そろそろ話を本題に戻さなければ!!
それは、唐突な出来事だった。
紫「レースは一時中断!
一時中断にするわ!!」
突如リュウト達の前に現れた八雲紫により、レースは無理矢理中案させられる。
この事態に燃え滾った魂の炎を不完全燃焼させられた者達が猛抗議した。
文「なぜ止めるのです!?
あともう少しで私が勝利を掴もうというところで!」
フ「そうだよ!
もうちょっとでゴールする処だったのにぃ!」
魔「いいところで邪魔しやがって、どういうつもりだよ!」
紫を囲んで批判する魔理沙、文、フランドール。
しかし、声を荒げる紫の気迫で全員が黙り込んだ。
紫「うるさいからいったん黙りなさいっ!緊急事態が起こったのよ!」
どうも紫の動揺が気になった零夜は、何があったのかを訊ねる。
その場にいたリュウトも何か拙い空気を察していた。
零「一体何があったんだ?
紫ともあろうものがらしくないぞ」
紫「そりゃ慌てるわよ!
説明は後、良いから早く来なさい!」
リ「まさかとは思うが、会場で何かあったのか?」
紫「正しくその通りよ、話が早くて助かるわ。
一気に会場まで送るから早く中へ入りなさい」
言われるがままに全員がスキマの中へ入る。
空間を出た先は最初のスタート地点だった。
霊夢達は既にその場に集められていたが、彼女達も何が何だかさっぱりといった状態だ。
会場を見渡しても、スタート時と比べて特に変わった様子はない。
リ「・・・何も変わった様子は無さそうなんだが?」
咲「何故ここに集められたのか未だに説明されていないのですが・・・?」
レミ「レースを途中で切り上げなきゃいけないほどの問題って。
また隕石が落ちてくるとかそんな感じなわけ?」
紫「会場が襲われたわけじゃないわ。
優勝商品の聖書が何者かに奪われたのよ」
魔「なんだよ、あれってそんなに価値の或る物なのか?」
優勝商品が盗まれたことは確かに大事だが、紫がそんなに慌てる意味が解らなかった。
レースに参加していない彼女には全く関係の無い話のはずだが?
紫「価値の問題じゃないわ、あの聖書の正体が問題なのよ」
妖「あの本の正体が何か拙い物なんですか?」
売れば高値が付くものとしか認識していなかった妖夢は、呑気な声で紫に問う。
彼女は聖書とは無縁の生活を送ってきたのだから、その使用用途も良く知らないのだろうが。
しかし、そもそもあれは聖書ではないと紫は言う。
その言葉がさらに全員の考えにさらなる疑問を生ませた。
妖「聖書じゃないって、ならあれは一体何だったのですか?」
文「妖魔本の類でもないし、人間が書いたものではないんですか?」
霊「別に何かヤバいにおいがするわけでもなかったけど?
私はあれを見ても何も感じなかったわ」
紫「何も感じないのはある意味正解なのかもね。
あれは妖魔本でもなければ魔導書でもないわ。
あれの正体を一番よく知っているのはリュウトかもしれないわね」
リ「・・・おい、まさか本の中に魔法陣のようなものが書いてなかっただろうな」
紫はそっと頷く。
刹那、リュウトの顔は一気に深刻な趣を醸し始めた。
リ「なるほど、レースを中断してまで招集を掛けるわけだ。
もし、あの本の内容を解読出来る奴の手に渡っていたら・・・」
魔「もったいぶらずに教えろよ、何か分かったんだろう?」
咲「リュウトさん、あれは一体何だったのですか?」
リ「あぁ、これで分かったぞ、あの本の正体が」
重たい口を開け、リュウトは話し出す。
あの本は彼にとって、悪魔よりも恐ろしい存在だった。
リ「あの本は召喚陣が書かれた書物だ。
それも、俺たちの世界を滅ぼした忌々しい神々を呼び出す為のな」
美「神様を呼び出す召喚陣が書かれているってことは、それに載っている陣を書けば神様を呼び出すことが出来るって事ですよね・・・」
霊「でもそれって読めない文字で書かれてるんでしょ?
なら仮に手に入れても大丈夫なんじゃない?
召喚陣だけ書いても発動するわけないんだし」
零「それは解読できない奴が奪っていた場合だ。
もし、あの書物の使い方を知っていて、尚且つそれを実行できる人間の手に渡っていたら・・・」
零夜の読みが当たった場合、今の地球の実情を知った途端に世界を滅ぼそうとするだろう。
科学を進歩させ、同類同士で殺し合いを続ける人類を、とても生かしておくとは思えない。
現に150年後の未来では、それが原因で地球をリセットさせられている。
フ「神の召喚の為に奪われたって決まったわけじゃないんじゃない?
ただ単に転売目的だったとか、コレクションの為とか、例を出せば色々あるんだから」
レミ「あれを奪ったやつは左程門じゃないわ。
要は、あの本が存在する事自体が拙い事なのよ」
霊「それで、今から私達に犯人捜しを手伝えと?」
当然だろう、と、霊夢は考えていたが、紫はそれを望んでいないようだ。
いや、手伝うのは不可能と言えるだろう。
紫「犯人捜しは必要無いわ、幻想郷に居ないんだもの。
本を奪ったのは外の世界の住人よ」
魔「なら話は早いぜ、そいつをとっちめればいい」
紫「それは無理よ。
こちらに来た形跡は辿ることが出来るけど、何処から来たのか、何処へ向かったのかは結界を超えられると探知できないの。私の能力はそんなに便利なものじゃないのよ」
文「でもそれって言い換えれば、意図的に結界に穴を開けられる人物の犯行って事になりませんか?」
リ「意図的に結界に穴を開けられる・・・?」
この言葉が彼の中でどうにも引っかかった。
外界の人物で、博麗大結界への干渉が出来る人物。
咲「リュウトさん、それってもしかしてあの方では?」
リ「あぁ居たぞ、一人だけ心当たりがな」
零「っ!岡崎夢美か」
リ「その通りだ、あいつは博麗大結界に干渉するための機械を研究中だと言っていたからな。
それが完成したのかもしれない」
そのゲートを完成させたという事は、これから頻度に結界へ干渉してくる可能性が高いという事。
早期にその装置の所在を特定して破壊しなければならないだろう。
リ「岡崎夢美が何処に居るかは分からないのか?」
紫「彼女、最近はメディアに姿を現していないのよ。
潜伏して独自の研究を続けていると思われるわ」
霊「八方塞がりね、これじゃあ次に行動を始めたときに捕まえるしかないじゃない」
紫「今のところは警戒態勢という事にしておきます。
でも、私は独自で外の世界の調査をするわ。
もしかしたら岡崎夢美以外に犯人がいるかもしれないし。
あなた達にはその間、何かあった時に幻想郷の事を頼みたいの」
それは、万が一の事態が起きた場合に自分が居ない事を想定しておけという事だ。
そしてその翌日から、紫はぱったりと皆に顔を見せ無くなった。
近々挿絵を描いてもらう予定なのですが、どんな挿絵を書いてもらうか未定なので作業が進みませぬ…。
アリスが活躍する話と咲夜が活躍する話を描きたくて仕方が無い。