東方混迷郷   作:熊殺し

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消してからのスタート回です。
普通に日常回を書きたかったので今回はこうなりました。


66話

ガチャン

 

 

リ「や・・・やってしまった・・・」

 

 

神谷リュウト。

厨房でティーカップを割る。

 

 

______________

 

 

~厨房~

 

 

咲「リュウトさん?

今何かが割れる音がしたんですが・・・あら。

やってしまいましたね」

 

リ「さ、咲夜・・・すまない。

うっかり落として割ってしまった」

 

 

昼食が済んで布巾でテーブルを拭いていると、厨房から陶器が割れた音がした。

入り口から覗くと、リュウトが申し訳なさそうにしゃがんで割れたカップの破片を回収していた。

しかもそれはレミリアがいつも愛用していたティーカップだった。

 

 

リ「どうしよう・・・。

悪気はないとはいえ此処まで木っ端微塵に割れてしまうとは・・・」

 

 

落ちた衝撃で至るところに破片が飛び散ってしまったカップはもはや原形をとどめておらず、どうしようもない状態だ。

 

 

咲「割ってしまったものは仕方がないですわ。

これを機に新しいものを新調致しましょう♪」

 

リ「新調と言ったって・・・幻想郷は和風な店が多いぞ?

西洋ティーカップなんて売っている所あるのか?」

 

咲「ありますよ?

店主が変わった方ですが」

 

リ「・・・え?」

 

 

______________

 

 

人里から魔法の森に入る入り口にはポツンと古い一軒家が建っている。

玄関の前には縞々のピエロと白タキシードの爺さんが肩を組んでベンチに座っているという異常な光景。

というか、この二つの人形は一緒にしてはいけない気がする。

物が溢れかえっているような店構えだが、看板にはこう書かれていた。

 

 

=雑貨屋香林堂=

 

 

雑貨屋だという事位、入り口を見ればわかる。

だが、これはやりすぎだと思う。

リュウトは此処に連れてこられた時、少し後ずさりをしてしまった。

もれなく咲夜に後ろから押されてしまったが。

 

 

咲「下がらないでください。

さ、入りますよ?」

 

リ「本当に入るのか?

あまり気のりしないのだが・・・、」

 

咲「私が知る限りティーカップなんてここでしか買えませんわ。

大方揃っている店なので」

 

 

この店構えでよくやっていられると思いながらも、咲夜が催促するので大人しく扉を開けて中へと入っていく。

外見とは裏腹に店の中はスペースがあり、棚に置かれた品々を見る限り確かに店として成り立っていた。

ただ、置かれている物がリュウトの居た時代では博物館に飾ってあるレベルの古いものばかりだった。

しかも壊れている。

商品として使えない物ばかりだ。

 

 

リ「これは・・・本当にガラクタばかりだな」

 

?「ガラクタで悪かったね」

 

リ「ム?」

 

 

商品の置かれた棚をまじまじと眺めていると、店の奥から眼鏡をかけた銀髪の長身の男が出てきた。

和風なコスチュームに身を包んでいるが、独自のアレンジを加えている。

リュウトはこの男に見覚えがあった。

 

 

リ「霖之助か?」

 

霖「おや?僕のことも知っているのかい?」

 

リ「あぁ。

しかも久しぶりに会った」

 

霖「ハッハッ!

それじゃあ君にとっては久しぶりの再会というわけか。

何だか不思議な感覚だね、僕は君に会ったことがないのに君は僕に会ったことがあって、しかも知り合いなんだから」

 

リ「違いないな。

俺も久しぶりに会ったが、全く変わっていないぞ?」

 

霖「それは未来でも若いってことかい?

それは嬉しいね」

 

 

初対面の相手に軽く会話するところは流石、店を出しているだけの事はある。

幻想郷では数少ない男の友人と、もう少し話していたかったが、今は時間が無い。

間に咲夜が割って入り、霖之助に用件を伝えた。

 

 

咲「お話中失礼します。

霖之助さん、ティーカップの在庫はございますか?」

 

リ「おっと、そうだった」

 

霖「ティーカップかい?

