幻想高校の日々   作:ゆう12906

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第四十五話 文のチョコ取材②

「さあて……」

 

 翌日の夕方、文は別のところに来ていた。

 

 前日撮った慧音のキャラ崩壊写真で、新聞を八分の一ほどが埋まった。一面トップにこれを持ってくると、慧音に頭をぶち抜かれる恐れがあるので、あまり大きくは書けないのである。

 

 別にバレンタインデーは、ゴシップだけしかない行事ではない。甘く、ほほえましいシーンだっていくらでもある。そう文は考え、ここにやってきた。

 

「すみませーん。射命丸文なんですが……取材よろしいでしょうか? ――あの? おや、寝ていますね……」

 

 そこの門番の肩を何回か叩くが、起きる気配が感じられない。気にせず、その横を通り過ぎることにした。

 

 ちょうど日没を迎え、あたりが暗くなってくる。それの対比で、館の中が明るく見えてくる。程よく明るい廊下を文はすたすたと歩く。

 

 二十分ほど屋敷の中を歩き回り、お目当ての部屋を発見した。通常なら侵入者には、即座にここのメイド長が対処に来そうなものだ。だが、これまで文がいろいろな部屋を漁っても何の反応もなかった。それだけ、メイド長も手が離せないのである。

 

(なんだか緊張しますね……)

 

 慎重に、その部屋のドアノブをあける。そこには――、

 

「ふ、フランお嬢様!? 今度はいったい何を……」

 

「何って……甘みと酸味を共演させたらいいものができるでしょ!?」

 

「確かにそういうものもありますが! だからって、だからって……」

 

 プルプル震えながら、咲夜は問題の品を手に取る。

 

「トマトとレモンと酢を丸々入れるなんて、いくら何でもやりすぎです!」

 

「そ、そうなのかー?」

 

「そーなのだー……って違います! ――けど可愛い……」

 

 文はその様子を、メモを取りながらのぞいていた。

 

 これは記事になる……のだろうか。文にも判断しがたかった。確かに、すっぱいものを入れまくったフランの行動は面白いかもしれない。

 

 だが、それを書いた瞬間、ナイフが飛んできそうな気がする。よっぽど面白いものが書けないかぎり、ナイフという代償は払えなかった。

 

 そう文が悩んでいると、背後からゆったりとした足音が聞こえてきた。

 

(マズっ……)

 

 慌てて空いていた窓から外に出て、中の様子を観察する。自分がいたところに紅魔館の主、レミリアが通った。

 

 こちらに気づいていないようで、ドアを開け、フランたちのいる部屋へ入って行った。

 

「ふふ、お困りのようね咲夜」

 

「お嬢様! こちらへ来てはなりません! チョコがすさまじく……パチュリー様も犠牲に……」

 

「ふっ、任せなさい。神槍『スピン・ザ・……』」

 

「それをここでやるのはやめてください! 屋敷に住めなくなります!」

 

「わかった! じゃあ私がやる!」

 

「ちょ、やるってまさか……」

 

「炎剣『レーヴァテイン』!」

 

「させません! 『咲夜の世界』!」

 

(なんだか……楽しそうですね)

 

 これ以上は見ていられないとばかりに、立ち去っていく文。

 

 十分写真は撮れたし、記事にするのは確定だ。あとは咲夜がどうにかしてくれるだろう。




第四十五話でした。

遅くなってすみません! 夏の間は投稿ペース早くできればなあ……って思います。実現可能確率12.3%くらいですがね! 

ではっ!


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