緋弾のアリア~二丁拳銃の猛犬~   作:猫預かり処@元氷狼

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猛犬と氷の魔女
Re:EpisodeⅡ‐Ⅰ


――――――――――――雌狼雌豹と酒豪の犬。

 

 

 

 

 

 

 

まず、俺の酒と煙草と金達は無事だった。

ロッカーに入っていた金も煙草も最後に神崎逃走中に確認したときと変わっておらず、家に置いてある冷蔵庫の中も机の上に無造作に並べてある煙草も、ハーレーの物入れの中に入れてある金も手が付けられていなかった。ただ(・・)

 

「「美味―――――――‼」」

 

この雌豹と雌狼によって俺の金はことごとく奪われることだろう。

現在俺達は飛行機が無事着陸し、あの後綴に少し聞かれた後俺と、蘭豹と綴はバーへと移動した。

当然場所は『ジョン・ドゥ』だ、其処は煙草も揃い、酒も揃い天国のような場所……のはずだったのに。

 

「「酒――――――――――‼」」

 

此奴等の所為でバー『ジョン・ドゥ』は瀕死の危機を迫られている。

此のバーの三大名物である一つの『沈黙のマスター』は必死に蘭豹達にもうお酒はありませんと言いながら綴のヤクをやってそうな睨まれたら心臓を掴まれそうなそんな視線を浴びることですごすごと店の酒蔵からワインやビールたちを持ってくる。

そして三大名物の二つ目『焼きそばパンみたいなタコス』、これもまた俺の目の前に山積みになっており、俺はホクホク顔で食べ続ける。このタコスは通称『焼きそばタコス』そのままだが常連客にしか出さないという品で、確かにものすごくうまい。そう言うところは同罪となってしまうのだろうか?

そして最後の三つ目このバーのマスコットでもある『黒猫ルーン』が俺の膝の上に座って寝ている。

黒猫ルーンはいつもは店の奥から出てこない、たまーに、極たまーに出てくることがあるがそれもすぐに外に行ってしまう。黒猫ルーンには特徴があり、頭のど真ん中に三日月の黄色いブチがある。

それを見た人は数か月後結婚できたり、宝くじに当たったりと運が良くなるらしい。

 

「……そうなら、今から俺の運勢を上げてくれない、ルーン?」

 

ミャア?と声を上げて首を傾げながら俺の目を見る黒猫に少し癒されながらも、目の前の雌豹と雌狼が弱肉強食ならぬ衰肉猛食だ。

 

「灯央ぉ……お前も酒飲めぇ……」

 

蘭豹がビール瓶を傾けてくるので、ガラス瓶を出してビールを入れてもらう。

泡が立ち、ギリギリの所で止まる……事は無く。ビールは流れ続ける。

 

「ちょっ、らんらん⁉」

 

慌てて吹き出す泡と流れ落ちるビールを飲むがビールは上からどんどん流れてくる。

蘭豹を叱責しようと顔を見ると……寝たいた。綴は……寝ていた。

一気にその場が静まり、綴と蘭豹の寝息がバーの2時間使用3万の個室にBGMの様に流れる。

そっとビール瓶を蘭豹の手から離し、自分でグラスに入れる。

 

「美味い……な」

 

昨日、俺は死んでたかもしれない。

結構追いつめられてた部分もあった。こんな真っ暗な中どうやって着陸するんだ‼そう心の中では叫びまくってた。着陸しても燃料に引火して爆発……とか最悪な事を考えまくってた。

あの後俺は、気絶はせず一人ガッチリ二重にしていたため、Gに引っ張られて内臓が飛び出そうになったが、意識の綱はしっかりとつかんでいた。マスコミ共がうるさく、若干キンジがトラウマモードに突入したのを見て俺は国の許可を得て発砲。ハイエナ共を撒いた、クソ共め‼

そして今となるのだが、散々割った皿やグラス、ワイン瓶やビールの缶が散乱する個室を此処のすっかり性格も変貌したマスターが片づけている。

俺は財布から100万の札束を二つ取り出して渡す。

 

「足りるか、マスター?」

 

「充分でございますお客様……ハァ」

 

「すまん」

 

「覚悟の上です」

 

「足りなかったら行ってくれ、まだ一応金はある」

 

