今回は、オチ無しヤマ無しほのぼの日常系に仕上がってるかと…。
秋イベで荒んだ心の癒しになれば幸いです。
それと、この話は、書き方をガラッと変えてます。もしかしたら今後もこういった事があるかも知れませんが、よろしくお願いします。
(うへ〜…流石は相棒。異世界でも修羅場るとは…)
俺は、小鉢に入ったひじきの煮物をつまみながら、秘書艦がどうだと騒いでいる連中を眺める。
あ、今、悠と目が合った。とりあえず目を逸らしておこう。
…あいつには悪いが、もう修羅場に巻き込まれるのは御免だ。
(まっ、自業自得だよな。)
「なんかすみません。一緒に連れてきてもらっちゃって。」
「ははは、別にいいって。あんな事になってちゃ誰だって居にくいしな。」
「クマもフブキチちゃんとお話ししたかったから丁度良かったクマ。」
朝食を急いで食べ終えた俺は、とばっちりを喰らう前に食堂を出て、談話室に来ていた。
あとついでに、同じく居心地の悪そうにしていたクマとフブキチ(本人曰く『吹雪』という名前だそうだが)も連れてきた。
とにかく、その2人と相棒について色々話してたんだ。
「いや〜、しかしセンセーも大変クマね〜。」
「無自覚のうちに口説いてるからな。あいつ。」
「司令官は、元の世界でもモテモテだったんですか?」
「まあな。悩み相談みたいな事してたら、いつの間にか…てのがえーと…8人?いや9人だったか?全員把握してるわけじゃねーけど、これくらいはいたな。」
「うわあ…」
話の流れで、フブキチに相棒の天然ジゴロっぷりを話してやると、引いてた。
すまん相棒、お前の評価を下げちまったみたいだ。
「あら、ここにいたのね。」
「あれ?マーガレットさん?なんか用っすか?」
皆でたわいのない話を続けていると、マーガレットさんがやってきた。
悠のやつに、何も知らされずに天上楽土に連れてかれて、この人にボコボコにされたのも今ではいい思い出だな…(遠い目)
「はい、これ。貴方にもね。」
「ん?カード?何すかこれ?」
「40枚集めて闘うクマ?」
「デュエルッ!ってどう見たって違うだろ…」
「あと39枚拾うクマ!」
「だから!ちげーって言ってんだろ!」
「クスクス…」
ほら見ろ!フブキチに笑われてんじゃねーか!うわ〜…なんか恥ずい。
しかし、このカードは何だ?見た所、阿武隈…今の俺の姿がプリントされてるけど。
「あの、このカードは?」
「これは艦娘カード。身分証よ。それ以外にも、出撃や外出の手続きに使ったり、電子マネー機能も付いてるのよ。
でも、今は仮登録しかしていないから、出撃と外出は出来ないわ。」
「へ〜…」
「ほ〜、ほいっとな。」ピッ!
あっ、あのクマ!談話室の自販機に早速使ってるし!もうちょい説明聞いてからにしろよな…。
『お金が足りません。チャージして下さい。お金が足りません。チャージして下さい。』
「クマぁ…」
「金は入ってないのか…」
ちょっとがっかり。つーか、気を利かせてちょっとくらい入れといてくれても良くね?
「ふふふ、給金が入るまでは我慢しなさい?それまでに戦果を上げることね。そうすれば貰える金額も増えるはずよ。」
「だとよクマ。」
「オヨヨ〜…」
「艦娘カードがきたってことは、花ちゃんさんとクマさんも出撃…は仮登録ということで出来ませんが、鎮守府のそばで海上訓練が出来ますよ!どうです?海に出てみませんか?」
「おっ!いいな!話には聞いてたけどさ、実際どんなもんかは知らないからな。ワクワクするぜ!」
「クマの華麗な舞に驚くがいいクマよ!」
「ほー、ここから出撃するのか〜。」
「はい。あそこの端末、ターミナルって言うんですけど、あれで手続きが出来ますよ。」
「どことなく、き・ん・み・ら・い・て・き☆クマね!」
「ウゼェ。」
「しどい!」
俺たちは、フブキチの案内で出撃ゲートに来た。もっと機械がごちゃごちゃしてるもんかと思ってたけど、意外とスッキリしてんな。
「えーと、艤装はどっから持ってくるんだ?それっぽい部屋が見当たらねーけど。」
「あ、それなら心配しなくて大丈夫ですよ。出撃する時に、格納庫から転送されますんで。でも、自分でメンテナンスする時は、艤装の工廠に行って下さいね?」
「おぅ、了解。」
しかし転送か…。どう考えてもオーバーテクノロジーだよな。どんな感じなんだろうな?
