幻想高校の日々   作:ゆう12906

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第三十六話 決勝戦

 弾幕ごっこ大会最終日。

 

「恋符『マスタースパーク』!」

 

「ここまで強いとは思いませんでした~」

 

 準決勝でも霊夢と魔理沙は、盤石の強さを誇っていた。己に科した課題、「マスパで相手を倒す」という制約も順調にこなしていった。

 

 今倒したのは早苗&諏訪子ペア。

 

 風陣録5面ボスとエクストラボスという強敵にもマスパ縛りで勝ってしまう。そんなところがいかに2人がチートじみているかを表している。

 

「ふい~やっと決勝か」

 

「ええ、でもその前に、」

 

「ああ、もうこんな時間だな」

 

 並んで歩きながら会話する。2人とも全く目を合わせていないが、お互い次にいうことは分かっている。

 

「「昼食ね(だな)」」

 

 

 

 

 

「この勝負もらいました! 三華『崩山彩極砲』!」

 

「うわっ!」

 

 美鈴が相手の出してきた弾幕を華麗にかわし、少名針妙丸に拳をたたきこんだ。それとほぼ時を同じくして、

 

「時符『プライベートスクウェア』」

 

「なるほど、周りを囲まれている……反則じゃないか?」

 

「あら、あなた相手ならスペルカードルール無視してよかったんじゃないの? まっ、これは多分、探せば隙間あるだろうけど」

 

 咲夜が出した4つの正方形が、四方から鬼人正邪を襲った。

 

 

 

「美鈴、最後のあれはひどくなったか? 貴方の拳、私にはちょっと酷だったの」

 

「すみません……でも勝負ですから」

 

「あ~あ。せっかく幻想郷ひっくり返そうと思ったのに……」

 

「あなた、もしかしてまたナイフ投げられたいの?」

 

「おやおや、冗談に決まってるじゃないか」

 

「美鈴、やりなさい」

 

「2人ともそうケンカ腰にならないで! 行きますよ咲夜さん」

 

 美鈴が気を使う程度の能力を発動し、2人を引き離す。そのままずるずると引っ張って校庭の端っこまで移動させた。

 

「ちょっと、何をするのよ!」

 

「まあまあ落ち着いて。確かにあいつにはいろいろ苦労させられましたけど……いいじゃありませんか勝てたんだから」

 

「むう……あなたがそういうならいいってことにしとくわ」

 

「ふふ、なんだかかわいいですね」

 

「!? ちょ、何を言って……」

 

 予想だにしなかった美鈴の一言で激しく狼狽している咲夜。そんなことは気にも留めず、美鈴はちらっと時計を見る。

 

「わわ~何も聞こえない~。そんなことより、もうお昼ですよ。早く食べましょう!」

 

「わ、わかったわよ」

 

 

 

 

 

「今日のメニューはなんなの?」

 

「いつでも安心・安全・安価のキノコだぜ!」

 

「何其のうさんくさい宣伝みたいな謳い文句は」

 

 美鈴が咲夜をからかっている頃、霊夢と魔理沙も昼食をとっていた。やはり校庭の隅、枝だけの桜にもたれかかって。

 

「そんで本当に大丈夫なんでしょうね? これでお腹壊しましたー、なんて洒落にならないわよ。ちなみにどこでとってきたのよ?」

 

「もちろん森だぜ!」

 

「まあ、魔理沙のことだし……大丈夫よね」

 

「なんだ、そんなに不安か? なんなら食ってみろよ」

 

 ぐいっと差し出されたきのこを見て霊夢は一瞬嫌そうな顔をする。が、すぐにあきらめたようにため息を1つついて、

 

「はいはい、わかったわよ」

 

「さすが霊夢なんだぜ」

 

 一個丸々、一口でほおばった。

 

「どうだったか? ちゃんとあぶってあるんだぜ」

 

「悪くはない……かしらね」

 

「だろ? 毒なんかないんだぜ」

 

 魔理沙がニカッと笑うと、珍しく霊夢も微笑み返す。そこには2人の信頼、そして次の試合に勝つという決意が込められていた。

 

 

 

 

 

 一時間後、決勝戦、霊夢&魔理沙VS咲夜&美鈴

 

「咲夜さん、あの2人どうしたんでしょ?」

 

「さあ、知る由もないわね」

 

 咲夜たちはすでに空中にとどまっていて準備ができていた。が、

 

「なんでこんな時に綺麗に2人とも食あたりするのよ……」

 

「さ、さあ? だが1つ言えることは、こういう状況を『フラグ回収』というらしいぜ……」

 

「誰から聞いた?」

 

「霖之助」

 

「信用ならないわね……」

 

 霊夢たちはあの時食べたキノコが2人のおなかをむしばみ、唸っていた。

 

 魔理沙の言うとおり見事なフラグ回収である。

 

 ほうきとお祓い棒を杖のような状態にしないと立っていることすらできない、かなり重症のものだ。

 

「こうなったら……」

 

「ああ、私と霊夢は……」

 

 2人でうつむいたまま震え声で宣言する。

 

「「棄権します!」」

 

 咲夜と美鈴の優勝が決まった瞬間であった。

 

 

 

 

 

「やりましたよ! 優勝ですよ優勝!」

 

「最後がすごいあっけなかったわね」

 

 表彰式も終わり、紅魔館へと帰っている2人。

 

「咲夜! おめでとう。よく頑張ったわね。さすが私のメイドね」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「次こそは負けないからね!」

 

「次も手加減しませんよ!」

 

 レミリアと咲夜も後ろから合流してきた。みんなそろっての帰り道である……

 

「あれ? 小悪魔とパチェは?」

 

「パチュリー様はまだ療養中ですよ。――あれ? そういえば小悪魔は?」

 

 咲夜が思わず忘れてしまった小悪魔。彼女にもいろいろと用事があったのだが深く突っ込む者もいない。やはり影が薄いのであろう。

 

「ねーねーお腹すいた! 早く帰ろう!」

 

「そうですね。 今日は本気でいっちゃいますよー! 美鈴、あなたも手伝ってね」

 

「あ、はい! 咲夜さんよりおいしいの作ってもいいですよね!?」

 

「ふふ、私に敵うのならね」

 

 紅魔館の住人達もいつも通りの日常に戻っていく。弾幕ごっこ大会というイレギュラーが入ってきてもこうしてゆっくりと、時は進んでいくのであった。

 




第三十六話、今回で弾幕ごっこ大会完結ですね。

森でとってきたきのこってかなりの確率で毒だと思うのは僕だけ?四六時中魔理沙はおなかを壊している気がします……(耐性はつくんですかね?」

二学期もそろそろ終わりですね。特に彼女たちには意味がないですが。

では!

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