「勝者、いや、勝妖精リリー!」
だがその笛は、文と椛が想定していたそれとは正反対だった。
「ちょっと、どういうことよ!」
「しっかりピチュらせましたよね⁉ どう見ても私たちの勝ちじゃありませんか!」
2人そろって、審判の幽香に詰め寄る。
幽香は左手で傘をくるくるしながら、右手は文たちに突き付け、
「あなたたち……ルール違反よ」
「どこかです?」
「場合によってはあることないこと書きますよ」
「はあ⁉」
理解の悪さに若干顔が引きつったが、ため息でストレスを吐き出して説明し始める。
「いい、これは弾幕ごっこよ! 物理攻撃禁止に決まってるでしょ! これ以上説明を求めるなら……成績下げるわよ」
先端を光らせた傘を勢いよく向け、鋭い眼光を光らせる。
「なっ、これは横暴です! 教師という立場を悪用して1組を不利な状況にさせようという魂胆ですね!」
「何のメリットがある! 私は2年の担任よ‼」
「そもそもあれは物理攻撃に入りません! みねうちですっ‼」
「思いっきり刃物向けた時点でアウトなのよ!」
「ああ、もうこれは何言ってもだめですね! 椛、書きに帰りますよ!」
「いつもはロクなこと書かない文々。新聞ですけど、今回はお手伝いします!」
「勝手にやってなさい」
「ごめんなさい、負けてしまいました」
「あの分からず屋教師が……すみません」
「まあまあ、こればっかりはしょうがないわ。私たちは運よく勝てたので、相殺してると思うわ」
「うまく私のキュウリが刺さったんだ! 遅くて普通なら避けられちゃうんだけど……雛の能力とうまくかみ合った!」
雛とにとりのコンビは、うまい具合に連携が決まったようだ。パチン、と軽やかにハイタッチして喜びを表現する。
雛は再び文たちに向き直り、
「ただ一つ奇妙なことがあったのよ」
「なんです?」
「審判がさとり先生だったんだけどねー、なんか途中でどっか行っちゃったんだ」
「『むむっ、これはからかいチャーンス!』なんてよくわからないことを放って、飛んで行ったのよ」
「まあよくわからない性格してますからね」
記者モードに入った文がいろいろとメモを取る。この大会の様子は、文々。新聞で大特集を組むので、ネタは多く集めておきたいところだ。
「ほかに何か面白いことありませんか?」
「ああ、そういえば優斗は来てないみたい。まだ熱があるらしいよ」
「きっと大妖精さんに釘を刺されたんでしょうね。……優斗さんなら強引にでも来そうな気がしますが」
「まさか、それはないわよ」
「さすがに大丈夫ですよね。――じゃあ私たちはゆっくり観戦しますとしますか」
第六十話でした。幽香先生なんて何十話ぶりでしょう?
雛も相当出てないですよね……運命のダークサイドは個人的に大好きなのですが。
では!