光纏え、閃光の騎士   作:犬吉

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久しくお待たせしました。
生活環境の変化のせいで、執筆時間を纏められませんでした。
お待ちくださっている皆様には、本当に申し訳ないと思っております。




 アルティメギルの奸計。それをも上回るテイルレッドのツインテール愛。混迷の戦局に降り立ったトゥアールとナイトグラスター。

 かつての戦いの真実と、託された想い。因縁の戦いに終局が訪れようとした時、黒き影が戦場に姿を現した。

 アルティメギル首領直属、部隊監査官フマギルディ。その存在は戦場にいかなる影響を与えるのか。

 

「しかし、ドラグギルディよ。随分と情けないことだな。敵の戦意を挫くどころか、煽る始末。その上、先の世界の残党に付け入られるとは。この不始末、流石の俺も黙認は出来ぬぞ?」

「……報告ならば好きにするが良い。だが、我の戦いを邪魔することだけは許さぬ!」

 ビリビリと、全身の皮膚を痛いほどに叩くドラグギルディの怒気。それを涼しげに受け流し、フマギルディはクツクツと笑う。

「邪魔はせんよ。元々、テイルレッドの相手は貴様の仕事。俺は俺で、やりたい相手がいるのでな」

 そう言って、フマギルディの視線がレッドから外れ、ブルーへと向いた。

「あんた、こっちに勘付かれないで、どうやってこの場所に来たの?」

 ブルーは自分に向けられた視線を真正面から受け止め、問い質す。この世界にはトゥアールの超技術によって、アルティメギル感知センサーが敷かれており、その優秀さは彼女もよく知るところだ。それを掻い潜るなど、とんでもない離れ業だ。

「別段、可笑しくはない。お前達はこの世界にセンサーの網を張り巡らせているだろう? 恐らくは我らの属性力を即座に感知するような」

「っ……!?」

「ならば話は簡単だ。属性力を極限まで抑え込めばいい。今、俺がそうしているようにな」

 言うや、フマギルディの体から黒い霧が噴き上がった。同時にトゥアールの持つエレメリアンセンサーがけたたましい音を鳴らした。

「なっ……!? 自分の属性力を封じていた? エレメリアンは属性力の塊……そんなこと出来る訳が」

「俺には出来るのだよ、仮面ツインテールとやら。いちいちセンサー如きに捉えられていては、仕事にならぬのでな」

 驚くトゥアールに、フマギルディは愉快そうに笑った。

「このエレメリアン反応の強大さ……ドラグギルディ並!?」

「……奴も幹部級エレメリアンか」

 状況は3対2。しかし敵はテイルレッドと互角に渡り合うドラグギルディ。そして謎多きフマギルディ。

 数の上では優るとはいえ、状況はどう転んでも可笑しくはなかった。

 音さえ消える緊張の中、フマギルディが動く。

「っ――!?」

「消えた!?」

 気が付けば、立っていた場所に黒い残滓だけが残されていた。その動きはツインテイルズの目にも止まらなかった。

「――やはりな」

「っ……!!」

 ブルーの真後ろから背筋を凍らせるような声が響いた。ユルリと黒い腕伸びて、ブルーのツインテールを持ち上げた。ブルーに怖気が走る。

「美しい。今まで見てきた中でも極上の逸品だ。黒真珠を思わせる艷やかさ。髪の一本一本にまで、丁寧に丹念に手入れが行き届いている。これは一朝一夕で至るものではない」

 フマギルディの指が、つつ……と、ブルーの髪を撫でる。

「なるほど、思慕の情か。想いが募り、この”黒髪”を美しく色づかせているのか」

「――だりゃぁ!」

 振り返りざま、ブルーの鉄拳が唸りを上げて、フマギルディに放たれた。だが、その一撃はあっさりと躱され、逆に腕を取られる。

「こんのぉ!」

 ブルーの足がムチのようにしなって、フマギルディの側頭部を打ち抜いた――と思われた。

「おっと」

「なっ!?」

 その蹴り足が狙いを大きく外して空を切る。取られた腕が捻り上げられ、合気道のように投げられたのだ。

 反転する景色の中、ブルーは無重力に浮いた自分の体を強引に回し、投げに勢いを加速させて着地する。そして、取られた腕を強引に引き、それを利用して踏み込みからの肘打ちへと繋げた。

