東方混迷郷   作:熊殺し

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今回は話の中にキャラの裏話が出てきます。
みんな大好きあのキャラです。


緋想天88話

~白玉楼~

 

 

妖「ん・・・うん~!今朝も良い朝ね」

 

 

何時も起きている時間で自然に目が覚めた妖夢は、布団を退かして体を伸ばす。

寝間着の白衣が若干はだけてしまい、胸元から健康的な谷間がちらりと見える。

眠っていた体の筋肉を起こすと、毎日欠かさずやっている剣の素振りの為に縁側へ出ようと布団から出る。

その瞬間、違和感を感じた。

 

 

妖「うぅ・・・何だか部屋が寒いような気が?」

 

 

布団から出た瞬間、部屋の空気が妙に冷たい事に気がつく。

冥界の空気は常に冷気を纏っているが、これは明らかにおかしい。

まるで冬の寒さだ。

不審に思った妖夢は恐る恐る縁側に繋がる襖に手をかけ、そっと開けてみた。

するとそこには。

 

 

妖「寒っ!!!

え!?何で雪が降ってるの!?」

 

 

なんと真っ白な粉雪を被った自慢の庭園の姿があった。

雪が降っている。

古風な庭園の緑を程よく残しながらも白一色に染まった景色に妖夢は心奪われた。

 

 

妖「わぁ、綺麗・・・ってそうじゃなくって!

冥界で雪なんて絶対おかしい!」

 

 

この異常事態に呑気な事を考えている場合ではない。

一刻も早く状況を主人に伝えなければ。

まだ顔も洗っていないが、彼女は走って主人の部屋へと向かった。

 

 

霊「幽々子様ー!!大変な事態ですー!!」

 

 

主人の名を上げながら急いで部屋へと向かう。

しかし、部屋には幽々子の姿は無い。

この緊急時に一体何処へ行ってしまったのか、他の部屋を捜索しようと空室を飛び出したそのとき。

慌てふためく妖夢の声が届いたのか、幽々子が隣の部屋から襖を開けて出てきた。

 

 

幽「どうしたの妖夢?

そんなに慌てて、オバケでも見たの??」

 

妖「幽々子様、そんな呑気な事を言っている場合ではありません!

直ぐに閻魔様へご連絡しなければいけない事態・・・が・・・」

 

 

妖夢は徐々に口ごもる。

何故か。

それは、先程から幽々子が手に雪の積もったガラスの器を持っているからである。

天辺が赤い雪の山、これは間違いない。

 

 

妖「幽々子様、そのかき氷はどうなされたのですか・・・?」

 

幽「いちご味よ。

・・・・・妖夢も食べたいの??」

 

 

と、持っているかき氷を妖夢に差し出そうとするが、彼女の口からは若干よだれが出ている。

名残惜しいのだろう。

・・・そんなに手放したくないのなら何故差し出そうとするのか。

 

 

妖「食べませんよ、涎垂らしながら何言ってるんですか!!!

ってことはまさか、この積雪は幽々子様が原因なのですか!?」

 

幽「失礼ねぇ、私は純粋に降って来た雪でかき氷を楽しんでるだけよ?」

 

妖「その氷は外からそのままとってきたんですか!?

駄目ですよ汚いじゃないですか!」

 

幽「もう死んでるから気にしな~い♪」

 

妖「そういう問題じゃありませんっ!!!」

 

 

朝から何故こうも叫ばなければいけないのか。

それもこれも、全て御主人のせいだ。

必死の妖夢の突っ込みは、自由奔放な幽々子には届くことは無い。

 

 

妖「はぁ・・・はぁ・・・もういいです。

朝ごはんの支度をするので、居間で待っていてください。

・・・大人しくしていてくださいね?」

 

幽「えぇ~??私何も悪い事してないのに~」

 

妖「う、うぅ~ん?

確かに言われてみれば幽々子様は何も悪くないような?

