さすがに本編を進めないとヤバいと思い、キリの良い所で以下略。
いつも通りと言えばそうなんですが…
とりあえず読んでやって下さい。
〜〜佐伯湾鎮守府・出撃ゲート〜〜
暁「まだ帰ってこないのかしら…」
睦月「お腹空いたよぉ…」
卯月「ヒマっぴょん…」
夕立「お腹と背中がくっつくっぽい…」
只今の時刻は午後8時半。
駆逐艦4人娘が、天龍達の帰りを待っている。
しかし、予定の方は時刻を過ぎても帰ってくる様子はない。そこに、
悠「おーい!」
暁「司令官?」
悠「その様子だと、まだ天龍達は戻ってないみたいだな。俺も一緒に待つよ。」
悠も合流し、共に出迎えの為に待つ。
………………………………
……………………………
…………………………
………………………
しかし、なかなか帰ってこない天龍達。
時刻も、午後9時を回ってしまっている。
暁「島風ちゃんじゃないけど、おっそーい!
レディーを待たせるなんてどうかしてるわ!」
卯月「ぷっぷくぷぅ〜…お腹ペコペコぴょん…」
夕立「うー…」
睦月「にゃー…」
悠「仕方ないな。食堂に行って、みんなに先に食べるように言ってくれ。」
暁「司令官は?」
悠「俺はここで待ってるよ。誰も出迎えてくれなかったら、天龍達も寂しいだろうしな。」
卯月「ごめんぴょん…。うーちゃんはもう限界ぴょん…」
夕立「提督さんも無理しないでね。」
睦月「じゃあ、あとはお願いしますにゃしい。」
4人娘を見送り、一人ゲートで天龍達を待つ悠。彼自身も空腹だろうに…。
悠「しかし…遅いな。何事も無ければいいが…」
〜〜太平洋・宇和海境〜〜
時間は巻き戻り、午後6時。完全に陽が落ちるまであと少しといったところか。
敵の艦載機は、完全に陽が沈む前に撤退している。だが…
天龍「………」
龍田「天龍ちゃん!お願い!返事をして!」
天龍「…うるせぇよ龍田。傷に…響く…」
龍田「っ!天龍ちゃん!」
龍驤「すまんっ…うちのせいや…うちがもっと周りを見てりゃあ…」
どうやら天龍が負傷しているようだ。決して浅くないその傷、大破と見て間違いない。
原因は制空権争いに気を取られて、回避行動が疎かになった龍驤を、天龍が庇ったからだ。
いくら生前は歴戦の空母だったとしても、建造されたばかりで、艦娘としての練度は低かった龍驤。
軍艦としての戦い方と、艦娘としての戦い方は別物。龍驤はそのギャップを埋めきれなかった。
敵機を感知する電探も、周囲を警戒する見張り員もいない。もちろん発着艦の指示を出す管制塔も無い。いや、たとえ電探や見張り員があったとしても、艦載機から送られて来る情報を含め、全てを一人で処理し、艦隊の皆に伝え、艦載機への指示を出す。今の龍驤に、任務の終了間際で疲弊している彼女に、それらが出来るだろうか?
