朝早くから歩いた結果、魔理沙と霖之助は太陽がまだ東に傾いているときに、大妖精の家へと到着した。
「さーて、じゃあドアに突っ込むぜ!」
「まて、なんでそうなる」
「さっさと教わってすぐに帰りたいからな。まあ、大妖精とどっか行ってもいいんだが。――とにかく早く終わらせるんだぜ!」
「あんまり迷惑かけるんじゃないよ」
「わかってるぜ」
魔理沙が家のドアをどんどんと強くたたくと、午前中ということもありしばらく間が空く。少しドアの前で待っていると、ゆっくりとドアが開いた。
「はーい。どちらさま……――うわっ!」
「ちょ、なにやってるんだ」
大妖精がドアを開けたとたん、魔理沙が家の中へ駆けていく。
たちまち大妖精の華奢な体が吹っ飛ばされた。素早く霖之助が大妖精の様子と確かめる。こういう事態に多々遭遇しているので、対処の仕方は体が覚えているのだ。
「おーい。大丈夫か」
「うん……霖之助先生? どうしてここに」
「魔理沙の付き添いだ。悪かったね、迷惑掛けて」
「い、いえ……ところでなんで魔理沙に付き合わされたんですか?」
「分からない。大方荷物持ちでもさせたかったんじゃないか?」
「あ……――あー……」
何かを悟ったように大妖精が首を縦に振るが、霖之助は相変わらず真顔を崩していない。
霖之助と大妖精が魔理沙の方を見てみると、魔理沙が優斗に絡んでいた。
「優斗、さっさと数学教えるんだぜ!」
「まず大妖精を起こしてからにしろ」
「いや、もう助けてあるぜ」
優斗が反射的にドアの方を見る。視線を向けられた霖之助は、魔理沙への愚痴と大妖精の無事を報告する。
「まったく……あんまり無茶をするなよ。大妖精の方は問題ない。まだちょっと錯乱状態だけど」
「あれ? 霖之助先生、付き添いですか?」
「付き合わされただけだ」
「いや~さすが優斗だな。まさかこんなに早く終わるとは思わなかったぜ」
「ふむ……さすがだね」
魔理沙が持ってきた数学の難問はほんの三十分ほどで攻略できた。
確かに優斗は現実世界で高校生だったので、この程度の問題はすぐに答えられるだろう。だが、あの魔理沙に勉強を深く理解させるのはかなり困難なことではないだろうか。
それを涼しげな顔でやってのける彼は一体どんな思考回路をしているのだろうか。一番近くにいる大妖精でもよく分かっていないので、恐らく解明されることはないだろう。
「さて、私はちょっと出かけてくるぜ」
「帰るのか? それなら僕も香霖堂に戻るよ」
「違う、出かけるんだ。いくぞ、大妖精」
急に話を振られた大妖精は、反応できずしばらく固まる。
「……私!?」
「他に誰がいるんだ。いろいろ買いたいものあるからな。一緒に見てもらいたいんだ」
「いや、今日はこの後予定が……」
実は大妖精、というより優斗が初詣のことで霊夢と早苗から相談を受けていて、この後優斗共にある場所へ行く予定があるのだ。今日は大みそか。早く準備しないと初詣の客が来てしまう。
「まあ、いいんじゃないか。午後までに帰ってくれば十分間に合うし」
「でも……」
「大丈夫、大丈夫」
「ほら、お墨付きも出たし行こうぜ!」
「う、うん。じゃあお昼くらいには戻るから」
「ああ、いってらっしゃい」
ただ、優斗は頭脳明晰な割に能天気なところもあるので、軽い調子で魔理沙に賛同した。
第三十八話でした。三人称の書き方が迷走していますね。一人称の方もぐっちゃぐちゃですが……
最近ボカロが僕の中で再ブレイクしています。これを書いているときも、「ろりこんはだめだよ~」を聞いています。ぜひ聞いてみてください。(ロリコン?正義だよ)
では!