「遠慮なく言わせていただきます」

 

そう言って笑うマスター……って

 

「あれ、マスター女?」

 

いつも長い前髪に隠れていた顔は前髪がかき上げられてショートカットのオールバック。要するに髪の長い奴がオールバックにしてみました感じになっていて、影でいつも見えなかった顔がオープンになっている。そして……

 

「え、ええ。そうです……が?」

 

マジかー……俺男だと思ってたよー。だってさぁ、その格好、男でしょ……

髪短いし……いや、これはショートカットというやつなのか。

 

「ま、まぁ知ってたけど⁉」

 

「嘘はいいです、お客様」

 

「アハハハハハ……」

 

「ハハハハハ……はぁ」

 

「いやほんとゴメンマスター‼」

 

「だ、大丈夫です。ま、間違えられたことはここをついでから何度もあった事ですしー、私の性格がいけないわけですし……」

 

そう、此処のマスターは元は初老の男性だった。

たしか俺がここの東京武偵高に入学して初めてここを見つけた時は確実に白髪に爺さんだったはず。

それでここにきて最初のマスターの言葉『貴方と私は紅白ですね』だった覚えがある。

 

「あの爺さんは?」

 

「祖父は、今入院しています」

 

「は⁉」

 

「祖父、長宗我部冬親(ちょうそかべふゆちか)は今は東京の病院で胃ガンの治療中です」

 

そうか、突然マスターが変わって何かと思ったが……

 

「祖父、おじいちゃんは言っていました。若いのにいつも煙草を買いに来る紅い男の子がいると」

 

「俺だな」

 

「ええ、いつもおじいちゃんは貴方が来るのを楽しみにしていたらしいです。貴方が唯一話ができる相手でもあり、話せる相手だったから。と」

 

俺そんなにスゲェ人間じゃないんだが。

 

「楽しそうでした、おじいちゃん。私、一年前から結構来てたんですよ」

 

「へぇー、分かんなかったな。すまん」

 

「いえ、前髪で顔隠してましたし」

 

「失礼だが、今何歳?」

 

「本当に失礼ですね、26です」

 

「一応言っておくがそこにいるポニーテールの女、19才だぞ」

 

そう言った瞬間マスターの顔が劇的に変わる。

言うなれば怒りの形相、怒りも激怒を越えた獄怒……こわっ

 

「この、20も行かない小娘がッ‼」

 

あぁーキャラ変わってますよマスター……

 

「というより、名前聞く前に年齢聞くとか俺どんだけ失礼なんだ……名前教えてくれませんか?」

 

「えーっと、長宗我部結愛(ちょうそかべゆめ)です」

 

「やっぱり長宗我部なんだ、というかもしかしなくても長曽我部元親の子孫?」

 

長宗我部元親とは戦国時代に名を馳せた名将だ。

四国の海と陸を支配していた事もある、有名なのは長曽我部水軍などなど。

 

「い、一応直系です」

 

「マジか……」

 

直系かぁ、こういう昔の偉人の子孫が知り合いとか結構面白いものがある。

 

「その、本家とかにあの槍とかあるのか?」

 

長宗我部元親は、戦の時に自分自身が槍を持ち一番槍を務めたとかどうとか逸話がある。

 

「ええ、本家にはあります。今はおじいちゃん、冬親の代ですからおじいちゃんが所有権?という物を持っています」

 

「そうか、長宗我部の今の当主あの爺さんなのか。そんな人がまた何で東京のバーを?」

 

「色々あるんです」

 

ニコリと笑いながら言う結愛さん。

まぁ、お家の事情という物だろう。立ち入り過ぎるの無礼だ。

 

「あ、そう言えば煙草がないな。買いますか……ひとつ」

 

「了解です」

 

結愛さんが今は蘭豹と綴が騒ぎまくって誰もいないバーに出て一つ煙草を取ってくる。

持ってきて出してくれたので、俺はそれを手に取って火をつける。

 

「ふー…………」

 

白い煙を吐き、ソファにもたれる。

 

「そういえば、昨日テレビで見ましたよ。灯央さん……」

 

「ああー、ハイジャックか」

 

「凄いです、あの時バーに居たヤクザさんとか皆応援してましたよ」

 

「マジか……!それは驚いた」

 

