挿絵めちゃ上手いですよ、期待していいですからね。
では本編いってみよう。
~地霊殿~
地底の繁華街を抜けると、その全てを納めている地霊殿という巨大な屋敷が存在する。
館の主は悟り妖怪の姉妹の姉、
心を読む事が出来た彼女達は人間、妖怪共に嫌われ、この地底に逃げこんだ種族。
その気味の悪い能力のおかげで皆から恐れられ、この地底全土を収められている。
恐怖でこそこの世界を統べることが出来るのだ。
しかし、それ故にここの主は孤独な存在となってしまった。
その気晴らしの為なのか、この屋敷には多数のペットが飼われている。
その中には、人間へと姿を変えられる者も少なからず存在する。
この部屋にいる地獄の燐火こと、
普段は黒い猫又なのだが、変身すればお下げの赤い髪の少女となる。
彼女は飼い主であるさとりに部屋へ呼び出されていた。
燐「さとり様、何か御用ですか~?」
さ「えぇ、少しね。
近々此処に二人の客人がやってくるようです、男と女ですがどちらとも人間です。
地霊殿へやってきたら少し遊んであげなさい、あちらもそれを望んでいるようですから・・・」
燐「人間が此処へ?」
何故?とでも言いたげに首をかしげる燐だが、彼女は人間と聞く別の興味が湧く。
燐「でもさとり様、その人間死んじゃったら・・・私のにしていいんですよね?」
不適な笑みを浮かべながら主に問いかける。
しかし主はイエスともノーとも言わなかった。
さ「それは出来ないと思うわよ?何せお二方とも相当の手練れでしょうから」
燐「にゃあ?私じゃ勝てない相手って事ですかい?」
さ「そうね・・・少なくとも私では勝てない相手よ」
燐「そんな奴らが此処に何しに来るんですかね?」
さ「恐らく、お空に用があるんじゃないかしら?」
さとりは部屋の窓から空の無い外の景色を眺める。
彼女は
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~旧地獄繁華街入口~
繁華街への入り口に渡る他の橋には、橋姫と呼ばれる妖怪が存在する。
橋姫とは女神の事なのだが、二人の目の前にいる橋姫はそれとは違う。
パル「人間、此処はお前たちのようなものが来て良い場所ではない。
早急に立ち去れ、でなければ後悔することとなる」
金色の髪にエルフ耳、エメラルド色の瞳が美しい少女だ。
一説によれば、彼女の着ている服はペルシャ人の女性が着る礼装がモチーフとなっているらしい。
咲「貴女は何者なのです?
自らを名乗りもせずに自身の都合だけを述べるとは礼儀知らずにも程があると思いますが?」
橋姫の態度が癇に障った咲夜が彼女に突っかかる。
職業柄こういう行為が気に入らないのだ。
パル「ほう?人間ごときが威勢が良い。
私は水橋パルスィ、元は水の女神と呼ばれる存在だったもの。
嫉妬心を操る事が出来るせいで忌み嫌われた可哀想な妖怪・・・。
私はね、お前たちのような人間が大好きなのよ、何故だか分かる?」
緑眼の少女は咲夜を指さし、彼女の瞳を見つめて妖力を集中させた。
パル「人間の心に眠る汚い嫉妬心をほじくり返して互いに潰し合うのを眺めるのが大好きだからよ」
咲夜の目に直接能力を掛けたパルスィはニヤリと嗤う。
暗示に掛かった咲夜は瞳が緑色に変貌した。
リ「おい咲夜、大丈夫か!」
咲「・・・・」
パルスィの能力を真に受けてしまった彼女の目は虚ろで、肩を揺さぶると首が下を向いて、まるで立ったまま死んでいるかのようだった。
しかし、緑眼の暗示は彼に唐突に牙を剝けた。
咲「リュウトさんは何故私以外の女性とあんなに仲良く話すのですか・・・」
リ「え?」
咲「私の事を・・・何でもっと好きって言ってくれないんですか!!」
リ「な、何だ!?」
突然両手でナイフを抜き、襲い掛かってきた咲夜の腕を掴み、リュウトは精一杯の力で取り押さえようとする。
が、暗示に掛かった彼女の腕力は既に人間のそれを遥かに超えていた。
リ「なんて馬鹿力だ、咲夜のか細い腕で出せるような腕力じゃない!」
咲「私の事など既に眼中に無いとでも言いたいのですか!!」
リ「違うっ!そんなことは・・・!」
咲「じゃあ何でもっと私を見てくれないんですか!
私はもっと貴方に見てほしいのに、貴方は理解してくれない!」
バギィっ!
