東方混迷郷   作:熊殺し

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今回は外の世界サイドの話です。久しぶりにあの人が登場するのと、新キャラも登場です。






122話

この世には、万人が知っていい事と、そうでない事がある。世界には世に出ていい事と、そうでない事がある。

世界はそうした闇を必ず抱えているが、それは我々が生きていく上では必要な事だったりする。

 

 

~京都大学学会ホール~

 

 

今日、京都大学内で行われるプレゼン発表会に、岡崎夢美は赴いていた。自身の研究内容の一通りを学会で発表したら自宅へ帰る弾丸出張だ。

既に夢美の発表は終盤に入っており、今回も各国の研究者から一際注目を浴びていた。

暗いホールでプロジェクターを使い、資料を解説していく。

 

 

夢「この素材でハニカム構造を3重にすれば、厚さ40cmのタングステン装甲の90倍の強度を持ち、長年研究が続いていた宇宙エレベーター建造計画が飛躍的に進むのです。そして、私は5年以内にこの計画を実行するつもりでいます。

これでプレゼンを終了します。ご清聴ありがとうございました」

 

 

深く礼をして壇上から退場していく夢美教授に、会場内は拍手に包まれた。

ホールを出て資料を束ねて帰り支度をしながら歩いていると、壁際に白衣を着た長身の女性がもたれかかっていた。

近づいてくる夢美の存在に気づくと、美しいエメラルドのブロンドヘアが揺れる。

 

 

?「やぁ夢美。プレゼンはどうだった?まぁ聞くまでも無く拍手喝采だったんだろうけど」

 

 

その声に夢美は過敏に反応する。遠い昔に聞いた記憶のある声だったからだ。

 

 

夢「瞳美(ひとみ)姉さん・・・何故裏社会の人間である貴女が此処に?」

 

 

岡崎瞳美、岡崎夢美の唯一の姉であり、妹と並ぶほどの科学者。しかし、その研究内容から表舞台に立つことを許されていない存在。世界の闇に溶け込むマッドサイエンティストである。

夢美の質問に彼女はクスリと笑う。

 

 

瞳美「妹の晴れ舞台に顔を出すのがおかしい?」

 

夢「余計なお世話です。私は貴女の顔なんて二度と見たくない」

 

瞳美「悲しいねぇ、たった一人の姉にそんなひどい事言うかね?」

 

夢「あんな反吐の出る研究をしているなんて知ったらこうもなります。人間として軽蔑します」

 

瞳美「はぁ・・・ま、いいや。今回はちゃんと用があってきたんだ」

 

夢「用?」

 

 

瞳美は不敵な笑みを浮かべながら壁から離れ、夢美の耳元に顔を近づけて囁いた。

 

 

瞳美「10年以上前、ヨーロッパにあった私の研究所から実験動物が一匹逃げ出したでしょ?あれをそろそろ改修しようと思ったんだけど、どうやら私の監視が届かない場所に逃げこんでしまったらしくてね。

夢美ぃ、知ってるんだよ?お前がその世界へ行く研究を密かにしていることを」

 

夢「!!!!」

 

 

衝撃的な言葉に彼女は驚いて後ろへ下がる。

あの研究は誰にもバレないように個人で秘密裏に行っていた筈。まさか監視でもされていたのだろうか。

というか、この言動で行くと幻想郷に彼女の実験場出身の人間が居ることになる。

 

 

瞳美「言いたいこと、わかるよね?」

 

夢「私が協力するとでも?」

 

 

そう言って夢美が瞳美を睨みつけると、彼女は夢美の肩をポンと叩いた。

その数秒後、夢美の顔は沈着としたそれから一遍した。

 

 

瞳美「そういうだろうと思って既に手は打ってある。

北白河ちゆりだっけ?君の助手をやっている彼女、此処には居ないだろう?」

 

夢「!まさか、ちゆりに何をしたの!?」

 

瞳美「まぁまぁ落ち着きなよ。まだ何もしていないさ、但し夢美が断ったらどうなるか分からないって事♪」

 

 

北白河ちゆり。夢美と同じく若干16歳にして大学院准教授の地位に上り詰めた若き天才であり、夢美の優秀な助手だ。

夢美は彼女の事を助手以前に妹のように想っていた。だからこそ危険な事には絶対に関わらせたくない。

 

 

夢「・・・行ってどうするつもりです?どうせ見つかりっこない。しかもあの世界に棲む連中は一国家の軍隊と渡り合えるような力を持ってる者も居る、行くだけ無駄です」

 

瞳美「へぇ~、そんなに強いんだ?じゃあ、私の作品とどっちが強いのか勝負させようかな?」

 

 

瞳美は右手を上げ、指を鳴らす。

最初、何のつもりなのか全く分からなかったが、その時後ろから気配がした。

振り返ると、そこには先程まで居なかった銀髪の謎の女性が立っていた。

 

 

夢「い、いつの間に!?」

 

瞳美「さっきまでは居なかったわ。今出てきてもらったの、{時間を止めて}ね」

 

夢「時間を止めた・・・?」

 

 

何を言っているのかさっぱりわからなかった。時間を止めるなどという非科学的な事を科学者が言うのだから無理もない。

しかし、彼女は思い返した。幻想郷の住人達のような特殊な力を使ったのではないかと。だとすればこちら側に勝ち目など無い。

 

 

夢「チっ、勝手な・・・。でも、そこから先は自己責任です、何があっても絶対に助けない」

 

瞳美「それでいいよ。最初からそのつもりだし、それに目的は実験体の回収だしね。

そういうわけだから、明日は夢美の隠し研究所にお邪魔するよ」

 

 

用が済めば此方の話も聞かずに去っていく姉に舌打ちながら、夢美もその場から足早に去る。後日、幻想郷の博麗大結界に極小規模の干渉が観測された。

 

 




咲夜さんの過去が徐々に暴かれてきました。瞳美の連れていた二人の女が一体何者なのか、咲夜とは一体何なのか。科学と幻想が交差する。

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