光明機動ネメシスエイト   作:星々

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第3話「その一秒 スローモーション」

どうせ何もしなかったらやられるんだ。

どうせタダでは帰れないんだ。

だったらやってやる。

ユウの頭にはこのような言葉が繰り返されていた。

怖くないと言えば嘘になる。

それでも彼の勇気は身体を動かした。

 

「飛べ! ネメシス08‼︎」

 

自由落下するネメシス08の背中と腰から光の布が発生した。

この青い発光現象は、近年発見されたイミュー粒子が圧縮されて起きるものである。

ネメシス08は、機体自体から多量のイミュー粒子が放出されるため、それをふんだんに使った独自の推進システムを駆使し、飛行が可能ということだ。

扱いが非常に困難なイミュー粒子を上手く扱えるようになったネメシス08だからこそできる芸当だ。

この技術も奇跡と言われ、同系列のテンペストやギガンティックではこれは不可能だった。

 

「敵は…右か!」

 

ネメシス08が重厚な弾幕をくぐり抜けながらゴーストに接近する。

テンペストとギガンティックは咄嗟に射撃のリズムをネメシス08に合わせ始めた。

 

「ネメシス08!? まさか…あの子を出したの!?」

「まったく何考えてるのかねウチのリーダー。」

 

テンペストのパイロットであるサクラ・ルルと、ギガンティックのパイロットフィルシア・ナイトウォーカーが互いに息を合わせながらそんなことを言う。

彼女らは優秀で、ユウ同様に正規のパイロットではないものの、やはり機体との親和性が高く、戦闘での評価は高い。

 

「オレの動きに合わせてくれた? よし!」

 

ネメシス08が四方八方に起動を変えながら徐々に間合いを詰める。

時折脚部からホーミングビームを撃ってみるが、ビットが展開するエネルギーフィールドに拒まれる。

しかし、距離が近づくうちに手応えが増していくのを感じていた。

 

「うおぉおぉお!!!」

 

ネメシス08がマシンガンを近距離で掃射した。

その弾丸はビットを撃ち抜き、瞬く間にエネルギーフィールドを破壊した。

ネメシス08は青い光の軌跡を残しながら空を自由に飛び回る。

その超次元的な光景と、手に持ったマシンガンという現実的な武器が、非常にミスマッチだ。

しかし、ネメシス08の戦う姿は美しい。

アポカリプスのメンバーは誰もがそう感じた。

 

「あとは本体を…!」

 

黒い翼を羽ばたかせてこちらへ向かってくるゴースト。

その大きさは30mほどで、頭頂高15mのネメシス08と比べると約2倍の大きさだ。

ゴーストはネメシス08同様に大空を自由に飛び回りながら、翼からビームのようなものを発射する。

分析によると、光を纏った圧縮粒子らしいが、そんなことは戦場どうでもいいことだ。

 

「速い!? 追いつけるかネメシス!」

 

ゴーストの翼からは赤い光が溢れ、うっすらと空に軌跡を残しながらネメシス08を翻弄する。

いくらネメシス08が高性能だからといって、パイロットが素人だ。

攻撃予測や回避行動などがまだ不十分で、未だに直撃を与えていない。

 

「くっそ、どうする!」

 

ビットによるエネルギーフィールドが消失した今、ロングレンジ攻撃も通用するはずなのだが、ゴーストの速さに中々標準が合わない。

しかも、空中というのは非常に不安定な戦場で、火器の発射による反作用で態勢が崩れやすい。

しかもゴーストからの攻撃をかわしながらだ。

 

「援護が不安定になってきた…長期戦はキツイのか?」

 

ネメシス08が放つホーミングビームは、弧を描くようにゴーストに向かっていく。

ホーミングビームは、ミサイルよりも高誘導かつ高威力なビーム兵器なのだが、そのエネルギー消費は激しく、そこまで多用できない。

現に、ネメシス08のコックピットには撃ちすぎの警告が鳴り響いている。

ユウは正直にこれに従うことにしたが、攻め手を一つ失ってしまった。

 