「…はい、これで訓練の申請が終わりました。さぁ、行きましょう!」
「おっしゃー!」
「出発クマー!」
フブキチにターミナルの使い方を教わりながら、海上訓練の申請を終える。そこまで難しくはないな。これなら次からは1人でも大丈夫そうだ。
「では、出撃パネルに乗って…」
「これか?…うおぉっ!」
「ホトバシルー!」
なんか光ったぞ!本当に大丈夫なのか!
「……ふぅ、光ったのは一瞬だけか。
ん?おぉ!足になんか着いてんな!武器もでてくんのか!便利だな。なぁ、クマ…クマ⁉︎」
「クマ、出撃クマー!」
「な、なんですかそのくま風の着ぐるみは〜!」
クマのやつ、まさか艤装がガワだとは…。
ほら見ろ〜、可哀想に…フブキチのやつテンパってんぜ…。
「いや〜、良かったクマ!正直失くしたと思ってたクマ。」
「流石は司令官のご友人ですね…。司令官も大概非常識でしたが…これは予想外過ぎますよ〜…」
「あ〜…なんか、すまん。」
「あ、いえ、こちらこそ取り乱してしまってすみません。」
「何ぼさっとしてるクマ!さっさと行くクマよ〜!」
「誰のせいだよ!たくっ…」
「あはは…では、気を取り直して行きましょうか!」
「…うおっと!中々難しいな!」
「前に進むのは艤装のエンジンがやってくれます!私たちは舵取りに専念しましょう!」
「スイー♪スイー♪」
「なんであいつはあんな上手いんだよ…」
「多分、重心が低いので、バランスが取りやすいのかと。」
「なるほど…」
鎮守府の港の海上で、航行訓練を始める俺たち。ガキの頃の自転車の練習を思い出すぜ。
つーかクマのやつ、マジでなんであんな上手いんだよ…。どっちかっつーと鈍臭い方だぜ?あいつ。
てか、そもそもなんでクマ皮で海の上走れんだよ…。
まぁ、あいつの生態は謎だらけだしな。気にしないようにするか…。
「ヨースケ!いくクマよ〜!カムイモシリ!マハブフダイン!」
「よっし!あらよっと!良い風頼むぜ!タケハヤスサノオ!」
「え〜…何でもう私より上手くなっちゃうんですか〜…」
小一時間ほどで、艤装の扱いにも慣れた俺とクマは、ペルソナを使って波を起こし、サーフィンの要領で遊び始める。
でも何故か、フブキチが恨めしそうな視線を送ってくる…。何でだ?
「よ〜し!次はクマがいくクマよ〜!ビックウェーブカモ〜ン!」
「うっし!いくぞクマ!青春の風!」
「そーい!」
「なぁ、フブキチもやるか?結構楽しいぜ?これ。」
良い感じに波を起こし、クマを波に乗せながら、フブキチにもやってみないかと誘う。
仲間外れ…ってわけじゃねーけど、ほっとくわけにもいかないからな。
「え?私がですか?」
「そ、波の加減もある程度は出来っから、とりあえずやってみない?」
「…えぇ!やりましょう!」
「おっ!やる気だな!じゃあまずは小さめの波から慣らして…」
「いえ、花ちゃんさんと同じくらいでお願いします!」
「は?いやいや、いきなりは危ないだろ?」
「私は…戦闘では、きっとお二人より弱いです…。でも!艦娘としては私の方が先輩なんです!吹雪型ネームシップの誇りにかけて、飛んで見せます!」
ヤバい。なんか変なスイッチ入ってるし…。
あとサーフィンは波に乗るものであって飛びはしないからな?いや、上級者とかは飛んでるかもしれないけど。
「さあ!遠慮は入りません!きてください!」
「チッ!後悔するなよな!ペルソナァッ!」
「吹雪、いきまーす!」
…気合いを入れて波に乗るフブキチ。
あ、こけた。いや?立て直した⁉︎
「キャアァァッ!」
飛んだぁ⁉︎てか、やっぱりダメじゃねーか!
