ペルソナ4 the K.C.   作:黒城優輝

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外伝とかって本編よりも筆が進みますよね?どうもです。黒城です。
今回は、オチ無しヤマ無しほのぼの日常系に仕上がってるかと…。
秋イベで荒んだ心の癒しになれば幸いです。
それと、この話は、書き方をガラッと変えてます。もしかしたら今後もこういった事があるかも知れませんが、よろしくお願いします。


第十二・五話 花ちゃんの鎮守府暮らし

(うへ〜…流石は相棒。異世界でも修羅場るとは…)

 

 

俺は、小鉢に入ったひじきの煮物をつまみながら、秘書艦がどうだと騒いでいる連中を眺める。

あ、今、悠と目が合った。とりあえず目を逸らしておこう。

…あいつには悪いが、もう修羅場に巻き込まれるのは御免だ。

 

 

(まっ、自業自得だよな。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんかすみません。一緒に連れてきてもらっちゃって。」

 

「ははは、別にいいって。あんな事になってちゃ誰だって居にくいしな。」

 

「クマもフブキチちゃんとお話ししたかったから丁度良かったクマ。」

 

 

朝食を急いで食べ終えた俺は、とばっちりを喰らう前に食堂を出て、談話室に来ていた。

あとついでに、同じく居心地の悪そうにしていたクマとフブキチ(本人曰く『吹雪』という名前だそうだが)も連れてきた。

とにかく、その2人と相棒について色々話してたんだ。

 

 

「いや〜、しかしセンセーも大変クマね〜。」

 

「無自覚のうちに口説いてるからな。あいつ。」

 

「司令官は、元の世界でもモテモテだったんですか?」

 

「まあな。悩み相談みたいな事してたら、いつの間にか…てのがえーと…8人?いや9人だったか?全員把握してるわけじゃねーけど、これくらいはいたな。」

 

「うわあ…」

 

 

話の流れで、フブキチに相棒の天然ジゴロっぷりを話してやると、引いてた。

すまん相棒、お前の評価を下げちまったみたいだ。

 

 

「あら、ここにいたのね。」

 

「あれ?マーガレットさん?なんか用っすか?」

 

 

皆でたわいのない話を続けていると、マーガレットさんがやってきた。

悠のやつに、何も知らされずに天上楽土に連れてかれて、この人にボコボコにされたのも今ではいい思い出だな…(遠い目)

 

 

「はい、これ。貴方にもね。」

 

「ん?カード?何すかこれ?」

 

「40枚集めて闘うクマ?」

 

「デュエルッ!ってどう見たって違うだろ…」

 

「あと39枚拾うクマ!」

 

「だから!ちげーって言ってんだろ!」

 

「クスクス…」

 

 

ほら見ろ!フブキチに笑われてんじゃねーか!うわ〜…なんか恥ずい。

しかし、このカードは何だ?見た所、阿武隈…今の俺の姿がプリントされてるけど。

 

 

「あの、このカードは?」

 

「これは艦娘カード。身分証よ。それ以外にも、出撃や外出の手続きに使ったり、電子マネー機能も付いてるのよ。

でも、今は仮登録しかしていないから、出撃と外出は出来ないわ。」

 

「へ〜…」

 

「ほ〜、ほいっとな。」ピッ!

 

 

あっ、あのクマ!談話室の自販機に早速使ってるし!もうちょい説明聞いてからにしろよな…。

 

 

『お金が足りません。チャージして下さい。お金が足りません。チャージして下さい。』

 

「クマぁ…」

 

「金は入ってないのか…」

 

 

ちょっとがっかり。つーか、気を利かせてちょっとくらい入れといてくれても良くね?