「他に武器はないのか!」

 

ネメシス08はマシンガンで迫り来る敵のホーミングビームを撃ち落としながら接近のチャンスを伺う。

その間ユウは、回避しながら武装マニュアルを読み込んでいた。

ビームランスとホーミングビームの他に、ソニックレールガンというものがあるらしい。

ソニックレールガンは、ネメシス08の両肩に装備されたシールドに内蔵されているものだ。

威力は高いが連射はできず、しかも反動が大きい。

恐らくこの状況で使用して外せば、必ずゴーストはそれをチャンスと見るだろう。

 

「ソニックレールガンか…当てられるか、オレに…」

 

ユウはネメシス08に左肩のソニックレールガンを構えさせた。

そして一旦ゴーストから離れるように高度をとり、宙返りをしてから発射姿勢をとった。

ゴーストは左右に大きく動きながらネメシス08を追ってくる。

コックピットのモニターに表示されるロックオンマーカーが重なる瞬間を待つ。

その間にもゴーストは近づいてくる。

 

「早く…早く……早くしろ……!」

 

ゴーストが大きな口を開けた。

その瞬間、ロックオンマーカーが一つに重なり、緑から赤へ色が変わった。

その時ユウには、この世界の時間が遅くなっていくように思えた。

それほどに、冷静でいられた。

スローモーションの1秒で、ユウは極限まで集中力を高めた。

 

「………見えた! 狙い撃つ‼︎」

 

ロックオンから1秒後、ギリギリまでゴーストを引きつけてからソニックレールガンの音速の弾丸が発射された。

反動でネメシス08がきりもみ回転の状態になる。

ユウはそんな中でも冷静で、ゴーストを見ずに回し蹴りをいれた。

大口を開けていたゴーストは、その脆い部分に弾丸を喰らい、さらに回し蹴りをいれられ、無様に吹き飛んで行った。

 

「サクラさん、フィルシアさん!」

「ほいほーい。」

「私に命令しないで!」

 

無抵抗なまま飛ばされたゴーストに、ヴェーガスからテンペストとギガンティックが狙い澄ます。

テンペストの左肩に装備された大口径のビームキャノンが火を噴いた。

同じくギガンティックも、背中に装備された2門のキャノン砲を発射した。

その弾丸は一直線にゴーストへと向かっていく。

それが当たるのを確認する前に、ネメシス08は槍を構えて追撃に入った。

 

「これで、トドメだァァア!!!」

 

ビームと実弾の弾丸がゴーストの翼を貫く。

まるで血のように赤い光が吹き出す。

そしてその光を斬り裂き、青い光のマントをなびかせながら、穴だらけになったゴーストを貫いた。

ゴーストは形状崩壊を起こし、消滅した。

 

 

 

 

 

「終わった……」

 

ユウは全身の力を抜いてシートにもたれかかった。

息は荒い。

気付けば全身から汗をかいている。

ユウ自身、気付かぬうちに予想以上の体力を消耗していた。

 

『ネメシス08は第一デッキに収容します。真ん中のハッチね。ナビゲートは機械が勝手にやってくれるから。』

 

通信士の女性がナビをしてくれた。

歳は20代後半くらいだろう。

 

「わ、分かりました。レーザーセンサー確認…これでいいんですよね?」

『確認しました。あ、そうだ、アタシはリン・スメラギね。よろしくっ。』

「………」

 

返事はなかった。

ユウはコックピットの中で眠りについていたのだ。

 

 

 

この日、ユウの高校生活は断たれ、戦いの世界へ飛び込んでいくのだった。




どうも星々です!

お知らせです!
この度、スーパーロボット大戦H(ハーメルン)という多重クロス企画に参戦することになりました\パンパカパーンwwww/
そんなこんなで、今後ともよろしくです!

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