くっ!マズい!飛んだ先にクマが!
「キャアァァッ!」
「クマ?クマァァァッ!」
…フブキチのドロップキックがクマの顔面に突き刺さった。あーあ…フブキチはなんとか着地したみてーだけど、吹っ飛ばされたクマは?
「クマァァァ!皮が!クマの毛皮がぁぁッ!海の水でカピカピになるクマァァァッ!」
…怪我はねーみたいだ。
たくっ、フブキチも無茶しやがって…。
「ほら見ろ。だから言っただろ?小さめの波から慣らしてけって。」
「す、すみません…」
「怪我は無いか?」
「はい、大丈夫です。」
「ならよし!クマ〜?大丈夫か〜?」
「ダメクマ…早く戻ってクマ毛のお手入れしないと大変な事になるクマ…」
「しゃーねー、戻るとするか〜。」
「ほい、到着っと。」
フブキチのドロップキックでお開きとなった訓練(途中から遊んでたが)から戻ってきた俺たち。
帰投パネルとやらに乗ると、行きと同じように光に包まれ、艤装と装備が消える。本当どうなってんだこれ?
「早く艤装工廠とやらに行くクマ!フブキチちゃん!どっちクマ⁉︎」
「慌てないで下さい。まずは帰投報告をしないと…」
「ムムムゥ…」
フブキチの指示通りに手続きを進めていく。
こっちの方もやり方を覚えとかないとな。
「終わったクマ?終わったクマ?」
「うるせぇよ!少しは落ち着いてらんねーのか!」
「…はい、終わりましたよ!」
「じゃあ早く案内するクマ!」
「おいクマ、頼み方おかしいだろ。」
「分かりました。こちらです。」
「スルーかよ!」
クマのやつ…よっぽどクマ皮が心配らしいな。フブキチももう少し疑問に思ったりしろよ…。
「すみませーん!テオさーん、居ますかー?」
俺たちは、フブキチの案内で艤装工廠にやってきた。とりあえずだな、隣のMOEL石油は何なんだよ!何であるんだよ!
「おや、皆さん。如何なさいました?」
「あ、イザナミさん。こんにちは。」
「はい、どうも。」
「……………………………………………………………………………………………………」
「……………………………………………………………………………………………………」
「ウオォォォッッッッ!」
「クマァァァッッッッ!」
なんかいる〜!!!
「…はぁ、つまり今はもう世界を滅ぼす気は無いと。」
「ええ、安心して下さい。滅びませんよ。」
「………」
「おや?今流行りのギャグを、私風にアレンジしてみたのですが…。面白く無かったですか?」
あれから、イザナミに事情を説明された。
ついでに、こっちの事も説明しておいた。
もう世界を滅ぼす気は無いって言っても、やっぱ心臓に悪いわ…。
「まあいいでしょう。で、何か用があったのではありませんか?」
「あ、そういやそうだったな…」
「実は、クマのクマ皮が海の水でビシャビシャになっちゃったクマ…お手入れしないとクマ毛がゴワゴワのカピカビになるクマ〜!」
「ああ、それなら私が元に戻しましたよ?」
「クマ?どういう事クマ?」
「見てもらった方が早いですかね?まだしまっていないので、そこにありますよ?」
イザナミはそう言うと、ガソリンスタンドの方を指差した。そっちをに見ると、濡れていたはずのクマ皮が、乾いた状態で台車に載せられてた。
…間違いなくクマ皮は濡れ鼠になってた筈だ。こんな短時間で乾くもんなのか?
「実はかくかくしかじかで。」
「ふーん…。って!かくかくしかじかで分かるか!」
「フムフム…ちゃんと乾いてるクマね。お塩も吹いてないクマ。」
「あ〜…もういいや…。クマ、乾いてんならもう行こうぜ?」
なんかどっと疲れた…。早くこの場から立ち去りたいぜ…。
「そろそろ昼か。どうする?もう食堂行くか?」
「私は構いませんよ?」
「今日のお昼は何クマね?」
艤装工廠を後にしてから、少し歩いていた俺たち。ふと空を見上げると、太陽は南中に差し掛かろうとしていた。
そこで俺は、2人に食堂に行かないかと誘う。
荒垣さんの作る料理はかなり美味いからな。楽しみだぜ!