 

 

「ふふふ、給金が入るまでは我慢しなさい?それまでに戦果を上げることね。そうすれば貰える金額も増えるはずよ。」

 

「だとよクマ。」

 

「オヨヨ〜…」

 

「艦娘カードがきたってことは、花ちゃんさんとクマさんも出撃…は仮登録ということで出来ませんが、鎮守府のそばで海上訓練が出来ますよ!どうです?海に出てみませんか?」

 

「おっ!いいな!話には聞いてたけどさ、実際どんなもんかは知らないからな。ワクワクするぜ!」

 

「クマの華麗な舞に驚くがいいクマよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほー、ここから出撃するのか〜。」

 

「はい。あそこの端末、ターミナルって言うんですけど、あれで手続きが出来ますよ。」

 

「どことなく、き・ん・み・ら・い・て・き☆クマね!」

 

「ウゼェ。」

「しどい!」

 

 

俺たちは、フブキチの案内で出撃ゲートに来た。もっと機械がごちゃごちゃしてるもんかと思ってたけど、意外とスッキリしてんな。

 

 

「えーと、艤装はどっから持ってくるんだ?それっぽい部屋が見当たらねーけど。」

 

「あ、それなら心配しなくて大丈夫ですよ。出撃する時に、格納庫から転送されますんで。でも、自分でメンテナンスする時は、艤装の工廠に行って下さいね?」

 

「おぅ、了解。」

 

 

しかし転送か…。どう考えてもオーバーテクノロジーだよな。どんな感じなんだろうな?

 

 

「…はい、これで訓練の申請が終わりました。さぁ、行きましょう!」

 

「おっしゃー!」

「出発クマー!」

 

 

フブキチにターミナルの使い方を教わりながら、海上訓練の申請を終える。そこまで難しくはないな。これなら次からは1人でも大丈夫そうだ。

 

 

「では、出撃パネルに乗って…」

 

「これか?…うおぉっ!」

「ホトバシルー!」

 

 

なんか光ったぞ!本当に大丈夫なのか!

 

 

「……ふぅ、光ったのは一瞬だけか。

ん?おぉ!足になんか着いてんな!武器もでてくんのか!便利だな。なぁ、クマ…クマ⁉︎」

 

「クマ、出撃クマー!」

 

「な、なんですかそのくま風の着ぐるみは〜!」

 

 

クマのやつ、まさか艤装がガワだとは…。

ほら見ろ〜、可哀想に…フブキチのやつテンパってんぜ…。

 

 

「いや〜、良かったクマ!正直失くしたと思ってたクマ。」

 

「流石は司令官のご友人ですね…。司令官も大概非常識でしたが…これは予想外過ぎますよ〜…」

 

「あ〜…なんか、すまん。」

 

「あ、いえ、こちらこそ取り乱してしまってすみません。」

 

「何ぼさっとしてるクマ!さっさと行くクマよ〜!」

 

「誰のせいだよ!たくっ…」

 

「あはは…では、気を取り直して行きましょうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うおっと!中々難しいな!」

 

「前に進むのは艤装のエンジンがやってくれます!私たちは舵取りに専念しましょう!」

 

「スイー♪スイー♪」

 

「なんであいつはあんな上手いんだよ…」

 

「多分、重心が低いので、バランスが取りやすいのかと。」

 

「なるほど…」

 

 

鎮守府の港の海上で、航行訓練を始める俺たち。ガキの頃の自転車の練習を思い出すぜ。

つーかクマのやつ、マジでなんであんな上手いんだよ…。どっちかっつーと鈍臭い方だぜ?あいつ。

てか、そもそもなんでクマ皮で海の上走れんだよ…。

まぁ、あいつの生態は謎だらけだしな。気にしないようにするか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨースケ!いくクマよ〜!カムイモシリ!マハブフダイン!」

 

「よっし!あらよっと!良い風頼むぜ!タケハヤスサノオ!」

 

「え〜…何でもう私より上手くなっちゃうんですか〜…」

 

 

小一時間ほどで、艤装の扱いにも慣れた俺とクマは、ペルソナを使って波を起こし、サーフィンの要領で遊び始める。

でも何故か、フブキチが恨めしそうな視線を送ってくる…。何でだ?