あるにはあるが、どれも高級品ばかりでね。

だれも買おうとしないんだよ」

 

 

というと、店の奥の暖簾をくぐって木箱を取り出してきた。

墨で西洋器と書かれた箱を開けると、和紙で梱包された二つのカップが出てきた。

淵に彩られた綺麗な金色の模様は何処となく貴族を想わせる。

霖之助によると、これは二つセットで売っている物なのだそうだ。

ただでさえ高いものを二つ買うのだから相当な額になる筈。

誰も買わない訳だ。

 

 

霖「どうだい?

高いだけあって綺麗だろう?」

 

リ「良くは分からないが・・・確かに良い物のようだな」

 

霖「気に入ってくれたかな?」

 

 

良い物を買うに越したことは無いが、値段が気になる。

リュウトは霖之助が取り出した箱の裏に貼られた値札をチラッと覗いた。

 

 

リ「ろ・・・6万円!?」

 

霖「だから高いと言ったじゃないか」

 

 

恐る恐る尻ポケットに入っている財布の中を確認する。

万札が二枚と千円札が5枚。

足りない・・・。

 

 

リ「想定外だ・・・、」

 

霖「僕も商売だからね。

値下げは出来ないよ」

 

咲「あの~・・・お金なら私が用意してますよ?」

 

 

二人の会話に置いて気彫りになっていた咲夜が小声で財布を取り出す。

水色の長財布片手に軽く6万円を出した。

この状況で救いの手を差し伸べてきた彼女を見てリュウトはこう思った。

 

 

リ「神か!!!」

 

咲「えぇ!?」

 

霖「まいどあり~」

 

 

__________________

 

 

その日の夜。

一人でリュウトはレミリアの部屋の扉の前に立っていた。

割れたカップの入った袋を持って。

 

 

リ「・・・よし」

 

 

扉を三回ノックし、その場で待つ。

中からレミリアの声が聞こえ、入っていいと言われてドアノブを握る。

 

 

ガチャッ

 

 

リ「れ、レミ姉・・・」

 

 

部屋に入ると、チェアにもたれ掛かり眼鏡をかけたレミリアの姿があった。

手に持った開いた本。

どうやら読書中だったようだ。

 

 

レミ「あら、珍しいわねこんな時間に来るなんて。

・・・その袋は?」

 

 

ビクっと身体が反応してしまう。

 

だが、謝らなければいけない。

 

 

リ「す、すまない!

レミ姉が大切にしていたティーカップを不注意で割ってしまった!」

 

レミ「あら、そうなの?

その袋が割れたカップってわけね」

 

リ「うっ・・・

その通りだ・・・」

 

 

いつもよりも声のトーンが低いレミリアに低姿勢になってしまう。

怒鳴られるか?

だが、帰って来た言葉は意外なものだった。

 

 

レミ「別にいいわよ?

そろそろ替え時だと思ってたし。

カップなんて館に腐るほどあるでしょ?」

 

リ「え?いいのか?」

 

レミ「カップが割れた位でどうもしないわ。

私はそんな小さな器じゃないわよ」

 

リ「そ・・・そうか・・・」

 

 

無駄な心配だったなと少し後悔したが、一つ引っかかる言葉があった。

 

 

リ「ちょっと待て。

館に腐るほどある・・・だと?」

 

レミ「えぇ。

食器棚には置いてないけど保管庫に箱詰めで置いてあるわよ?

昔に大量買いした奴が残ってる」

 

リ「・・・・・」

 

 

聞いてないぞ咲夜・・・。

建て替えた6万円は一体何だったのだろうか。

いくら割ったからと言っても出費が大きすぎる。

反省しろという事だろうか。

 

 

リ「咲夜ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

今世紀最大に一杯食わされたリュウトなのであった。

ちなみに買ったティーカップはその後、レミリアのお茶に使われるようになった。

もう一つはリュウトが咲夜へのプレゼントという形となった。

お陰で彼のポケットマネーは瀕死状態らしい。




出していないキャラの一人ですね。
少しだけですが、数少ない男キャラなのて貴重な人材です。
そろそろ花映塚に入りたいのですが、、、もう少し日常を描いたあとにします。

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