東方混迷郷   作:熊殺し

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最近、咲夜とも絡みが少ないような気がしたから今回はイチャイチャさせまっす!


地霊殿101話

~紅魔館~

 

 

リ「なぁ咲夜」

 

咲「はい?なんでしょうか?」

 

 

咲夜が館の窓掃除をしていると、ふとリュウトに声を掛けられた。

 

 

リ「・・・いや、なんでもないんだ、呼び止めてすまない」

 

咲「はぁ・・・?」

 

 

そう言うと彼は歩き出し、長い廊下の先にある扉を開けて彼女の前から消えた。

最近の彼はいつもこんな感じだ。

あれからおよそ一週間が経ち、紫も一切顔を出さなくなってしまった。

それからというもの、彼は魂が抜け落ちたように身が入らず、何処か物悲しい雰囲気を身に纏うようになった。

 

 

咲「リュウトさん・・・」

 

 

どうにかしてあげたいとは思うものの、一体何をすればいいのか分からない。

咲夜はこれを、館の中で一番仲の良い人物に相談してみることにした。

 

 

_____________________

 

 

~紅魔館正門~

 

 

美「リュウトさんを元気づけたい・・・ですか?」

 

咲「そうなの、ここ一週間くらい元気がなくて、でも何をしてあげればいいのか分からないのよ」

 

 

立場的にも一番話しやすく、手軽に相談できる紅美鈴に事を打ち明ける。

彼女は咲夜の相談に真剣に悩み、そもそも何が原因でリュウトがそうなっているのかを考える必要があると言った。

 

 

美「おそらくリュウトさんの元気が無いのは、彼の過去が関連していると思います。

例の本の正体は、リュウトさんの未来を滅茶苦茶にした神を召喚する為の物でしたよね?

リュウトさんはまた、その未来が繰り返されるんじゃないかと考えているんだと思いますよ」

 

咲「そういえば昔、リュウトさんが自分の過去を打ち明けた時に言っていたような気がするわ。

この時代に本来存在しない人間がいるって事は、世界を歪ませているのと同じだって。

リュウトさんが大きな行動を起こすと、本来は絶対に起きない事が突然起こったりするって」

 

 

俗に言うタイムパラドックスというやつだ。

未来は複数の道に枝分かれしていて、人間はそれを選択することで日常を生きている。

しかし、その選択した枝を無理矢理歪ませるようなことをすると、存在しない第二のルートである歴史的矛盾が発生してしまうのだ。

 

 

美「詳しい話はよく分かりませんが、そういう事なら慰めてあげるのが一番良いかも知れないですね」

 

咲「慰める・・・か。

よしよししてあげるって事??」

 

美「う、う~ん?近いですけど何だか遠いような気がします・・・・」

 

 

あまりに極端な咲夜の想像に美鈴は反応に困ってしまう。

しかし、考え方としては間違っていないような気がする。

 

 

咲「そうね・・・そうよね。

こういう時は私がリードしてあげなきゃ!

歳は同じだけど生まれた年は私の方がずっとお姉さんなんだから!」

 

美「あははは・・・まぁアドバイス出来ていたんならそれでいいです」

 

 

謎の気合が入った咲夜を横目に、美鈴は苦笑いする。

かくして、十六夜咲夜によるリュウト慰め作戦は開始された。

 

 

_____________________

 

 

リ「・・・・・」

 

 

思えば、全ての切欠は自分だった。

八雲紫に過去へ飛ばされてから、出来るだけ目立つ行動をしないよう、世界に干渉しないよう心掛けてきた。

しかし、結果はそれとは程遠く、今まさに最悪の事態を招こうとしている。

部屋の窓から空を見上げると、すっかり夜は更けて天辺に満月が浮かんでいた。

世界が滅んでも空だけは汚れることなく真っ青なのだろう。

そんな当たり前がもうすぐ壊される。

 

 

リ「俺は・・・俺にはどうすることも出来ない・・・」

 

 

いくら抗おうと勝てない絶対的な強さ、いや、世界の理さえも捻じ曲げかねない存在。

150年後の出来事が今、起ころうとしているのだ。

自分の無力さを痛感させられたリュウトは、あれ以来幾多の強敵と戦ってきた。

それでも奴には勝てる気がしない。

奴が来なくとも、神は強豪揃いのバケモノのような強さを持った者達ばかりだ。

一人ではとても太刀打ち出来ない。

しかし、幻想郷の皆を巻き込むような事は絶対にしたくない。

もし、咲夜やレミリア、フランやパチュリー、美鈴が戦ったら・・・。

 

 

リ「皆絶対に殺されてしまう、あの時のように・・・」

 

 

目の前で無残に死んでいった仲間達。

レミリアは、ボロボロになりながらも最後にはリュウトを庇って死んだ。

今思い出しても吐き気がこみ上げてくる程だ。

もうあんな思いをしたくはない。

 

