一ヶ月以上かけても書き終わらないという…そのくせクオリティは据え置きorz
これ以上間が空くのはまずいので、とりあえず今書いてある分から、キリのいいところまでを前編として投稿させてもらいます。
〜〜ベルベットルーム〜〜
悠(ここは…ベルベットルーム?)
イゴール「ようこそ、ベルベットルームへ。」
悠「イゴールさん!」
悠は、武蔵との戦いの後、意識だけがベルベットルームに来ていた。
イゴール「お久しぶりでこざいます。
さて、あなた様は今、新しい旅路を歩まんとしております。
どうですかな?よろしければタロットであなた様のこれからをの未来を占って差し上げますが?」
悠「占い…そうですね、せっかくですからお願いします。」
イゴール「わかりました…では、カードをお引きになってください。」
悠は山札からカードを一枚引く。
運命のカードを引いた。
イゴール「ふむ…もう一枚よろしいですかな?」
イゴールに促され、もう一枚カードを引く。
今度は恋愛、ただしリバースだ。
イゴール「なるほど…どうやら近いうちに新たな出会いがあるご様子。
ただ、女性関係に苦労しそうですな。軽率な行動は慎むべきです。」
悠(女性関係…そうか、提督になったら艦娘が部下になるんだよな。)
「わかりました。ありがとうございます。」
イゴール「では、もう少し先の未来を見てみましょう。では…」
再びカードを引く。戦車のカードだ。
イゴール「なるほど…あなた様の旅路において、戦いは避けられぬ運命のようですな。
もう一枚引いて頂けますかな?」
悠は山札からカードを引く。
悠「なっ!」
悠が引いたのは死神のカード。しかも正位置だ。
悠「イゴールさん…これは…」
イゴール「戦いの果てに、あなた様は重大な選択を迫られる。
ふむ、確かに死神のカードは不吉の象徴のようなカード。ですが、終わりという意味では審判の逆位置の方が致命的でございます。
死神のカードの意味は転換期、ターニングポイント、今までの自分を終わらせ、新しい自分へと生まれ変わる。
こういった意味も持っておりますので、悲観的にならない方がよろしいでしょう。」
悠「なるほど。カードの解釈にも色々あるんですね。」
イゴール「その通りでこざいます…そろそろお時間のよう。また、近いうちにお会いになるでしょう。では…」
ベルベットルームから悠の意識が現実へともどっていく。
悠が現実へと戻り、一人になったイゴールは、タロットカードの山札からおもむろにカードを引く。
イゴール「…これは⁉︎」
イゴールの引いたカードは何も絵柄が描かれていない真っ黒なカード。しかし、すぐにそのカードの絵柄は道化師のカードに変わった。
イゴール「…どうやら此度の旅路も過酷なものになりそうですな。こちらも万全の状態で手助け出来るようにせねば…」
〜〜出張者用寄宿舎・悠、島風の部屋〜〜
悠「うーん…フワァ…」
島風「あっ!悠!」
悠は寄宿舎のベットで目を覚ます。その傍で島風が声を上げる。どうやらそばにいてくれたみたいだ。
悠「おはよう島風。」
島風「悠、体は大丈夫?あれから一日中寝てたんだよ?」
悠「そうだったのか…心配かけたな。たっぷり寝たから、体の調子もバッチリだ!」
島風「よかった〜!そうだ!悠が起きたらヤマヤマ呼んでこなきゃだったんだ!悠は部屋で待ってて!全速前進〜!」
島風はそう言うと、大山大佐を呼びに部屋を飛び出していった。
悠「さて、今のうちに出られるように準備しとかないと…」
大山「やあ、鳴上君。調子はどうだい?痛むところとかは?」
霧島「おはよう、って言ってももう1時過ぎなんだけどね。起きても大丈夫なの?」
