ペルソナ4 the K.C.   作:黒城優輝

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久々の本編。だが短い。どうもです。黒城です。
さすがに本編を進めないとヤバいと思い、キリの良い所で以下略。
いつも通りと言えばそうなんですが…
とりあえず読んでやって下さい。


第十四話 対決!海賊ヲー! 中編

〜〜佐伯湾鎮守府・出撃ゲート〜〜

 

 

 

暁「まだ帰ってこないのかしら…」

 

睦月「お腹空いたよぉ…」

 

卯月「ヒマっぴょん…」

 

夕立「お腹と背中がくっつくっぽい…」

 

只今の時刻は午後8時半。

駆逐艦4人娘が、天龍達の帰りを待っている。

しかし、予定の方は時刻を過ぎても帰ってくる様子はない。そこに、

 

悠「おーい!」

 

暁「司令官?」

 

悠「その様子だと、まだ天龍達は戻ってないみたいだな。俺も一緒に待つよ。」

 

 

悠も合流し、共に出迎えの為に待つ。

 

………………………………

……………………………

…………………………

………………………

 

 

しかし、なかなか帰ってこない天龍達。

時刻も、午後9時を回ってしまっている。

 

暁「島風ちゃんじゃないけど、おっそーい!

レディーを待たせるなんてどうかしてるわ!」

卯月「ぷっぷくぷぅ〜…お腹ペコペコぴょん…」

 

夕立「うー…」

睦月「にゃー…」

 

悠「仕方ないな。食堂に行って、みんなに先に食べるように言ってくれ。」

 

暁「司令官は?」

 

悠「俺はここで待ってるよ。誰も出迎えてくれなかったら、天龍達も寂しいだろうしな。」

 

卯月「ごめんぴょん…。うーちゃんはもう限界ぴょん…」

 

夕立「提督さんも無理しないでね。」

 

睦月「じゃあ、あとはお願いしますにゃしい。」

 

4人娘を見送り、一人ゲートで天龍達を待つ悠。彼自身も空腹だろうに…。

 

悠「しかし…遅いな。何事も無ければいいが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜太平洋・宇和海境〜〜

 

 

時間は巻き戻り、午後6時。完全に陽が落ちるまであと少しといったところか。

敵の艦載機は、完全に陽が沈む前に撤退している。だが…

 

天龍「………」

 

龍田「天龍ちゃん!お願い!返事をして!」

 

天龍「…うるせぇよ龍田。傷に…響く…」

 

龍田「っ!天龍ちゃん!」

 

龍驤「すまんっ…うちのせいや…うちがもっと周りを見てりゃあ…」

 

どうやら天龍が負傷しているようだ。決して浅くないその傷、大破と見て間違いない。

原因は制空権争いに気を取られて、回避行動が疎かになった龍驤を、天龍が庇ったからだ。

いくら生前は歴戦の空母だったとしても、建造されたばかりで、艦娘としての練度は低かった龍驤。

軍艦としての戦い方と、艦娘としての戦い方は別物。龍驤はそのギャップを埋めきれなかった。

敵機を感知する電探も、周囲を警戒する見張り員もいない。もちろん発着艦の指示を出す管制塔も無い。いや、たとえ電探や見張り員があったとしても、艦載機から送られて来る情報を含め、全てを一人で処理し、艦隊の皆に伝え、艦載機への指示を出す。今の龍驤に、任務の終了間際で疲弊している彼女に、それらが出来るだろうか?

突然の奇襲、強大な敵戦力、疲弊した心体、そして艦娘としての練度不足。これらの要因が絡まりあい、結果として注意力の散漫を引き起こし、天龍の大破に繋がった。

 

天龍「悪りぃ…ちっと肩貸してくれ。」

 

龍田「動ける?」

 

天龍「ギリギリだ…。龍驤、機銃使えるか?」

 

龍驤「あ、あぁ、使えるで。」

 

天龍「よし…夜になったら艦載機は使えないからな…こんなんでも無いよりはマシだろ…。」

 

そう言うと、天龍は機銃を龍驤に渡す。

動けない彼女が持っているよりもましだろう。

まあ現状は、威嚇程度にしか使えないだろうが…。

 

龍驤「…よし!ちゃんと動くな。」

 

龍田「私は天龍ちゃんを曳航するわ。護衛は任せますね。」

 

龍驤「ああ、任せとき!」

 

