光纏え、閃光の騎士   作:犬吉

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たいがいの二次だと、ここでオリ主も変身して女性化してツインテール戦士になりますが、鏡也にはツインテール属性がないので変身できません。





 地を蹴り、身を限りなく低くし、まるでチーターのように駆ける。標的は背を向けている戦闘員。

「ハァ――ッ!」

「モケ!?」

 発気の響きに振り返るが、既に遅い。走る勢いを踏み込みに変え、踏み込みの力を連躯から剣先へ。

 鏡也が最も得意とする、神速の踏み込み突き。その切っ先が戦闘員を捉え――吹き飛ばす。

「モケー!?」

「何事だ!?」

 悲鳴を上げて吹っ飛んだ戦闘員に化け物と他の戦闘員が一斉に振り返る。だが、鏡也の足は止まらない。

「邪魔だぁ!!」

 神速三連突。更に戦闘員を吹き飛ばす。その勢いに任せて、鏡也は一気に跳躍した。

「頭を借りるぞ!」

「モケッ!?」

 そのまま戦闘員を踏み台にして、包囲を飛び越える。そのまま慧理那の前へと躍り出た。

「ぬぅ、何者だ?」

「鏡也くん……?」 

「無事だな、神堂会長? ここから逃げるぞ」

 敵――最も警戒するべき化け物に警戒を払いつつ、慧理那をかばう。

「ですが、わたくし一人逃げるわけには……!」

 慧理那の瞳が、同じように囚われている少女達に向く。彼女の言いたいことは分かる。自分だけ助かるような事を、よしとしない性格だと理解している。

 だが、それでも今の鏡也には慧理那一人助けるのが精一杯だ。

「いいから走れ!」

「あっ――!」

 強引に腕を掴み、走る。その行く手を遮るように、戦闘員が回りこんでくる。

「どけぇ!」

 輝線が翻り、戦闘員を弾き飛ばす。包囲を突破し、全力で走る。

 このまま行けば慧理那を連れて逃げ切れる。注意がこちらに向いているなら、愛香も逃げられる筈だ。上手くいく。

 そんな何の根拠もない希望を抱いた瞬間、鏡也の視界を絶望が閉ざした。

 見えたのは影。落ちてきたのは鉄塊。轟音が容赦なく鼓膜に爪を立て、飛び散った破片はビシビシと体を叩く。

「な……っ!」

「ひっ……!」

 目の前に、ワゴン車が突き立っていた。潜り込まなければ見えないシャフト部分が丸見えだった。

「キャァ!」

「っ! しまった!」

 鏡也が一瞬の呆然から立ち直って振り返ると、そこには戦闘員に押さえられた慧理那の姿があった。

 すぐに助けようと動く鏡也の前に、壁が立ちはだかった。

「っ――!?」

「ふん。そのような玩具で、よくもアルティロイドに通じたものだ。人間。大人しく退くならば良し。退かぬなら多少痛い目に遭ってもらうぞ?」

 ギロリ。と、身の竦むような威圧を見せるトカゲの化け物。だが、鏡也は恐怖を押し込め、睨み返す。

「……ふざけるなよ、トカゲ野郎。風穴開けられたくなきゃ、お前こそとっとと巣に帰りやがれ!」

 

 ◇ ◇ ◇

 

「ちょっとまずいよ! 鏡也があのトカゲに殺されちゃう!」

「まて……! 俺は今、お前に殺されそうだ……!」

 愛香は総二の胸元を引っ掴んでガックンガックンと揺すりまくる。

「大丈夫です! 大丈夫ですから、総二様から手を離して下さい! ついでに、そのまま私と二人っきりにしていただけると助かります!」

「うるさい!」

「ぎゃふん!!」

 愛香の掌が真っ直ぐにトゥアールの顔面に叩きつけられた。

「げほっ……それで、トゥアール。鏡也が大丈夫だっていうのはどういう事だ?」

「イタタ………それは、奴らは属性力は奪いますが、人を直接傷つけることは禁じられているんです。だから、手違いで多少の怪我はあったとしても、鏡也さんが命を奪われることだけは絶対にありません」

「でも、だからってこのままじゃ……!」

 睨み合う、化け物と鏡也。二人の戦いの決着はすぐに訪れた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 必殺の一撃だった。競技会でも、この突きを防いだ相手はいない。化け物相手に容赦するつもりもない。だからこそ、全力。本気の刺突。だが――。

