東方混迷郷   作:熊殺し

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鈴仙が微妙に強いです。
若干のキャラ崩壊がありますが、二次創作なので多めに見てくださいね。
ではスタートです!


永夜異変42話※

竹林の駆け抜ける二つの人影、リュウトと影狼は、大きな霊力の消えた場所へ疾走していた。

目的地に近付くにつれて、橙色の小火が見えるようになり、戦闘の光であることは容易に想像出来た。

段々と銃声や爆発音も大きくなっていき、二人が駆け付けた時、目の前には異様な光景が広がっていた。

 

 

影「な・・・何これ・・・」

 

リ「これは・・・まるで・・・」

 

 

戦争のようだった。

機関銃が地面を叩きつける音、何度も鼓膜を響かせる爆発の音、光、そして異常なまでに鼻腔を刺激する火薬の臭い。

二人の目に映ったその光景は、外の人間たちが行う殺し合いそのものだった。

戦っているのは・・・なんと幽々子ではないか。

しかも銃口を向けられ、今まさに銃弾に体を貫かれようとしている瞬間だった。

 

 

リ「危ない!間に合えぇっ!!」

 

鈴仙「!!!」

 

 

ガキキィン!!

 

 

リュウトは咄嗟にその場から飛び立ち、幽々子の壁になるようにバリアを張って銃弾を弾く。

かなり疲労していた幽々子は、目の前のリュウトの背中に寄りかかるように倒れた。

 

 

幽「あら・・・?リュウトくんじゃない・・・助けに来てくれたのかしら?」

 

リ「疲れているならしゃべらなくていい。

もうじき仲間が来る」

 

 

疲れ切った幽々子を抱きかかえ、地面にそっと降ろす。

その瞬間、続々とレミリア達が竹林の影から現れ、鈴仙と対峙する形となった。

 

 

鈴仙「まさかこんなにいたとはね・・・」

 

 

流石に1対6は分が悪いと悟った鈴仙の額には汗が一滴垂れていた。

思った以上に幽々子が強く、優勢だったものの、この状況になり彼女は一気に劣勢に追い込まれしまい、自然に焦りが外面に出てしまっている。

だが、彼女に諦めて降参する意思はない。

戦う、今の彼女の頭の中にはそれしかない。

弾を撃ち切ったマシンガンを捨て、懐から小さな瓶を取り出し、一気にそれを飲み干した。

国士無双の薬、鈴仙の師匠である医薬の天才、八意永琳が作った一時的に身体能力を底上げする、云わばドーピング薬だ。

効果は絶大で、飲んだ者は・・・

 

 

バキッ!!!

 

 

ア「あぐぅ!!」

 

魔「アリス!!!」

 

リ「速いッ!」

 

 

通常の身体能力に5倍に匹敵する力を手に入れ、体が黄緑色に発光する。

一瞬でアリスの目の前に現れ、勢いだけで殴り飛ばした鈴仙は、もう片方の手で、隣の魔理沙の米神に銃弾型の弾幕を撃ちこむ。

 

 

ドォン!!

 

 

魔「きゃあ!?」

 

リ「魔理沙ぁ!」

 

影「あ、、あぁ・・・」

 

 

余りの速さに、目の端でとらえたものの魔理沙は何の抵抗もできずに直撃を食らってしまう。

倒れる魔理沙、この一瞬で二人も致命傷だ。

影狼も完全に腰を抜かしてしまっている。

本気でかかるしかない!

 

 

レミ「行くわよ!咲夜!合わせなさい!!」

 

咲「はい!援護します!」

 

 

二人は同時にスペルカードを出し、さらに同時に発動した。

 

 

スペル:スピア・ザ・グングニル

 

スペル:殺人ドール

 

 

強力なスペルカードを鈴仙の両サイドから挟み撃ちを仕掛けるが、咲夜の無数のナイフも、レミリアの最強の槍も、ただのジャンプで簡単に避けられてしまう。

 

 

鈴仙「うっ!グオォ!!」

 

 

急激な体の変化に苦しみながら、鈴仙はさらにその体制からスペルカードを発動した。

 

 

スペル:マインドスターマイン

 

 

レミリア達のスペル発動から1秒も経っていないのではないか、その瞬き程の時間での反撃。

時を止めようにも時間が足りず、避けようにも時間が足りない。

大小の狂気の爆発が無数に広がり、二人を巻き込みながら大爆発を起こす寸前。

 

 

リ「咲夜に手を出すなぁ!!!」

 

 

ドガァッ!!