 

 

「よ〜し!次はクマがいくクマよ〜!ビックウェーブカモ〜ン!」

 

「うっし!いくぞクマ!青春の風!」

 

「そーい!」

 

「なぁ、フブキチもやるか?結構楽しいぜ?これ。」

 

 

良い感じに波を起こし、クマを波に乗せながら、フブキチにもやってみないかと誘う。

仲間外れ…ってわけじゃねーけど、ほっとくわけにもいかないからな。

 

 

「え?私がですか?」

 

「そ、波の加減もある程度は出来っから、とりあえずやってみない?」

 

「…えぇ!やりましょう!」

 

「おっ!やる気だな!じゃあまずは小さめの波から慣らして…」

 

「いえ、花ちゃんさんと同じくらいでお願いします!」

 

「は?いやいや、いきなりは危ないだろ?」

 

「私は…戦闘では、きっとお二人より弱いです…。でも!艦娘としては私の方が先輩なんです!吹雪型ネームシップの誇りにかけて、飛んで見せます!」

 

 

ヤバい。なんか変なスイッチ入ってるし…。

あとサーフィンは波に乗るものであって飛びはしないからな?いや、上級者とかは飛んでるかもしれないけど。

 

 

「さあ!遠慮は入りません!きてください!」

 

「チッ!後悔するなよな!ペルソナァッ!」

 

「吹雪、いきまーす!」

 

 

…気合いを入れて波に乗るフブキチ。

あ、こけた。いや?立て直した⁉︎

 

 

「キャアァァッ!」

 

 

飛んだぁ⁉︎てか、やっぱりダメじゃねーか!

くっ!マズい!飛んだ先にクマが!

 

 

「キャアァァッ!」

「クマ?クマァァァッ!」

 

 

…フブキチのドロップキックがクマの顔面に突き刺さった。あーあ…フブキチはなんとか着地したみてーだけど、吹っ飛ばされたクマは?

 

 

「クマァァァ!皮が!クマの毛皮がぁぁッ!海の水でカピカピになるクマァァァッ!」

 

 

…怪我はねーみたいだ。

たくっ、フブキチも無茶しやがって…。

 

 

「ほら見ろ。だから言っただろ?小さめの波から慣らしてけって。」

 

「す、すみません…」

 

「怪我は無いか?」

 

「はい、大丈夫です。」

 

「ならよし!クマ〜?大丈夫か〜?」

 

「ダメクマ…早く戻ってクマ毛のお手入れしないと大変な事になるクマ…」

 

「しゃーねー、戻るとするか〜。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほい、到着っと。」

 

 

フブキチのドロップキックでお開きとなった訓練(途中から遊んでたが)から戻ってきた俺たち。

帰投パネルとやらに乗ると、行きと同じように光に包まれ、艤装と装備が消える。本当どうなってんだこれ?

 

 

「早く艤装工廠とやらに行くクマ!フブキチちゃん!どっちクマ⁉︎」

 

「慌てないで下さい。まずは帰投報告をしないと…」

 

「ムムムゥ…」

 

 

フブキチの指示通りに手続きを進めていく。

こっちの方もやり方を覚えとかないとな。

 

 

「終わったクマ?終わったクマ?」

 

「うるせぇよ!少しは落ち着いてらんねーのか!」

 

「…はい、終わりましたよ!」

 

「じゃあ早く案内するクマ!」

 

「おいクマ、頼み方おかしいだろ。」

 

「分かりました。こちらです。」

 

「スルーかよ!」

 

 

クマのやつ…よっぽどクマ皮が心配らしいな。フブキチももう少し疑問に思ったりしろよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみませーん!テオさーん、居ますかー?」

 

 

俺たちは、フブキチの案内で艤装工廠にやってきた。とりあえずだな、隣のMOEL石油は何なんだよ!何であるんだよ!

