幻想高校の日々   作:ゆう12906

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第五十七話 魔理沙の好み

 そんなこんなで、翌日。魔理沙と小傘は大木の下で話していた。

 

「準備できたか小傘?」

 

「も、もちろんさ……あれだけ頑張ったから」

 

「よしよし、その心意気だ。今日は絶対に勝つぞ!」

 

「うん! やってやるんだ!!」

 

 実はこの小傘、並みの小傘ではない。

 

 魔理沙とのタッグが決まった瞬間、魔理沙は小傘を連れ出して校舎の外へと向かった。

 

 そこから始まったのはもちろん、魔理沙との地獄の特訓。特に魔理沙はお互いのスペルカードを理解し、連携を取ることを重視した。12時間という短い時間では、できることは限られているのだ。

 

 しかしそこは弾幕ごっこに命を燃やしている魔理沙。見る見るうちにコンビプレイができるようになり、急造コンビの2人は1日で見違えるほどに成長したのだった。

 

「しかしまあ……疲れたな。なんだか目がとっても重いぜ。お前はどうだ? いけそうか? もうだめか??」

 

「ぜんっぜん! こんなんで疲れちゃったの?」

 

「バケモンか……いや、本当に化け物唐傘妖怪か。こういう時は妖怪にあこがれるぜ……」

 

 夜を徹しての特訓で、魔理沙は睡魔に襲われていた。対して小傘は目を輝かせていた。むしろ、一日中起きていて肌にハリがある。

 

 人間が劣るところをまざまざ見せつけられ、肩を落とす魔理沙。

 

「調子はどうだ?」

 

 そんな魔理沙をあおるような発言が後ろから聞こえた。

 

 ドスのきいた声で、魔理沙は振り返り答える。

 

「どこを見ればそんなこと言えるんだ? 私の目の下をしかと確認するんだぜ」

 

「私は小傘が気になったから行っただけだぞ。なっ、小傘。元気だよね?」

 

 その声の主、慧音は飄々として小傘に笑顔を向ける。

 

「あったりまえじゃない! こんなんで疲れているようじゃ、驚かせられないよ!」

 

「そうだよな。たった一晩寝てないだけで疲れるなんて、人間は弱いな」

 

「うん!」

 

「小傘てめ……あとで覚えておけよ」

 

 魔理沙は暗い声で脅迫した後、手の指10本をわきわきと動かした。

 

 瞬間、小傘の顔から血の気が引き、慧音の後ろに隠れた。小傘の口から、低い震え声が出ている。

 

「やだ……あれはもう……」

 

 尋常ではない豹変に、慧音は目を丸くし、魔理沙に疑いの目を向ける。

 

「大丈夫か!? おい、魔理沙、いったい何をやらかしたんだ。 まさか……小傘の初め手を強引に……」

 

「なあっ!? ちげえぜ!!」

 

「そうか……まさかとは思ってたがお前はそういう……」

 

「そういうってどういうことだと思ってたんだ!!」

 

「そりゃもちろん、小さい女の子が好きなんだろ? チルノとか」

 

「今まで私をどんな目で見てきたんだ!? ――ああ、周りのやつが変な目を向けてるじゃねえか!」

 

 慧音は微笑みの中にどこかさみしさの混じった表情を浮かべ、親指を突き立てた。

 

「心配するな、私は教師だ。生徒のそういうのも認める。ただ強引にやるのは犯罪だから、一緒に警察に行こう。なっ、私が弁解してやるから」

 

「だから事実無根だって叫んでるだろうが! ――くすぐっただけだよ」

 

「まあそんなことだろうと思ってた」

 

 深刻な様子から一瞬で真顔に戻る。あいかわらず後ろでは、「いや……くすぐりいや……」と小傘の悲痛な声。

 

「冗談きついぜ先生……」

 

「ふふ、普段の仕返しだ」

 

 普段めったに見せないピースサインで喜びを表現した。魔理沙は白状したように理由を話し始める。

 

「実は昨日大妖精の家に行ったんだ。そこで『私をびっくりさせてみて!!』なんてあいつが言ったんだよ。悩んでたら優斗が助言してくれて……」

 

「つまり、悪いのはすべて優斗だと」

 

「そういうことだ」

 

「あとであったら頭突きだな……」

 

 罪が朝霧優斗になすりつけられたところで、

 

「そろそろ本題に入っていいか?」

 

「まだあったのか?」

 

「なになにー!?」

 

 どうやら小傘は完全に復活したらしかった。

 

 慧音は二人にまっすぐな瞳を向ける。

 

「こっちの3組戦の対象覚えてるか?」

 

「えっと……」

 

「はい! ヤマメとキスメでしょ!」

 

「そう、責任重大なポジションだ」

 

 試合は対2組と対3組で2回ある。1試合で誤解弾幕ごっこが行われる。3クラスしかないため当然総当たり戦で、各クラス10回試合を行い、勝利数の多い暮らしの優勝となる。

 

 そんな中で、3組戦の対象とは最後に行われる大トリ。絶対に負けられないのだ。

 

「くじ引きで決まった後二人が涙ながらに懇願してきてな……『私たちには到底似合ってない』とかで。仕方ないから、こうして頼みに来てるわけだ」

 

「だってさ小傘。どうする」

 

「もちろんやるに決まってる!!」

 

 魔理沙の問いかけに、小傘は間髪も入れなかった。魔理沙も白い歯を見せ、心底楽しそうな顔になる。

 

「私も同意見だ。こんな緊張するシュチュレーション、嫌いじゃない」

 

 魔理沙の力強い握りこぶしが、答えとなった。

 

「じゃあ頼むぞ! 1組を勝利に導いてくれ!!」

 




第五十七話でした。「君の名は」の声優、上白石萌音さんと上白沢慧音先生ってなんだか似てますよね。


小傘と魔理沙……なんだかおもしろそうなコンビですね。しかも書きやすくて一石二鳥。

では!

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