光纏え、閃光の騎士   作:犬吉

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………執筆速度が上がりません。若干煮詰まり気味かも。
それはそれとして、6月末から大変です。

逆転裁判……スパロボ……討鬼伝……P5……いや、忙しいww




………はい、執筆します。




 神堂家のお家騒動も一段落――取り敢えずはそうしておきたい――したその翌日。朝の爽やかな空気の中、いつもの面子はいつもの様に登校していた。

「……ツインテールは言わずもがなだが、眼鏡も増えてきたな」

 このところ、眼鏡をかけている女性が増えている。以前は男性が増えていたのだが、それを遥かに超える勢いで女性の眼鏡使い達が増えていた。

 それと同調にするかのように、善沙闇子のメディア露出は多くなっている。この二つの相互関係は言うまでもない。ダークグラスパーの活動は確実にその成果を上げていた。

(エレメリアンは自分の属性力を本能として求める。だから、エレメリアンの行動としてなら、理解できる。だが、ダークグラスパーは人間。テイルレッドをアイドルとしてツインテールを拡めたドラグギルディのような事を何故、行う必要がある?)

 善沙闇子――ダークグラスパーの行動は、四月におけるテイルレッドの焼き直しに他ならない。対象がツインテールか眼鏡かという違いだけだ。

 だが、トゥアールの世界は全ての属性力が奪いつくされたという。つまり、この世界に眼鏡を拡める意味が無いのだ。

 もちろん、アルティメギルに属する者としての行動としてはおかしくはない。だが、最初の遭遇の時、彼女はこう言ったのだ。

 

 人間に仇なすために、アルティメギルの軍門に下ったわけではない、と。

 

「――おっと。危ないぞ総二?」

「うわ」

 考え事をしながら歩いていた鏡也が足を止め、総二を引き止めた。すると目の前の十字路を、自転車が通り過ぎた。もしも、そのまま歩いていたらぶつかっていたかも知れない。

「鏡也さん、よく気付きましたね。愛香さんだったら気付かずに行って反射的に、自転車ごと相手を粉砕するか、気付いたまま行って相手を自転車ごと粉砕するかでしたよ?」

「気付いてたわよ。でもって、あたしは何でもかんでも暴力振るったりしないわよ」

「その発言。今までの自分の蛮行を鑑みてから、もう一度言ってみてください」

「そうね。実践しながら振り返るとするわ」

 愛香に顎を蹴り抜かれたトゥアールが宙を舞った。

「――で、何で気付いたんだ?」

「別に特別な事じゃないさ。周囲の眼鏡の気配を察知して、レンズの光景を盗み見たんだ。名付けるならば〈レンズジャック〉といったところか。前に姉さんが総二のエロ本を買いに行った時も、この能力を使ってたんだ」

「お前……赤い海とかに関わってないだろうな?」

「鏡也さん。さてはそれで女子更衣室とか覗きまくってますね!!」

「ガチで総二を覗いている貴様と一緒にするな」

 戯言を吐かすトゥアールをしっかりと踏みながら、きっちりと疑惑を否定する。生憎と覗き見(ピーピング)属性は持っていないのだ。

「お早うございます」

 途中、送迎の車から降りた慧理那が合流した。昨日までと打って変わって表情は明るい。

「昨日は本当にごめんなさい。あれから、お母様も今後のツインテイルズの活動に関して、認めてくださいましたわ。あ、勿論内容そのものに関しては秘密にしてますわ」

 慧理那はふと、愛香の方を見た。愛香は文字通り、踏んだり蹴ったりな状態のトゥアールにアームロックを決めてる最中だった。それ以上はいけないと止めながら、慧理那はじっと愛香のツインテールを見つめる。

「え……何?」

「いいえ。お母様が”愛香さんには気を付けろ”と言っていたので。なんでも『あのツインテールは、神堂家の者とて婚姻を経て漸く至る領域に辿り着いている』とか」

「あ……えっと……?」

 愛香は言葉が出ない。ツインテールを家訓とする家の、それを統べる長が、愛香のツインテールを褒めそやしたのだ。そして、神堂家にとって最も危険な敵だと認めたのだ。言葉など出るわけがない。