 

 

「おや、皆さん。如何なさいました?」

 

「あ、イザナミさん。こんにちは。」

 

「はい、どうも。」

 

 

「……………………………………………………………………………………………………」

「……………………………………………………………………………………………………」

 

「ウオォォォッッッッ!」

「クマァァァッッッッ!」

 

 

なんかいる〜!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ、つまり今はもう世界を滅ぼす気は無いと。」

 

「ええ、安心して下さい。滅びませんよ。」

 

「………」

 

「おや?今流行りのギャグを、私風にアレンジしてみたのですが…。面白く無かったですか?」

 

 

あれから、イザナミに事情を説明された。

ついでに、こっちの事も説明しておいた。

もう世界を滅ぼす気は無いって言っても、やっぱ心臓に悪いわ…。

 

 

「まあいいでしょう。で、何か用があったのではありませんか?」

 

「あ、そういやそうだったな…」

 

「実は、クマのクマ皮が海の水でビシャビシャになっちゃったクマ…お手入れしないとクマ毛がゴワゴワのカピカビになるクマ〜!」

 

「ああ、それなら私が元に戻しましたよ?」

 

「クマ?どういう事クマ?」

 

「見てもらった方が早いですかね?まだしまっていないので、そこにありますよ?」

 

 

イザナミはそう言うと、ガソリンスタンドの方を指差した。そっちをに見ると、濡れていたはずのクマ皮が、乾いた状態で台車に載せられてた。

…間違いなくクマ皮は濡れ鼠になってた筈だ。こんな短時間で乾くもんなのか?

 

 

「実はかくかくしかじかで。」

 

「ふーん…。って!かくかくしかじかで分かるか!」

 

「フムフム…ちゃんと乾いてるクマね。お塩も吹いてないクマ。」

 

「あ〜…もういいや…。クマ、乾いてんならもう行こうぜ?」

 

 

なんかどっと疲れた…。早くこの場から立ち去りたいぜ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ昼か。どうする?もう食堂行くか?」

 

「私は構いませんよ?」

 

「今日のお昼は何クマね?」

 

 

艤装工廠を後にしてから、少し歩いていた俺たち。ふと空を見上げると、太陽は南中に差し掛かろうとしていた。

そこで俺は、2人に食堂に行かないかと誘う。

荒垣さんの作る料理はかなり美味いからな。楽しみだぜ!

 

 

 

「おっ?まだ誰も来てね〜のか。」

 

「いいじゃないですか。居たら居たで朝みたいになってもあれですし。」

 

 

食堂に到着した俺たち。どうやら少し早く来すぎたようで、俺たち以外には誰も居なかった。

 

 

「荒垣さーん。今日の昼飯は何すか〜?」

 

「今作ってっから黙って待っとけ。」

 

 

とりあえず、荒垣さんに今日のメニューを聞いてみるが教えてくれない。

なんつーか、職人気質っぽいな。

 

 

「クンクン、クンクン。」

 

「何してんだクマ?そんなに腹減ってんのか?」

 

 

ウォーターサーバーで水をもらって席に着くと、クマが厨房の方に向かって匂いを嗅ぎ始めた。

確かに良い匂いだな。こりゃ生姜の香りか?腹が鳴りそうだぜ!

 

 

「…やっぱりガッキーからペルソナの匂いがするクマ。」

 

「はぁ?あの人が?」

 

「あれ?聞いてなかったんですか?荒垣さんってペルソナ使いらしいですよ?」

 

「…マジでっ⁉︎」

 

 

腹減ってたんじゃねーのかよ!てか何だよそれ!聞いてねーよ!

悠の奴め…イザナミの事といい、ちょこちょこ大事な事話し損ねてんじゃねーか…。

 

 

「まぁでも、荒垣さんは戦う気は無いらしいですよ?」

 

「そりゃまた何で?ペルソナ使えんなら一緒に戦ってくれりゃあいいのにな。」

 

「本人曰く…

『俺の戦いは終わった。死にはしたが、結果には満足してな。

そんな死人が、今を生きてる奴にちょっかいかけるわけにはいかない。』

みたいな事を言ってましたね。」

 

「…えっ⁉︎あの人死んでんの⁉︎」

 

「たまげたクマね!」

 

「あ〜…、えっとですね、一応は生きてるみたいですよ?なんでも、三途の川の渡し守に、マーガレットさんが頼んで生き返らせてもらったそうです。」

 

「…滅茶苦茶だな。」

 

