リ「雑魚は引っ込め・・・」
鈴仙「え・・・?」
ドゴォォッ!!
鈴仙「ゴホォア!!??」
一番近い位置にいた鈴仙は、疲弊と体力切れでしゃがみこんでいるところを、鳩尾を思い切り蹴り上げられる。
扱いはまるでサッカーボールだった。
ボロ雑巾のような姿で宙に舞いあげられると、そのまま自由落下し、骨や筋肉がちぎれたようなグロテスクな音を立てて地面に激突した。
鈴仙「カハッ・・・・・」
彼女は全く動かなくなってしまった。
生きているのか、死んでいるのかもわからない程に。
だが、咲夜はそれよりも気になる事があった。
咲「リュウトさん・・・その姿は一体?」
豹変したリュウトの姿は、何か神々しい雰囲気を纏っていた。
今までこのような姿を見たことが・・・ある。
咲夜はいつかの異変の時に現れた謎の男を思い出していた。
咲「似ている・・・」
異変の時、殺されるところを助けてくれたあの男、あの時はマントとバイザーで殆ど誰だか解らなかったが、男の背中に出ていた四枚の光る羽と、今のリュウトについている羽が全く一緒の形をしていた。
まさか、あの時救ってくれたのがこの人だったなんて。
リ「俺の仲間を・・・返せぇ!!!」
レミ「なっ!?」
リュウトがまず狙いをつけたのはレミリアだった。
眩いほどの光を放ちながら、とてつもない速さで近づき、刀を抜刀して勢いよく斬りかかってくる。
レミリアの目の前まで攻めよってくるまでほぼ一瞬、吸血鬼の目を有しても殆ど認識出来ないほどの速さ。
いきなり目の前に現れたように錯覚するほどの速さの攻撃を避けれる筈などなく。
レミ「グっアァァァァァァ!!!!??」
何の躊躇いもなく、リュウトの剣はレミリアを斬りあげた。
断末魔と、返り血を大量に浴びたリュウトは、まるでバーサーカーだった。
咲「お嬢様・・・!!」
息が止まってしまう程、咲夜は恐怖していた。
自身が仕えている主人は、決して弱いわけではない、寧ろかなり強い部類に入る筈なのに、本当に一瞬だった。
あんなにあっさりやられてしまうなんて、自分なんて足元にも及ばない。
だから、戦わずに止めて見せる!!
咲「止めてくださいリュウトさん!
あの時のような優しい貴方はどこへ行ってしまったんですか!!」
レミ「咲夜!危険よ!下がりなさい!!」
咲「嫌です!!!」
負傷したレミリアの静止も聞かず、咲夜は必死に呼びかけ続けた。
咲「目を覚ましてください!私はあなたのそんな姿を見たくありません!
本当はこんなことしたくない筈です!」
リ「うるさい!!忌々しい神々どもめがぁ!!」
咲「!?」
リュウトの右手が咲夜に翳される。
気付いた時には腹に当たった光の弾が左の腎臓を貫通していた。
咲「がはっ!?」
弾速が全く見えない。
何が起こったのかさえ解らない。
ただ、腹の痛みだけが感じられた。
リ「痛いか?苦しいか?みんなはこれよりもっと痛みながら、苦しみながら死んでいったんだぞ!!!」
怒りの感情をむき出しにしながら、咲夜に殺意を向ける。
幻覚を見ているのか、咲夜の事を誰かと照らし合わせているようだ。
だが、先程からリュウトの発する言動には引っかかるものがある。
もしかしたら、リュウトは過去を見ているのかもしれない。
リ「感謝しろ、中途半端な力は使わずに全力で楽に殺してやる・・・」
そういうとリュウトは咲夜を踏み倒し、右手に光を収束させ始めた。
圧倒的な殺意を前に歯を食いしばった時だった。
ア「させないっ!上海!蓬莱!」
上海「シャンハーイ!」
蓬莱「ホウラーイ!」
吹き飛ばされた筈のアリスが、人形に糸を持たせてリュウトの手足を縛る。
精巧に作られたアリスの人形、青い色の上海人形と赤い色の蓬莱人形によって、糸に巻かれたリュウトは動きを封じられた。
しかし所詮は人形。
時間稼ぎが関の山だろう。
そこである人物の力が必要になる。