「凄い……! 愛香のツインテールはあの理事長が認めるまでになっていたんだな……!」

 だが、その理由は総二の興奮するようなものでは決して無い。無いったら無い。

「ううん、よく分かりませんわね」

 だが、慧理那も首を傾げる。普通はこういう反応なのだ。むしろ総二と慧夢がおかしいのだ。

「――ところで姉さん。その手の紙袋は何だ?」

「え? ああ、これですか?」

 そう。慧理那はカバンの他に紙袋を下げていた。中身をガサガサとあさり、取り出したのは―――リードと首輪だった。

 ペットでも飼うのだろうかと思う一堂を尻目に、慧理那は頬を赤らめた。

「これを、私に使って欲しいので――」

「鏡也、パス!」

「なんと」

 流れるような動きでパスされたそれを、反射的に受け取ってしまう鏡也。厚めの革で作られた首輪は手触り良く、丈夫そうであった。リードも流石、安物ではない。

「姉さんはこれを使えと言うのか? こうやって、首輪を力尽くで嵌められて、

そしてリードを強引に引かれて、犬のように四つん這いにされながら、蔑まれるのが、姉さんの希望なのか?」

 鮮やかな手つきで首輪を嵌め、リードを強く引く。勢いに負けて倒れたところを、鏡也はその尻を容赦なく踏みつけた。

「そ、そうです……はぁ……はぁ……!」

 鏡也がぐい、とリードを引くと、慧理那は息を荒げながら恍惚に染まった。加虐属性の面目躍如であろう。

「……それで、どうして私ではなくてトゥアールさんに?」

 そして慧理那は首を傾げた。

「そうですよ! やって欲しいのは慧理那さんなんですから。慧理那さんにするべきでしょう!?」

 鏡也の足元でトゥアールが文句を言った。鮮やか過ぎる手並みゆえ、言うタイミングを完全に逸していたのだ。

「踏んで最初から喜ぶ相手を踏んで何が楽しいんだ? 相手が抵抗するからこそ、踏み甲斐がある。しつけは聞き分けのない奴が自分の言う事を聞くようになる過程にこそ、喜びがあるのだ」

「この、鬼畜眼鏡!!」

「存分に、俺の下で足掻け」

 BL臭のする台詞を吐き合う二人に、慧理那はおずおずと尋ねた。

「あ、あの……私には?」

「やだなあ。姉さんにこんなひどい事、出来るわけ無いだろう? さ、遅刻しないように急ごう?」

「え……あの………え?」

「ほら、行くぞ厘珍々」

「ちょ、本気で犬扱いですか!?」

「うるさいぞ、ヘムヘム」

「原作版からアニメ版へまさかのシフト!?」

 鏡也は文句を言うトゥアールに構わずリードを引っ張っていく。繋がれたトゥアールが「ちょっと引っ張らないで下さい!? 総二様ならまだしもなんで鏡也さんに!? ていうか、本気で犬扱いで立たせない気ですよね!?」と文句を言っているが、完全スルーされていた。

「あ、待って鏡也君!」

 賢明なる諸兄には言うまでもないが、これら一連が慧理那に対するプレイである。

 そして残された者達は――。

「………行くか」

「そうね」

 干渉をしないと心に決めた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 人が踏み入ることを許さない異空間に浮かぶアルティメギル基地。その一室にて、ダークグラスパーはほくそ笑む。

「いよいよ、善沙闇子の知名度も充分なまでに上がってきた。計画を発動させる時じゃ。よいな、ケルベロスギルディ?」

「計画……ねぇ。上手く行くのかしら?」

「行くとも。そうでなくてはならぬ」

 ダークグラスパーは鼻息荒く、眼鏡を光らせる。その眼光は、”計画”とやらの成功を確信しているようであった。

「ま、いいわ。それじゃ、当日にね」

 ケルベロスギルディは手にしていた一枚の紙を、テーブルの上に置いた。

 

 G・I・F――ガールズアイドルフェスティバル。そう書かれていた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 数日後。他県にあるイベントホールにエレメリアン反応をトゥアールがキャッチした。生徒会の都合ですぐ来れない慧理那を除いて、三人はすぐに出撃した。

「ここか?」

『レーダーではそこに間違いないです』

 少し離れた場所から現場を見る。やはり場所が場所だけに人が多いようだ。こういった場所は写真などを撮られやすいので、さっさと終わらせて撤退する以外にない。速攻で勝負を決めると心に決め、レッドが飛ぶ。それに続いてブルーも宙に躍り出た。

 

「CD初回特典の三つ編み券よ~! 皆もれなく、三つ編みにしてあげるわー!」

 