島風が飛び出していってから10分程で大山大佐と霧島が悠の元に訪れる。二人とも心配してくれているようで、二言目には気遣いの言葉が出てくる。
悠「はい。大丈夫です。」
大山「それはよかった。今から祝勝会も兼ねてお昼に行こうと思うんだけど、お腹空いてるかな?」
大山大佐に空腹かと尋ねられると、途端にお腹が空いてくる。丸一日寝ていれば当然だろう。
悠「はい。今ならスペシャル肉丼の完食タイムの新記録が出せそうです。」
大山「ははは、スペシャル肉丼が何かは分からないけど、よかったよ。もう出れるかい?」
悠「はい、大丈夫です。…あれ?そういえば俺の学ランは…?」
悠は出かける為に学ランを羽織ろうとするが、肝心の学ランが無い。
霧島「やっぱりぼろぼろになってたから、あなたが寝てる間に直してもらったわ。はい、どうぞ!」
悠「何度もすみません。ありがとうございます。」
悠は新品同様になった学ランに袖を通す。やっぱり番長はこうでなければ。
島風「は〜や〜く〜!お腹空いた〜!」
待ちきれないのか、島風が駄々をこね始める。
大山「はは、じゃあ行こうか!」
〜〜甘味処間宮〜〜
大山「よし、着いた。ここだよ。」
大山大佐の案内で連れてこられたのは、甘味処間宮というお店だ。
悠「お昼に甘味…」
大山「あぁ、そこら辺は大丈夫。甘味処ってなってるけど普通の軽食もあるから。
まぁ、スイーツが自慢の喫茶店と思ってくれていいよ。」
「いらっしゃいませ〜!」
中はなかなかに混んでおり、すぐには座れそうにない。大人しく待っていようと思い、順番待ちの為の椅子に腰掛けようとする。が、
「大山提督〜!こちらです〜!」
大山「鳴上君、席はとってあるから待たなくて平気だよ。分かった〜!今行くよ〜!」
席に着くと、隼鷹、五十鈴、木曾の三人の他に見知らぬ女性がいた。
悠「どうも。大山さん、こちらの二人は?」
大山「あぁ、まだ会ってなかったんだったよね。この二人も僕の部隊の艦娘だよ。日向、高雄、自己紹介を。」
日向「伊勢型 2番艦 航空戦艦の日向だ。よろしく。」
高雄「高雄型 1番艦 重巡洋艦、高雄です。よろしくね。」
悠「鳴上悠です。よろしくお願いします。」
日向「聞いたぞ、あの武蔵を倒したそうじゃないか。やるな。」
高雄「私も見たかったわ…誰かさんにしこたま飲まされたせいで行けなかったのよね…」
隼鷹「いや、だから何度も謝ってるじゃん!」
高雄「これで何度目ですか!まぁ、乗せられて飲んじゃう私も悪いんですが…それでも限度ってものが…」
五十鈴「はいはい、喧嘩はあとにしてちょうだい。もうお腹ぺこぺこよ!早く注文しましょ?」
霧島「そうね。スイマセーン!注文お願いしまーす!」
「はーい!ただいまお伺いしまーす!」
悠「え⁉︎まだメニューも見てないんですが⁉︎」
島風「悠ってばおっそーい!私は間宮パフェ戦艦級!」
悠「それ絶対食べきれないだろ!」
隼鷹「私は熱燗で。」
悠「まるで反省の色無し!」
「申し訳ございません。当店ではアルコールは扱っておりませんので…」
隼鷹「…うん。知ってた。言ってみただけだし…(泣)」
悠「泣くほど⁉︎」
木曾「俺はおにぎりセット、食後にお汁粉。」
五十鈴「私はタマゴサンドにコーヒーと間宮パフェ軽巡級で。」
悠(おっと、ツッコミをしてる場合じゃない。ボケはそっとしておいて早く決めなくては…)
島風「あっ!悠は間宮パフェ鎮守府丸ごとスーパーデラックスで!」
悠「島風ー!勝手に決めるなー!」
アハハ!ワイワイガヤガヤ…
各々の注文も済み、しばらくすると、料理が運ばれてくる。ちなみに悠が頼んだのはBLTサンドにコーヒー。デザートは頼んでいない。何故なら…
島風「…悠〜、もう無理〜…」
悠がサンドイッチを食べ終わってすぐ、島風が悠に助けを求める。
