東方混迷郷   作:熊殺し

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明けましておめでとうございます。
16年中に上げたかったけど無理でしたとさ。


緋想天95話

天「フルパワーで全部纏めて吹き飛ばしてやる!」

 

響「!?」

 

 

天子の声に反応した緋想の剣が手から離れて浮遊し、彼女の目の前で静止するとエネルギーが剣に集中し始める。

禍々しい赤の衝撃が広がり、空気が悲鳴を上げる。

そして、最後のスペルを詠唱した。

 

 

スペル:全人類の有頂天

 

 

ドシュウゥゥゥゥ!!

 

 

全てを焼き尽くすように赤い熱線が拡散砲となって大地を炎に包み込む。

放たれる放射熱線は無作為な軌道を描き、地面に痛々しい黒い傷跡を残していった。

ただ、左程苦労なく避けられる速さだ。

 

 

響「確かに強力ね。でもね、どんな強力な砲撃でも、当たらなければ!」

 

 

しかし、響華はある誤算をしていた。

天子は自分を狙って攻撃している・・・という考えは間違いだった。

 

 

天「避けられる事を想定せずに撃っているとでも?」

 

 

適当な軌道を描くビーム。

しかし、ターゲットは彼女ではない・・・鈴仙だ。

未だ倒れたまま動けない彼女がこの熱線に直撃すれば確実に死ぬ。そうなれば響華がとる行動は決まってくる。

 

 

響「!!!怪我人を狙うなんて卑怯な真似を!」

 

 

事に気が付いた響華は真っすぐ鈴仙の元へ向かう。

既に熱線が鈴仙に直撃するのは時間の問題だった。

 

 

響「間に合えぇぇぇぇぇ!」

 

 

札を投げて鈴仙に結界を張り時間を稼ぐ。

あれだけ強力な攻撃だ。保って数秒というところだろうが、彼女ならばそれだけあれば十分だ。

 

 

バキィィィィィィィン!

 

 

響「よし、持ち堪えてくれた!」

 

 

すかさず結界と鈴仙の間に滑り込み、バリアを張って衝撃に備える。

直後、結界はガラスのように脆く割れ、熱線がバリアに直撃した。

その時、天子の口が右に吊り上がる。この瞬間を待っていた。

 

 

天「そう来てくれると信じていたよ。

・・・最大出力!」

 

響「やっぱり罠だったか!博麗七重結界!

 

 

天子の攻撃に悪態をつくも、響華も防御結界を七層に重ねたバリアーで正面から対抗する。

が、拡散して放たれていた熱線が一点集中砲となり、バリアに負荷をさらにかける。

それだけでなく、天子は今自分が出せる最大の力を引き出して響華を消そうとした。

今の響華でさえもそれを防ぎきるのは容易なことではなかった。

 

 

響「強すぎるっ!一体いつまで続くのよこれ!」

 

天「ならさっさとくたばりなさいよ!」

 

 

二人の本気のぶつかり合いは激しさを増し、飛び散る熱線の欠片は周囲に甚大な二次災害をもたらした。

しかし、現時点では天子の方がやや優勢であった。

響華は天子のビームを押し返せていない。

完全に防戦一方な状況の中、鈴仙が漸く目を覚ました。

先の攻撃から気を失っていた彼女は、今起きている現状をはっきりと把握出来ないでいた。

 

 

鈴仙「な・・・何よこれ」

 

響「ぐぅぅっ!この異常なパワー、剣の力まで入れてるっていうの!?」

 

天「そうよ、緋想の剣は大量の妖力を纏っているの。これはある意味で妖刀の一種なのよ。

剣に力を籠めるのではなく剣の力を引き出すことによって能力を発動できる。

そしてそれができるのは我が比那名居家だけ。だからこその家宝として受け継がれてきた。

比那名居はこの剣に選ばれた一族なのよ」

 

 

天子はさらにパワーを注ぎ込む。

剣はそれに反応し、ビームは先ほどより一層重くなった。

響華の足元は地面がひび割れ、踵が埋まっている。

バリアと後ろの円光が生み出す推力を上げても五分五分といった処だ。

 

 

鈴仙「響華・・・。私は一体何を・・・?」

 

