幻想高校の日々   作:ゆう12906

49 / 63
第四十九話 文のチョコ取材当日編③

(ふふ……さすが慧音さんですね)

 

 文は自分のだらしない顔を元に戻すことができないでいる。

 

 先ほどの慧音との契約で、彼女と妹紅の邪魔をしないと文は約束した。

 

 ただ忍者さながら、天井から写真を撮るのは迷惑行為とは言えない。そう勝手に解釈した文は、結局チョコを渡すところをばっちり確認した。

 

 普段絶対に見せることのない、慧音の緊張した顔。それを激写できた文は、有頂天に達している最中である。

 

「さーて、これで記事の内容は固まりましたよ!」

 

 思わず廊下であげた大声に、ちょうど廊下ですれ違ったチルノと大妖精が驚き、二人の肩がビクッとはねた。

 

(さーて、残るはあと一つ)

 

 だが、これでも、こんなに撮りつづけても、まだ満足できない。それほどまでに文の取材欲は強大だ。

 

 慧音の時と同じように、こっそりと尾行を開始している。さながら探偵に見えるが、彼女は一介の新聞記者である。だが、その尾行能力は、下手な名探偵には匹敵していた。

 

(にしても、寒いですね……)

 

 二月の夕方ともなれば、かなり冷え込む。特に学校の廊下は暖房が全く聞いていないため、極端に寒くなる。文は自分の息を手にかけ、少しでも寒さを和らげようとしていた。

 

(けど、あの人の心はヒート真っ盛りでしょうけど)

 

 再度、文は尾行している人物を確認する。彼女は透き通るような金髪を真っ黒な帽子で隠し、白い息を吐いていた。手には、後生大事そうに抱えられているチョコレート。

 

「さあ、どうしてくれるんですか魔理沙さん……!」

 

 小声で、しかし力のこもった声で文がつぶやく。

 

 魔理沙を尾行しているのは当然、彼女が誰にどんなチョコを上げるのかを徹底的に探るためである。先日に単独取材を魔理沙に申し込んだのだが、門前払いならぬマスパ払いされてしまった。

 

 ならばと、勝手に取材中だ。

 

「さて、そろそろですかね……」

 

 こちらに全く気付いていない魔理沙がいるのは、会議室の前。

 

 扉に手をかけ、入っていく。

 

 なぜ慧音も魔理沙も会議室なのか文は疑問に思ったが、むしろ好都合だった。忍のように天井裏へ侵入し、天井の穴から覗き込む。

 

 予想通り、魔理沙と霖之助が向かい合っていた。

 

 はたして魔理沙がどんな言葉をかけるのか。期待と緊張で文の胸の鼓動が早まっていく。

 

「どうしたんだ魔理沙、こんなところまで呼び出して」

 

「いや、ちょっとな……」

 

 文のニヤつきが止まらない。すべて、すべて自分の予期した通りの結果だ。おそらく、霖之助はまだここに呼ばれた理由を理解していない。

 

 どう魔理沙が気付かせるのか、お手並み拝見だ。

 

 一時の間があった後、魔理沙の口が開かれる。

 

「ちょっとネズミの駆除に手伝ってもらったんだぜ!」

 

 魔理沙が叫び、チョコを持っていない右手を高々と揚げる。

 

「妖器『ダークスパーク』!」

 

 誰が予想したであろうか。魔理沙がチョコを投げ捨て、はつらつとスペルカード宣言をした。

 




第四十九話でした。今までで一番会話文か少ない気がしますね。

文って取材時は丁寧な口調ですが、普段の時は「~かしら?」「~よね」みたいないたって普通のしゃべり方らしいですね。

ちなみに文の後輩の、アオバワレェ!さんは誰かと話すときは基本敬語らしいですね。

今回で終わりって前言ってましたが、そんな余裕はなかった……おそらく、次回で本当にバレンタイン編は終わりかな?

では!



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。