「灰花梗さんも来ていましたよ」

 

「ハァ⁉またアイツここに来たのか?」

 

灰花梗、俺が強盗を制圧する時に歯で銃弾を止めた日。忘れたくても忘れられないため、並行するように彼女の名前も頭の中にある。

 

「アイツ、此処には来るなって言ってたのに」

 

「大丈夫、ヤクザさんが守ってましたよ。和久の女に手を出す奴はぶっ殺す!とか言って」

 

バーカ、俺の女じゃねえよ。

まぁ此処にいる奴等(ヤクザ)共は一度強襲科時代の俺が叩きのめしてボスみたいなやつとメアド交換したときからホント仕事も始めてまるくなったしなぁー。

それにしても、俺も装備科に移ってから訛ったなぁ……たかが五分程度の『送り者』で気絶するとか。確かにあまり使っていないと過剰な興奮作用で神経が刺激され過ぎて気絶するとかあったけど……慣れなさすぎだし。

 

「灰花さん、良かったって泣いてましたよ。けどいつになってもメアド教えてくれないって嘆いてもいました」

 

「しょうがないでしょう?武偵と一般人は違うんです。俺達が狼なら一般人は犬、その中でも学生何て子犬です。喰われるのが落ちです」

 

「そうですねぇ……」

 

やはり結愛さんも武家の血筋。そう言う上下弱肉強食の世界は分かるものがあるのだろう。

 

「大切にはしているんですね」

 

まぁ、一般人の知り合いはいないし。たぶん俺も一般人という普通をキンジと一緒で求めている節があるのかもしれない、だから完全に繋がりを断ち切ることはできないしな。完全に断ち切るって言ったら俺はそれなりの事をするつもりだ、武偵の皆に協力してもらって俺を最悪な下郎に仕立て上げて、あっちから離れてもらおうともやろうと思えばやれる。

 

「いっそ完全に縁を切ろうかと考えましたけど、俺弱いですし。メンタルパワー蚊並みですし」

 

「……優しいですね、灯央さんは」

 

「そうか?俺は冷たいぞ?任務のためなら何でもする」

 

「そう言いながら大切な人は守るような人ですよ、貴方は」

 

どうだろうな……少なくとも、任務のために何でもするってのは本当だ。

昔動物園の占拠事件で、目的が建物に隠れた時に俺は銃弾が動物に当たる事も気にせず発砲して象を一頭殺した。特殊な依頼でロシアの違法研究所を調べる時に警備兵と研究員にためらいもなく撃った。武偵法九条では殺人が許可はされてはいないが、その時だけは殺人がロシア政府に許可されたため、ためらいなく頭を狙った。最後の尋問に掛ける研究監督らしき男は手足に四発銃弾を撃ち込み、行動不能にさせたこともあった。

 

「ふー……」

 

煙草が無くなり、既に灰皿には吸殻が大量に積まれているところにまた一つ重ねる。

そして二本目を結愛さんから煙草を受け取り、また吸い始める。

 

「少なくとも、俺は人を殺すことに何の躊躇も無いです」

 

「…………」

 

「任務でテロリスト共の長の頭を狙えと言う依頼が来れば、撃つ」

 

「では、もし貴方の依頼に『貴方の友人を殺せ』という物が来たら?」

 

難しい質問をする、だが。

 

「相手による」

 

「そうですか。殺さない、とは答えないんですね」

 

「ああ」

 

今は、そう答えておこう。

 

「それじゃあ、そろそろ帰るかな。酔いも醒めた」

 

「一応アルコール入ってるか見ます?」

 

「測定器あるのか?」

 

「一応。おじいちゃんが貴方のために買ったんですよ」

 

「あの爺さん……まぁ、頑張ってくれ。って言っといてくれ」

 

「了解です」

 

その後、俺は測定して大丈夫だという事を確認すると綴と蘭豹を担いでハーレーに向かう。

……さて、どうするか。三人は乗れないし……二人をハーレーに乗せて押すか。

そう決めた俺は二人を乗せて、重いハーレーを教師寮まで送っていった。

寮に付いた後は、高天原ゆとり先生、俺が所属する二年A組の担任が出てきて連れて行った。

そして俺は自分の寮室に帰り、久々にキンジがいない部屋で煙草を吸いまくった後に寝た。

キンジはあのハイジャック事件から、神崎と大分仲が良く?なったようだ。今は二人で同棲(笑)して白雪と神崎のコントを見ているらしい。

次の日、まだハイジャックの事件の事があるため早めに学校に向かう。当然ナイトロッドで。

二日酔いも無く、気分も快調だった。向かう場所は教務科(マスターズ)の綴の場所。

最近人外に会う回数が多くて困る。

 