 

 

鈴仙「ぐぁっ!!」

 

咲「リュウトさん!」

 

 

起こす前に、リュウトの飛び蹴りが鈴仙の背中にクリーンヒットし、その勢いでスペルが解除され、鈴仙は受け身もすることなく墜落した。

 

 

鈴仙「ウグッッ・・・グゥ!!」

 

 

痛みに堪えながら少しずつ鈴仙が起き上がる。

だがそれを待つつもりは無い。

リュウトは踵落としでさらに追い撃ちをかけようとする。

が、それを感じ取った鈴仙は後転で回避し、そのまま体制を立て直す。

 

 

鈴仙「そこぉ!! 」

 

リ「チィッ!」

 

 

低い姿勢から瞬時に射撃し、リュウトの頭を狙うが、目で動きを捉えていたのでかすり傷を与えただけだった。

しかし鈴仙の反撃は続く。

 

 

鈴仙「ぐぁぁぁ!!!」

 

リ「ゴフッ!?」

 

 

リュウトの懐まで一瞬で近づき、鳩尾に蹴りを入れてから弾幕を乱射する。

それを彼はホバリングで後ろへ下がりながら避けていく。

襲ってくる弾幕を刀で弾き、魔法陣を展開して弾幕での攻撃もする。

二人は攻防一体の戦いを繰り広げた。

 

 

レミ「接近戦に持ち込むわ!援護お願い!」

 

リ「任せろ!」

 

 

爪を出したレミリアが、上空から高速接近で鈴仙の目の前まで近付き、吸血鬼の速さを生かした近接戦闘に持ち込む。

リュウトも援護射撃の為に、弾幕を拡散型からレーザーへ切り替える。

薬で体を強化しても吸血鬼の反応速度は速く感じ、リュウトの援護射撃と相まって、鈴仙はそれを回避するのが精一杯だった。

 

 

レミ「この!当たりなさいッ!!

 

鈴仙「フッッ!!クッ!!」

 

 

自分の体を貫こうと何度も迫りくる爪は真っ赤に染まっており、血でも塗られているのではないかと思わせる。

首を狙って爪を突き出すレミリアの腕を蹴り上げ、胴体と頭、肩へ弾幕を撃ちこむ。

激痛で動けなくなるレミリア、そのまま止めを刺そうとすると、足元に数本のナイフが刺さり、咄嗟に後ろに跳躍する。

ナイフを投げたのは勿論咲夜だ。

 

 

咲「させませんっ!!」

 

鈴仙「な!何!!」

 

 

咲夜はレミリアを庇いつつ、反射するナイフを使って多方向から襲撃する。

竹に当たってランダムな動きをしながら向かってくるナイフを撃ち落とし、ミサイル型の弾幕を咲夜に向けて放つ。

直後、竹林の中で轟音が鳴り響いた。

 

 

鈴仙「やった!・・・何!?」

 

 

舞っていた土煙が晴れると、そこには爆発の窪みしかなく、人の姿は何処にも無かった。

一瞬にして消えたのだ。

 

 

鈴仙「一体どこへ・・・!!」

 

 

いきなり体が重くなる。

自分の身に何が起こっているのか解らないまま混乱していると、目の前に消えた筈のメイドが、気配を感じさせず、どんな手品を使ったのか、一瞬にして現れた。

しかし、他の二人は見当たらない。

何をしたんだ?まさか自分の身に起こっているこの奇妙な現象も彼女のせいなのか?

 

 

咲「ご名答、ですわ」

 

鈴仙「!!!」

 

 

考えていることを的確に当てて、さらに応えてきた。

心を読めるのか?このメイドの能力がさっぱりわからない。

鈴仙の頭の中はさらに混乱していった。

 

 

咲「はぁっ!!」

 

鈴仙「!!??」

 

 

咲夜が投げたナイフは、鈴仙の胸に当たる寸前で動きを止める。

避けようと体を反らすが体が重く、動きがとても遅い。

声を出すこともままならない。

まるでスローモーションの中で動いているようだ・・・。

スローモーション?・・・まさか!!

 

 

咲「能力・・・解除」

 

 

バシュっ!!

