「魔理沙さん! そのチョコは誰に渡すんですか! ってか、絶対霖之助先生ですよね!」
「いきなり来て何言いやがる!」
紅魔館での一件から二日後、文は魔理沙の家に突撃をかけていた。
実は、始めのほうから魔理沙に目星をつけていた。没になった取材記事の中に、『魔理沙の調子がおかしい』というのがあったのだが、文はその原因もばっちり突き止めていた。
「まあ落ち着いてください。実は私、古明地姉妹と大妖精さんからおいしい情報をいただいておりまして」
「さとりたちと大妖精? おい、まさか……」
「私の行動範囲は地底までも網羅しているんですよ」
「大晦日のアレかー!」
ギャーと、叫び声をあげながら頭を抱える。
大晦日、魔理沙と大妖精はさとりを訪れている。そこで魔理沙は、さとりと大妖精にさんざんいじられて、それ以来ボケが弱くなっていた。
「お前の言いたいことは大体わかった。どうだ、取引をしようじゃないか」
魔理沙が呼吸を整えつつ、そう提案した。あまり文に詮索はされたくないようだ。
「実は、とっておきの情報を持っている。それと教えてやるから、これ以上かかわるな」
「ふむ……情報次第ですね。どんな内容ですか?」
「大妖精がアイツにチョコを渡す場所と時間だ」
「ああ、それなら決裂ですね」
「うえっ⁉」
断られるとは思わなかったのか、魔理沙ののどから大きな声が飛び出る。
この情報は魔理沙の切り札だった。必ず文を落とせる、必殺のスペルカード。そう思っていたのだが、計算が一気に狂う。
「なんでだよ!? お前にとってはのどから手が出るほど……」
「一歩遅かったですね。私、大妖精さんとさとりさんから取引を持ちかけられたんですよ」
「何だって!?」
文の口角がわずかに上がる。
「『チョコをあげるから、2月14日までそっとしておいてほしい』と、言われましてですねー。ほら、見てくださいこのチョコ」
ポケットから取り出されたのは、ファンシーに包装されたチョコと、ごく普通の板チョコだった。
「さとりさんからのはなんと、外の世界のやつですよ! 大妖精さんのはかわいくて……たまりません! さすがの私でも了承せざるを得ませんでした」
「そんな約束破っちまえばいいだろ! こっち側につけよ」
「お断りです。一応、約束は守れっていうのが天狗の教えですし。それに……」
「大妖精を応援したい」という言葉は飲み込んだ。こんな発言は自分らしくない、そう文は思った。
「そんなわけで、これから密着取材させていただきますねー」
「ああ、わかったよ……」
「許可をいただいて何よりです」
「密着できるならな!」
魔理沙は天に向かって叫ぶと、胸ポケットから細長い紙きれを取り出す。
「ちょ、何するんです!」
「恋符『ダブルスパーク』!」
「力ずくってわけですか。まあ、今はいったん退きましょう。また来ます!」
「2度と来るなぁ!」
開いていた窓から大きな黒い羽根をはばたかせ、飛び出していった。その顔は、終始笑い続けていた。
第四十六話でした。魔理沙は乙女なのだぜ。
前回、「投稿ペース早くします!」とか言ってましたけど、どんな自信があってあんなこと書いたんでしょうね?
なにせ夏イベの備蓄で忙しいんです……この意味がわかる方には、厳しいツッコミを入れられそうですね!
では!