ちなみに異変は終了しました。
書いてはいませんが、霊夢が永琳達のやっている事が無意味だという事を教えて一件落着したことになってます。
というか異変やってる場合じゃないですわ。
リュウトが目を覚ました時、最初に見えたのは知らない天井だった。
リ「ここ・・・どこだ?」
少々の薬品臭が花を刺激するが、不快に感じる程ではない。
身を包み込んでいる真っ白な掛布団は、紅魔館のものとは違う、そんな感じがした。
眩しい日差し・・・ではなく、部屋を照らしているのは真上の照明。
寝起きでいきなり日光を浴びると物凄く眩しく感じるが、それは人工的な電気照明でも同じのようだ。
永「あら?起きてたの?気付かなくてごめんなさいね」
声のした自分の左側を振り向くと、そこには赤と青がツートンで真っ二つに分かれている独特な服の上から白衣を着た銀髪の美女が、回転椅子に座って此方を見下ろしていた。
左手にカルテ、右手にペンを持ち、かぶっている帽子の赤十字マークから察するに、この美女は医者かそれに関連する職業についている方だと判断できる。
永「体は動くかもしれないけど無茶はダメよ?霊力を殆ど失ってたんだから」
リ「俺は・・・途中から何も覚えていないんだが、何か知っているか?」
永「うちの鈴仙の能力に引っかかって暴走してたそうよ?全く、あなたのせいで患者の手当てが凄く忙しかったのよ?」
腕を組んでプンプンと怒っている仕草は、いわゆるギャップ萌えという現象を引き起こした。
見た目からは淑女のようなイメージが付きそうだが、意外と少女のような性格なのかもしれない。
彼は余り関心が無いようだが。
リ「皆はどうしたんだ?もう帰ったのか?」
永「なわけないでしょう?重傷者だっていたのよ?あなた以外にも入院患者は居るわ」
リ「そ、そうか。
すまない・・・」
永「私じゃなくて彼女たちに言ってやりなさい、不可抗力とはいえ流石に謝らないのは不味いわよ。
それと、そこの戸の隙間から覗いてる子にはお礼言わなくちゃね」
リ「ん?」
部屋の戸がわずかに開いていることに気付く。
戸の隙間からは人の顔がわずかに確認でき、セミロングの白髪が少しだが見えた。
輪郭や顔からして少女だ。
永琳に覗いていることがバレると、少女は戸をゆっくりと開け、もじもじしながらリュウトの前に姿を現した。
その瞬間、彼の顔は驚きと歓喜に満ち溢れた。
リ「響華・・・?お前響華か!?」
響「エへへ・・・リュウ兄久しぶりだね」
リ「心配してたんだぞ!映姫からもう一人ここに来た奴がいるって聞いたからお前なんじゃないかと!」
響「ごめん、でも会いに行く訳にはいかなかったから・・・」
リ「生きていたならそれでいい・・・よく無事でいたなぁ・・・」
ベッドからゆっくりと立ち上がり、彼女をそっと抱きしめる。
抱きしめられた彼女の目には涙が溜まり、感情が高ぶりやがて号泣へと変わった。
永「あらあら、そういう関係だったのね。
何だかここにいるのが場違いみたいだわ」
私の診察室なんだけどなぁ、と、心の中で疑問形を浮かべながら、永琳は部屋を後にした。
_____________________
レミ「リュウト、目を覚ましたのね。
どうなっちゃうかと思ったわよ?」
リ「あぁ、本当にすまなかった。
皆にも迷惑をかけてしまった、今度お詫びをしよう」
魔「本当か!?やったぜ☆」
霊「美味しいご飯がいいわねぇ」
咲「気になさらなくてもよろしいのに・・・」
リュウトが目を覚ましたことを聞きつけた異変解決者たちは、入院している者もいる為、ここ永遠亭に集まった。
永遠亭の応接間には、かなりの人数がせめぎあって座布団に座っている状態だ。
妖「私はよく知りませんが・・・何かあったんですか?」
幽「私もよく分からないのよねぇ・・・途中で疲れて寝ちゃったし」
ア「あなた達はあのウサギとしか戦ってないから知らなくて当り前よ。
これはその後に起こった事なんだから」
何故集まっているのかよく分かっていない二人にアリスが簡単に説明する。
だが、アリスも途中で気絶していたグループの人間なので、詳細はあまり理解していなかった。
そのせいもあり。
響「・・・」
机越しに対面している巫女装飾の女の子が誰なのかも全く知らなかった。
白髪のセミロング、髪はサイドテールでまとめ、一見活発そうな見た目だが、ずっとうつむいている為印象としては大人しいイメージだ。
応接間の中には異変解決者以外にも、永遠亭の住人も加わっており、女性ばかりのせいか、こちらもリュウトと零夜を物珍しそうに見ていた。
霊「ちょっと、話しをするんだから自己紹介ぐらいしてもいいんじゃない?」
応接間に普通に集まっているが、永遠亭の住人の中で霊夢達が知っているのは怪我の治療をしてくれた永琳だけ。
それ以外は顔だけ知っているか、あったことすらない者ばかりだ。
今後の為にも自己紹介は重要である。
永「なら私がまとめて自己紹介をしようかしら?」
そういうと永琳は座布団の上からスッと立ち上がり、皆の顔を見下ろした。
永「私は八意永琳、永遠亭で医者をしているわ。
正確には薬師なんだけどね。
あなた達が昨日戦ってたのが鈴仙・優曇華院・イナバ。
玉兎という種類の月出身の妖怪よ、元は軍人でね?並の戦闘力じゃないわ。