突然の奇襲、強大な敵戦力、疲弊した心体、そして艦娘としての練度不足。これらの要因が絡まりあい、結果として注意力の散漫を引き起こし、天龍の大破に繋がった。
天龍「悪りぃ…ちっと肩貸してくれ。」
龍田「動ける?」
天龍「ギリギリだ…。龍驤、機銃使えるか?」
龍驤「あ、あぁ、使えるで。」
天龍「よし…夜になったら艦載機は使えないからな…こんなんでも無いよりはマシだろ…。」
そう言うと、天龍は機銃を龍驤に渡す。
動けない彼女が持っているよりもましだろう。
まあ現状は、威嚇程度にしか使えないだろうが…。
龍驤「…よし!ちゃんと動くな。」
龍田「私は天龍ちゃんを曳航するわ。護衛は任せますね。」
龍驤「ああ、任せとき!」
天龍「すまねぇ…頼むぜ。」
龍驤「敵の追撃が来る前に撤退するで。闇に紛れながら静かにや…。すまんな天龍…長なるけど気張ってやぁ。」
〜〜佐伯湾鎮守府・出撃ゲート〜〜
グゥー…
悠「さすがに腹が減ったな…」
あれから天龍達をずっと待ち続けている悠。
騒ぐ腹の虫をなだめるようにさすっていると…
島風「悠?いる?」
悠「島風?どうした?」
島風がお盆を持ってやってきた。お盆の上にはおにぎりとペットボトルのお茶が載っている。
島風「はい、荒垣さんが持ってけって。」
悠「ありがとう島風。」
悠は礼を言うと、おにぎりを一つ手に取り口に運ぶ。
悠「うん、美味い。助かったよ。」
島風「どーいたしまして!…ねえ、まだ天ちゃんとタッちゃんとりゅうちゃんはまだ帰ってこないの?」
悠「ああ、いくらなんでも遅すぎる…」
悠「………」
島風「…悠!!」
悠「!!うおっと!どうした大声出して?」
島風「お話ししよ!楽しいお話!」
悠(どうやら不安が顔に出ていたようだ。島風に気を遣わせてしまったな。)
「そうだな…俺の仲間の話でいいか?」
島風「うん!聞かせて!」
しばらく島風に特捜隊の仲間の話をした。
カチッ…カチッ…カチッ…
島風「スゥ〜…スゥ〜…」
現在時刻は午後11時を回っている。ゲート内には、時計の秒針の音に、話し疲れて眠ってしまった島風の寝息、そして波の音が聞こえるのみである。
悠(武蔵か金剛に連絡して部屋に連れて行ってもらうか?)
自分の膝で寝ている島風の髪を撫でながら、そんなことを考えていると…
…………!………。
つい……!は…………う……!
悠「ッ!帰ってきたか!」
ゲートの向こうから、わずかだか声が聞こえる。
龍驤「艦隊帰投や!早く!」
龍田「天龍ちゃん!もう大丈夫よ!」
天龍「いちいち大袈裟なんだよ…。イテテ…」
?「強ガルンジャナイヲ!手当シタッテイッテモ、ソノ場シノギノ応急処置シカシテナインダゾ!」
悠「みんな!」
悠「イシュタル!」パリィン!
イシュタル「よく頑張りましたね!メシアライザー!」
パァァッ!
天龍「……スゲェな。本当に治ってやがる…」
龍田「鳴上提督、ありがとうございます。」
龍驤「ホンマによかった…。うちのせいで…すまんかった天龍。」
帰ってきた天龍達に回復魔法をかける悠。
天龍が大破していると聞いたときは驚いたが、すぐに気持ちを切り替え、慌てることなく処置を施す。
ちなみに島風は、起こすのもあれなので学ランをかけて寝かせてある。普段は10時には寝てしまっているため、よく眠っている。
?「ヨカッタナ!ジャア約束ハ守ッテモラウゾ!」
悠「……うん。報告は疲れているだろうから明日…と言いたいところだが…」
悠「彼女(?)は誰!」
?「ヲ?」
ヲー「私ハ海賊ノ『ヲー』ダ!ソイツラガ夜ノ海デ困ッテタカラ、手ヲ貸シテアゲタンダ!」
龍驤「よく言うわ。『暗いよ〜、怖いよ〜、ルーちゃーん!』言いながら泣きわめいてたくせに〜。」
どうやら天龍達はこの深海棲艦に助けられたようだ。
悠(ふむ、ちみっこい体に不釣り合いな2つの大きな果実。トランジスタグラマーってやつか?