「おっ?まだ誰も来てね〜のか。」
「いいじゃないですか。居たら居たで朝みたいになってもあれですし。」
食堂に到着した俺たち。どうやら少し早く来すぎたようで、俺たち以外には誰も居なかった。
「荒垣さーん。今日の昼飯は何すか〜?」
「今作ってっから黙って待っとけ。」
とりあえず、荒垣さんに今日のメニューを聞いてみるが教えてくれない。
なんつーか、職人気質っぽいな。
「クンクン、クンクン。」
「何してんだクマ?そんなに腹減ってんのか?」
ウォーターサーバーで水をもらって席に着くと、クマが厨房の方に向かって匂いを嗅ぎ始めた。
確かに良い匂いだな。こりゃ生姜の香りか?腹が鳴りそうだぜ!
「…やっぱりガッキーからペルソナの匂いがするクマ。」
「はぁ?あの人が?」
「あれ?聞いてなかったんですか?荒垣さんってペルソナ使いらしいですよ?」
「…マジでっ⁉︎」
腹減ってたんじゃねーのかよ!てか何だよそれ!聞いてねーよ!
悠の奴め…イザナミの事といい、ちょこちょこ大事な事話し損ねてんじゃねーか…。
「まぁでも、荒垣さんは戦う気は無いらしいですよ?」
「そりゃまた何で?ペルソナ使えんなら一緒に戦ってくれりゃあいいのにな。」
「本人曰く…
『俺の戦いは終わった。死にはしたが、結果には満足してな。
そんな死人が、今を生きてる奴にちょっかいかけるわけにはいかない。』
みたいな事を言ってましたね。」
「…えっ⁉︎あの人死んでんの⁉︎」
「たまげたクマね!」
「あ〜…、えっとですね、一応は生きてるみたいですよ?なんでも、三途の川の渡し守に、マーガレットさんが頼んで生き返らせてもらったそうです。」
「…滅茶苦茶だな。」
「おーい!出来たぞ〜!持ってけ〜!」
「おっ!出来たみたいだぜ!」
「お〜!早く食べるクマ〜!」
荒垣さんについて色々聞いているうちに、昼食が出来たみたいだ。
うっひょ〜!ウマそ〜!
「おいクマ〜…。ヒマなんだけど〜…。」
「クマに言われても…クマ、クマっちゃうクマ〜!」
「30点。」
「しどい!」
俺たちは昼食(豚の生姜焼き定食だった。勿論美味かったぜ!)を食べ終え、再び談話室に行くが、特にすることも無くダラけていると…。
「む、ここにいたか。」
「あ!武蔵さん!お疲れ様です!」
「ウッス。」
「ムサしゃんだクマ!何か用クマ?」
「ムサしゃん言うな!ったく…。ほら、花ちゃん、クマ、暇してるならこれでも読んでおけ。」
そう言うと、武蔵さんに一冊の本を渡された。なになに…艦隊指揮
「あの〜、これは?」
「艦隊指揮の基本を纏めたものだ。他にもあるのだが、今用意出来たのがそれしか無くてな。他の教科書も、用意出来しだいくれてやるからしっかり勉強しろよ?」
「…はい。」
あぁ…逃れられない…。
「………………」
「グカー…すぴー…」
「こいつめ…。始めてすぐに寝やがって…」
「あはは…」
「悪いなフブキチ。付き合ってもらって。」
「いえ、これくらいはお安い御用です。」
あれから俺は、武蔵にもらった教科書で、艦隊指揮について勉強をしている。分からないところはフブキチに聞いているから、今の所はつまづかずにやれている。
しかし…クマのやつ、すぐに寝やがった。
正直こうなるんじゃないかとは思ってたけどさ、もうちょい頑張る姿勢ってもんを見せてほしかったぜ…。
「悠〜?Are you there?」
「あれ?金剛さん?」
しばらく勉強を続けていると、金剛さんだったか?が談話室にやって来た。どうやら悠のことを探してるみたいだ。
「Oh!フブキチに花ちゃん!にクマはsleepingデスネー。
実は悠を tea time に誘おうと思ってたのデスが…、can not find デース…。Do you know his whereabouts ?」
「ちょっ…、えっと?今なんて?」
「金剛さん、単語だけならまだしも、文になっちゃうとさすがに分からないです。」
英文だと分からないと素直に伝えるフブキチ。正直俺も分からなかった…。受験生なのにな、俺…。
「oh sorry 2人は悠の居場所を知ってますカー?」
金剛さんは、すぐに日本語で言い直してくれた。しかし、残念ながら悠の居場所は俺も知らん。
「すんません。知らないっすね。」
「私も…。力になれずすみません…」
「 no problemデース!そうだ!悠は見つかりそうにありませんから、良かったら tea time しませんカー?」
「Welcome to my room!」
あれから、金剛さんにお茶に誘われた俺たちは、勉強を切り上げ、クマを起こし、金剛さんの部屋に来ていたが…。
「堂島さん家じゃねーか!」
「クマビックリ!」
「司令官も似たような反応してましたね〜。」
もう何でもありな気がしてきたぞ…。
てか、堂島さん家の間取りを再現してるって事は、ここって悠の部屋じゃねーのか?