悠(やっぱり…そっとしておくわけにもいかないな。)
悠「ほら、あとは俺が食べるから、あったかいお茶でも飲んでるといい。」
島風「はい〜…」
悠は島風がパフェを残すだろうと思って、デザートを頼まなかったのだ。
しかし、流石は戦艦級というだけあって中々の大きさだ、3人前はあったであろうそれを、島風は約3分の1、要するに一人前を食べてギブアップ。
だが、この程度の量、スペシャル肉丼を完食した悠にとっては敵ではない。
悠「モグッ、中々美味いな。しかし、なんで甘味処なのに軽食も扱っているんだろうか?」
島風「さぁ?美味しいからいいじゃん?」
悠「大山さんは何か知ってますか?」
大山「ん?そうだね…確か、最初は本当に甘味だけだったんだけど、艦娘達や海軍に勤めている人達の要望で、メニューがどんどん増えていったらしいね。近々店名を喫茶間宮に変えるとかっていう話もあるくらいだよ。」
霧島「でも、甘味処間宮は全国の鎮守府にチェーン展開しててね、店名の変更には反対してるとこもあるみたいなの。大変よね〜。」
そんなたわいもない話をしながらパフェを食べる。
そんな穏やかな時間が過ぎていく…が、それをぶち壊しにする大きな声が店内に響く。
「あー!見つけましたよー!」
霧島「ゲッ!マスゴミ!」
青葉「マスゴミ〜⁉︎心外です!青葉は真っ当な記者です!ジャーナリストです!あっ、私は間宮パフェ軽巡級改二とフライドポテト、あとカフェオレをホットで。」
マスゴミ…もとい青葉は無理矢理悠の目の前に座ると、ササッと注文を済まし、
青葉「さぁ〜!約束通り勝利者インタビューですよー!」
半ば強引にインタビューを始めるのだった。
軽く1時間ほど質問攻めにされた悠。
質問内容は、好きな食べ物といった定番や、ペルソナ能力についてなど、真面目なものから、好きな食べ物は先に食べるか、後にとっておくか、などどうでもいいものまで、とにかく沢山の質問をされた。
青葉「おっと!もうこんな時間!さっさと記事に纏めないと!
でわでわ鳴上さん!本日はありがとうございました!失礼しますー!」
青葉はようやく満足したのか、荷物をまとめ、駆け足で去っていった…
悠「ようやく終わった…」
大山「ははは…災難だったね。そろそろ出ようか?」
日向「ん?これは…青葉のやつ、支払いを私達に押し付けていったな…」
大山「えっ⁉︎………僕が払わなきゃかい?」
日向「まぁ、そうなるな。」
大山(お金大丈夫かな…?)
「お会計が17400円になります。」
大山「」
(…これは予想外だ。まさか、青葉さんが改二のパフェを頼んでいたなんて…)
大山は予想外の金額に驚いている。
これは、青葉が頼んだ改ニのパフェのせいである。
甘味処間宮のパフェにはランクがあり、通常のパフェ、ちょっと贅沢なパフェ改、そして、今回青葉が頼んだスペシャルな改二。
どれくらい違うかというと…例えるなら、普通のパフェがスーパーカ◯プ、改ニはハーゲンダ◯ツ、価格に直せば3倍以上の差があるだろう。
大山(マズイな、財布には一万と五千円。お金を下ろすのを後回しにするんじゃなかったな…)
?「あら?あれは…」
?「ん?どうした?」
?「ふーん…ねぇ天龍ちゃん、あれ、鳴上提督じゃない?私ちょっといってくるね?」
?「あっ!ちょっと待てよ!俺も行くぜ!」
大山大佐が財布と睨み合いを続けている。
そんな時に2人組の女性から声をかけられた。
?「はい、お会計。私たちのとまとめてお願いね〜?」
大山「え?ちょっと、君、いいのかい?」
?「えぇ、鳴上提督には良い思いをさせてもらいましたし。」
悠「ん?俺に?」
?「えぇ〜。あなたが武蔵さんに勝ってくれたおかげでトトカルチョが大当たりよ〜♪
だ・か・ら・幸せおすそ分けよ♪」