「――フン。こそばゆいわ」

「何……っ!?」

 僅かにしなった剣は、しかしその切っ先を僅かにさえ突き立てられなかった。

 驚愕する鏡也の腕を掴まれる。引き離そうとするがビクともしない。

「我らにそのような物は通じない。見るが良い」

「くっ……!」

 顎で指す方を向けば、鏡也の剣が撃ち込まれた戦闘員――アルティロイドが起き上がっていくのが見えた。

「クソッタレめ……!」

 忌々しいとばかりに吐き出す鏡也。押さえられていた腕に抗えないほどの強大な力が掛かる。

「うわぁっ!!」

 視界がブレ、体が浮遊感に襲われる。化け物と、アルティロイドが視界の端に映って、そのまま遠ざかっていく。

「ちぃ――っ!」

 腕一本で投げ飛ばされたのだと理解した瞬間、鏡也は体を捻って、着地する。が、勢いを殺しきれずに数度、地面を転がってしまう。ガシャン。と、メガネが地面に落ちた。

「くそっ――うわっ!」

 立ち上がろうとする鏡也に、アルティロイドが伸し掛かる。全身を抑えこまれ、地面に倒された。

「鏡也くん!」

「クソ、退け!」

 必死にもがくが、アルティロイドを跳ね除けることができない。そうしている間にも、慧理那の前に件のリングが運ばれていくる。

「逃げろ、慧理――!」

 だが、無慈悲にも鏡也の前で、慧理那のツインテールは――消えた。その小さな体が、グラリと揺れ、地面に倒れ伏した。

「むぅ……素晴らしい属性力だ。しかし、これが隊長殿が究極とまで喩えられたこの星最強のツインテール属性なのか?」

「っ……! お前らぁ……!」

 鏡也には、総二のようにツインテールへの思い入れなどない。だが、誰かの何かを好きという気持ちがどれ程尊く、眩しいものであるかを知っている。

 知っているからこそ、それを踏み躙り、略奪する非道を許すなと、鏡也の心に怒りの火が灯る。

「む……! これは……まさか?」

 トカゲの化け物は何かを感じたのか、鏡也の方へと歩み出す。ドシン、ドシンという振動がまるで死神の足音のように響いた。

 ドシン。ドシン。ドシベキッ。

「む、なんだ?」

 何かを踏んだと、トカゲ怪人は足元を見た。果たしてそこにあったのは――鏡也の眼鏡であった。

 この瞬間、認識撹乱によって隠れていた愛香が「あ」と呟いていた。

 

 眼鏡とは何だ? その問い掛けにどれほどの人間が答えられよう。

 

 ある者は、視力を矯正するものと答えるだろう。

 ある者は、ファッションアイテムだと答えよう。

 ある者は、眼鏡よりコンタクトだと言うだろう。

 

 それで良いのだと、鏡也は思う。だが、鏡也の答えはどれもを含みつつ、しかし違う。

 眼鏡とは――その人の人生を見るものだと、彼は答えた。

 何故なら、眼鏡は全ての物の中で唯一、それを付けた人と同じ世界を映し、見続ける存在であるからだ。

 孫を膝に乗せ、本を読んでやるために老眼鏡をかける老婆。

 人生の岐路に経ち、緊張の息荒く、レンズを曇らせてしまう若者。

 思春期を迎え、眼鏡からコンタクトに変えようと決意し、いざとなってしり込みする少女。

 

 その一場面を共に見続け、やがては役目を終える。持ち主と同じ視点で、悲喜交交を分かち合う。その瞬間に立ち会えるもの。

 それが眼鏡であると。

 

 故に、御雅神鏡也は眼鏡を愛する。眼鏡を愛する人を愛する。

 総二がツインテールに恋慕の如き情を抱くように、鏡也は眼鏡と、眼鏡と人が刻む人生の歩みを愛する。

 

 故に、眼鏡を踏みにじるものは――彼にとって、滅すべき敵に他ならない。

 

