜しくお願いします。

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