大山「なんだか申し訳ないね。このお礼はいつか必ずさせてもらうよ。」
?「いいえ〜、お礼ならあとでた〜っぷり鳴上提督から頂くから平気よ?」
悠「えっ⁉︎俺から⁉︎どういう事だ?」
?「今度からあんたの部隊で世話になるってことだ。」
悠「俺の?」
天龍「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名は天龍。そんでこいつが、」
龍田「天龍型軽巡洋艦、2番艦の龍田です。よろしくお願いしますね〜?」
悠「俺は鳴上悠。こちらこそよろしく頼む。だが、俺の部隊ってどういうことだ?」
天龍「だーかーらー!チッ、こいつを見な!」
そう言うと、天龍は一枚の紙を取り出し、悠に見せる。
悠「転属届け?」
天龍「そういうことだ。正式な手続きはまだだが、ほぼ確定だぜ?」
悠「なるほど。すまない、まだ提督になることに対して実感が持てなくてな。」
龍田「ですよね〜。ついこの間まで学生だったんでしょう?大変だと思うけど、私達のためにも頑張ってね〜?」
悠「ああ。期待に応えられるように頑張るよ。」
天龍「じゃあ俺たちはもう行くぜ。」
龍田「では、失礼しますね〜。」
店を出た後、天龍は龍田に話しかける。
天龍「しかしよぉ、間宮券使っちまってよかったのか?もったいなくないか?。」
龍田「ふふふ、天龍ちゃんはなーんにも分かって無いのね〜。恩を売るってとっても大事なのよ〜?それに、まだ沢山あるから問題無いわよ?」
天龍「はぁ〜…恩を売るねぇ…我が妹ながら腹黒いこって。」
龍田「お褒めの言葉ありがとう〜♪」
天龍「別に褒めちゃねーんだけどな。」
龍田「……ねぇ天龍ちゃん、今度は優しい提督だといいわね。」
天龍「……あの様子なら大丈夫だろ。まっ、もし何かあっても、俺がお前を守ってやるから心配すんな!」
龍田「ありがとうね、天龍ちゃん。」
〜〜海軍本部・甘味処間宮前〜〜
悠「大山さん、今日はありがとうございました。ずっとお世話になりっぱなしで申し訳ないです。」
店の外へ出た悠は、大山大佐に改めてお礼を言う。
思い返せば、何から何まで大佐と大佐の艦娘の世話になっており、お金も勿論だが、彼らの時間を、見ず知らずの自分の為に割かせてしまったことを、悠は申し訳なく思っていた。
だが大山は笑って返す。
大山「ははは、大丈夫だよ?これはただ僕がお節介焼きなだけだからね。」
Prrrrr.Prrrrr.
そんな中、電話の着信音らしき音が鳴る。
霧島「ん?電話?はい、もしもし?……うん、………わかってるわよ。…大丈夫、明日には戻るから、はい、伝えとくわ。……じゃあね。」
悠(この世界にも携帯電話はあるのか。しかも霧島さんのはスマホっぽいな。俺もなんとかして手に入れておきたいな。)
霧島「あの〜…司令、
ていうか司令、携帯の電源、会議の後から切りっぱなしじゃないですか?漣さんが司令に繋がらないって言ってましたよ?」
大山「うおっと!しまった!切りっぱなしだったか。まぁ確かに本当ならもう佐世保に帰ってたからね。」
悠「すみません、俺のせいで…」
大山「いやいや!鳴上君は悪くないよ。何度も言うようだけど、僕がお節介なだけだから。しかし、これは帰らないとマズイかな?」
霧島「えぇ、これ以上待たせたら漣の胃に穴が空きそうですし。書類も溜まっているでしょうから。」
大山「そうか…鳴上君、悪いんだけど、僕らは佐世保に帰らなきゃいけなくなってしまったよ。本当なら提督の仕事のこととか教えてあげたかったけど、すまないね。」
悠「いえ、十分すぎるくらいにお世話になりました。本当にありがとうございました。」