「ッ――!!」

 ゾワッとした感覚に、トカゲモンスターは反射的に一步下がっていた。

「テメェ……! よくも……よくもやりやがったなぁ………!」

「モ、モケモケ……!?」

「モケ!?」

 押さえていたアルティロイド達が徐々に浮いていく。否、何かが下から持ち上げているのだ。

「よくも眼鏡を……眼鏡を………そのうすぎたねぇ足で潰しやがったなぁ!!」

 人間の胆力を超えた何かが目覚め、鏡也に叫ぶ。怒れ。戦え。倒せと。

「クソトカゲぇ……覚悟は出来てんだろうなぁ!」

「「「モケモケー!」」」

 血涙を流し、まるで夜叉のように恐ろしい表情で、鏡也はアルティノイドを持ち上げ、纏めて放り投げた。

「これは、やはり属性力……しかも何という強大な属性力だ! ツインテールではないが、これは隊長殿に良い土産が出来るな」

 トカゲの怪物は一度舌舐めずりした。

「いいだろう。キサマを戦士と認めよう。我が名はリザドギルディ。戦士よ、その名を名乗れぃ!」

「私立陽月学園高等部一年、御雅神鏡也! それと……俺は戦士じゃない!」

「何?」

「俺は――騎士だ!」

 その身をたぎる衝動に任せて、鏡也が剣を構える。その様子にリザドギルディは歓喜に笑った。

「ならば騎士よ。かかって来るが良い!」

「おぉ――!」

 鏡也が踏み出す。リザドギルディはその凶悪な爪をトラバサミのように広げ、待ち受ける。

 間合いが詰まる。その切っ先は流星の如く加速し、リザドギルディの胸へと――。

 

 

「うわぁああああああああああああああああああああ!?」

 

 

「は――?」

「ん?」

 唐突に響いた悲鳴。思わずそっちに視線をやってしまう。そして刹那――。

 

「ゴフ――!」

 赤い弾丸が、鏡也の横っ腹にぶち当たっていた。強烈な一撃に、これでもかというくらい、鏡也の体がくの字に曲がった。

「「あぁ~~~~~~っ!!」」

 そのまま、鏡也ごと赤い弾丸はもみ合いながら派手に吹っ飛んでいった。

「な、何だ今のは……。いや、待て。今、一瞬だったが………まさかあれがそうなのか!?」

 リザドギルディは自身の感覚を確かめるべく、二人が飛んでいった方へと向かった。

 一方。謎の赤い弾丸によってふっ飛ばされた鏡也は――苦痛に悶えていた。

「わ……脇腹が……! メキッて……メキッて……!」

 リザドギルディと激突する瞬間、何かがぶつかってきた。それは何とか理解できた。そして、盛大に吹っ飛んで――ここに至る。

 自分の身に起きた事を振り返り、鏡也は何かが伸し掛かっていることに気が付いた。派手に上がった土煙のせいでよく見えないが、上半身にどっかりと乗っているようだ。

「う、う~ん……」

「――何だ、これ?」

 えらく生温かいそれをグイッと力任せに押し上げる。その時、まるでシルクのような柔らかなものの感触が頬を撫でる。そして、掌にはマシュマロのような柔らかさの何かがあった。

 やがて、土煙が消える。そして鏡也は見た。

 

 それは少女というよりも幼女。火を思わせる程に赤い髪。目はクリっとしていて、可愛らしい。

 まるでスクール水着の様なピッチリとした赤と白のボディースーツ。腰や腕には見た目の愛らしさとは真逆なゴツめのアーマーパーツ。

 そして総二(ツインテール馬鹿)が見たら、ヨダレを垂らしそうな――いや、絶対に垂らす――見事なツインテール。

 そんな美少女――美幼女というべきか――そんな少女が、鏡也の腰にまたがっていた。

「「あ………」」

 視線が交差する。そしてやっと気が付く。本当に今更気がついたのだ。

 鏡也の手が、その少女の胸にピッタリと、ピッタリと触れていることに。

 条件反射だ。魔が差したとかそういう事ではない。手をどかそうとしたのだ。ただそれだけなのだ。

 だが、少女に跨がられ、胸を触っているという異常な光景が、脳からの神経伝達を狂わせたのだ。

 

 むにゅん。

 