「失礼しまーす「失礼するんだったら帰れ灯央」一々煩いですよ、ギャロップ先生」

 

いつもいつも突っかかってくるギャロップは放っておいて。

綴、綴は~っと。教務科を見ると、綴はいない。代わりに

 

「あ、灯央くぅーん」

 

高天原先生が話しかけてくる。

 

「おはようございます、先生。なにか?」

 

「昨日はありがとうねぇ、二人送ってもらって。梅ちゃんは尋問室にいるからそこに行って。朝からお酒はダメだよ?それと、一つアドシアードの事であるんだけどいいですかぁ?」

 

アドシアード、簡単に言えばスポーツのインターハイやオリンピックの様なものだ。

だけどアドシアードは武偵専用の競技大会、要するに真面じゃないという事。

 

拳銃射撃競技(ガンシューティング)代表に選ばれたんだけど……どうする?」

 

「は、俺が?なんでですか、俺強襲科じゃないんですが」

 

「なんかねぇ、上の方がごちゃごちゃと」

 

要するに、一昨日のハイジャックで活躍した俺の腕を見せろ三下。ってことを言いたいわけね。

 

「めんどくさいんでやめときます」

 

「そう?未来がバァラ色になるけど」

 

バァラ色ってなんだ、バァラ色って。

 

「めんどくさいです」

 

「本当にやめとく?」

 

「めんどくさい」

 

「わかりました、辞退としておきます」

 

「それじゃあ、綴先生に会ってきます」

 

「はーい」

 

本当に高天原先生はキンジの言うとおり『なんで武偵高の教師になれたか分からない』人だな。

こんな穏やかな性格の裏に何が隠れてる、いや、何を隠してると思ってしまうのは武偵の悪い癖だ。すぐ人の心を探ろうとするのは。そんな事を考えながら尋問科棟に行く。

尋問室前に付き、扉を開ける。

 

「失礼します」

 

「おォー」

 

綴は寝ていた、椅子の背にもたれ掛って煙草を吸いながら。

 

「二日酔いか?」

 

「そんなとこォ……」

 

「で、なんかあるのか?」

 

「ああーその承諾書にサインしといてェー」

 

「承諾書?なんの」

 

「一昨日の事に『防衛省』は関与してませんよ~ってことよォ」

 

なるほど、防衛省は一昨日の夜あの600便を撃ち落とそうとしたことを黙っていてほしいわけだ。

まぁ、そりゃそうだろな。一応あの機体にはセレブが乗ってんだ、現に貴族様も乗っていたわけだし。

 

「まぁ……サインして悪いことはなさそうだし、書かなくて防衛省に付き纏われるのは嫌だしな」

 

「そうしろォ……あぁー頭痛い」

 

頭を押さえてイライラしだす綴。

 

「お願いだから暴れるなよ」

 

「お前は、私をなんだと思ってるんだよォ……」

 

「ちょっと危険な、いや間違えた、結構危険な雌狼」

 

完璧だろ、雌狼って完璧にジャストだろ。その黒い髪なんか狼と言っても「あぁーはいはい」って納得できる感じもするし。

 

「まぁ、変な風に思われてないだけいいかぁ……」

 

「少なくとも変な風に思ってる奴は武偵高には溢れてるさ……はい」

 

書き終えた承諾書を綴に渡す。

 

「――――ん、確かに。…………あ、それとぉー」

 

「なに?」

 

「伊・Uが動き出したよォ。魔剣(デュランダル)って聞きおぼえないかぁー?」

 

魔剣、最近周知メールで知ったのだが『超偵』だけを狙う、誘拐魔。『超偵』とはそのまま超能力を操る武偵を略したもの。身近なもので上げれば白雪とか。白雪とか、白雪とか。白雪しかいない。

やっと武偵殺しをあと一歩まで追い詰めたのに、今度は超偵かよ……

 

「知ってるは知ってる。周知メールのやつでしょ?まぁ綴が言うんだから他の奴らが言うように都市伝説ではないんだな」

 

そう、確かに誘拐されたとされる超偵はいるがそれは別件での失踪だったりとかでは?