響「優曇華!気が付いたの!?」

 

 

ボロボロの体で上半身だけ辛うじて起き上がる事が出来た鈴仙がぼやけた視界の中で響華の名を呼び掛けた。

酷い出血で顔色も悪い。

今すぐ治療が必要だという事は分かっている・・・が、しかし。

目の前の敵は未だ立っている。

 

 

響「優曇華、力を貸して!」

 

 

今、自分は手が離せない。

相棒である鈴仙に頼るしかない。

やつの集中を逸らす何か切っ掛けがあれば・・・。

それを察した鈴仙がニヤリと笑い。

 

 

鈴仙「オーケー・・・任せなさい!」

 

 

落ちて左のレンズが割れた壊れかけのサングラスを再び掛け、バズーカを肩に担ぐ。

照準器を引き出し、サングラスの有視界ターゲットロックを起動させる。

装弾数は4発。月の兵器ではローテクと言われるほど古臭い代物だが、その威力は折り紙付きだ。

 

 

鈴仙「対要塞攻撃用誘導弾だから、並の威力じゃないわよ~。確実に当てるからあと10秒耐えて!」

 

響「了解!」

 

鈴仙「目標補足、ターゲットロックを完了。

弾頭軌道計算・・・セーフティーロックを解除。

 

 

サングラスにはビーム越しにターゲットロックされた天子と、弾道のルート、砲身を向けるべき方向まで表示されていた。

空気の流れやビームの温度から安全で確実に当たるコースを自動計算していく。

ここまでで約8秒。発射体制は整った。

 

 

鈴仙「一気に行くわよ!」

 

 

バシュウンッ!

 

 

バズーカを右に逸らしてトリガーを引くと、砲口から一発の誘導弾が発射されて自動で弾が軌道修正を行い、徐々に左へ流れる。

そして、標的の目の前で大きな爆発を起こして消えた。

流石は要塞攻撃用の武器だけあって威力は並大抵なものではなかった。

 

 

ドゴォォォォォォン!

 

 

鼓膜が破れそうなほど大きな爆発音と黒い炎をま撒き散らし、ビームはあらぬ方向へと反れていく。

これを好機に鈴仙は連続でトリガーを引き、追い打ちをかけた。

 

 

ドゴォン!バゴォォン!

 

 

天「あ、ぐぅあ!?」

 

 

放っていたビームは天に向けられ、徐々に光が掠れて消えていった。

それと同時に響華は結界を消すと、足のバネを最大まで縮ませ天子の高さまで跳躍し、気を纏わせた鉄拳で制裁を下した。

 

 

響「これが私の、最後の一撃ィ!!」

 

 

利き手を握った拳が天子の鳩尾を貫く勢いで繰り出される。

空気の摩擦で炎が出るほど早い一撃は、無念夢想の境地のスペルによって超強化された身体でさえも全く歯が立たない威力であった。

 

 

天「が、っはぁぁぁぁぁ!!??」

 

響「まだまだ、これで吹っ飛べぇぇぇ!」

 

 

拳に集中させていた気を衝撃波として開放する。

衝撃は内臓に直接ダメージを与え、天子は喉元からは胃液が逆流してきていた。

最早何も考えられないほどの痛みに、彼女は頭の中が真っ白になった。

何もかもが吹き飛んだ、そういう気分だ。

でも、最後にこれだけは言っておきたい。

スペルがと解け、脱力感に身をゆだねる。

響華の体に倒れ掛かり、彼女の肩に手を掛け、そっと声に出した。

 

 

天「あなたの・・・勝ちよ・・・」

 

響「えっ・・・?」

 

 

倒れ掛かってきた天子を支え、ゆっくりと降りていく。

その際、何か聞こえたような気がしたが、それ以上の言葉が聞こえることは無かった。

目を閉じて、真っ白に燃え尽きた天子からは吐息一つ聞こえない。

天子の命を具現化するように、成層圏を貫く大地は脆く、そして儚く崩れ去っていった。

 

 

to be continue...




天子やっと倒せた!!
長かったぁ…書く暇が無いし何も思い浮かばないしで散々な回でした。
てか眠い

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