天龍「すまねぇ…頼むぜ。」

 

龍驤「敵の追撃が来る前に撤退するで。闇に紛れながら静かにや…。すまんな天龍…長なるけど気張ってやぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜佐伯湾鎮守府・出撃ゲート〜〜

 

 

 

グゥー…

 

悠「さすがに腹が減ったな…」

 

あれから天龍達をずっと待ち続けている悠。

騒ぐ腹の虫をなだめるようにさすっていると…

 

島風「悠?いる?」

 

悠「島風?どうした?」

 

島風がお盆を持ってやってきた。お盆の上にはおにぎりとペットボトルのお茶が載っている。

 

島風「はい、荒垣さんが持ってけって。」

 

悠「ありがとう島風。」

 

悠は礼を言うと、おにぎりを一つ手に取り口に運ぶ。

 

悠「うん、美味い。助かったよ。」

 

島風「どーいたしまして!…ねえ、まだ天ちゃんとタッちゃんとりゅうちゃんはまだ帰ってこないの?」

 

悠「ああ、いくらなんでも遅すぎる…」

 

悠「………」

 

島風「…悠!!」

 

悠「!!うおっと!どうした大声出して?」

 

島風「お話ししよ!楽しいお話!」

 

悠(どうやら不安が顔に出ていたようだ。島風に気を遣わせてしまったな。)

「そうだな…俺の仲間の話でいいか?」

 

島風「うん!聞かせて!」

 

 

 

 

 

しばらく島風に特捜隊の仲間の話をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチッ…カチッ…カチッ…

 

島風「スゥ〜…スゥ〜…」

 

現在時刻は午後11時を回っている。ゲート内には、時計の秒針の音に、話し疲れて眠ってしまった島風の寝息、そして波の音が聞こえるのみである。

 

悠(武蔵か金剛に連絡して部屋に連れて行ってもらうか?)

 

自分の膝で寝ている島風の髪を撫でながら、そんなことを考えていると…

 

…………!………。

つい……!は…………う……!

 

悠「ッ!帰ってきたか!」

 

ゲートの向こうから、わずかだか声が聞こえる。

 

 

 

 

龍驤「艦隊帰投や!早く!」

 

龍田「天龍ちゃん!もう大丈夫よ!」

 

天龍「いちいち大袈裟なんだよ…。イテテ…」

 

?「強ガルンジャナイヲ!手当シタッテイッテモ、ソノ場シノギノ応急処置シカシテナインダゾ!」

 

悠「みんな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠「イシュタル!」パリィン!

 

イシュタル「よく頑張りましたね!メシアライザー!」

 

パァァッ!

 

天龍「……スゲェな。本当に治ってやがる…」

 

龍田「鳴上提督、ありがとうございます。」

 

龍驤「ホンマによかった…。うちのせいで…すまんかった天龍。」

 

 

帰ってきた天龍達に回復魔法をかける悠。

天龍が大破していると聞いたときは驚いたが、すぐに気持ちを切り替え、慌てることなく処置を施す。

ちなみに島風は、起こすのもあれなので学ランをかけて寝かせてある。普段は10時には寝てしまっているため、よく眠っている。

 

 

?「ヨカッタナ!ジャア約束ハ守ッテモラウゾ!」

 

悠「……うん。報告は疲れているだろうから明日…と言いたいところだが…」

 

 

悠「彼女(?)は誰!」

 

 

?「ヲ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヲー「私ハ海賊ノ『ヲー』ダ!ソイツラガ夜ノ海デ困ッテタカラ、手ヲ貸シテアゲタンダ!」

 

龍驤「よく言うわ。『暗いよ〜、怖いよ〜、ルーちゃーん!』言いながら泣きわめいてたくせに〜。」

 

どうやら天龍達はこの深海棲艦に助けられたようだ。

 

悠(ふむ、ちみっこい体に不釣り合いな2つの大きな果実。トランジスタグラマーってやつか?