「おーい!出来たぞ〜!持ってけ〜!」

 

「おっ!出来たみたいだぜ!」

 

「お〜!早く食べるクマ〜!」

 

 

荒垣さんについて色々聞いているうちに、昼食が出来たみたいだ。

うっひょ〜!ウマそ〜!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいクマ〜…。ヒマなんだけど〜…。」

 

「クマに言われても…クマ、クマっちゃうクマ〜!」

 

「30点。」

「しどい!」

 

 

俺たちは昼食(豚の生姜焼き定食だった。勿論美味かったぜ!)を食べ終え、再び談話室に行くが、特にすることも無くダラけていると…。

 

 

「む、ここにいたか。」

 

「あ!武蔵さん!お疲れ様です!」

 

「ウッス。」

 

「ムサしゃんだクマ!何か用クマ?」

 

「ムサしゃん言うな!ったく…。ほら、花ちゃん、クマ、暇してるならこれでも読んでおけ。」

 

 

そう言うと、武蔵さんに一冊の本を渡された。なになに…艦隊指揮(イチ)

 

 

「あの〜、これは?」

 

「艦隊指揮の基本を纏めたものだ。他にもあるのだが、今用意出来たのがそれしか無くてな。他の教科書も、用意出来しだいくれてやるからしっかり勉強しろよ?」

 

「…はい。」

 

 

あぁ…逃れられない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「グカー…すぴー…」

 

「こいつめ…。始めてすぐに寝やがって…」

 

「あはは…」

 

「悪いなフブキチ。付き合ってもらって。」

 

「いえ、これくらいはお安い御用です。」

 

 

あれから俺は、武蔵にもらった教科書で、艦隊指揮について勉強をしている。分からないところはフブキチに聞いているから、今の所はつまづかずにやれている。

しかし…クマのやつ、すぐに寝やがった。

正直こうなるんじゃないかとは思ってたけどさ、もうちょい頑張る姿勢ってもんを見せてほしかったぜ…。

 

 

 

 

「悠〜?Are you there?」

 

「あれ?金剛さん?」

 

 

しばらく勉強を続けていると、金剛さんだったか?が談話室にやって来た。どうやら悠のことを探してるみたいだ。

 

 

「Oh!フブキチに花ちゃん!にクマはsleepingデスネー。

実は悠を tea time に誘おうと思ってたのデスが…、can not find デース…。Do you know his whereabouts ?」

 

「ちょっ…、えっと?今なんて?」

 

「金剛さん、単語だけならまだしも、文になっちゃうとさすがに分からないです。」

 

 

英文だと分からないと素直に伝えるフブキチ。正直俺も分からなかった…。受験生なのにな、俺…。

 

 

「oh sorry 2人は悠の居場所を知ってますカー?」

 

 

金剛さんは、すぐに日本語で言い直してくれた。しかし、残念ながら悠の居場所は俺も知らん。

 

 

「すんません。知らないっすね。」

 

「私も…。力になれずすみません…」

 

「 no problemデース!そうだ!悠は見つかりそうにありませんから、良かったら tea time しませんカー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Welcome to my room!」

 

 

あれから、金剛さんにお茶に誘われた俺たちは、勉強を切り上げ、クマを起こし、金剛さんの部屋に来ていたが…。

 

 

「堂島さん家じゃねーか!」

 

「クマビックリ!」

 

「司令官も似たような反応してましたね〜。」

 

 

もう何でもありな気がしてきたぞ…。

てか、堂島さん家の間取りを再現してるって事は、ここって悠の部屋じゃねーのか?

…まさか。

 

 

「えっと、ここって悠の部屋じゃないんすか?」

 

「悠のroomでもありますネー。このroomのcapacityは4人なのデース!私と悠の他に武蔵と島風がroom share してマース。」

 

 

ほらみろ!てか、一緒に暮らしてんのさっき言い争いしてた面子じゃん!

