月世界のお土産店でアリスと慧音は相変わらず腹の探り合いをしていた。
「先生、もうそろそろ諦めたらどうですか?生徒の幸せを一番に考えるのがよい先生と言われる必須条件ですよ」
「残念だが私は良い先生にはなれないと自負しているからなあ……まあそんなわけで諦めてくれるか?」
「なるほど。ではごっこ遊びで決着つけますか?」
「私は全然構わないが?アリスが後悔するだけだからな」
幻想高校は生徒と先生の垣根が無いに等しい。その結果がこれなのだ。いろんな意味で女子高、しかもひと癖もふた癖もある生徒と教師が集まったこの高校は恐ろしいところなのだ。
「あら、なんだか楽しそうね」
空気を全く読まず二人の間に入り込んできたのは豊姫。なんだかニヤニヤしていて楽しそうだ。
「どこが楽しく見えるんですか?」
「と、いうか私の手伝いしろ」
「まあまあ、私は基本的に中立だから何もできないけど……あなたはどう思う?」
「いや、私はどうでもいいんですが」
突然話をそっけない顔になる依姫。しかしちょくちょく顔を見せているあたり少し地上人に対する態度が軟化しているのかもしれない。
その時、外から焦ったように魔理沙の声が聞こえ、チルノと共に店の中へ転がり込んできた
「おい大変だ!――何やってるんだ依姫!さっさと隠れるんだ!」
「はあ?何を言ってるんですか?」
事態が全く呑み込めていない依姫。
「いやもう……とにかく大変なんだ!もうすぐ恋に溺れて暴走しちまった妖精が来るんだよ!」
「だから何を……」
依姫のその言葉はさえぎられた。音速に近い緑の弾によって。
「なっ!?今のは……」
依姫が驚愕の表情を浮かべる。そのまま恐る恐る斜め上を見上げると、
「いたね……依姫」
R指定されそうなくらい末恐ろしい顔の大妖精が浮かんでいた。微笑を浮かべているが、目が全く笑っていない。顔には青筋が浮かんでいて、漫画なら額のところに暗い線が入っていそうだった。
「ちょっと待ってください!いったい何があったんですか!?あんな顔見たことありませんよ!?」
「それが……私たちがちょっとあいつを焦らしただけなんだよ……」
「うん。まさかあんなことになるなんて……」
魔理沙とチルノはみんなを輪にして、こうなった経緯を説明し始めた。話している間、依姫の顔がみるみる赤くなっていく。
「つまり……、あの大妖精は勘違いしているんですか?」
説明が終わって最初に出た言葉がこれだったが、魔理沙とチルノはこの言葉の意味が分からなかった。
「はあ?勘違いってなんだよ」
「私が優斗のことが好きということですよ!そんなわけないでしょう!」
「えっ?違うの?」
「そうですよ……――あんたの仕業か」
依姫が憤怒に満ちた表情で見つめたのは、この状況を楽しんでいるかのように笑顔を浮かべている豊姫だった。
第二十四話でした。大妖精怖ええ……
依姫はどう対処するんでしょうか。そしてこの騒動を止められるんでしょうか!?(あの人にしか止められないと思いますが……)
ではまた!