 そして決意の失墜とともに、二人が頭から落ちた。その姿、まさに無惨。

「何と!? この世界はツインテールが空から降ってくるぐらいにまで、ツインテールが飽和しておるのか!?」

 猛犬の如き頭部を3つ備えた――地獄の番犬のようだ。ナイフの如き鋭い牙が覗いている。なのに言うことは戯言という。

「そんな訳あるか」

 嫌な予感を覚えたナイトグラスターは一足遅れで見事に着地した。勿論、このツッコミどころ満載な発言にも一発入れるのを忘れない。

「だらっしゃー!」

 バコッという音を立てて頭を引っこ抜いたブルーが、エレメリアンを思いっきり蹴った。

「ぬぐ!? その上、蹴ってくるとは! なんとバラエティ豊かなツインテールだ!」

 不意打ちに近い一撃だったが、エレメリアンはきっちりと両腕でガードしていた。その一つを取ってみても敵の強さが計り知れる。今のブルーの蹴りは並のエレメリアン程度では一撃で「サヨナラ!」してしまうからだ。

「あんたら……本っ当に悩みなさそうよね」

「……そうとも限らぬぞ」

「私的にはさっきのオカマ臭い口調が何なのか気になるところだがな」

「あ、そう言えばそうだな。何だったんだ、あれ?」

 いつの間にか復活したレッドが、ツインテールを払いながら、エレメリアンを見た。

「気のせいだ」

「いや、でも……」

「気のせいだ!」

「あ、はい……」

 何やら、色々とあるらしい。今は触れないでおこうと決め、話を続ける。

「我が名はケルベロスギルディ。テイルブルー、あのリヴァイアギルディを撲殺したというその獰猛さ。噂通りだな。胸の薄さは情の薄さということか」

「んだとコラァ!? っぞオラァ!」

「落ち着けブルー。さっき落ちたせいでツインテールも乱れてるぞ?」

 レッドが駆け寄り、ブルーのツインテールを手櫛で梳く。すると地獄の猟犬(ガルム)の如くあったブルーの顔が見る間に弛緩していく。

『ちょっと! 何、雌の顔してるんですか!!』

「レッド、手櫛は髪を痛める。コームを使うと良い」

「お、ありがと。……何で持ってんだ?」

「身嗜みは基本だ。身嗜みの乱れは眼鏡の乱れに繋がるからな」

「何だそりゃ」

「取り敢えずこっちは任せろ。……余り、事態は芳しくないからな」

 言って、周囲を見やる。イベントホール入り口から駐車場まで、その惨状は続いている。

「こ、これは何だ? 皆、三つ編みにされてるのか……? くっ、ツインテールまで!?」

 髪の長さにかかわらず、尽く三つ編みにされていた。被害にあった女性の中には、ツインテールごと三つ編みにされている少女もいた。2次元ですらふた昔レベルの髪型だ。

「うう……無理やり三つ編みにされて………。全然、解けないんです……!」

「何故泣くのだ? 我が絶技にて宝玉の如き輝きを得たというのに……?」

「どうせなんか変な機械でも使ったんでしょ」

「何を言うかっ!」

 ブルーがぼそっと呟くや、ケルベロスギルディが一括する。その一吼えだけで、周囲から短い悲鳴が上がった。

「無粋な機械に頼るなど邪道! 二流の仕事 !この二つの腕にて至高の輝きを生み出す、それこそ我が三つ編み属性(トライブライド)の誇りよ!!」

「御託を並べるな。行くぞ!」

 ナイトグラスターはフォトンフルーレを抜き放つ。その切っ先を迷いなく、ケルベロスギルディに突き出す。返して二連撃。防御の隙さえ与えない連撃を叩き込む。

「ぬう……噂に違わぬ速度か! だが、軽い!」

「チッ、頑丈だな」

 一度間合いを離すナイトグラスター。その直後、怒涛の一撃がケルベロスギルディを爆発させた。

「ざまあみなさい!」

「ブルー……軽くかすったぞ?」

「まあまあ。直撃させたんだからいいでしょ?」

 不意打ち上等のテイルブルーの完全解放に文句を言いつつ、ナイトグラスターは肩を竦める。やがて爆煙が晴れ、そこには――。

「ふん。人質をとっているも同然であるにも拘らず、容赦無い攻撃を仕掛けるとは。何と冷徹で、冷酷で、非情な戦士なのだ」

 煙が晴れると、そこには無傷のケルベロスギルディが立っていた。だが、何かがおかしい。

「――頭がおかしい。いや、減っているのか?」

「……その言い直しに強い悪意を感じたぞ? だが、流石は眼鏡属性。着眼点が鋭いな」

 三つあったケルベロスギルディの頭部が今は一つしか無い。そしてその後、ダメージを受けて倒れている、ケルベロスギルディ。更に立っている者の後からもう一体が姿を現した。