 

 

「Sit down please. I get ready for tea time.」

 

「や、だから全部英語だと分からないって…」

 

「muuu…今のはeasyだと思ったんデスガ…」

 

 

ぐおぉ…俺の英語力の低さがモロに…。

筆記なら結構点は取れるんだぞ!ただちょっとリスニングはあんまりやってなくてだな…って誰に言い訳してんだ俺…。

 

 

「とにかく、座って待っててくだサーイ。私は紅茶の用意をしてキマース。」

 

 

結局全部日本語に言い直してくれた…。

 

 

「ヨースケはダメダメクマねー!」

 

「うるせぇよ!お前だって分かんねーだろ!」

 

 

 

 

 

しばらくして金剛さんがティーセット一式とクッキーを持ってきてくれた。

紅茶かぁ、ペットボトルかパックのやつしか飲んだことねーけど、金剛さんはどうやら茶葉から淹れてるっぽいな。

 

 

「Here's your tea.」

 

「頂きます。」

 

「フーフー」

 

「へぇ〜、やっぱペットボトルとは違うな。」

 

 

紅茶を一口飲むと、ペットボトルの物とは違う格調高い香りが鼻に抜ける。

…まぁ、具体的にどう違うかはよく分かんねーけど。

 

 

「こっちのクッキーは?」

 

「それも私がmakingしたヨー!」

 

「サクサク!ムシャムシャ!」

 

「おいっ!そんないっぺんに食うなよ!」

 

「美味し〜!今度私にも教えてくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ!花ちゃん!お好きなhair accessory をchoiceしてくだサーイ!」

 

「すげー量っすね…」

 

「あ、これ可愛い!」

 

「oh!フブキチ!nice choice デース!どれどれ〜?」

 

「あ、ありがとうございます!どうです?似合いますか?」

 

「フブキチちゃんかわい〜クマ!」

 

 

あれから俺たちは、お茶をしながら、金剛さんの持ってきた髪飾りを見ている。

そーいや花の髪飾りを俺に付けるとか言ってたな。

…しかしすげー量。どれにすっかな…。

おっ?これ良いんじゃね?

 

 

「金剛さん、このピンクの花の髪飾りは?」

 

「花ちゃん?それはカリンの花飾りデース!uniqueだったので思わず買っちゃいマシタ!それがfavoriteデスカー?」

 

「ああ、ちょっと鏡貸してくれ。」

 

「良く似合ってますよ!花ちゃんさん!」

 

 

俺が選んだのはカリンの花飾りがついたヘアピンだ。しかし、カリンの花のヘアピンなんてよくあったな。

直感で選んだとはいえ、我ながらマイナーな花を選んだもんだぜ。

 

 

「金剛さん、これ貰ってもいいっすか?」

 

「of course!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ夕飯か〜。」

 

「ガッキーは何を作ってくれるクマね?」

 

 

お茶を頂いた後、俺たちは金剛さんと別れ、外をブラついている。

鎮守府という場所柄か、海に沈んでいく夕焼けが目に眩しい。

 

 

「あ!司令官!お疲れ様です!」

 

「おー!センセー!こっちクマ〜!」

 

「ん?フブキチ?陽介とクマも一緒か。」

 

 

3人で夕陽を眺めていると、本棟の方から悠が歩いて来た。フブキチはいち早くそれに気づき、挨拶をする。

 

 

「悠!姿が見えないと思ったらどこ行ってたんだよ?」

 

「新艦建造の報告書を書くので、本棟の執務室にいたんだ。」

 

「あー、それって俺らの?」

 

「ああ、ちゃんと提出しないと経費が貰えないからな。」

 

 

早速お仕事か。まぁ、こいつの事だ。デスクワークくらいは軽くこなすだろ。

 

 

「ん?陽介、そのヘアピンは?」

 

「これか?カリンの花のヘアピン。金剛さんに貰ったんだ。言ってたろ?花のファクターを増やすだなんだってさ。」

 

「そういえば言ってたな。…カリンの花か。陽介にはピッタリかもな。」

 

「は?何で?」

 

「カリンの花言葉は『可能性』なんだ。そして、陽介のアルカナの魔術師にも可能性の意味があるんだ。」

 

「へー…」

 

 

流石相棒、博識だな。しかし、そうか、可能性か…。

直感で自分のアルカナと同じ意味の花を選ぶなんてな。これも運命ってやつ?