リ「フン、雑魚どもが」
魔「だけじゃないぜっ!!」
リ「何?」
頭部を負傷していた魔理沙も意識を取り戻し、リュウトに向けてマスタースパークを撃つ。
息の合ったコンビネーションで確実な一撃を狙った。
リ「だからどうしたんだ、そんなもので俺を止められるものか!」
咲「え・・・?」
咲夜は目を疑った。
突如、リュウトの体にまとわりついていた糸が発火し、跡形もなく灰と化した。
直後、巨大な魔法陣がリュウトの盾になり、マスタースパークを防ぐ・・・のかと思いきや、魔法陣は魔理沙のマスタースパークを全て吸収してしまったのだ。
若干、後ろの羽が肥大化した気もする。
四人は、今までリュウトと一緒に過ごしてきた中で、余りにも彼の事について知らなさ過ぎていた事に気が付いた。
ア「そんな・・・きゃあ!?」
予想外の事態にアリスは腕が止まってしまい、リュウトの放った弾幕への対応が遅れ、右肩に直撃した。
操作が止まった人形は当然動くことは無く、上海も蓬莱もその場で停止しているだけ。
二度の直撃を受けたアリスには、もはや抵抗する体力は残っていなかった。
魔「もうアリスは限界だ・・・何とかあいつの気を逸らさないと殺されちまう!」
スペル「ブレイジングスター」
魔理沙は乗っている箒の先端に魔力を集中させ、リュウトめがけて一点突破の突撃を仕掛けた。
その姿はさながらほうき星の輝きだった。
リ「・・・」
流星の輝き、その美しさを全身で表現したかのような技。
リュウトは一言も言葉を発さなかった。
魔「お、おいおいまじかよ・・・!」
考える必要もなかった、魔理沙の渾身の一撃も彼にとっては(その程度の攻撃)でしかなかったのだ。
全ての能力が未知数なのだから何が出来ても驚くに値しない。
リュウトの目の前には透明な壁のようなものが形成され、それに阻まれ動けない魔理沙はまるで空中で止まっているよような状態だった。
アダマース・パリエース、意味はラテン語でダイヤモンドの壁。
その名の通り、無敵を誇る最強の盾だった。
魔理沙が全力を出して技を繰り出しているのに対し、リュウトはただ立っているだけ。
力の差は歴然だ。
だからこそ、彼女は心底許せない。
こんなに身近な存在だったのに。
まるで裏切られた気分だった。
リ「・・・フン」
もう飽きた。
そう言いたげな顔をする彼は、壁を解いて箒の先端を蹴り上げる。
それだけで魔理沙はバランスを失い、体だけが宙返りしてしまう。
魔「うぁっ!?」
どさっという音を立てて背中を地面に打ち、勢いで箒を放り投げてしまう。
アリスを助ける筈が、自分まで二の舞になってしまった。
やはり殺されてしまうのだろうか?だが、リュウトはその場で動けない魔理沙に止めを刺すことは無く、ゆっくりと上空へ昇っていった。
そして、彼の姿が確認出来ないほど上に昇ってしまった時・・・。
ゴォォォォォ.....
太陽が現れた。
レミ「ま・・・眩しい・・・」
太陽の光に当たると気化してしまうレミリア、だが、その兆候が見られない。
途方もないエネルギーの塊だというのに、何故?その答えは至極簡単な事だった。
リ「面倒だ、まとめてあの世に送ってやる」
終末兵器:バベルの光
左手を天に翳したリュウト、真上にはあり得ない程肥大化したエネルギーの球体が鎮座していた。
ここいら全てを吹き飛ばして、全員を始末する気だ。
リ「堕ちろ、バベル」
零「させんっ!!」
リ「何だと?」
人里のある方角。
遅れてやって来た零夜と霊夢が、遠距離からこちらに向かいながら、リュウトのバベルの光へ弾幕、レーザーでの一斉攻撃を開始する。
零「こいつで消し飛べッ!!」
バベルの光へ向けて球電を放つ。
大きさはバベルの光の4分の1程と心ともないが、弾幕を撒き散らしながら飛ぶそれは、十分過ぎる程の威力を持っていた。
だからこそ意味が無い。
バヒュゥゥゥゥゥン!