大山「どういたしまして。じゃあ、僕らは荷物を急いでまとめなきゃだから、これで失礼するよ。部屋への道は大丈夫かい?」
悠「大丈夫です。最悪誰かに聞きますんで、心配しないで下さい。」
大山「出発は明日の朝になると思うけど、それまでに、もし何かあったら遠慮なく頼ってくれていいからね?では、失礼するよ。」
〜〜海軍本部・倉庫〜〜
大山達と別れた悠と島風は、そのまま部屋に戻ってもやる事がないので、海軍本部を散策していた。その結果…
悠「……ここは何処だ?」
島風「迷子だね…」
二人はいつの間にか倉庫の立ち並ぶ区画に来ていた。本当は工廠に行って妖精を見たかったのだが、『とりあえず大きな建物の方に行こう』という方針のもと、適当に移動したのが良くなかった。
同じような見た目の倉庫は、ここら一帯の地理に疎い悠を迷子にさせるには十分だった。
悠「どうする?戻るか?」
島風「もうちょっと歩こうよ。何か見つかるかもよ?」
悠「そうか、じゃあもう少し奥に行ってみるか。」
悠と島風は再び歩を進める。しばらく進むと波止場にたどり着く。どうやら端まで来たようだ。
悠「良い風だな。」
島風「そうだね。波も穏やかだし、戦争してるとは思えないよ。」
ここから見た海はとても穏やかだ。
しかし、少し沖に出れば、そこは命の保証は無い戦場。そのギャップが二人を感傷的な気持ちにさせる。
島風「悠、私頑張るよ。なんで深海棲艦が襲ってくるのかは分かんないけど、理不尽な悪意には負けたくない。それに元の世界にも帰らなきゃだしね。」
悠「そうだな。力を貸してくれるか?」
島風「もっちろん!頑張ろうね悠!」
二人は、波止場にそって歩いて行くと、人影を見つける。武蔵だ。
彼女は波止場に佇み、海を眺めながら物思いにふけっているようで、悠と島風には気づいていない。
悠(あれは、武蔵?考え事をしているのだろうか?そっとしておくべきか?)
島風「あー!武蔵だ!おーい!」
武蔵「ん?」
悠(どうやらそっとしておけないみたいだな。)
悠は苦笑しつつ、武蔵に向かって手を振った。
武蔵「あれから調子はどうだ?いきなり倒れるから驚いたぞ?」
開口一番、またしても体の心配をされる。
悠(体は丈夫な方なんだがな。)
「ああ、丸一日寝ていたからな。問題無い。」
武蔵「そうか。しかし、なぜこんなところまで来たんだ?大山大佐達とは一緒ではないのか?」
悠「実は…」
番長説明中……
武蔵「なるほど、なら私が案内してやろう。」
悠「いいのか?」
武蔵「どうせ暇だったしな。それより、いつの間にか敬語じゃ無くなってるな?」
悠「昨日の敵は今日の友って言うだろう?嫌なら直すが…」
武蔵「別に構わないさ。好きにしてくれ。」
島風「わーい!ムサしゃん、早く行こうよ〜!早く妖精見たい〜!」
武蔵「…ムサしゃん?」
島風「うん。武蔵さんを略してムサしゃん!カワイイでしょ!」
武蔵「よし、普通に武蔵さんと呼べ。」
島風「やだ!」
武蔵「……」
島風「……」
武蔵「フンッ!」ブンッ!
悠「!!」
武蔵は、ムサしゃんというアダ名が気に食わなかったようで、島風を捕まえようとするが…
スカッ!
島風「おっそーい!そんなんじゃ捕まんないよ〜!」
武蔵「…いいだろう。ガキが舐めやがって!」
悠「武蔵がキレた⁉︎島風!早く謝れ!武蔵も落ち着け!」
島風「ヘーイ!鬼さんこちらー!」
武蔵「この…!クソガキがぁ!おとなしく捕まりやがれー!」
悠「聞く耳持たず⁉︎」
突如始まった島風と武蔵の鬼ごっこ。
島風の足の速さは知っていたが、武蔵も負けず劣らずの速さだ。あの艤装を使う為に、普段から鍛えているのだろう。
しかし、島風は捕まらない。なぜなら…
武蔵「獲った!」
武蔵が島風に肉薄すると、
島風「あっまーい!ペルソナー!」パリィン!