「ひゃん!」

「だぁっ! 違う! 今のはつい……ではなくて……とにかくすまない! 謝罪する! だから今は早くどいてくれ!」

 少女が上げた小さな悲鳴に鏡也はパニックを起こしかけた。だが、謎の幼女は退くどころか、ガシッと鏡也の体を押さえた。

「落ち着け、鏡也! 俺だ俺!」

「……対面でおれおれ詐欺とは、最近の幼女は面白い遊びをするな」

「おれおれ詐欺じゃねぇ! 俺だ、総二だ!!」

「そうじ……? いや、おれおれ詐欺するなら、せめて騙る名前と性別をしっかりとだな」

「だから、おれおれ詐欺じゃねぇって言ってるだろ! トゥアールがくれたあの腕輪で変身したら、こうなったんだ!」

 そう言って総二を名乗る幼女は右腕を見せた。そこには、確かに総二がトゥア―ルにハメられて嵌められた腕輪があった。

「いや待て。幾ら何でも荒唐無稽だ。百歩譲って変身したのは良い。あんな化け物がいるぐらいだ。変身アイテム程度は許容しよう。だが、何故幼女になる? 本当に……君は総二なのか?」

 流石にこれが見た目の年齢、性別が変わったというか、変わり果ててしまった幼馴染だと信じ切れず、鏡也も疑いの眼差しを向けてしまう。

「……総二の母親の名前は?」

「未春」

「罹っている病気は?」

「厨二病。もう末期」

「ツインテールは?」

「大好き!」

「愛香の胸を例えるなら?」

「バ◯ュラ」

 鏡也は目を見開いた。困惑と、同時に到達した事実に対する驚きが瞳の奥で揺らめく。

「……本物、なのか?」

「最後の質問答えといてなんだけど、それで確信持つのおかしくないか!?」

 ともかく、幼女=総二であると確信した鏡也は上半身を起こす。

「一体全体、どういう理屈なんだその姿は?」

「そんなの知るかよ!」

 総二はつい先程のことを思い出し、自分が聞きたいと叫び返した。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「アイツら……!」

 総二は怒りに震えていた。生まれてこの方、これ程の怒りを覚えたことはない。

 幼馴染の悲痛な声。なによりツインテールを、慧理那の見事なツインテールが奪われてしまった。

 あんな見事なツインテールが、奪われるのをただ見ているしか出来なかった。ツインテールを愛している。なのに愛するものを守れなかった。

「なんか、鏡也の割合が一割切ってるっぽいんだけど?」

 だが、今の総二には愛香のツッコミなど耳には入らない。なんか、「あ」とか言ったのも聞こえない。

「トゥアール。どうすれば良い? 俺に何かが出来るから、ここに連れてきたんだろう?」

「その通りです、総二様。その腕輪――テイルブレスで変身して下さい」

「分かった! ………へ、へんしん?」

 勢いで行きそうになったが、流石に留まる。

「それは身体能力を強化する戦闘用スーツを展開するためのデバイスなんです。それを装着すれば、あの怪物たちと互角以上に渡り合える筈です!」

「本当か!?」

 まさかそんな凄い物だとは露にも思わず、総二は驚きの目で腕輪を見た。

 ドクン! と心臓が高鳴った。変身――つまりヒーローになる。ツインテール好きを公言している身ながら、やはり彼も男なのだ。

「ちょっと、本気なの!? 鏡也だって全然歯が立たないのに、危なすぎるわよ!」

「愛香。危険なのは百も承知だ。だけど、それでも鏡也は飛び出したんだ! ここで行かなかったら俺はもう、ツインテールを好きでいられなくなっちまう!」

「何でかしら。ちょっとだけ、鏡也が可哀想になったんだけど……」

「トゥアール。どうすれば良い? どうすれば変身できる? どうすればあいつらをぶっ飛ばせるんだ!?」

 総二が強い意志を込めた瞳でトゥアールを見る。その真っ直ぐな想いを受け止めて、トゥアールが強く頷いだ。

「心で強く念じて下さい。変身したいと。それだけでブレスが起動します」

「それだけで良いのか?」

「はい。総二様のツインテールを愛する心が本物であるならば、ブレスがきっと応えてくれます!」

「よし……分かった!」

 総二は右手を握りしめ、目を閉じる。

 

(力が欲しい。会長の、他の人達のツインテールを守れる力が。正義のためだとかそんな御大層なものじゃない。ただ、自分が好きなモノを身勝手に踏みにじる様な奴らを許しちゃおけないんだ!)

 それに、と続ける。

(友達がその為に戦ってるっていうのに、俺だけこのままなんて……男として、かっこ悪いじゃないか!!)

