東方混迷郷   作:熊殺し

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※今回は旅行に行っているリュウト達の話ではありません。



外界編58話

所変わって幻想郷。

リュウト達が旅行で居ない間、響華が博麗神社の運営を任されることとなった為、永遠亭では朝からてゐが響華の見送りに玄関に立っていた。

 

 

てゐ「もう行くのかい?何だか寂しくなるねぇ」

 

響「しょうがないよ、私一応未来の世界の博麗の巫女だから抜擢されちゃったんだから。

何なら遊びに来る?」

 

てゐ「いや、鈴仙達が帰ってきたらまた帰ってくるんだろ?

それまで待ってるよ。

それより、異変も終わったんだし、久しぶりの幻想郷を見てきたらどうだい?」

 

 

その言葉には間違いがある。

響華が知っているのは未来の幻想郷で、この世界は生まれて初めて見る光景と何ら変わらないのだ。

しかし、行ってみる価値はある。

 

 

響「お勤めがある程度済んだら考えてみようかな。

ユカ姉が来るのは明日だし、今日は神社で一人きりだし」

 

てゐ「そうかい。

ま、好きにするといいよ」

 

響「うん。

じゃあ行ってくるね」

 

てゐ「行ってらっしゃい~」

 

 

引き戸を開け、専用の巫女服や下着の入った大き目の肩掛けバッグを担ぎ、手を振るてゐにバイバイと手を振りながら飛び去った。

それから遅れて輝夜も玄関にやって来たが、もうその時には響華は居なかった。

 

 

輝「あれ?もう行っちゃったの?」

 

てゐ「姫様・・・もうちょっと早ければ見送り出来たのに」

 

輝「あちゃあ・・・でも三日経てば帰ってくるからいいか」

 

てゐ「ま、その間は此処が少し寂しくなるけどね。

ウサギたちの相手してればいいか」

 

 

過ぎ去る響華の背中を玄関から見送った二人は、永琳が待っているであろう居間へと続く板張りの廊下を歩いて行った。

 

 

__________________

 

 

 

響「お邪魔しま~す・・・て言ったってここは私の家なんだけど」

 

 

神社には勿論誰も居ない。

不用心に鍵が閉まっていない玄関をガラガラと音を立てながら開け、慣れたように中へ上がっていく。

自分の部屋となる部屋には霊夢の私物が置かれており、前まで居た頃と時代が違うという事を、改めて実感させられた。

 

 

響「おばあちゃんの部屋にこれ置いとけばいっか」

 

 

重い荷物を床に降ろすと、凝っていた肩や腰の骨をパキパキと体を伸ばして鳴らす。

神社へは遊びに来た訳ではない、博麗の務めの代行に来たのだ。

いつも霊夢がやっていることを一日のうちにやらなければいけない。

取り敢えずは自分が巫女の時やっていたように掃除から始める事にした。

幸い掃除道具は今も置いてある場所が変わっていなかった為、慣れた動きで直ぐに終わらせることが出来た。

 

 

響「前みたいに過ごしてればいいんだから、特に大変って事も無いなぁ」

 

 

博麗大結界に綻びが無いかを調べようと境内の中心に立ち、目を閉じる。

潜在エネルギーを一気に開放して、幻想郷全体まで響くエコーの波を発し、レーダー探知機のように綻びを探知するのだ。

霊夢もこれを毎日やっているのだが、殆ど知られていない。

だが、この行為が息をするように簡単に出来ないと、博麗の巫女にはなれない。

それほど博麗の巫女は強大な力を持っているのだ。

ちなみに結界の綻びが見つかった場合はその修復をするのだが、霊夢の場合はその綻びに向けて修復結界を投げつけるだけ。

後は自動的に綻びまで飛んでいき、勝手に直してくれる。

その場まで行かずに済ませてしまうのだ。

怠け者の極みのような技だが、歴代の巫女でもこの技を使えるのは霊夢だけで、これだけでも彼女が天才的な霊力操作の才能の持ち主と言えるだろう。

 

 

響「・・・そろそろ帰ってくるかな」

 

 

幻想郷の端まで飛んでいった波を、体全体で感じる。

自分の放った霊力に異常が見られなければそれは結界の綻びが無いという事だ。

 

 

響「うん、無いね。

他も異常無し!」

 

 

結界の修復箇所も無い事が判明し、特にこれと言ってやることも無くなってしまう。

基本的な事以外を勝手にやってしまうと霊夢に迷惑が掛かってしまうかもしれないので、下手に何か勝手なことををするわけにはいかない。

だが、彼女には一つだけ、どうしてもやってみたい事があった。

 

 

~霊夢の部屋~

 

 

響「えへへ!見つけちゃったもんね~」

 

 

どうしてもやりたかった事、それは、霊夢の巫女装束を着る事だ。

身長もさほど変わらず、体系も似たり寄ったりだったので、もしかしたらと考えていたのだ。

霊夢の部屋の箪笥を漁り、巫女装束を拝借する。

探している途中で、真っ白の下着なども見つけてしまったが、ちゃんと元あった場所へ戻してある。

というか、下着が白しかないせいで、純情少女にしか見えなくなりそうだ。

・・・どうやっておじいちゃんを誘ったのだろうか?

もしかしたらおじいちゃんは清純が好きなのか?

いや、これ以上考えるのはやめよう。

これ以上考えたらおじいちゃんに失礼だし。

気を取り直して響華は拝借した巫女服の手触りを確かめた。

 

 

響「生地はそんなに変わらないのかな?

でもデザインはこっちのほうが可愛いかも」

 

 

自分の着ていた巫女服を脱ぎ棄て、霊夢の巫女服を着ていく。

構造は殆ど響華のものと変わらず、何不自由なく着ることが出来た。

そして、部屋に置かれた鏡に映る自分の姿を見て少し気分が下がってしまった。

 

 

響「・・・私の髪の毛は白いからおばあちゃんみたいはなれないな・・・」

 

 

響華の髪色は零夜の遺伝子を多く受け継いだせいか、芯から真っ白なのだ。

鏡に映る自分の姿を見て、美しい黒髪の霊夢が着るからこの巫女服は映えるのだと思い知らされてしまったのだ。

自分のうなじに手を伸ばし、白髪を触りながら少し黙り込む。

 

 

響「・・・・・」

 

 

似合っていないのならもう脱いでしまおうか?

しかし、折角二度とないであろう機会に拝借したのだ。

少しくらいこの格好で外出しても問題は無いだろう。

そうと決まれば・・・。

 

 

響「よし・・・紅魔館に遊びにいこっと!!」

 

 

自慢の立ち直りで再び気分を取り直し、軽快な足取りで玄関を飛び出し、紅魔館までマニューバを利かせながら飛んでいった。

ちなみに、丁度その時射命丸文が入れ違いとなり、彼女が神社に着いた頃には響華の姿は全く見えない程小さくなっていた。

 

 

文「・・・折角来たのに誰もいない(泣)」

 

 

カメラを見下ろしながら、彼女はとぼとぼと天狗の里へと力の入っていないだらしなく撓った翼をはためかせながら帰っていく。

涙を流しながらノロノロと飛ぶその後ろ姿からは、悲壮感しか感じられなかった・・・。




響華は自分の考えたキャラの中でもかなり好きなキャラです。
寝ぼけてパンチラに気づかない女の子ってメチャクチャ可愛くないですか!!
これからも微エロ担当位置で書かせていただきます。
リュウト達が旅行に行っている間、響華の話をもう1話くらい入れてやろうと思います。
次回はまたリュウトサイドに変わります。
では次回もお楽しみに!

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