…まあ、それはそっとしておいて。)

「どういう経緯でそうなったのか聞かせてもらえるか?」

 

天龍「ああ、分かった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜回想〜〜

 

 

こいつと会ったのは、帰投途中の航路で、深海棲艦の機動部隊に奇襲を受けてから、何とか逃げ切って、完全に暗くなるのを待っていた時のことだ。

 

 

龍驤「…暗いな。」

 

龍田「羅針盤も見にくいわね。迷わないように注意しましょう。」

 

天龍「…待てッ!何か、聞こえねぇか?」

 

 

撤退行動を開始しようと準備を始めた時、どこからか泣き声が聞こえたんだ。

 

 

龍田「どうします?」

 

天龍「…駆逐艦のガキかもしれねー。拾って帰るぞ。」

 

龍驤「はぁ⁉︎何言っとるん!そんな余裕、うちらには無いやろ!」

 

天龍「悪りぃな龍驤。いつまでも泣かれてちゃ耳障りなんだよ。傷に響いて仕方ねぇ。」

 

龍田「全く…天龍ちゃんったら。素直に可哀想だから助けてあげたいって言えばいいのに。」

 

天龍「っ!!バカやろッ!別にそんなんじゃ…あいててて…」

 

龍田「ほら〜、大声出すと傷に触るわよ〜。」

 

龍驤「はぁ、しゃーない。その怪我もうちのせいやもんな。まっ、大破した天龍よりは使えるやろ!」

 

天龍「何だとコラァッ!…あいたたた…」

 

龍田「ちょっと!出血が!もうっ!天龍ちゃん!大人しくしてて!龍驤さんも止めてください!」

 

龍驤「す、すまん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天龍「…ありゃ何だ?」

 

龍驤「ボッチの深海棲艦やな。」

 

龍田「何だか色々おかしいわね。」

 

ヲー「ヒッグ…グスン。ウエェェン…ルーチャーン…」

 

泣き声がした方に近づいてみると、一人の深海棲艦…多分空母ヲ級。俺らが知ってるやつよりもチビなやつが、トボトボ泣きながら歩いてたんだ。

 

龍田「…暗くてよく見えないけど、あの子が手に持ってるのって…」

 

天龍「でっかいパチンコだな。」

 

…あんなのどーすんだよ。

 

龍驤「なぁ、あれってうちらを襲った空母と違うん?」

 

龍田「多分違うわね。深海棲艦の正規空母は、特殊な杖を使って艦載機に指示を出しているらしいの。あんな手作り感満載のパチンコじゃあ無理よ〜。」

 

ヲー「ッ⁉︎」

 

天龍「マズイ!気づかれた!」

 

遠目から様子見をしていると、敵もこっちに気づいたみたいでよ。こっちに接近してきたんだが…

 

ヲー「オ姉サン達誰ダヲ?」

 

ふつーに話しかけられた。

 

天龍「…あ〜、えっとだな。」

 

龍田「私は龍田って言うの。私に寄りかかってるのが、私のお姉さんの天龍ちゃん。で、こっちが友達の龍驤ちゃんよ〜。あなたは?」

 

ヲー「私ハ…ヲーダヨ。」

 

龍田「ヲーちゃんね?ヲーちゃんはどうして1人で泣いてたのかな?」

 

ヲー「エットネ…」

 

 

 

ヲーちゃん説明中……

 

 

 

天龍「んだよ…ただの家出娘じゃねーか。」

 

要約するとこうだ。

貧しい生活から抜け出す為に海賊になろうとして、子分を増やす為に保存食を使っちまったらしい。

結局作戦も失敗に終わったみたいだぜ。

それで、姉貴分に怒られるのが嫌で逃げてきたと…深海棲艦にもこんなアホがいるなんてな。

 

龍驤「どうにかしてやりたいけどなぁ…」

 

龍田「難しいわね。早く帰って、天龍ちゃんの怪我も治さなきゃだし。」

 

ヲー「片目ノオ姉サンハ怪我シテルノ?」

 

天龍「ああ、ちょっとドジっちまってな。」

 

ヲー「私、救急セット持ッテルヨ!」

 

龍驤「マジでか!なあなあ、ちょっと使わせてくれへん?」

 

ヲー「ジャア…取引、スルヲ!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーー

 

ーーーーーー

 

ーーーー

 

ーー

 

 

悠「で、その取引の内容は?」

 

天龍「使った包帯やら消毒液の補給と、飯に寝床。あと食料、保存の効くやつを分けてくれだとさ。」

 

悠「分かった。ヲーちゃん、天龍が世話になったみたいだな、ありがとう。救急セットと食料は明日準備させてもらうけど、いいかな?」

 

ヲー「ソンデイイヨ、ソレヨリオ腹空イタ。何カ食ベサセテホシイナ!」

 