 

 その瞬間、光が溢れた。

 

「うわっ!?」

 愛香はいきなりのことに驚き、目を閉じた。そしてようやく光が治まったところで目を開けば、そこに総二の姿はなく――。

 

「な、なんじゃこりゃあ~!」

 

 と、車のウインドウに映った自分の姿に悲鳴を上げる、可愛らしい少女の姿が在った。

「な、なんで!? 変身ってこういうことなのか!? 何で子供……ていうか、女になってるんだよ!! ――あぁ、ない! ある筈のものがない!!」

 そう言って股をペシペシする少女。可愛いのに、実に残念だ。そんな少女の姿を見て、トゥアールはグッと拳を握りしめた。

「成功です、総二様!」

「どこがだよ!?」

「……て、まさか総二!?」

 愛香はようやく、現実に辿り着いた。そして、一気にテンションがマイナスに落ちた。

「………なに、これ?」

「これぞ奴らに対抗できる唯一の武装、空想装甲(テイルギア)です! ウヘヘヘ……大成功ですわ」

 

 ――ドゴスッ!!

 

 愛香の掌打がクリーンヒットした。ステップを踏むかのようによろめいて、トゥアールが崩れ落ちる。

「これが……天罰ってやつなのかな?」

 思い起こせば、物心ついた頃からツインテールツインテール言ってたなぁと。そのせいで神様がブチ切れて「そんなに好きならツインテールなっちまえよバーカ!」とか言って天罰を下したんだろうか。

 女になって、幼女になって――それでも、自分はツインテールが好きなままだ。観束総二という男の何と深き業よ。今は幼女だけど。

 総二はふとそんなことを考えた。

「あれ見て! 鏡也が!!」

「っ!?」

 愛香の声で現実に帰った総二は、今まさにリザドギルディに立ち向かわんとする鏡也の姿を捉えた。

「ヤバイ!」

 さっきも全く歯が立たなかったのだ。次は投げ飛ばされるだけじゃ済まないかもしれない。

 総二は一も二も無く、全力で踏み出していた(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 瞬間。総二の視界は一気にブレた。視野の中心に向かって集束するように、景色が流れる。

「うわぁああああああああああああああああああああ!?」

 足がもつれる。それでも鏡也のピンチに駆けつけようという意志が、足を更に動かし、それが更に速度を乗せて、ついにすっ転んだ。

「ゴフ――!」

 そして総二は――痛烈なヘッドバットを鏡也の脇腹に食らわせたのだった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「なるほど。それはそうと早く退け」

「お、おう。そうだな」

 鏡也の上から下りようとする総二だったが、直ぐに止めた。

「ちょっと待った。うわっ、シャツとアーマーが噛んでる!? この……取れない!」

 ウエストアーマーの隙間に、鏡也のシャツが食い込んでしまっている。取るためにモゾモゾと動く総二。それに何故か焦る鏡也。

「バッ、馬鹿さっさと降りろ! と言うか動くな!!」

「ちょっと待てって! ――バカ、シャツが切れるだろ!」

「っ……そんなのはいいから! 早く退け! 動くな!!」

 まるで切羽詰まったかのように声を荒げる。意味が分からないと、総二は眉をひそめる。

「どっちだよ!? ………っ!?」

 そして、空気が凍った。

「「………」」

 気不味い。非常に気不味い。総二はここに至って鏡也の言葉を理解し、鏡也は死刑を待つ虜囚のような顔だった。

「お、おまえ……何考えてんだよぉ!」

「うるさい! ただの生理現象だ、馬鹿野郎!!」

 顔を赤くやら青くやらして、泣きそうな声を二人揃って上げた。

「っ――!?」

 ハッとなって二人が視線を送る。いつの間にか、二人を包囲するように、アルティロイドが陣取っていた。

「ヤバイ! 囲まれた!?」

 その環の一部が切れ、リザドギルディがその凶悪な顔を覗かせる。悪魔の様な瞳が総二を捉える。

「むぅ! そ、その輝き……そうか、キサマが究極のツインテールか! 先程の娘とは比べ物にもならぬ輝き……正しく隊長殿の予見通り!! しかし、白昼堂々、外で男を押し倒すとは何というヤンチャさんだ。幼女はそんな汚らわしいものに座っちゃいけません!!」

 リザドギルディが嘆かわしいとばかりに、総二を叱った。

 二人は即座に返した。

 

「「うるさい、バカ野郎!!」」




ピチッとしたスーツの少女に跨がられる……そんなToLOVEるなご褒美、良いですよね、ギャグ的にww

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