「ククッ」

 フマギルディはそれをするりと躱し、一瞬でブルーの足を払う。バランスを失ったブルーの背後に回りこむと、その体を地面へと押し倒した。同時に腕をホールドし完全に押さえ込んだ。

「ぐぅ……!」

「クハハ。なかなかやるな、テイルブルー。だが、無手の技は俺も得意なのだよ」

「ブルー!!」

 レッドが叫ぶ。時間にすれば数秒程度の攻防。だが、その数秒で見せたフマギルディの力は凄まじかった。

「そんな! あの戦いとなれば血が騒ぎ、目に映る全てを抹殺しない限り止まらない暴走蛮族と言っても過言ではないあのテイルブルーが、殴り合い蹴り合い潰し合いで負けるだなんて……!」

 トゥアールは仮面の奥で顔面蒼白であった。それぐらい、信じられない光景だったのだ。

「あ……あいつ、後でける、なぐーるしてやる」

 ギリギリと腕を極められながら、ブルーがギリギリとトゥアール滅殺の決意を決める。

「しかし惜しいな。この衣装を纏った影響か、せっかくの黒髪が台無しだ」

「っ……コイツ、やっぱり!」

 ブルーは先の言葉が聞き間違いではないと分かった。フマギルディには変身による認識阻害を超えて、〈自分の本当の髪が見えている〉のだと。

 黒髪、という認識が髪だけなのか。それとも正体を見抜いているのか。どちらにせよ、ここで倒さなければ厄介なことになるのは確実だった。

「っ――!」

 突如、ブルーの拘束が解ける。同時にすぐ脇でガチャリという具足の音が響いた。顔を上げれば、フォトンフルーレを抜いたナイトグラスターが立っていた。

「ごめん、助かったわ」

「気にするな。それにしても、格闘でブルーを上回るとは……それに完全に不意を突いたと思ったのに、余裕で躱された」

「流石は幹部級。一筋縄では行かないってわけね」

 ナイトグラスターに引き起こされ、ブルーは改めてフマギルディに視線を向けた。

 フマギルディはナイトグラスターの奇襲を悠々と躱し、少し離れた所にある岩の上に腰掛けていた。

「ククク。いや、驚いた。何と容赦無い攻撃だ。危うく、首と胴がお別れするところだったぞ」

 自分の首をトントンと叩きながら愉快そうに笑うフマギルディ。

「ドラグギルディよ。貴様の兵隊を借りるぞ?」

「む――?」

 パチン! と、フマギルディが指を鳴らすと、一斉に黒い兵団が姿を現した。それは周囲をあっという間に囲み、埋め尽くす。

「な、なんて数よ!」

「どうやら、これがアルティメギルの本気ということらしいな」

「ドラグギルディの用意したアルティロイド987体。まずはこれの相手をしてもらおうか。これを退けられたなら……相手をしてやろう」

 そう言って、フマギルディは岩の上で横になった。

「余裕だな」

「舐めてるのよ」

 二人は囲むアルティロイドの群れを一瞥した。一体一体は大したことはないが、この数となれば消耗は避けられない。

「二人共、大丈夫か!?」

「大丈夫よ! こっちは任せて! アンタはドラグギルディをお願い!」

 心配そうなレッドの声にブルーが答える。そして横目でナイトグラスターを見やる。彼は小さく頷いて返した。

「2対987。一人頭493と余り1か」

「それじゃ、競争しましょうか? 負けた方が勝った方にアドレシェンツァのカレー奢るの。勿論大盛り。4人前ね」

「それで、おばさんがこう言うんだろ? 『うちの大盛りは本気だよ。2人前にしときな』ってな」

「あはは。似てる似てる。――それじゃ、無双ゴッコといきますか!」

「あぁ。主菜が待ってるんだ。無作法な前菜盛り合わせはさっさと片付けるぞ」

 テイルブルーとナイトグラスター。光と水のダブルが、闇の脅威に挑む。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「二人共、大丈夫か!?」