…まさか。
「えっと、ここって悠の部屋じゃないんすか?」
「悠のroomでもありますネー。このroomのcapacityは4人なのデース!私と悠の他に武蔵と島風がroom share してマース。」
ほらみろ!てか、一緒に暮らしてんのさっき言い争いしてた面子じゃん!
「Sit down please. I get ready for tea time.」
「や、だから全部英語だと分からないって…」
「muuu…今のはeasyだと思ったんデスガ…」
ぐおぉ…俺の英語力の低さがモロに…。
筆記なら結構点は取れるんだぞ!ただちょっとリスニングはあんまりやってなくてだな…って誰に言い訳してんだ俺…。
「とにかく、座って待っててくだサーイ。私は紅茶の用意をしてキマース。」
結局全部日本語に言い直してくれた…。
「ヨースケはダメダメクマねー!」
「うるせぇよ!お前だって分かんねーだろ!」
しばらくして金剛さんがティーセット一式とクッキーを持ってきてくれた。
紅茶かぁ、ペットボトルかパックのやつしか飲んだことねーけど、金剛さんはどうやら茶葉から淹れてるっぽいな。
「Here's your tea.」
「頂きます。」
「フーフー」
「へぇ〜、やっぱペットボトルとは違うな。」
紅茶を一口飲むと、ペットボトルの物とは違う格調高い香りが鼻に抜ける。
…まぁ、具体的にどう違うかはよく分かんねーけど。
「こっちのクッキーは?」
「それも私がmakingしたヨー!」
「サクサク!ムシャムシャ!」
「おいっ!そんないっぺんに食うなよ!」
「美味し〜!今度私にも教えてくれませんか?」
「さぁ!花ちゃん!お好きなhair accessory をchoiceしてくだサーイ!」
「すげー量っすね…」
「あ、これ可愛い!」
「oh!フブキチ!nice choice デース!どれどれ〜?」
「あ、ありがとうございます!どうです?似合いますか?」
「フブキチちゃんかわい〜クマ!」
あれから俺たちは、お茶をしながら、金剛さんの持ってきた髪飾りを見ている。
そーいや花の髪飾りを俺に付けるとか言ってたな。
…しかしすげー量。どれにすっかな…。
おっ?これ良いんじゃね?
「金剛さん、このピンクの花の髪飾りは?」
「花ちゃん?それはカリンの花飾りデース!uniqueだったので思わず買っちゃいマシタ!それがfavoriteデスカー?」
「ああ、ちょっと鏡貸してくれ。」
「良く似合ってますよ!花ちゃんさん!」
俺が選んだのはカリンの花飾りがついたヘアピンだ。しかし、カリンの花のヘアピンなんてよくあったな。
直感で選んだとはいえ、我ながらマイナーな花を選んだもんだぜ。
「金剛さん、これ貰ってもいいっすか?」
「of course!」
「そろそろ夕飯か〜。」
「ガッキーは何を作ってくれるクマね?」
お茶を頂いた後、俺たちは金剛さんと別れ、外をブラついている。
鎮守府という場所柄か、海に沈んでいく夕焼けが目に眩しい。
「あ!司令官!お疲れ様です!」
「おー!センセー!こっちクマ〜!」
「ん?フブキチ?陽介とクマも一緒か。」
3人で夕陽を眺めていると、本棟の方から悠が歩いて来た。フブキチはいち早くそれに気づき、挨拶をする。
「悠!姿が見えないと思ったらどこ行ってたんだよ?」
「新艦建造の報告書を書くので、本棟の執務室にいたんだ。」
「あー、それって俺らの?」
「ああ、ちゃんと提出しないと経費が貰えないからな。」
早速お仕事か。まぁ、こいつの事だ。デスクワークくらいは軽くこなすだろ。
「ん?陽介、そのヘアピンは?」
「これか?カリンの花のヘアピン。金剛さんに貰ったんだ。言ってたろ?花のファクターを増やすだなんだってさ。」
「そういえば言ってたな。…カリンの花か。陽介にはピッタリかもな。」
「は?何で?」
「カリンの花言葉は『可能性』なんだ。そして、陽介のアルカナの魔術師にも可能性の意味があるんだ。」
「へー…」
流石相棒、博識だな。しかし、そうか、可能性か…。
直感で自分のアルカナと同じ意味の花を選ぶなんてな。これも運命ってやつ?