 

 

「そういや悠。」

 

「何だ?」

 

「お前、今朝の3人とルームシェアしてるんだってな?金剛さんから聞いたぜ?」

 

「…ああ、ていうか陽介、今朝、無視しただろ?」

 

「相棒の修羅場に直接巻き込まれんのはもう懲りてんだよ!」

 

「…ああ、あのバレンタインデー…。あれは酷い事件だったな。」

 

「本当だよ!たくっ…。まあなんだ、直接は助けてやれねーけどさ、一緒に考えてやるくらいは出来るぜ?どうやってあの3人をなだめるつもりだ?」

 

「ああ、それならなんとかなりそうだ。」

 

「まあ、いざとなったら俺も体張って…って、なんとかなる?」

 

「協力者が出来たからな。もうこの件では陽介の手を煩わせる事も無いだろう。安心してくれ。」

 

「あ、ああ…。それならいいんだ!安心したぜ!」

 

「じゃあ俺は荒垣さんの手伝いに行くから。また夕食の時間にな。」

 

「おぅ!また後でな!」

 

 

相棒は話を終えると、寮の方へと歩いて行く。なんだ、解決してんのか…。

 

 

「ヨースケ、フられちゃったクマね。」

 

「いや、振った振られたとかって話じゃねーから。」

 

 

…なんだよこの妙なもやもやした感じ。

次はすぐに助け船、出してやるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜…疲れた。」

 

「ピリピリしてたクマね〜。」

 

「ああ、金剛さんと武蔵さんな。直接言い争うような事はなかったけど、お互い視線だけで牽制し合ってたな…」

 

 

俺は夕飯を食べ終えた後、クマと部屋に戻ってきた。

てか、何で夕飯の時間で疲れなきゃなんねーんだよ…。あれか?戦艦の眼光ってのは周りにも影響すんのか?

 

 

「なー、ヨースケ。」

 

「なんだよ。さっさとシャワー浴びて寝ちまおうぜ?」

 

「クマたち、元の世界に帰れる?」

 

「んだよ、そんな事聞くなよ。」

 

「そんな事とは何クマ!ヨースケは不安にならないクマか?」

 

「いいかクマ?帰れるか、じゃねー。絶対に帰るんだ。不安になる暇があんなら武蔵さんに貰った教科書でも読んどけ。

大丈夫だ、相棒もいるんだ。どんなピンチだって俺たちは乗り越えてきただろ?今回もなんとかなるさ。」

 

「クマ…。ヨースケが良いこと言ってるクマ。気持ち悪いクマ…」

 

「んだよっ!人がせっかく励ましてやってんのに茶化してんじゃねーよ!」

 

 

たくっ…。クマの奴め。

…まあ俺も不安を感じない訳じゃない。

いきなり異世界に来たかと思えば、帰れなくなるし、見た目も性別も変わっちまうし…。

でも俺は悲観しない。元の世界に帰れる可能性を信じる!無くても作ってやる!

確かに…俺一人じゃ無理かも知れない。でも俺は一人じゃない。仲間がいる、相棒がいる、ちょいドジだがクマだっている。だから前を向いていける。

それが『魔術師』だろ?自分のアルカナの事くらいは知ってるっての。

…我ながらクサイな。まあ、心の中でくらい何言ったっていいよな?誰かに聞かれる訳でもないしな。

さっ!明日も早いんだ。さっさとシャワー浴びて寝るか〜。

 

 

「ほらクマ、さっさとシャワー浴びちまえよ〜。後がつかえてんだからな〜。」

 

「だったら一緒に入っちゃうクマ!クマが背中を流してやってもいいクマよ?」

 

「うるせー!さっさと入れ!」




オマケ 本編とは全然関係無い季節ネタ

〜〜佐世保鎮守府・執務室〜〜


大山「今年のクリスマスは何を作ろうか…。七面鳥、食べたいんだけど空母の子達が絶対ケンカするよね。ん?これはシュークリームのケーキかぁ…。」

ガチャッ、

霧島「司令、そろそろ演習の時間ですよ〜?」

大山「うおっと!もうそんな時間かい?」ササッ!