 

リ「俺はどうすれば、どうすればいいんだ・・・」

 

 

コンッコンッ

 

 

不意にドアがノックされ、扉越しに咲夜の声が聞こえていた。

 

 

咲「リュウトさん、お時間宜しいですか?」

 

 

優しく包み込むような声で問いかける彼女に、リュウトも答えた。

 

 

リ「いいぞ、入ってくれ」

 

咲「・・・夜分遅くに失礼致します」

 

 

彼女は静かにドアを開けると、部屋のベッドに腰かけて自分の膝をポンポンと叩いた。

 

 

リ「なんだ?どうしたんだ?

 

咲「リュウトさん、膝枕をしてあげますわ!」

 

リ「・・・・は?」

 

 

あまりに突然の事なので彼も何を言っていいのやら、頭の中が真っ白になった。

それもそうだろう、何時もはそのような事を言い出すような人間ではないのに、今日は一体どうしたというのだろうか。

 

 

リ「咲夜?いきなりどうしたんだ?」

 

咲「どうもこうもありませんわ!

リュウトさんを元気つけるのが私の役目なんですもの!」

 

リ「い、いや俺は別に・・・」

 

咲「良いから此方へいらっしゃってください!」

 

 

この迄は引きずってでも無理矢理させられそうなので、大人しくお縄に付くことにする。

 

 

リ「で・・・では失礼する」

 

咲「えぇ、どうぞ」

 

 

丈の短めなスカートから覗かせるきめ細やかで白い素肌。

それが目の前にいざ近づくと、心臓の鼓動が早まり、思わず生唾を飲んでしまう。

簡潔に言うと・・・・エロいのだ。

ゆっくりと太腿に頭を下すと、何とも言えない気分に陥った。

 

 

リ「おお・・・不思議な気分だ」

 

 

先程まで考えていた事がいつの間にか頭の中から消え、母の温もりのような感覚が体を優しく包み込んでくれている。

とても気分が良く、強張っていた身体は直ぐに楽になった。

 

 

咲「最近、リュウトさんの様子が変でしたので、何かあったのかと思いまして・・・。

あの、もし宜しければ気分を害さない程度に理由をお聞かせ願いたいのですが?」

 

リ「俺の様子が変だった?」

 

咲「はい、私の名前を呼んでは躊躇って話すのを止めたり、あまり元気も無さそうでしたし」

 

 

彼女はリュウトの様子の変化を間近で見てきた。

だからこそ心配しているのだ。

 

 

リ「・・・君は本当に優しいな、そういうところがつい甘えたくなってしまう」

 

咲「どんどん甘えてくださいまし、私はお姉さんですから」

 

リ「それ、俺がパチュリーの実験で小さくなった時の事か?

あれは事故だからノーカウントだ」

 

咲「あの時は可愛らしかったですわね」

 

リ「やめてくれ、ちょっとしたトラウマなんだ」

 

 

そんな冗談も交え、二人は共に笑いあう。

和やかな空間がそこにはあった。

彼に心に潜む悲しい過去もその時だけは忘れられそうだった。

しかし、彼は敢えてすべてを話すことを決意する。

 

 

リ「・・・俺は未来の世界で、幻想郷の皆が無残な姿で死んでいくのを見てきた。

神の力は圧倒的で、とても敵うような相手じゃなかった。

俺が100人居ても絶対に勝てない、そんな相手でも皆は必死に戦ったんだよ」

 

咲「その中に、私の知っている方もいたのですか?」

 

リ「パチュリーも、美鈴も、フランも、レミリアも・・・皆死んだんだ。

でも君は違う、あの場にはいなかった。

だから君が死ぬところなんて見たくない・・・守ってやれない。

俺は非力だから・・・」

 

 

彼の心底に眠る言葉を聞いた咲夜は、リュウトをそっと抱きしめた。

 

 

咲「私は何処にもいきません、貴方を置いて去りは致しません。

私は、貴方を愛すると決めたのですから。

それに、私の目に映るリュウトさんは何時だって誰にも負けないくらいカッコいいですから!」

 

リ「!」

 

 

頬を染めながら、咲夜は精一杯の表現で彼へ想いを告げる。

リュウトの目からは自然に涙が流れ出ていた。

 

 

咲「辛かったでしょうに、その苦しみを分かち合えたらどれだけ良いことでしょう。

ずっと私達の知らないところで苦しんでいたんですね」

 

 

今だけは、せめて今この瞬間だけでも彼を世界の呪縛から開放してあげよう。

それが出来るのは私だけなのだから。

 

 

to be continue・・・




因みに作者は膝枕しながら耳掃除してもらうのが夢です。
さて次回はどんな話にしようかな〜?

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