ん~もうっ!一体誰よ雪なんか降らせたのはー!!」

 

 

特に誰に言ったのかは隅に置き、白髪少女のその叫びはその後、冥界中に響き渡ったと言う。

 

__________

 

 

~紅魔館~

 

 

咲「はぁ・・・また濃霧ですか、今日もリュウトさんに頼むしかなさそうですわね」

 

 

洗濯籠を抱えながら、廊下から窓越しに外を眺めてため息をつく。

湿気と厚い雲で天日干しが出来ない日が続いているせいで、咲夜は顔から笑顔が消えていた。

雨の日などで洗濯物が外に干せない日はリュウトに頼んで乾かしてもらっているのだが、一週間以上もこの調子が続いていて、正直これ以上の迷惑を掛けたくはない。

 

 

咲「嫌ねぇ・・・。

でも私の能力でどうにも出来ないし」

 

リ「何が嫌なんだ??」

 

咲「あひゃあ!?」

 

 

考え事で頭がいっぱいの中、いきなり後ろから声を掛けられて洗濯籠をひっくり返しそうになってしまう。

気が付けばリュウトが心配そうな顔で咲夜の様子を窺っていた。

 

 

リ「どうしたんだ?

元気が無いようだが」

 

咲「え?そ、その・・・」

 

リ「???」

 

 

言えない。

彼の顔を直視しているとどうしても罪悪感が込み上げてくる。

しかし、自分の意に反して彼は抱えている洗濯籠を持って行ってしまう。

 

 

リ「何だ、洗濯物を持ってくる最中だったのか。

丁度いいから持っていくぞ。

あ、ちゃんと目隠しはしているから心配するな」

 

咲「い、いえ、そういう事では」

 

リ「洗濯物なら任せてくれていい。

能力の平和的利用という奴だと思ってくれ」

 

咲「あ、あの・・・」

 

 

リュウトは咲夜の言葉を聞かずにそそくさと去って行ってしまった。

聞かなかったのではなく、単に聞こえていなかっただけなのだろうが。

本当は嫌だろうに。

そう思いつつも、去っていく彼の背中を眺めるだけで断れない自分に嫌気がさす咲夜だった。

 

 

~レミリア自室~

 

 

ここ一週間辺り、紅魔館周辺は毎日のように濃霧と曇天に見舞われていた。

晴れたラウンジにパラソルを立ててお茶を楽しむのが至福の時であるレミリアだが、生憎の天気の悪さ故に部屋の中で、しっとりとした空気が漂う室内で妹と静かな茶会をしていた。

肌に纒わり付くように気持ち悪い湿気の多い部屋。

せめて景色だけでも拝めたいものだが。

妹との楽しい茶会の筈が、出るのはため息ばかりだ。

 

 

レミ「はぁ・・・最近、霧が濃いせいで外でお茶が出来ないじゃない。

私は太陽の下で日傘を差しながら出掛けるのが好きなのに」

 

フ「ちゃっかり吸血鬼のアイデンティティをひっくり返してるところは置いといて、確かに曇りだけなら有難いんだけどなぁ」

 

レミ「それにしても・・・何でこんなにも霧の日が続くのかしら?

一週間も同じ天気なんておかしいわ」

 

 

窓の外から見える景色は霧に隠され、一寸たりとも先が見えない。

お陰で洗濯物は外に干せず、何時までも部屋干しの日が続いており、そのせいか若干洗濯物が匂うのだ。

日光が苦手な吸血鬼にとっては最高の天気なのだろうが、一週間以上も続けば嫌になってくる。

去年はこんな濃霧が続く事は無かった筈。

この霧は何かがおかしい。

レミリアの中では第三者の存在が渦巻いていた。

そう、何者かが異変を起こしている可能性を考えていた。

 

 

レミ「でも一体誰がこんなことを?

霧と言えば私が起こした異変と同じやり方だけど・・・」

 

 

レミリアが一人考え込んでいると、フランが不意に何かを思い出した。

リュウトの事についてだ。

 

 

フ「そういえば、最近リュウトを食事中以外で見てないような気がするんだけど?」

 

レミ「え?知らないの?」

 

フ「何が?」

 

 

異変とは関係なさそうだが、館の中だけで唯一リュウトだけが姿をあまり見掛けなくなっていた事に気が付いたフランはレミリアに問うと、彼女はぽかんとした顔でフランに問い返した。

レミリアは件について知っているのだが、フランは何の事だかさっぱり分からなかった。

今回の切りについて何か調べているのだろうか?