ツクヨミ「疾きこと島風の如し!スクカジャ!」
武蔵「なっ!お前も出せるのか⁉︎」
島風「ふっふーん!あなたって遅いのね!」
島風はペルソナを使い、スピードを強化したのだ。拮抗していたバランスが崩れ、武蔵はだんだん離されていく。
だが…
悠「ネビロス!デカジャ!」パリィン!
島風「オゥッ!」
悠がすかさずデカジャをかけ、島風の強化を打ち消す。いきなりスピードを落とされた島風は足をもつれさせ、その間に武蔵が島風を捕まえる。
武蔵「捕まえたぞ!」
島風「そんな〜⁉︎悠が妨害しなきゃ勝ってたもーん…悠のバカ〜。」
武蔵「さて、どうしてくれようか?」
悠「はぁ…武蔵も島風も落ち着け。
島風、お前の人懐っこさは一つの才能だ。
だけど、年上の人や目上の人には礼儀正しくしないと、怒られたり嫌われたりしちゃうぞ?。」
島風「はーい…」
悠「武蔵もだ、いくら何でも沸点が低すぎじゃないか?
子供の言うこと一つ一つで、いちいち腹を立てていたらきりがないぞ?
大人の寛容さでしっかり受け止めなければな。」
武蔵「なぜ私まで説教されなければ…」
島風「えっと…武蔵さん、ごめんなさい。」
武蔵「…いや、私も大人気なかったな。済まなかった。」
島風「ふふ!仲直りだね!じゃあ、ムサしゃんって呼んでいい?」
武蔵「まだ言うか…分かった、好きにしろ。」
島風「わぁーい!ムサしゃーん!」
悠「仲直りも済んだか。じゃあ行くか!ムサしゃん!」
武蔵「お前が使うな!気色悪い!」
〜〜海軍本部・工廠〜〜
悠「ここが工廠か。」
島風「うわー、色んな機械があるねー。
あっ!あのちっちゃいのが妖精かな?ちょっと触って…」
武蔵の案内で工廠に着いた二人。
早速島風は妖精に触ろうとするが、
武蔵「やめとけ、彼らは仕事中だ。邪魔してやるな。
それと、あまり奥へは行くなよ?一部の部屋は機密保持の為に、妖精以外立ち入り禁止になっているからな。」
島風「はーい!」
島風は1人、走って行ってしまった。少し心配だが大丈夫だろうか?
悠と武蔵は会話を交えつつ、島風の後を歩きながらついていく。
悠「艦娘や提督でも入れないのか?」
武蔵「ああ、妖精は病的なまでに平和主義だからな。
自分達の兵器開発技術が流出して、人間同士の争いに使われないようにしているんだ。
艦娘の建造と艤装の開発も必要に迫られて仕方なくやっているらしいぞ。」
悠「…深海棲艦を倒す為か。」
武蔵「さすがに妖精達も無抵抗で死ぬつもりは無いらしい。まぁ、もっとも、Mr.バミューダの知恵と技術が無ければその抵抗すら出来なかっただろうが。」
悠「Mr.バミューダ?」
武蔵「ああ、普遍的無意識による記憶の共有と、それによる平行世界の存在証明なんていう事を、科学やオカルトなど、様々な視点から研究していた妖精の学者だ。
Mr.バミューダが建造技術を確立する前は、海を渡る艦娘を直接スカウトするという形を取っていたらしいのだが、リスクの割にリターンが小さかったそうだ。
最悪、艦娘を見つける前に深海棲艦によってスカウトに出た船が沈められるなんて事もよくあったらしいな。
事態を重く見たバミューダは、自らの研究を応用して、艦娘の建造技術を生み出した。
言わば、全ての艦娘の親ともいえる存在だな。」
悠(平行世界の研究⁉︎その妖精なら、元の世界に帰る方法について何か知ってるかもしれない!)