とかあまり存在自体がデマとする奴が多くなっているために、都市伝説化している。

 

「まーなァ……」

 

「そいつがかの伊・Uと繋がってるのか」

 

「そーゆーこと。あんま無茶すんなよォ」

 

「なんだ、綴。心配してくれるのか?」

 

「アーホぅ、なわけあるかぁー…………心配するのは蘭ちゃんだちゅうの」

 

最後の方は声が小さくて聞こえなかった。

 

「まぁ、無茶はするだろうな。しねえと仇なんてうてねぇよ」

 

と言いながら、いまだ強襲科に戻っていない俺はどうなんだろうな。

装備科も楽しいんだが、依頼も確実にこなせるし。

けどなぁ、現実は今の俺はだいぶ弱くなってる。強襲科に戻るかなァ……

 

「強襲科に戻る時には言えよォ……アタシが手まわして早めに戻れるよぉ~にしてやる」

 

「なんだ、綴にしては気前がいい」

 

「二日酔いで頭おかしくなってるんだよぉー」

 

「あっそ……」

 

「それに強襲科に戻ったらアタシ等教師が助かるしなァー」

 

東京武偵高教師からすれば一応俺は元でもランクSを取ったものなわけで、強襲科に俺が居てもらった方が何かと楽なのだろう。

 

「まぁ、考えとく」

 

「それでいい。ほら、帰れ帰れ先生は頭が痛くてイライラしてるんだよぉ」

 

「へいへい」

 

尋問室から出て85000円の時計を見る。現在の時刻は8時14分、授業まではまだ少し時間はある。

俺はそのまま一年の教室まで移動する、移動したのは一年A組。

 

「貴希はおるかぁ、武藤貴希はおるかぁー」

 

当然目的は貴希だ、周りの一年は俺の存在に少し驚いたビクついている。

女子の視線がなんか甘々しくてピンク色なのは置いといて

 

「貴希~~「何、和久」おう」

 

教室を扉越しで見ている俺の後ろから声を掛けられる。

俺よりは低いが周りの女子と比べると確実に身長は高い方に位置する女子。蘭豹といい勝負なんじゃないか?

 

「なに、和久。なんか用?」

 

「用ってお前、戦徒(アミカ)契約だぞ」

 

「え、あれ……ほんとなの?」

 

「嘘だと思ってたのかよ、馬鹿が」

 

「う、うぇ――――――ん‼」

 

なんかいきなり泣きだした。

 

「お、おい貴希?」

 

「やったよぉ……和久の戦妹だよぉ……!」

 

はぁ、なんかよく分かんないけど。

 

「戦姉妹の契約は昨日ウチの担任と、綴に言っといた。それで、戦姉妹の契約としてこれやる」

 

俺は胸ポケットから取り出す。

それは……

 

「俺が武偵になって初めて依頼で撃った初弾(FirstBullet)の薬莢ネックレスだ。これ付けてろ」

 

渡したのは俺が武偵になって、強襲科の依頼で一発で当たった45ACP弾の薬莢。

ネックレスにしては不格好でセンスが悪いが、一応縁起がいいと思って渡した。ちなみにその依頼はある企業の社長の護衛だ。一応小競り合いみたいなものが起きたので撃ったら、一発で足に当たった。それを貴希が受け取り、また泣く。

 

「はいはい、泣き止めガキ」

 

ポンポンと頭に手を置いて、俺はそのネックレスを貴希の手から取ってつける。

 

「ま、似合ってんじゃね?」

 

「……うん‼」

 

貴希が喜んでくれたことに安堵しながら俺はざわつく一年の階を移動して、教室に向かった。

外は台風も通り過ぎ、晴天だ。

 

 




作者の得意な文章は大まかに三つわけて『恋愛>日常>|越えられない壁|戦闘』です。
戦闘が俺の中ではいつも越えられない‼それ以前に壁を越えている恋愛と日常描写が反応がいいか全然分かりませんが……

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