しかし、返って来た言葉は意外すぎて言葉を失う内容だった。

 

 

レミ「リュウトなら今頃部屋に籠って洗濯物乾かしてるわよ」

 

フ「・・・はい?」

 

レミ「あの子、光を体に中に溜めてるでしょう?

その光を太陽替わりにして洗濯物を乾かしてるのよ。

咲夜の指示で目隠ししながらね」

 

 

能力の平和的利用と言ってしまえばそれまでだが、そんな道具のような扱いをされて彼が良く思う訳が無い。

フランは即刻辞めるように抗議する。

 

 

フ「お姉ちゃん、流石にやりすぎだよ。

咲夜に止めさせるように言ってやってよ」

 

レミ「う~ん・・・そうは言ってもねぇ。

実際助かってるのは事実だし、リュウト自身が率先してやってるみたいだから・・・」

 

フ「え?リュウトが?」

 

レミ「コソッと本人から聞いたんだけどね?

雨で洗濯物が乾かせない日って咲夜の機嫌が良くないらしいのよ。

元気が無いと言うか、笑顔が無いというか。

だから少しでもそれを和らげてあげたいんだって」

 

フ「ふうん。

昔の私達みたいにならなければいいけどね」

 

レミ「ん?どういうこと?」

 

フ「ううん、何でも無いよ」

 

 

フランは笑顔でそう言うと、少し冷めてしまった紅茶に静かに口をつけた。

その優しさが逆に咲夜を傷つけなければいいのだが。

姉との遠い昔の出来事と今の二人を重ねて心配になった。

想いがすれ違ってしまう心の痛さを知っている彼女は、二人に同じ道を歩んでほしくないと願った。

 

 

_____________

 

 

幻想郷、妖怪の山の空の上には大きな島が幾つも浮かんでいる。

広大な土地が空には浮かんでいるが、その姿を地上から捉える事は出来ない。

神聖な天の世界。

そこに暮らす全ての人々は、揺らぐことの無い安寧の中で幸せに毎日を過ごしていた・・・筈だった。

 

 

~天界~

 

 

?「あ~あ、ほんっとに何も無くてつまんないわねぇ~。

事件の一つや二つ起こってもいいのに、何にも起こらないし、変わらない毎日ってなんでこうも退屈なのかしら」

 

 

雲一つない快晴の中、芝生に転がっている一人の少女は退屈に嘆いていた。

 

 

?「屋敷から抜け出して下界を見るのも飽きちゃったしなぁ」

 

 

空のように青く美しいロングヘアに、虹色の装飾で彩られたスカート。

天人の貴族、比那名居天子は、貴族の中でも天界を統率する総領の一人娘。

多少甘やかされて育ったせいで我儘な性格となってしまった彼女は、屋敷を抜け出して退屈を吹き飛ばす良い案を考えていた。

昔は下界で繰り広げられる戦争や、町の発展を見ているのが主な日課だったが、幻想郷の空に来てからは時々起こる異変を見るのが楽しみとなっていた。

勿論、霊夢達の存在は一方的に知っているだけだが、何時かは仲良くしたいと彼女たちが此処に来る日を楽しみに待っている。

しかし、天界の存在を知らない彼女たちが此処へ来るのは些か無理があるのでは?

と、最近になって気が付き、退屈な毎日を再び歩むこととなってしまった。

 

 

天「何か面白い事・・・面白い事?

!そうだ、良い事思いついちゃった!!」

 

 

何かが頭の中に閃き、急に立ち上がったかと思うと彼女はにやりと嗤う。

幻想郷の天気が混沌となったのは、それから三日後の事だった。

 

 

to be continue...

 




最後の方が適当な気がしますが、そんなものは気にしない!!!
好きなように書くのがスタイルです。

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