リ「フム、中々強いエネルギーだな」
零「な!球電が消えた!?」
リュウトの右手の魔方陣に球電が当たった瞬間、それに吸い込まれるように球電が消えていったのだ。
エネルギーを使った攻撃では今のリュウトに通用しない証拠だった。
霊夢の弾幕ならば札などの物理的な物なので吸収されることは無いかもしれないが、今のリュウトに通用するとは到底思えない。
激しい混戦を予想した霊夢は、一早く全員の避難を促す。
霊「アンタ達は早く逃げなさい!そこのウサギみたいなのも連れて!早く!!」
魔「あ、あぁ」
レミ「貴女はどうするの?」
霊「戦わない訳にはいかないでしょう?でも、足手まといにしかならないでしょうね・・・」
レミ「ならっ!!」
一緒に逃げようと説得するが、霊夢は断った。
何故なら彼女が・・・。
霊「博麗の巫女に・・・負けは許されないの・・・」
幻想郷の守護者だから。
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零「接近戦しかない・・・か」
戦う以外にリュウトをもとに戻す方法が無い。
だが、相打ち覚悟で挑まなければ確実に殺される。
零夜は薄々気付いていた。
リュウトの実力は、自分とほぼ同等かそれ以上だという事に。
零「迷ってなどいられん!」
光の剣を生成し、剣道の構えをとる。
剣道自体を知っているわけではなかった零夜だが、無意識にこの構えをとっており、これが一番どんな状況にも対処できる、そう思ったのだろう。
リ「昔年の恨み・・・散っていった仲間の為にも、貴様を殺して世界を救う!」
リュウトも脇差から剣を抜刀する。
その剣も金色の光を纏っており、零夜の剣とどことなく雰囲気が似ていた。
そして、二人の剣が交わろうと、同時に空を踏み込んだその時だった。
?「博麗、七重結界!!!」
リ「誰だ!・・・グオォ!?」
突然、何処からか七つの正方形型の大きな結界が飛来し、リュウトの体を縛り付ける。
肩、胴体と腕、腰、足、全てに結界の枷が憑りつき、身動きが全く出来ない状態にされる。
いきなりの出来事に零夜は呆気に取られてしまう。
?「博麗、八方鬼縛陣!」
リ「ガァァァァァッ!!?」
さらに、謎の声と共にリュウトは八方の結界の閉じこめられ、力を容赦なく吸い取られていく。
リュウトの断末魔が聞こえなくなる頃には既に気絶しており、結界が消えると脱力したように墜ちていった。
すかさず霊夢が真下からリュウトをキャッチすると、ゆっくりと下降してきた零夜は、近くに寄り霊夢に問いかけた。
零「おい霊夢、今の技、霊夢がやったのか?」
霊「まさか、そんな訳ないでしょ?あんな強力な結界張るなんて私じゃ無理よ」
零「じゃあ今のは一体・・・」
?「ちょっと、無視しないでくれる?」
霊・零「!?」
二人はほぼ同時に声がした後ろを振り向く。
霊夢は驚愕した。
霊「その巫女服・・・まさか!!」
?「ふふっ初めまして、霊夢さん♪」
自分と同じ、博麗の巫女装飾を身に纏った白い髪の少女が、あどけなく霊夢に微笑んだ。
永夜異変 完
やっと出てきましたね!もう一人の博麗の巫女!!この時を待っていましたよ!!いやぁ長かったですね~。
そういえば妖夢の存在忘れてましたね、次回は流石に助けてあげましょうか。
捕まったままは可哀想なんで。
それと影狼ですが、戦意喪失しちゃってるし、幽々子も気絶してるし、今回は一言も喋ってません。
いやぁ、必要無いかなって思ったんですよ。
悪意ではありません。
鈴仙ファンの皆さん、すいません、苛めちゃいました☆テヘッ-☆