「大丈夫よ! こっちは任せて! アンタはドラグギルディをお願い!」

 アルティロイドの向こうから届いた返事に、テイルレッドはドラグギルディに剣を向けることで応えた。

「あの数のアルティロイド。それにフマギルディ。いかに二人とはいえ、勝ち目はないぞ?」

「あの二人に心配は要らないさ。俺はお前を倒す、それだけだ!」

 高まる力。心の奥底から湧き上がる魂の具現。それらがツインテールへと集束していく。

「劣勢に回って尚も揺るがぬその力、愛……最早、言葉など不要か! だが、どれ程の輝きであろうとも、それさえ呑み込む闇があることを知るが良い!!」

 ドラグギルディも、テイルレッドのツインテールに対して今まで以上に気を巡らせる。属性力を感じられない人の目にあっても、それはハッキリと映った。

「最後に一つだけ聞くぞ。お前等が属性力を取り込まなきゃ生きていけない存在だっていうのは知ってる。だけど、強引に奪う以外に道はなかったのか? 交渉や代替手段を用意するとか……何もなかったのか?」

「どちらが上とは言わぬ。だが、食い食われる連鎖の中でそんな事は不可能なのだ。我らは――貴様らとは違う生命体なのだからな」

「それでも……そこまでツインテールを愛しているなら、奪われる悲しみだって分かるはずだろう!」

「恨み事など聞き慣れたわ。心を喰らい、生きる者として生まれた以上、当然の運命よ!」

 奪い、生きるエレメリアン。その生き方に恥じること無しとドラグギルディは言い切り、そしてまた、遠慮も手心も無用。同情など以ての外と、レッドを戒めた。

 「……そうかよ」

 テイルレッドは柄を握る手に力を込めた。それはまるで、命という存在の重さを握り締めるようであった。

 自分の大事なものを守るためでも、敵が悪で変態な精神生命体であっても――奪うことに変わりないのだ。

「おぉおおおおおお!」

「ぬぉおおおおおお!!」

 地を刳り蹴って、互いの全力がぶつかり合う。牙の如き乱れ刃が踊り、テイルレッドに襲いかかった。だが、その全てをブレイザーブレイドで真っ向から受け止め、弾き返す。

「ぬぅ……!」

「おりゃぁああああ!」

 テイルレッドはドラグギルディの剣を弾き上げると同時に切っ先を返し、その巨躯に刃を叩きつけた。

「ぐぅうう……っ!」

 その衝撃に踵で地面を削りながら後退するドラグギルディ。その胸には浅からぬ傷が刻まれていた。

「先程よりも遥かに強さと美しさを増したか。その強さ、一体何処から出てくる!?」

「ある人が言ってたぜ。ヒーローは一人で戦っていても、いつか限界が来る。だけど、仲間がいれば支え合えるってな」

「何を……?」

「ツインテールは左右の髪と、それを支える頭があるからツインテールになるんだ。そして、俺達は全員でツインテイルズなんだ。俺の強さは俺一人のものじゃないんだよ!」

 テイルレッドが一気に間合いを詰め、さっきのお返しとばかりに一気に攻め立てる。

「うぉおおおおおおお!」

「ぬっ……ぐぅうう!」

 火花が幾度も散り、その度にドラグギルディの巨体が揺さぶられる。テイルレッドはブレードを大きく振りかぶって強烈な一撃を見舞った。ドラグギルディの刃を両腕と共に弾き上げた。