 

 

鈴仙「ああぁっ!!」

 

 

咲夜の合図とともにナイフが再び動きだす。

目の前まで迫っていたナイフを一瞬の動きで回避することは出来ず、鈴仙の腕に刺さり、紺色のブレザーに真っ赤な血が染みつく。

 

 

鈴仙「う・・・うぐぅ!」

 

 

銀のナイフは華奢な鈴仙の二の腕を確実に貫通し、神経を突き刺す痛みに我慢できず、声を上げてしまう。

彼女は迸る痛みに耐えながらナイフを慎重に引き抜く。

そして咲夜に対して憎悪の感情が芽生え始めた。

絶対に許さない・・・。

だが彼女の体は限界を迎えていた。

 

 

咲「光が消えていく・・・!!」

 

 

段々と鈴仙の体から発せられていた光が消えていき、薬を飲む前の状態へ戻ってしまった。

国士無双の薬の効果が切れたのだ。

 

 

鈴仙「くっ!こんな時に・・・!」

 

咲「チェックメイト・・・ですわ。

大人しく投降しなさい」

 

鈴仙「!?」

 

 

ナイフを突きつけられ、投降するように言われる鈴仙。

状況は最悪、まさに絶対絶命だった。

だが、そこに一つの勝機が現れる。

 

 

リ「咲夜!一人で突っ込むんじゃない!」

 

レミ「咲夜ー!!」

 

咲「あ、リュウトさん・・・それにお嬢様も」

 

 

咲夜の気配を頼りに後を追いかけてきた二人。

メイドは二人に気をとられている。

チャンスは今しかない!!鈴仙は咲夜が目を反らした隙に、後ろへジャンプして逃げる。

そして咲夜が此方を向いた瞬間。

 

 

鈴仙「・・・」

 

 

能力を発動した。

 

 

リ「!!咲夜!逃げろぉ!!!」

 

咲「えっ・・・?」

 

 

鈴仙の考えにいち早く気付いたリュウトは、咲夜を庇い、代わりに能力の餌食となった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

リ「あ・・・ア・・・」

 

 

鈴仙の狂気の波長を直に受けたリュウトは、意識が茫然としたまま、叙々に狂い始める。

勝利を確信した鈴仙は高らかに笑い声を上げた。

 

 

鈴仙「アッハッハッハ!!!私の勝ちよ!アンタ達に勝ち目は無くなったわ!!」

 

咲「貴女・・・リュウトさんに何をしたの!?」

 

鈴仙「私の能力を使って狂気の波長を浴びせたのよ!」

 

咲「そ・・・そんな!」

 

レミ「狂気・・・ですって?」

 

 

レミリアは有るものと連想させた。

昔、自分の妹であるフランドールスカーレットが苦しんだあの狂気の渦を。

だが、リュウトはそれとは違った。

 

 

リ「・・・・・・」

 

咲「リュウト・・・さん?」

 

 

まるで魂が抜けたかのようにただ茫然と立ち尽くす。

リュウトの目に光は無く、咲夜が呼びかけても何も応えない。

が、彼女はある異変に気付いた。

リュウトの目が赤いのだ。

 

 

鈴仙「これでそいつは私の命令を聞くだけの人形となった。

さぁ、行きなさい!あのメイドと吸血鬼を粉微塵にするの!!」

 

リ「・・・ダマレ」

 

鈴仙「!?!?!?」

 

 

体を押し潰させそうな程の威圧感。

思わずその場にいた全員が黙りこんでしまう。

 

 

レミ(な!何!?この吐きそうになる威圧感は!!)

 

 

怯えている、自分の体が。

あの温厚なリュウトがこれほどまでの力を持っていたなんて。

完全に震え上がっている鈴仙に、リュウトは言い放った。

 

 

リ「俺の前に立ちはだかる者全てが・・・敵だぁ!!!」

 

 

彼の叫びと共に白い衝撃波が果てしなく迸る。

光のドームから出てきたのは、真っ白な髪の毛と、四枚の輝く翼を携え、全く違う姿となったリュウトだった。

敵意をむき出しにし、ギロリとレミリアと咲夜を睨みつける。

狂気に飲み込まれた彼の目にはもう、仲間の姿は写っておらず、見えているのは眼前の敵だけだった。

既に目の前に現れる全てを敵と認識してしまっているようだ。

これからが悲劇の始まりだった・・・。

 




妖夢どこ行った!?あと咲夜が地味に活躍してたり、そういえばレミリアが本格的に戦ったのってこれが初めてじゃないですか?もうちょっと活躍させてもいいような気もしますが、凡人な私には無理でしたよごめんねレミィ。
咲夜の一回目の時間停止が出来なかったのは、停止させるための時間が足りなかったからです。
一瞬で能力発動なんて無理ですよね、大技決める時に力を貯めるのと同じです。
幽々子はお疲れで休んでおります、影ちゃんと一緒に。
さて、次回はリュウトが大暴れします。
止められるのは奴しかいない!乞うご期待。

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