悠「うーん…何かあるか分からないが…。3人はヲーちゃんをとりあえず食堂に案内してあげてくれ。俺も島風を部屋に連れて行ったらすぐ行く。」

 

龍田「…あの、提督は疑わないんですか?」

 

悠「ん?ん〜、悪い子じゃないみたいだし、大丈夫じゃないか?龍田もそう思って一緒に連れてきたんだろ?」

 

龍田「…それもありますが、私達の事は?深海棲艦と通じて、この鎮守府を堕とそうとしているかもしれないんですよ?」

 

悠「龍田、出会ってまだ一月程度だが、俺たちは仲間だ。疑うもんか。仮にそうだったとしたら…ブン殴ってでも目を覚まさせてやるさ。」

 

龍田「鳴上提督…」

 

悠「じゃあ俺は島風を部屋に送ってくるから、後で食堂で落ち合おう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍田「本当に…貴方は、馬鹿みたいに真っ直ぐで…優しいのね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜寮・食堂〜〜

 

 

悠「さて、冷蔵庫の中は…」

 

悠は、島風を部屋に送り届けたあと、食堂で冷蔵庫の中をチェックしていた。…どうやら謎の草は無いようだ。

 

ヲー「ゴッハン!ゴッハン!」

 

テーブルでは、ヲーがやかましく騒いでいる。

 

天龍「コラッ!静かにしろ!他のみんなが起きてきたら面倒だろ!」

 

悠「期待に応えられるように頑張らねば…」

 

 

 

悠「……冷蔵庫の中には、冷やご飯と卵、封の開いたウインナー、あと野菜の切れっぱしか…

ステーキ肉は…天龍達の分だな。

よし、ケチャップがあるからオムライスにしよう。」

 

 

トントントン…

 

ジュー!

 

昔ながらのオムライスが出来た!

 

悠「よし!出来たぞ!みんなの分も作ったから、持って行ってくれ!」

 

 

 

 

 

 

ヲー「ウンマァーイ!」

 

天龍「ハフハフ…鳴上もなかなかやるじゃねーか!」

 

龍驤「ホンマやな!荒垣さんの手伝いしとるだけはあるわマジで。」

 

悠「ありがとう。ん?龍田?あんまり食べてないな。口に合わなかったか?」

 

龍田「…こんな遅くに食べたら、ねぇ?」

 

悠「あ〜、すまない、そこまで気が回らなかったな。」

 

龍田「というわけで、もっとお肉を付けたほうがいい龍驤さんにあげちゃいまーす♪」

 

龍驤「んやそれ!喧嘩売っとんのか!…まあ、もらうけどな。」

 

天龍「もらうんかよ…」

 

龍驤「そやで〜、残したらモッタイナイオバケが出るんやで〜!」

 

悠(大阪のオバちゃんみたいだな。)

 

 

 

 

皆で遅めの夕食を食べた。

 

 

 

龍驤「じゃあ、ヲーちゃんはうちの部屋に泊めるっちゅーことでええな?」

 

悠「ああ、頼んだ。」

 

ヲー「オ世話ニナルヲ!」

 

天龍「で、明日は朝イチ…午前4時で倉庫から物資を取ってきて、ヲーの奴をみんなに感づかれる前に送り出すと。」

 

悠「必要な物は俺の方で荷造りしておくから、ばれないように頼む。」

 

食事を終えた一行は、明日の予定を立てている。

寮からゲートまでのルートや、部屋を出る時間など、細かく打ち合わせをする。

敵意が無いとはいえ、深海棲艦が鎮守府にいると分かれば、事情を知らないメンバーがどう動くか分からないからだ。

 

天龍「しっかし…フワァ…回復してもらったのにめちゃ寝み〜…」

 

時刻は既に深夜0時を回っており、任務の疲れもあるのか、天龍は眠たそうに欠伸をした。

 

悠「あ、そういえば言うのを忘れてたが、回復魔法は傷は治すが、疲労や失血…流した血は戻らないからな。3人は朝の仕事のあとは休みにしておくから、しっかり休んでくれ。」

 

龍田「提督の魔法も万能じゃないのね〜。」

 

悠「この世に完璧なものなんて無いさ。だから俺たちは助け合って生きている。足りない所を補う為にな。

さっ!今からだと…4時間も寝れれば良いとこか。遅刻は厳禁だぞ!武蔵はいつも5時には起きてランニングしているからな、遅れれば遅れるほどバレる危険性は上がる。では、解散!」


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