幻想高校の日々   作:ゆう12906

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第五十四話 スペカ連打

 低く、冷たいパチュリーの言葉にアリスは一瞬固まった。だが、首を何度も横に振り強引に脳を再起動させる。

 

 要するに閉じ込められたのだ。ここでもたもたしていれば、そのうち魔理沙はほかの相手を見つけて声をかけるだろう。それまでの間にこの女狐はその身を犠牲にしても、この空間に押し込めておくのだろう。

 

 ここまでの思考を数秒でめぐらせたアリスは間髪入れずに判断をする。

 

 ――見えなくたって、壁は壁だ。ぶっ壊すのが早い。

 

 パチュリーの細身を押しのけ、懐からスペルカードを取り出した。握りつぶすようにして発動すると、右手で何とかもてるくらいの大きい人形が出現した。その体の中には大量の爆薬がつめこんであり光っていた。

 

「魔符『アーティクルサクリファイス』!」

 

 大声で発動したと同時に下手投げで透明な壁の中心めがけて投げつける。放物線を描いた爆弾人形は前方の壁の中心で轟音とともに煙を上げ、爆発した。

 

 黒煙が消えてくる。何か視覚的な変化があったわけではないが、魔法の壁にダメージを与えたはずだ。

 

 アリスはその壁の近くに寄って確認する。

 

「まだか……」

 

 手で触れてみると、無機物の堅い感触が伝わってくる。

 

 さすがに人形一体程度で壊れるほどもろくはないだろう。当然、織り込み済みだった。

 

「どうかしら……私の全身全霊をかけた結界は……」

 

「これ結界なの? あと、息絶え絶えね。そんなにエネルギー使うの?」

 

「あなたの人形が結構高火力なのよ……脳筋ね……」

 

 どうやらこの結界に負荷をかけるほど、パチュリーの体力も削られていくらしい。

 

 三メートル四方に区切られた空間で、いつまでも爪を噛んでいるわけにはいかない。アリスは出し惜しみをやめた。

 

「なら、速攻で打ち破らせてもらうわよ」

 

「やれるものなら……やってみなさい」

 

 結界にもたれかかっているパチュリーの言葉を背にして、もう一枚スペルカードを取り出す。

 

 アリスの頭上に今度は複数の人形が浮かぶ。

 

「呪符『ストロードールカミカゼ』! 行きなさい!」

 

 アリスが号令をかけると、背後からアリスの頭ほどの人形が複数現れる。せきを切ったように次々と突進していき、衝突すると先ほどと同じように爆発四散する。

 

 結界の中心一点に十数個の人形が刺さる。確認はできないが、確かに結界を傷つけている。

 

「これでどうかしら……って、もう聞いちゃいないか」

 

 アリスが再び振り返ると、パチュリーはうつむいたままピクリとも動かなかった。今の攻撃でもうノックダウンであろう。

 

 そう判断したアリスは満足げな表情を浮かべ、もう一度結界へ近づく。

 

 結界を通過しようとすると、

 

「……固いわね」

 

 ガン、と鈍い音がした。

 

「簡単には……破らせないわよ……」

 

「あなたいつの間にこんなに成長したの?」

 

「魔法が私の一番の得意分野。これであなたに負けるわけにはいかないのよ」

 

「なら消耗戦としゃれこむ?」

 

「のぞむところよ」

 

 今のスペルカード2枚でかなり息が上がっているが、こうなったらアイツが気絶するまでやる。

 

 そう覚悟を決め、2枚同時にスペカを取り出そうとする。

 

「ん? なんだこれ?」

 

「!?」

 

 ――だが、その後ろから唐突に声が聞こえ、踏みとどまった。

 




第五十四話でした。

アリスもパチュリーも体力がないです。だからお互い速攻で相手を潰そうとするのでしょうかね……

では!


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