霧島「…司令、今何を隠しました?」

大山「いや?何も?って、霧島!やめっ!」

霧島「クリスマスケーキのパンフレットですか…。司令、ケーキ作りは執務が終わってからにして下さいね?」

大山「え⁉︎それじゃあほとんど時間が取れないじゃ…」

霧島「はい?」

大山「いや、別に、あははは〜…」

霧島「まあいいです。とにかく!私は演習に行ってきますから、さぼらずに仕事して下さいね?」

大山「うん。霧島、いってらっしゃい!」

ガチャッ、バタン

大山「…よっし!」






〜〜佐世保鎮守府・厨房〜〜


漣「クーリスマスが今年もやーてっくるー♪」

大山「悲しかった、出来事を、消し去るように〜♪」

漣「あ!ご主人様!」

曙「クソ提督?何しに来たのよ?」

大山「いや、今年のクリスマスケーキの相談にね。」

漣「今年はどうします?去年は…普通のショートケーキにモンブランにブッシュ・ド・ノエルを作りましたね。」

大山「うん、そうだったね。で、今年はこれを作ろうと思うんだけど…」パンフレット開き

漣「シューツリー?ほうほう。」

大山「これならケーキを楽しみつつ、シュークリームに色んなクリームを詰めれば、飽きずに食べられると思うんだ。」

漣「なるほどなるほど。良いんじゃないですか?」

大山「漣ならそう言ってくれると思ってたよ!差し当たっては、色んなクリームを試してみたいんだけど、手伝ってくれないかな?」

漣「わっかりました!」

曙「…ねえクソ提督、仕事はどうすんのよ?」

大山「後でやるから大丈夫。それよりシュー生地作りを手伝ってくれるかい?」

曙「はぁ…何すればいいのよ。」(後で霧島さんにメールしておこう…)




漣「生クリーム、カスタード、チョコレート、ストロベリー、モカ、マロン、レアチーズ…。沢山作りましたね〜。」

大山「僕的にはもっとフルーツ系のクリームを試したかったかな?」

漣「また後で材料を買いに行きましょう!」

曙「」モキュモキュ

漣「あー!ボノノもう食べてる!」

曙「別にいいじゃない。…マロンはモッタリし過ぎてシューと合わないわね…」

漣「私も食べりゅぅぅぅ!」

大山「ははは!さて、僕も一つ…」

霧島「一つ、なんですか?司令?」

大山「」

霧島「演習から戻ってみれば…何してるんですか?書類は片付いているんですよねぇ?」メガネクィッ

大山「き、霧島!」つシュークリーム

霧島「大体あなたはいつも…ムグッ!何するんですか!」

大山「霧島、聞いてくれ。僕は君たちみたいに戦うことが出来ない。いつも君たちに任せっきりだ。でも、だからこそ、こういった特別な日は、休ませてあげたい、労ってあげたい、楽しんでもらいたい。
その為なら僕に出来ることは何だってする。
特に霧島。君にはいつも秘書艦をやってもらって、本当に助かってる。だから僕は、霧島に1番喜んでもらいたいんだ。」なでなで

霧島「司令…」キュンッ♡

曙(何かしらこの茶番…)

霧島「あの、その、この霧島、司令にそこまで想ってもらっているなんて…」モジモジ

漣(ご主人様!今です!)

大山(ごめん!霧島!)

霧島「でも、その、私も司令のことが…」モジモジ

曙「あのー…霧島さん?」

霧島「しっ、司令のことがっ!てっ、あれ?曙さん?司令は?」

曙「漣のバカと一緒に逃げましたよ…」

霧島「………………あのクソ司令〜!マイクチェックの時間だオラァッ!」ダッシュ!





曙「……あれ?これ後片付け私一人でやるの?」

艦!

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