「分裂……したのか?」

「その通りだテイルレッド。我は三つ編みへの愛から生まれたもの。故に我が身には三つの魂を持つ。故に我は無敵なのだ」

 倒れていた三体目も起き上がり、三体のケルベロスギルディが融け合うようにして一つの個体へと戻った。そこにブルーの攻撃のダメージは見受けられない。

「ダメージを与えても分離で回避の上、元に戻ればダメージも消える、と。厄介だな」

 対策としては分離状態に持ち込み、合体される前に各個撃破という辺りが有効だろう。だが、頭数はともかく、火力という点でナイトグラスターは不安が残る。二体倒してしまえば問題ないかもしれないが、それでも、何かしらで復活されるかも知れない。

「三体に分離できるのが自慢のようですが、私達ツインテイルズは三人いることをお忘れではありませんか!」

 建物の影から、ヴォルティックシューターを構えたテイルイエローが現れた。格好の登場シーンにドヤ顔である。

「む! 強い三つ編みの気配!」

「くっ! 待て!」

「ナイトグラスター!? ブルー、俺達も追うぞ!」

「ええ!」

 が、それを見ている者は誰もいなかった。ヒュルリーラ、と季節外れの冷たい風が吹いた。周囲の視線も、痛々しいものを見るようだ。

 その心を抉るような寒々しい光景に、イエローの身体がふるふると震えた。

「あ……ああ……。まるでなかったかのように無視されて……一様に冷たい目を送られて……! こ、この空気……この視線……。たまりませんわ……!」

 ドMに取ってはご褒美であったようだ。テイルイエローこと神堂慧理那。中々に業が深くなってきたようである。

 

人波を縫って、ケルベロスギルディがまるで何もないかのように走る。速さに自信のあるナイトグラスターであったが、流石に人が多すぎるせいで、ケルベロスギルディに追いつけないでいた。

 テイルレッド達は尚更だ。特にレッドはもみくちゃにされ、それを引き剥がそうとするブルーという構図が完成してしまっている。

「ひっ!」

 ケルベロスギルディが視線の先に一人の少女を捉えた。パーカーのフードを被った少女は迫り来るケルベロスギルディに気付き、その身をすくませた。

 不味い。そう思ったナイトグラスターはその眼鏡属性の力を解き放つ。周囲の状況。少女との距離。そこから導き出される最速のルート。

「ここだ!」

 ナイトグラスターが、左に曲がる。そしてそこから、少女までの直線を一気に駆け抜けた。

「きゃっ」

 間一髪。ケルベロスギルディよりも一瞬早く少女の前に飛び出すと、一撃を見舞い、少女を抱えて大きく跳ぶ。

「ツインテイルズ、後を任せる!」

「おお!」

 後をツインテイルズに任せ、数度の跳躍で丁度いい物陰へと降り立つ。少女を下ろして無事を確認しようとした時、ナイトグラスターの眼鏡にビリッと電気に似た衝撃が走った。

(こ、これは……この感覚は!) 

 フードの下から少女の顔が覗く。まるで芸術のような三つ編みと、そして夜の闇を固めたかのような黒縁の眼鏡――見間違えるはずもない。

 

 善沙闇子。

 

 何故、善沙闇子がここにいる? 何故、ケルベロスギルディが仲間である善沙闇子を襲う? 気が付いていない? ならば、この状況は偶然?