このちっちゃいのは因幡てゐ、因幡の白兎よ」
魔「因幡の白兎だって!?あの神様と結婚して姫になった!?」
永「えぇ、昔の話だから今は微塵もその雰囲気を出してないけどね」
てゐ「師匠・・・説明が酷い・・・」
永「あら?ごめんなさい」
桃色のワンピースを着ているウサギの耳を生やした黒髪の少女、因幡てゐは、その昔神様に幸運をもたらして姫の地位まで上り詰めた幸運の白いウサギその人だ。
だが、自分の説明が不憫なせいで耳を垂らしてしょぼんとうつむいており、隣に座っている鈴仙に頭を撫でられ慰められている姿からはただの少女にしか見えない。
要は姫の雰囲気が微塵も感じられない。
どちらかというと、その隣に座っている女性の方が雰囲気は出ている。
黒い長髪に十二単のような着物を着た10代後半らしい少女。
いかにもなオーラを出しているが、何か貫禄のようなものを感じられた。
本当に10代後半か怪しく思えてくる。
紹介も残すはその女性一人となった。
だがその説明は、今まで聞いてきた誰の説明よりも驚くべきものだった。
永「そして最後にここ、永遠亭の姫様、蓬莱山輝夜姫。
元は月の姫だったんだけど、禁忌を犯して追放されたの」
霊「禁忌?」
ア「追放って言うんだからよっぽどの事なのかしら?」
妖「その禁忌って何なんです?」
永「蓬莱の薬、不死の薬を飲んだの」
レミ「不死の薬!?じゃああなたもしかして不死身なの!?」
輝「えぇ、歳もとらないわ」
魔「す・・・すげぇ・・・」
そこで皆は気になった。
なら一体輝夜は今、何歳なのか。
女性の年齢など軽々しく聞いていいものではないのだが、こればかりは凄く気になる。
輝「ま、あなた達が考えていることは解るから教えてあげる。
大体3000歳くらいよ」
魔「さ・・・3000歳!?」
咲「信じられませんわ・・・」
ア「それでこの美貌なの・・・」
幽「さぞや色々な男性を魅了したでしょうねぇ」
輝「そうね・・・色々な人を釘づけにしたわ・・・その分だけ人を傷つけてきた・・・」
永「・・・・・」
輝夜の悲しそうな目は、長い時を生きてきた者にしかわからない何かがあったような気がした。
零「・・・なぁ永琳。
もしかしてアンタも蓬莱人なんじゃないか?」
永「え・・・?何故?」
零「アンタも輝夜と同じ目をしていた」
永「・・・はぁ、やっぱり神様にはそういうことわかっちゃうのかしらね」
レミ「うそ・・・あなたもなの?」
永「えぇ、私も蓬莱人よ、しかも薬を作った張本人」
驚くことの連続で全員黙り込んでしまう。
それもそうだろう、不死身の人間が二人も出てきたのだから無理もない。
不死身だから人間ではないのか?
妖「ということは永琳さんも月の人なんですか?」
永「えぇ、その頃は姫の家庭教師のようなことをしていたわ」
魔「へぇ・・・でもなんでアンタまでここに降りて来たんだ?月の姫の側近の地位ってかなりすごいんじゃいか?」
輝「それはね、私が月の生活に飽きてしまったからよ。
永琳は私が月から逃げる手助けをしてくれたの」
霊「贅沢な奴ね、姫なんて何不自由なく暮らせるんだからいいじゃない」
輝「まぁそうなんだけどね、私は自由が欲しかったの。
四六時中誰かに見張られ、プライベートなんて知ったことじゃない。
仲の良い友人も出来ない、毎日毎日・・・何のために生きてるのか解らなくなったわ」
だから夢を見たのよ、月から見える青い自由の楽園に」
霊「・・・」
霊夢にはあまり理解できない事だったが、彼女にとっては耐え難い出来事だったのが言葉から伝わって来た。
もう何も言うことは無い。
これ以上、霊夢は彼女に何も問い詰めなかった。
永「さぁ、そろそろいいかしら?あなた達も私達の事を聞きに此処へ集まった訳じゃないでしょう?」
霊「あ、そうだったわね、今日は別件だったのを忘れそうになったわ」
ポンと手を叩いて思い出したというようなしぐさをすると、魔理沙から視線を当てられ、呆れたような顔をされた。
魔「お前なぁ、一番忘れちゃいけないこと普通に忘れるなよなぁ」
霊「仕方ないじゃない、その前の話が衝撃的過ぎたのよ」
一同が納得できる答えだ。
その気持ちは解らなくもない。
だが今回集まったのは・・・。
ア「今日こそリュウトに隠していることを話してもらうんでしょ?」
リ「・・・」
咲「リュウトさん・・・」
そう、リュウトの秘密をすべて明かしてもらう。
彼が暴走した時に言っていた不可解な言動の数々、そして霊夢と同じ博麗の力を使う少女の登場。
もう隠すことは出来ない、あの言葉を聞いた霊夢達にはそれを知る権利があるのだから。
それにリュウト本人も言っていた。
時期に話さなければいけなくなる、と。
今がその時なのだ。
咲夜は心配そうに見守る。
本当は話したくないのが解っているから・・・。
リ「もう・・・隠しきる事は不可能だな・・・。
わかった、俺の正体を、俺がこの世界に来た訳をすべて話す」
皆「!!!!」
等々このときが来た。
全員が息を飲んで静まる。
そして・・・。
リュウトは過去を語りだした。
新キャラ登場!
応接間は勿論和室です。
障子の外から鹿威しが見えるような詫びさびのある部屋という設定です。
次回からはリュウトの過去編になるので一旦メンバーは出てこなくなります。