…まあ、それはそっとしておいて。)
「どういう経緯でそうなったのか聞かせてもらえるか?」
天龍「ああ、分かった。」
〜〜回想〜〜
こいつと会ったのは、帰投途中の航路で、深海棲艦の機動部隊に奇襲を受けてから、何とか逃げ切って、完全に暗くなるのを待っていた時のことだ。
龍驤「…暗いな。」
龍田「羅針盤も見にくいわね。迷わないように注意しましょう。」
天龍「…待てッ!何か、聞こえねぇか?」
撤退行動を開始しようと準備を始めた時、どこからか泣き声が聞こえたんだ。
龍田「どうします?」
天龍「…駆逐艦のガキかもしれねー。拾って帰るぞ。」
龍驤「はぁ⁉︎何言っとるん!そんな余裕、うちらには無いやろ!」
天龍「悪りぃな龍驤。いつまでも泣かれてちゃ耳障りなんだよ。傷に響いて仕方ねぇ。」
龍田「全く…天龍ちゃんったら。素直に可哀想だから助けてあげたいって言えばいいのに。」
天龍「っ!!バカやろッ!別にそんなんじゃ…あいててて…」
龍田「ほら〜、大声出すと傷に触るわよ〜。」
龍驤「はぁ、しゃーない。その怪我もうちのせいやもんな。まっ、大破した天龍よりは使えるやろ!」
天龍「何だとコラァッ!…あいたたた…」
龍田「ちょっと!出血が!もうっ!天龍ちゃん!大人しくしてて!龍驤さんも止めてください!」
龍驤「す、すまん…」
天龍「…ありゃ何だ?」
龍驤「ボッチの深海棲艦やな。」
龍田「何だか色々おかしいわね。」
ヲー「ヒッグ…グスン。ウエェェン…ルーチャーン…」
泣き声がした方に近づいてみると、一人の深海棲艦…多分空母ヲ級。俺らが知ってるやつよりもチビなやつが、トボトボ泣きながら歩いてたんだ。
龍田「…暗くてよく見えないけど、あの子が手に持ってるのって…」
天龍「でっかいパチンコだな。」
…あんなのどーすんだよ。
龍驤「なぁ、あれってうちらを襲った空母と違うん?」
龍田「多分違うわね。深海棲艦の正規空母は、特殊な杖を使って艦載機に指示を出しているらしいの。あんな手作り感満載のパチンコじゃあ無理よ〜。」
ヲー「ッ⁉︎」
天龍「マズイ!気づかれた!」
遠目から様子見をしていると、敵もこっちに気づいたみたいでよ。こっちに接近してきたんだが…
ヲー「オ姉サン達誰ダヲ?」
ふつーに話しかけられた。
天龍「…あ〜、えっとだな。」
龍田「私は龍田って言うの。私に寄りかかってるのが、私のお姉さんの天龍ちゃん。で、こっちが友達の龍驤ちゃんよ〜。あなたは?」
ヲー「私ハ…ヲーダヨ。」
龍田「ヲーちゃんね?ヲーちゃんはどうして1人で泣いてたのかな?」
ヲー「エットネ…」
ヲーちゃん説明中……
天龍「んだよ…ただの家出娘じゃねーか。」
要約するとこうだ。
貧しい生活から抜け出す為に海賊になろうとして、子分を増やす為に保存食を使っちまったらしい。
結局作戦も失敗に終わったみたいだぜ。
それで、姉貴分に怒られるのが嫌で逃げてきたと…深海棲艦にもこんなアホがいるなんてな。
龍驤「どうにかしてやりたいけどなぁ…」
龍田「難しいわね。早く帰って、天龍ちゃんの怪我も治さなきゃだし。」
ヲー「片目ノオ姉サンハ怪我シテルノ?」
天龍「ああ、ちょっとドジっちまってな。」
ヲー「私、救急セット持ッテルヨ!」
龍驤「マジでか!なあなあ、ちょっと使わせてくれへん?」
ヲー「ジャア…取引、スルヲ!」
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悠「で、その取引の内容は?」
天龍「使った包帯やら消毒液の補給と、飯に寝床。あと食料、保存の効くやつを分けてくれだとさ。」
悠「分かった。ヲーちゃん、天龍が世話になったみたいだな、ありがとう。救急セットと食料は明日準備させてもらうけど、いいかな?」