「あ、あの……」

「っ……!? あ、いや……怪我は?」

 動揺のあまりに素を晒してしまうナイトグラスター。何とか立て直そうと、彼女をゆっくりと立たせる。

「はい、大丈夫です。………あの」

 善沙闇子が何かを言おうと顔を上げる。

「きゃあああああぁぁぁ………!」

 だが、それよりも先に珍妙な悲鳴が響いた。空を見上げれば、何故かブルーが上空を飛んでいっていた。そのまま止める暇もなく、小さな点となり、そしてやがて明けの空に昇る一筋の星となった。そのままM78星雲に帰りそうな勢いだ。

「………。何やってるんだ、あいつらは」

 誰の手にも届かない所へと逝ってしまったブルーはさておいて、この状況だ。下手に善沙闇子を追及はできないし、ケルベロスギルディも吐かないだろう。となればここを離れるのが最良か。

「今はここに。騒ぎが収まるまで身を隠しておいた方が良い。では」

「あ、待って!」

 呼び止める声が聞こえるが、ナイトグラスターはそれを無視してこの場を離れた。

 レッドらの元に帰ると、既にケルベロスギルディの姿はなかった。

「奴はどうした? 倒したのか?」

「いいや、”次の準備がある”とか言って逃げちまった。そっちは?」

「……問題、ない」

「………?」

 歯切れの悪いナイトグラスターの言葉に、テイルレッドが首を傾げる。

「それより、この後始末だ。三つ編みから属性力を感じる。恐らく、普通には解けないだろう」

「そうなのか? じゃあ、どうする?」

「――斬る」

「……は?」

 言うや、ナイトグラスターはスタスタと歩き、三つ編みにされた被害者に向かってフォトンフルーレを一閃した。

 

 ――はらり。と、三つ編みが解けた。

「以前、ガビアルギルディの事務制服を斬った事があっただろう? それと同じだ。すぐに終わらせるから、撤退の準備とブルーの回収を頼んでおいてくれ」

「分かった。………おい」

「何だ?」

 テキパキと処理していくナイトグラスターに、何故かテイルレッドは訝しんだ視線を向けている。

「何だって……どうして三つ編み切ってるのが眼鏡かけてる子ばっかなんだよ?」

 そう。ナイトグラスターが三つ編から解放させているのは眼鏡っ子ばかりであった。だが、ナイトグラスターにはそんなつもりなど無い。

「他の被害者は普通に三つ編みにされているだけだ。だが、眼鏡を掛けている女性は何故か、属性力で縛られているようだ」

 そこに見える意図を何となく感じながら、ナイトグラスターは剣を収めた。ふと、足元に落ちているチラシを拾い上げる。

「………なるほど。偶然という訳ではないかという事か」

 それはここで行われるイベントのチラシで、出演者一覧が書かれていた。そこには善沙闇子の名前も記されていた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 アルティメギル基地内、ダークグラスパー執務室。その扉が開くと部屋の主であるダークグラスパーが私服姿で入ってきた。

「おー、おかえりイースナちゃん。首尾はどうやった?」

「ふふん。上々だ。これで後は最後の詰めを残すのみよ」

 自信満々とメガ・ネにそう返すと、ダークグラスパーはソファーに腰掛けた。

「御雅神鏡也め。我が魅力にメロメロであったわ。ククク、愉快愉快!」

「あー、ほんまかなぁ。イースナちゃん、変なところで思い込みやすいしなぁ」

 メガ・ネはテキパキとお茶の用意をする。その手際、まさにオカン級である。

「――それで、あんなので良かったのか?」

 いつの間にかケルベロスギルディがそこに立っていた。

「うむ。これでいよいよ…………ぬふふふふ」

 ダークグラスパーはこれでもかと口元を緩めている。女性として――いや、人間として非常によろしくない顔だ。もしも愛香がこの顔を見ていたなら、「トゥアールとイースナ、どっちがオリジナルなのかしら?」と1時間は悩んだことだろう。

 そんな顔にも慣れてしまっている、ある意味悟りの境地にあるメガ・ネとケルベロスギルディは気にすることもない。

 

「いよいよじゃ。いよいよ………待っておれ、トゥアール! ハハハハハハハ!」

 

 そして人の目など気にすることなく、ダークグラスパーは高らかに笑い上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ひぃ!?」

「どうした、トゥアール?」

「今なにか、形容しがたいおぞましい何かを感じました! 総二様、お願いですから今日から一緒のベッドで寝て下さい! 勿論、服は脱ぎますから!」

「勿論の使い方を正しく使いなさいよ――――!」

「ぎゃあああああ! こっちにもおぞましい人がいましたぁあああああ!」

 




そろそろ3巻も終盤。あの大事件(ヒロイン的に)ももうすぐです。
当然、原作のままなんてことはありません。更に大問題(ヒロイン的に)が怒ります(誤字にあらず)

ネタ練っておいてあれですが、自分の精神が大丈夫かしら?w

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