「ぬぉお……っ!」

 攻撃の反動で身を翻し、ドラグギルディの背後にレッドは回り込んだ。振り向く勢いに乗せて、切っ先を走らせる。

「ぐぉおおお! わ、我が背に傷を……!」

 背中に走った痛みと衝撃に、ドラグギルディが呻く。

「どうだ。お望み通りゴシゴシしてやったぜ?」

「ぬ……なるほど。一本取られたか」

 誇りを傷つけられて尚、ドラグギルディは怯まない。その身から立ち昇る属性力は更に凶悪さを増していく。

「これほどの力……いや、真価か。ならば我も、命を懸けなければならぬな!」

 剣を地に突き立てて、その両手を強く握り固める。深い呼吸音が地鳴りの如く響き始めた。

「まさか、フォクスギルディみたいに妄想をする気か……?」

「フォクスギルディ……あ奴の妄想には一目置いていたが、人形に頼るなど、惰弱!」

「っ……!?」

 大気が震えた。ドラグギルディから今までとは比較にならない、強大な力が放たれている。

「己が愛はこの身一つにて体現する。これぞ戦士の華よ! ぬぅおおおおおおお―――!」

 ごう。と、吹き荒れる闘気の嵐。闘気はドラグギルディの側頭部に形を持って現れた。

 それは――まさしく、愛の権限。

「まさか……ツインテールだと!?」

「これぞ我が最終闘態、〈ツインテールの竜翼陣(はばたき)〉。ツインテール属性を究極まで解放した、見敵必殺の姿よ!!」

「すげぇ……なんてプレッシャーだ! 立っているだけで押し潰されちまいそうだ……!」

 ビリビリと全身に走る圧力に、テイルレッドは知らず半歩下がっていた。気圧されたからではない。そうして踏ん張らなければ、本当に引き飛ばされそうだったからだ。

「男に許されるのはツインテールを愛でる事だけではない。自らがツインテールになることこそ、ツインテール属性を持つものの本分よ!!」

 漢がツインテールになる。そこに一切の羞恥、躊躇いを持たないその姿こそ、テイルレッドを圧倒する力の正体だ。

 テイルレッド――観束総二は思う。果たして自分はそうであったかと。最強のツインテール属性を持つと言われながら、それを誇っていたか。自分自身がツインテールになるなど、考えることも恥ずかしいと思っていなかったかと。

 同じ属性力を持ちながらこうも違う覚悟。テイルレッドはドラグギルディに一礼さえ辞さない思いだった。

「敵に感銘を受けるとはな。もう一度、礼を言わなきゃならんかもな!」

「真意は知らぬが、礼はこちらこそ言うところだ。テイルレッドよ、お前と戦えたことで我は嘗ての我を取り戻した。ただ我武者羅に、ツインテールを愛し、求めた、嘗ての自分にな!」

 最終闘態に至り、ドラグギルディは更に強大となる。だが、それを押し返すように、テイルレッドの力も増大していく。

「行くぜ、ドラグギルディ!」

「行くぞ、テイルレッド!」

 ツインテールとツインテール。最強と究極。光と影。激突する両雄の力が、紅蓮の渦となって周囲を吹き飛ばした。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「おぉおおおお!」

 銀の閃光が地を駆ける。その軌跡が黒塗りの群れを吹き飛ばしていく。

「どりゃあああ!」

 青い波涛が大気を穿つ。その衝撃は黒塗りの群れを薙ぎ払っていく。

 テイルブルーとナイトグラスターによる、アルティロイド掃討が開始された。

「残り、899!」

 トゥアールのカウントが聞こえる。だが、それに答える暇など無い。

 ナイトグラスターはフォトンフルーレを駆けると同時に突き出し、まとめて吹っ飛ばす。剣を引くと同時に左足を軸にして、右足を振り回す。更に数体を倒した。

 テイルブルーは大きく円を描くように走りながら、ウェイブランスを振るってアルティロイドを倒していく。まるで紙くずのようにポイポイと飛んでいく様は、暴走戦車による破壊活動だ。

「残り812!」

 だが、その猛攻も数の暴威には焼け石に水。

「だったら――!」

 ブルーはその手に属性玉を握り締めた。そしてウェイブランスを思いっ切り地面に叩きつける。その反動を利用して一気に跳び上がった。

属性玉変換機構(エレメリーション)――体操服(ブルマ)!」

 手首のマウントがスライドし、顕になった窪みに属性玉が吸い込まれる。そしてウェイブランスの柄頭を掴み、発動させる。

 体操服属性――タトルギルディの属性力――が生み出すのは、重力コントロール。対象の重さを自在に変異させられるのだ。

「どりゃああああああああ!」

 ウェイブランスを投げると同時に、重力球を槍に投げる。超重量となったそれは真っ直ぐ、地面へと突き立って、衝撃波が周囲のアルティロイドを吹っ飛ばした。そのまま重量変化を解除して次の属性玉をセットする。

「属性力変換機構――ハイレグα!」

 セットされるのはリカオンギルディの属性玉。その能力を発動させる。着地と同時にウェイブランスを引き抜くと、大きく振り回した。

「「モケ――――!!」」

 不可視の槍撃がアルティロイドを薙ぎ払った。倍の間合いとなったウェイブランスを担ぎ上げ、テイルブルーは再び走る。

 

「属性玉変換機構――事務制服(オフィサーユニフォーム)!」

 ナイトグラスターはガビアルギルディの属性玉を発動させる。灰色の風が吹いて、アルティロイドを次々に呑み込んでいく。呑み込まれたアルティロイドは尽く、その動きを鈍らせた。