「そういや悠。」
「何だ?」
「お前、今朝の3人とルームシェアしてるんだってな?金剛さんから聞いたぜ?」
「…ああ、ていうか陽介、今朝、無視しただろ?」
「相棒の修羅場に直接巻き込まれんのはもう懲りてんだよ!」
「…ああ、あのバレンタインデー…。あれは酷い事件だったな。」
「本当だよ!たくっ…。まあなんだ、直接は助けてやれねーけどさ、一緒に考えてやるくらいは出来るぜ?どうやってあの3人をなだめるつもりだ?」
「ああ、それならなんとかなりそうだ。」
「まあ、いざとなったら俺も体張って…って、なんとかなる?」
「協力者が出来たからな。もうこの件では陽介の手を煩わせる事も無いだろう。安心してくれ。」
「あ、ああ…。それならいいんだ!安心したぜ!」
「じゃあ俺は荒垣さんの手伝いに行くから。また夕食の時間にな。」
「おぅ!また後でな!」
相棒は話を終えると、寮の方へと歩いて行く。なんだ、解決してんのか…。
「ヨースケ、フられちゃったクマね。」
「いや、振った振られたとかって話じゃねーから。」
…なんだよこの妙なもやもやした感じ。
次はすぐに助け船、出してやるかな?
「あ〜…疲れた。」
「ピリピリしてたクマね〜。」
「ああ、金剛さんと武蔵さんな。直接言い争うような事はなかったけど、お互い視線だけで牽制し合ってたな…」
俺は夕飯を食べ終えた後、クマと部屋に戻ってきた。
てか、何で夕飯の時間で疲れなきゃなんねーんだよ…。あれか?戦艦の眼光ってのは周りにも影響すんのか?
「なー、ヨースケ。」
「なんだよ。さっさとシャワー浴びて寝ちまおうぜ?」
「クマたち、元の世界に帰れる?」
「んだよ、そんな事聞くなよ。」
「そんな事とは何クマ!ヨースケは不安にならないクマか?」
「いいかクマ?帰れるか、じゃねー。絶対に帰るんだ。不安になる暇があんなら武蔵さんに貰った教科書でも読んどけ。
大丈夫だ、相棒もいるんだ。どんなピンチだって俺たちは乗り越えてきただろ?今回もなんとかなるさ。」
「クマ…。ヨースケが良いこと言ってるクマ。気持ち悪いクマ…」
「んだよっ!人がせっかく励ましてやってんのに茶化してんじゃねーよ!」
たくっ…。クマの奴め。
…まあ俺も不安を感じない訳じゃない。
いきなり異世界に来たかと思えば、帰れなくなるし、見た目も性別も変わっちまうし…。
でも俺は悲観しない。元の世界に帰れる可能性を信じる!無くても作ってやる!
確かに…俺一人じゃ無理かも知れない。でも俺は一人じゃない。仲間がいる、相棒がいる、ちょいドジだがクマだっている。だから前を向いていける。
それが『魔術師』だろ?自分のアルカナの事くらいは知ってるっての。
…我ながらクサイな。まあ、心の中でくらい何言ったっていいよな?誰かに聞かれる訳でもないしな。
さっ!明日も早いんだ。さっさとシャワー浴びて寝るか〜。
「ほらクマ、さっさとシャワー浴びちまえよ〜。後がつかえてんだからな〜。」
「だったら一緒に入っちゃうクマ!クマが背中を流してやってもいいクマよ?」
「うるせー!さっさと入れ!」
オマケ 本編とは全然関係無い季節ネタ
〜〜佐世保鎮守府・執務室〜〜
大山「今年のクリスマスは何を作ろうか…。七面鳥、食べたいんだけど空母の子達が絶対ケンカするよね。ん?これはシュークリームのケーキかぁ…。」
ガチャッ、
霧島「司令、そろそろ演習の時間ですよ〜?」
大山「うおっと!もうそんな時間かい?」ササッ!