「武蔵、Mr.バミューダは今はどこにいるんだ?」
武蔵「…艦娘の建造技術を生み出し、他の妖精にノウハウを伝えた後に失踪した。どこにいるかは誰も知らん。」
悠「なっ⁉︎そうか…何か手掛かりは無いのか?」
武蔵「…バミューダの残した日記があるにはあるが…難解な暗号で書かれていてな。
分かっている事は、神隠しの海に行ったということだけだな。」
悠(神隠しの海…バミューダ…ん?バミューダ⁉︎まさか…俺の推測が正しければあの海域に…だが、この世界に存在するのか?いや、そもそもこの世界はどんな世界なんだ?後で世界地図を借りて確認するか。
とりあえず、確信が持てるまでこの事は黙っておこう。)
「そうか、神隠しの海か…どこにあるんだろうな…」
武蔵「分からん。そういった伝説や言い伝えのある海は結構な数があるが、深海棲艦が現れてからというものの、そういった海域は計器類はまるで機能しなくなり、しかも天気は基本悪天候、おまけになぜか強力な深海棲艦もウロついている。
何度か捜索隊を派遣しようとしたが、全て散々な結果に終わった。
無論、バミューダ海域も捜索しようとしたが、深海棲艦に阻まれて捜索にならなかったそうだ。まぁあそこは辿り着くのも現状では不可能だろうしな。」
悠(あ、なんだ…バミューダ海域あるのか。しかし、辿り着く事さえ出来ないとは…。)
島風「おーい!二人ともおっそーい!はやくはやく〜!」
いつまで経っても追いつかない二人に痺れを切らした島風は、大声を上げて二人を呼ぶ。
悠「ああ!今行く!」
しばらくの間、武蔵の案内で工廠を見学した。
〜〜海軍本部・食堂〜〜
工廠の見学を終え、武蔵と別れた悠と島風は、夕食をとるために、少し迷いつつも食堂へ向かった…はいいのだが、ここで一つ問題が発生した。
悠(しまった!お金が無い!)
そう、ずっと大山大佐の世話になっていた二人はお金を持っていないのである。
島風「悠…どうしよっか?」
悠「うーん、これ以上大山さんにお世話になるのは気がひけるし…」
島風「元帥さんは?お給料前借りさせて貰おうよ!」
悠「三嶋元帥に?…あの人には借りを作るのは避けたいんだが…」
?「おや〜?お困りのようですね!」
島風と相談をしていると、背後から声をかけられる。
悠「誰だ?って青葉さん?」
島風「こんばんはー!」
青葉「どうもどうも!昼間はありがとうございました!おかげでいい記事が書けそうですよ!そんな事より何かお困りみたいですが?」
悠「実は…」
番長説明中……
青葉「なるほど、今まで大山大佐に世話になっていたからお金が無いと。」
悠「はい。俺はいいとしても、島風はお腹が空いていまして。」
島風「そうなの。どうしたらいいかな?」
青葉「ふーむ…では、これ。貰ってください!」
青葉は悠の話を聞くと、自分の財布から一万円札を抜き、悠に手渡す。
悠「え⁉︎いや、悪いですよ⁉︎」
青葉「人の好意は素直に受け取っておくものですよ〜?取材のお礼の意味もありますんで、素直に受け取って下さい!
あ、あと、敬語も止してくれますか?他人行儀なのって、私嫌いなんですよね〜。」
悠「そうか、なら敬語はやめようか。ありがとう青葉。」
島風「青葉さんありがとうございます!」
青葉「どういたしまして!では、私は用事がありますので、これにて失礼させてもらいますよ。」
悠「青葉ー、ありがとうー!」
島風「またね〜!」
その場を立ち去る青葉、その背に別れの挨拶をかけると、青葉は手を振って応え、そのまま歩いていった。
悠「青葉のおかげで当分は大丈夫だな。」
島風「悠!早くごはん〜!」
悠「分かった分かった!まずはこいつを崩さなきゃだな…」