幻想高校の日々   作:ゆう12906

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第六十二話 小傘の助っ人?

「さて……どうしようか」

 

 似合わない腕組みで、小傘はしたり顔を浮かべて考え込む。

 

 異常なまでに起きない魔理沙をどう驚かせようか、そんな唐傘妖怪の矜持に関わる問題だ。やる気が起きないわけがない。傘で魔理沙の頭をはたくのは霖之助に止められている。かといって、大きな声で無理やり起こすのも芸がない。

 

 しばらく魔理沙をじっと見つめていた小傘だったが、急に何か思いついたようで、

 

「よっし!」

 

 魔理沙に背を向け走って行った。選手や観客の間を小さな体で器用に抜け、首を回してクラスメイトを探す。

 

「あっ、霊夢ー」

 

 ちょうど近くにいた霊夢の袖を引っ張った。

 

「……」

 

「ねー、ちょっといい?」

 

「……なによ」

 

 始めは無視していた霊夢だが、すぐにあきらめて目線を小傘に向けた。

 

「何の用事か知らないけど、手短にお願いね」

 

「わあ、怖い顔。どうしたの?」

 

 小傘に向けられた声色は明らかにとがっていた。目も半分しか開けておらず、上機嫌でないことが露骨に伝わってくる。

 

「いや、私のペアってアリスなんだけど、突然いなくなったのよ。まったく……どーしてどいつもこいつもいなくなるのかしら。魔理沙も霖之助について行ったままどこかへ消えるし……」

 

 魔理沙という単語が出て、小傘がぱあっと笑顔になった。

 

「魔理沙? それなら端っこの方で寝てるよ? 私、魔理沙を起こしてもらうために霊夢に声をかけたんだー」

 

「はあ? 寝てるってこの大事な時に……どこでよ」

 

 大きなため息を一つついて、再びジト目になり小傘に尋ねる。指差した方向に、鬼よろしく険しい形相でのっしのっし歩いて行った。

 

 安らかに眠っている魔理沙の下に着くと、

 

「なんで起こさないのよ。もうそろそろ試合じゃないの?」

 

「ううん、私たちは最後だからまだいいの。それにちょっとつついたくらいじゃまったく動かないし」

 

「まったく、一晩寝てないくらいで……別に起こしても構わないのよね?」

 

 一転、霊夢の口角が上がった。彼女にしては珍しい、なにかいいことを思いついたように、小悪魔的な笑みを浮かべた。

 

「いいけど、霖之助先生があんまり手荒なまねはよせって」

 

「大丈夫よ、――とっても楽しくなれることだから……」

 

「それって……ひっ‼」

 

 小傘がブルブル震えだす。霊夢の指十本すべてがリグルの虫よろしく蠢いていた。

 

「こちとらアリスが行方不明なのにそんなに気持ちよく寝てて……覚悟はできてる?」

 

「霊夢、もしかしてパルスィに取りつかれてる?」

 

 鬼か悪魔か、末恐ろしい形相で魔理沙に肉薄する。

 

「さあ、最高の目覚めをご提供してあげるっ!」

 

 あいかわらず微動だにしない魔理沙、その脇の下に霊夢の手が伸び、

 

 ガシッ

 

「へっ?」

 

「そうだな、いい目覚めだと思うぜ。お前の間のぬけた顔が見れたからな」

 

 なかった。魔理沙の細い腕が、霊夢の手首を手錠のように固く縛っていた。

 

「……いつから」

 

「小傘がいなくなった時くらいかな? 初めはいたずらしてくる小傘に逆襲しようかと思ってたが……まさかこんな大物が釣れるなんで驚きだぜ」

 

「まさか……もっと疑っとくべきだったわね」

 

「――ああ、ところでハンムラビ経典ってしってるか? 外の世界の法律書らしいんだが、やられたらやり返そうって考え方らしい。目には目を、歯には歯を、じゃあくすぐりには?」

 

「や、やめ……」

 

「私、こういうわかりやすい思考大好きだぜっ‼」

 

 小傘が口をポカーンと開けている横で、霊夢の絶叫がこだました。

 




第六十二話でした。定期的にレイマリは必要。

投稿遅れてすみません……シャドバ楽しすぎるんじゃ……(私利私欲)

ではっ!

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