ヲー「ソンデイイヨ、ソレヨリオ腹空イタ。何カ食ベサセテホシイナ!」
悠「うーん…何かあるか分からないが…。3人はヲーちゃんをとりあえず食堂に案内してあげてくれ。俺も島風を部屋に連れて行ったらすぐ行く。」
龍田「…あの、提督は疑わないんですか?」
悠「ん?ん〜、悪い子じゃないみたいだし、大丈夫じゃないか?龍田もそう思って一緒に連れてきたんだろ?」
龍田「…それもありますが、私達の事は?深海棲艦と通じて、この鎮守府を堕とそうとしているかもしれないんですよ?」
悠「龍田、出会ってまだ一月程度だが、俺たちは仲間だ。疑うもんか。仮にそうだったとしたら…ブン殴ってでも目を覚まさせてやるさ。」
龍田「鳴上提督…」
悠「じゃあ俺は島風を部屋に送ってくるから、後で食堂で落ち合おう。」
龍田「本当に…貴方は、馬鹿みたいに真っ直ぐで…優しいのね。」
〜〜寮・食堂〜〜
悠「さて、冷蔵庫の中は…」
悠は、島風を部屋に送り届けたあと、食堂で冷蔵庫の中をチェックしていた。…どうやら謎の草は無いようだ。
ヲー「ゴッハン!ゴッハン!」
テーブルでは、ヲーがやかましく騒いでいる。
天龍「コラッ!静かにしろ!他のみんなが起きてきたら面倒だろ!」
悠「期待に応えられるように頑張らねば…」
悠「……冷蔵庫の中には、冷やご飯と卵、封の開いたウインナー、あと野菜の切れっぱしか…
ステーキ肉は…天龍達の分だな。
よし、ケチャップがあるからオムライスにしよう。」
トントントン…
ジュー!
昔ながらのオムライスが出来た!
悠「よし!出来たぞ!みんなの分も作ったから、持って行ってくれ!」
ヲー「ウンマァーイ!」
天龍「ハフハフ…鳴上もなかなかやるじゃねーか!」
龍驤「ホンマやな!荒垣さんの手伝いしとるだけはあるわマジで。」
悠「ありがとう。ん?龍田?あんまり食べてないな。口に合わなかったか?」
龍田「…こんな遅くに食べたら、ねぇ?」
悠「あ〜、すまない、そこまで気が回らなかったな。」
龍田「というわけで、もっとお肉を付けたほうがいい龍驤さんにあげちゃいまーす♪」
龍驤「んやそれ!喧嘩売っとんのか!…まあ、もらうけどな。」
天龍「もらうんかよ…」
龍驤「そやで〜、残したらモッタイナイオバケが出るんやで〜!」
悠(大阪のオバちゃんみたいだな。)
皆で遅めの夕食を食べた。
龍驤「じゃあ、ヲーちゃんはうちの部屋に泊めるっちゅーことでええな?」
悠「ああ、頼んだ。」
ヲー「オ世話ニナルヲ!」
天龍「で、明日は朝イチ…午前4時で倉庫から物資を取ってきて、ヲーの奴をみんなに感づかれる前に送り出すと。」
悠「必要な物は俺の方で荷造りしておくから、ばれないように頼む。」
食事を終えた一行は、明日の予定を立てている。
寮からゲートまでのルートや、部屋を出る時間など、細かく打ち合わせをする。
敵意が無いとはいえ、深海棲艦が鎮守府にいると分かれば、事情を知らないメンバーがどう動くか分からないからだ。
天龍「しっかし…フワァ…回復してもらったのにめちゃ寝み〜…」
時刻は既に深夜0時を回っており、任務の疲れもあるのか、天龍は眠たそうに欠伸をした。
悠「あ、そういえば言うのを忘れてたが、回復魔法は傷は治すが、疲労や失血…流した血は戻らないからな。3人は朝の仕事のあとは休みにしておくから、しっかり休んでくれ。」
龍田「提督の魔法も万能じゃないのね〜。」
悠「この世に完璧なものなんて無いさ。だから俺たちは助け合って生きている。足りない所を補う為にな。
さっ!今からだと…4時間も寝れれば良いとこか。遅刻は厳禁だぞ!武蔵はいつも5時には起きてランニングしているからな、遅れれば遅れるほどバレる危険性は上がる。では、解散!」