霧島「…司令、今何を隠しました?」
大山「いや?何も?って、霧島!やめっ!」
霧島「クリスマスケーキのパンフレットですか…。司令、ケーキ作りは執務が終わってからにして下さいね?」
大山「え⁉︎それじゃあほとんど時間が取れないじゃ…」
霧島「はい?」
大山「いや、別に、あははは〜…」
霧島「まあいいです。とにかく!私は演習に行ってきますから、さぼらずに仕事して下さいね?」
大山「うん。霧島、いってらっしゃい!」
ガチャッ、バタン
大山「…よっし!」
〜〜佐世保鎮守府・厨房〜〜
漣「クーリスマスが今年もやーてっくるー♪」
大山「悲しかった、出来事を、消し去るように〜♪」
漣「あ!ご主人様!」
曙「クソ提督?何しに来たのよ?」
大山「いや、今年のクリスマスケーキの相談にね。」
漣「今年はどうします?去年は…普通のショートケーキにモンブランにブッシュ・ド・ノエルを作りましたね。」
大山「うん、そうだったね。で、今年はこれを作ろうと思うんだけど…」パンフレット開き
漣「シューツリー?ほうほう。」
大山「これならケーキを楽しみつつ、シュークリームに色んなクリームを詰めれば、飽きずに食べられると思うんだ。」
漣「なるほどなるほど。良いんじゃないですか?」
大山「漣ならそう言ってくれると思ってたよ!差し当たっては、色んなクリームを試してみたいんだけど、手伝ってくれないかな?」
漣「わっかりました!」
曙「…ねえクソ提督、仕事はどうすんのよ?」
大山「後でやるから大丈夫。それよりシュー生地作りを手伝ってくれるかい?」
曙「はぁ…何すればいいのよ。」(後で霧島さんにメールしておこう…)
漣「生クリーム、カスタード、チョコレート、ストロベリー、モカ、マロン、レアチーズ…。沢山作りましたね〜。」
大山「僕的にはもっとフルーツ系のクリームを試したかったかな?」
漣「また後で材料を買いに行きましょう!」
曙「」モキュモキュ
漣「あー!ボノノもう食べてる!」
曙「別にいいじゃない。…マロンはモッタリし過ぎてシューと合わないわね…」
漣「私も食べりゅぅぅぅ!」
大山「ははは!さて、僕も一つ…」
霧島「一つ、なんですか?司令?」
大山「」
霧島「演習から戻ってみれば…何してるんですか?書類は片付いているんですよねぇ?」メガネクィッ
大山「き、霧島!」つシュークリーム
霧島「大体あなたはいつも…ムグッ!何するんですか!」
大山「霧島、聞いてくれ。僕は君たちみたいに戦うことが出来ない。いつも君たちに任せっきりだ。でも、だからこそ、こういった特別な日は、休ませてあげたい、労ってあげたい、楽しんでもらいたい。
その為なら僕に出来ることは何だってする。
特に霧島。君にはいつも秘書艦をやってもらって、本当に助かってる。だから僕は、霧島に1番喜んでもらいたいんだ。」なでなで
霧島「司令…」キュンッ♡
曙(何かしらこの茶番…)
霧島「あの、その、この霧島、司令にそこまで想ってもらっているなんて…」モジモジ
漣(ご主人様!今です!)
大山(ごめん!霧島!)
霧島「でも、その、私も司令のことが…」モジモジ
曙「あのー…霧島さん?」
霧島「しっ、司令のことがっ!てっ、あれ?曙さん?司令は?」
曙「漣のバカと一緒に逃げましたよ…」
霧島「………………あのクソ司令〜!マイクチェックの時間だオラァッ!」ダッシュ!
曙「……あれ?これ後片付け私一人でやるの?」
艦!