リ「ぐおっ!?」
鳩尾に膝蹴りが直撃し、簸るんで手を離した隙を突いて右側頭部への回し蹴りがさく裂する。
まともに防御などしていなかったリュウトは真横に吹き飛ばされてしまった。
リ「クソ・・・咲夜に拳をふるう訳にはいかない、しかし半端な力でどうにか出来るような・・・」
咲「リュウトさんは・・・リュウトさんは!」
ナイフを手に殺意を剥きだしにする彼女の力は霊夢や妖夢のそれを凌駕しており、素手だけでもリュウトを手こずらせる超人となっていた。
彼女は再び二本のナイフを振りかざし、リュウトの息の根を止めようとする。
手荒い真似を咲夜にするわけにもいかず、再び腕を掴んで動きを止めた。
しかし距離の詰まった瞬間、またもや彼女の膝蹴りがリュウトの腹部に襲いかかってきた。
咲「離して!・・・離してよぉ!!」
バギャ!
リ「ぐううっ!」
ここで手を離せば埒があかなくなる。
彼は必死に咲夜の蹴りを耐えた。
何度も、何度も、何度も蹴られが、それでも離すことは無かった。
いや、離せる筈もない。
今の咲夜は操られているとはいえ、彼女の口から出る言葉の全ては本心から来ているものだろうから。
言うなればこれは自分が招いた結果でもあるのだ。
リ「これが咲夜の心の声だというのなら、俺はそれを受け止めなければならない義務がある・・・。
俺は、咲夜の気持ちと真っすぐ向き合わなければいけない義務がある!
しかし・・・・今はその時ではない!」
咲「!?」
リュウトは咲夜の手を叩いてナイフを手放させた後に左腕で彼女を胸に寄せ、その背後にいるパルスィに奪ったナイフを投擲する。
飛んできたナイフに驚いたパルスィは咄嗟にしゃがんで避けたが、その際に目を閉じてしまい、咲夜に掛けた能力は解除されてしまった。
パル「し、しまった!」
リ「お前の能力の弱点は知っている、因みに技のパターンもな。
橋姫程度ではこの俺を倒すことなど出来ん、何なら試してやるぞ?」
パル「たかが人間が・・・図に乗るんじゃないわよ!」
スペル:大きな葛籠と小さな葛籠
パルスィが二人に分身し、それぞれ大小の弾幕を四方八方にまき散らす。
しかし、彼には行動パターンのすべてが見えている。
リ「このスペルは一定時間経つと一瞬だけ消える。
次に現れた瞬間に近づいて一気に勝負をつける」
彼の言う通り数秒後にパルスィは消え、弾幕が止んだ。
能力を解除された咲夜は気を失い、そのまま胸の中で眠ってしまった。
気配を探り、次に出現するポイントを探ると、ある場所に二つの妖力を感じた。
リ「無駄だ、お前のパターンは分かっているんだ」
リュウトが霊力の散弾をそこへ投げるとパルスィが現れたタイミングで着弾し、大小の爆発を起こしながらパルスィに多大なダメージを負わせた。
パル「くっ・・・この私が人間に・・・」
煙の中から弱々しく地面に不時着し、膝をつく。
もう彼女の戦闘力と言える力は無いに等しい。
リュウトもこれ以上彼女に対して敵意を見せることも無い。
リ「これで俺たちの力は証明されただろ、先へ行かせてもらうぞ」
パル「好きにしなさい、でもこの先には私なんかじゃ相手にもならない妖怪がうじゃうじゃ居るわよ。
そんな地獄に身を投じるというの?」
彼女の忠告を耳にしたリュウトは不意に笑ってしまう。
地底に住んでいる彼女でさえも、これ以上の領域は足を踏み入れるような場所ではないというのに、何故自分は今、そこへ向かっているのだろうか。
可笑しな話である。
リ「確かにそうだな、ここの恐ろしさは俺も身をもって体験している筈なのにな。
だが今の俺には此処に来る理由がある、それだけで十分だ」
そう言って去ろうとすると、パルスィがまたもや引き留めてきた。
パル「ちょっと待ちなさい」
リ「何だ、まだ何かあるのか?」
彼女はポケット中から手のひらサイズの札を二枚取り、リュウト差し出した。
妖怪の文字でなんと書かれているか分からないが、恐らく入場許可証のようなものだろう。
パル「これは旧地獄街道の通行証よ、これを出しておけば下手な妖怪から襲われることも無いわ」
リ「そんなものは要らん、余計な世話だ」
パル「アンタの為じゃないわよ、これは寝ているその子の為に渡すの。
寝てるなんて奴等にとっては恰好の餌だから。
その子には悪い事をしたわ、そのお詫びにそれを渡すの。
先ずは宿屋を探すことを薦めるわ、休養は必要よ。
持っていれば私の知人の知り合いという扱いになるから、それなら安心でしょう」
リ「咲夜の安全を確保するためにも必要か・・・。
よし、受け取っておこう」
パル「言えた立場でもないけど、健闘を祈るわ」
リ「・・・そうか」
パルスィから札を受け取り、橋の向こう側へ歩きだす。
漸く旧街道に入った彼はパルスィに言われたとおり、宿屋を探すことにした。
この旅はなかなか長くなりそうな、そんな予感がした。
to be continue...
さとり様初登場です。
お燐も初登場ですが、何故お燐を挿絵に出したかというと廃獄ララバイが好きだからです。
次回もお楽しみに。