「次はこれだ。属性玉変換機構――兎耳(ラビット)!」

 矢継ぎ早に属性玉をセットする。レッドがラビットギルディを倒して手に入れたばかりの物だ。しかし、その能力は既に理解している。

 脚部に宿る力――それこそが兎耳属性の特性だ。動きを鈍らせたアルティロイドに対して、脚力を強化させたナイトグラスターの行動は至極シンプルだった。

「ハァ――――ッ!!」

 ただ、ひたすらに蹴り抜くのみ。一体を蹴ると同時に次の一体に跳び、蹴り足を落とす。その繰り返し。だが元々、その速さが桁違いのナイトグラスターだ。彼の繰り出す連続キックの速度たるや、蹴り音が重複して響き、「ドゥエドゥエドゥエ!」と幻聴する程だ。

「な、何というドゥエリスト……! 残り774!!」

 しかし、それでも敵の数は圧倒的。今は勢いがあっても体力は無限ではない。いずれは押し込まれてしまうだろう。それにまだ、本命は残っているのだ。一体一体を相手にし続ける余裕は無いのだ。

 ナイトグラスターとテイルブルーの視線が交差する。そして互いに頷き合う。

 ――仕込みは、上々。後は結果を御覧じろと。

 二人はアルティロイドを挟みこむように立つ。そして同時に叫んだ。

「「オーラピラー!」」

 同時に引かれたトリガーが、大地に光を走らせる。渦を巻く様に青い光が。その上を切り裂くように白い光が、同時に放たれた。

 噴き上がる水竜巻。天に昇る光の御柱。逆巻く二つの激流はアルティロイドを一度に呑み込んで見せた。

「「完全開放(ブレイクレリース)――!」」

 

「エグゼキュートウェイブ――!」 

「ブリリアントフラッシュ――!」

 

 テイルブルーとナイトグラスターの必殺技が、同時に放たれる。渦巻く水流と共に光の矢が激流の中へと飛ぶこむ。同時に内側から膨大な属性力が溢れだし爆発する。

「677……551……419……237……195……!」

 凄まじい勢いでアルティロイドの数が消えていく。カウントするトゥアールの声も、興奮の色を隠せない。

「「いっけぇええええええ!」」

 怒号の如き雄叫びが戦場を揺るがす。天空に二色の流星が昇り――消えた。

 地に、音もなくナイトグラスターが降り立つ。緩やかに立ち上がると、そのままテイルブルーの隣にまで進み出る。

 

「モ、モケェ……」

 

 空からアルティロイドが、一体だけ落ちていくる。二人はゆっくりとその体を回した。

 

「「ハァ――ッ!」」

 

 目の前に落ちてきたそれに向かって、二人の同時回し蹴りが突き刺さって、まるで弾丸のごとくふっ飛ばした。猛スピードで飛んで行くアルティロイドは――しかし、黒い炎に一瞬で呑み込まれた。

「アルティロイド……全部、撃破です。でも……」

 戸惑いの視線の先に、炭と化して崩れ落ちるアルティロイド。その向こう側には、寝転んだまま右手だけを持ち上げたフマギルディ。

 先制代わりにと最後の一体をけしかけたが、まさか一瞬で消し炭にされるとは予想だにしなかった。

「――ふぅ。あの数を倒したか。……しかし、予想外だったな」

 ひょいと体を起こしたフマギルディが岩の上から降りる。

「「っ……!」」

 立ち上がった。それだけで、まるで猛獣に睨まれたかのようなプレッシャーが全身に突き刺さる。

「予想では……もう少し早く終わると思っていたのだが。どうやら買いかぶっていたか?」

 ニヤリと笑うフマギルディ。その姿はまるで空の狩人――猛禽だ。

「そうか? 準備運動は時間を掛けないと、思わぬ怪我をするからな」

 ナイトグラスターはマントを払い、光輝の剣を構える。

「それじゃ、今度は期待に答えてあげるわよ。アンタをぶっ飛ばしてね!」

 空から降臨したウェイブランスを片手で掴み、大きく振り払う。その切っ先をフマギルディに定め、テイルブルーが、地を蹴った。その後にナイトグラスターが続く。

「ククク。それは楽しみだなぁ。あぁ、実に楽しみだ!!」

 フマギルディはその両手を広げ、ゆっくりとその足を踏み出した。




原作だと987対1の戦いでも勝つんですよね。
テイルブルー、マジバーサーカー。

次回も、バトル満開で時折思い出したように笑いが入ったり入らなかったり。

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