幻想高校の日々   作:ゆう12906

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第五十五話 パチュリーの願い

「ん? なんだこれ?」

 

 アリスは後ろからの声で、反射的に動きを止めた。

 

 これがただの1生徒なら、アリスはそのまま無視していただろう。しかしその声に反応しないわけにいかなかった。なぜならその声こそが、パチュリーがアリスを閉じ込めた一番の元凶。

 

 アリスは即座に後ろを振り返り、話しかけた。

 

「そこにいるの魔理沙?」

 

 じっと声のする方向を見据え、反応を待つ。

 

 だが、アリスの声は届いておらず、

 

「なんで通れないんだ? こりゃ見えない壁か?――そんなわけないか」

 

 ぼそぼそと魔理沙のつぶやきが聞こえるだけだ。

 

 どうやらこちらの声は聞こえないが、向こうの声だけは届くマジックミラー式らしい。パチュリーも凝って作ったものだ。

 

 ならば、さっさと壁をぶち破るのが得策だ。こちらの存在を気付かせるのが一番手っ取り早い。

 

 アリスは止めていた指を動かし、胸元から三枚一気にスペルカードを取り出す。

 

(これで終える……!)

 

 覚悟を決め、アリスが目を大きく見開いたとき――、

 

「待ちな……さい……」

 

「これ以上話すことなんてないわよ」

 

 背後からパチュリーのか細い声。

 

 パチュリーは息絶え絶えで、今にも意識を落としそうだ。だが、アリスのほうをにらみつけるように凝視した。

 

 その剣幕に少し気後れしたのか、アリスは黙って見つめ返す。

 

「あなた……これからどうするの……」

 

「そりゃ当然、壁を破壊してから魔理沙に会うのよ」

 

「ならその前に……お願いしたいことがある」

 

「はあ? あんたが私を閉じ込めておいて? ちょっと虫が良すぎるわよ。さっさとどきなさい」

 

「どうしてもやりたいことがあるのよ。――あなたと!」

 

「えっ!? 私?」

 

 パチュリーの言葉が斜め上から降ってきてアリスは思わず聞き返した。

 

(こいつは魔理沙じゃなくて私に用があった? じゃあ閉じ込められた理由も魔理沙がらみじゃないってこと?)

 

 考えれば考えるほどパチュリーの心理がわからなくなる。これまでアリスとパチュリーはほとんど関係を持っていなかったが、なぜ今になって話しかけてきたのか。

 

 兎にも角にも、話を聞かないことには始まらない。相変わらず息絶え絶えで横たわっているパチュリーに声をかける。

 

「何か頼み事でもあるの?」

 

「ええ、こっちへ来なさい」

 

「何よその偉そうな態度は」

 

「もう一歩も動きたくないのよ。あなたが何にも考えずにスペル連発するから……あいかわらず火力だけは高いのね」

 

「あんたがここに閉じ込めたからでしょうか」

 

 文句を言いながらもパチュリーの隣にしゃがみ込み、聞き耳を立てる。

 

「あなたと…………したいのよ」

 

「……えっ?」

 




第五十五話でした。正月ボケが長くてすみません。働きたくなかったのだ!

次回もお楽しみに!

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