東方混迷郷   作:熊殺し

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霊夢サイドの話です。
勿論早苗と戦いまっせ、漸くレッツバトル開始です。


風神録81話

~妖怪の山、頂上付近~

 

 

山から聞こえる轟音の数々。

森林の上を順調に飛行していた三人は、突如として謎の攻撃を受けていた。

地上、空の両方から挟み撃ちするように魔法陣からレーザーが飛来する。

その総量はかなり多く、魔法陣の一つ一つが独立して攻撃を仕掛けてきていた。

 

 

霊「あらかじめ仕掛けてあったようね。

面倒な事をするものだわ」

 

魔「でもかなり力が込められてるぜ?

厄介この上ないな」

 

文「しかも個別に動いて攻撃してくるなんて、操ってるとしか考えられませんよ。

何処かで私達を見ている筈です」

 

 

星型の弾幕や蛇の形をした弾幕が四方から襲い掛かり、三人を分断しようとする。

明らかなトラップだった。

仕掛けたのが誰かは考えなくとも想像が出来た。

 

 

霊「仕方ない。

あいつらの手に乗ってやりますか」

 

魔「ってことは三人分かれて戦うって事か?」

 

文「そういう事ですね。

向こうも確か三人の筈ですよ?」

 

霊「丁度いいじゃない?

じゃ、一人タイマンで倒し次第合流って事で!」

 

文・魔「おう!」「りょーかい!」

 

 

固まって回避行動を行っていた三人は、それぞれ距離をとって別ルートで神社へ向かう。

霊夢は正面低空、魔理沙は上空、文は裏から神社を攻める。

三人が離れ合うと、それを読んでかトラップの攻撃が止んだ。

 

 

_____________

 

 

~霊夢side~

 

 

霊「やはり・・・私達を分断させることが目的だったのね。

さしずめバラバラに相手すれば勝てると考えてるのかしら?」

 

 

木々の間を縫うように飛行しながら神社へ向かうと、しばらくして大きな社が見えてきた。

鳥居をくぐって社へと突っ込むと、奥の部屋には霊夢が待ち望んだ相手が佇んでいた。

目を閉じて瞑想をしていた少女は、霊夢の存在を感じるとゆっくりと立ち上がった。

 

 

早「随分と早かったですね」

 

霊「アンタをぶっ飛ばす為にわざわざこんな所まで来てやったのよ。

感謝してほしいわね」

 

 

お祓い棒と陰陽玉を展開して臨戦態勢を取る。

同時に早苗も右手に携えた御幣を霊夢に向けた。

 

 

早「血気盛んな事で。

でも、此処で戦うと社が滅茶苦茶になってしまうので外に出ましょうか」

 

霊「何を・・・うわッ!?」

 

 

部屋の中の筈が突如、早苗の方向から突風が巻き起こる。

台風を優に超える威力に、霊夢の身体はいとも簡単に飛ばされてしまった。

正に神風が吹いたようだった。

勢いよく境内まで飛ばされた彼女は、地に着く前に滞空して踏ん張り、思い切りニードルを何本か投げつける。

しかしニードルは、早苗の張った結界によって完全に防がれていた。

 

 

霊「・・・どうやら素人じゃなさそうね」

 

 

霊夢の結界よりも弱めではあったものの、弾幕を数発防ぐには十分な強度。

既に外に出ていた早苗は、結界を解くと同時に弾幕で攻撃を開始した。

 

 

早「戦いとは常識にとらわれてはいけないのです!」

 

 

彼女は両手をパンと合わせ、地面につける。

すると、地面から青い弾幕が波打つように湧き出てきて霊夢を呑みこもうと迫って来た。

それを宙返りで軽く避けると、お返しと言わんばかりに虹色の弾幕を雨のように撒き散らした。

 

 

霊「弾幕ってのは逃げ道を限りなく少なくする手段なの。

アンタの今の技は見た目が良くても実戦向きじゃないわね」

 

早「ウグッ・・・!

一発一発に強い霊力が・・・。

これが実力の差ですか」

 

 

急いで結界の傘を張るが、霊夢の弾幕は一つでも大きな威力を持つ。

早苗の結界では数発当たれば砕け散ってしまう。

案の定、結界が砕け散った後の早苗は攻撃をする暇も無く、ホバーで回避に徹するも数発被弾していた。

 

 

霊「なんだ、大して強くないじゃない。

実戦不足ってとこかしらね」

 

早「確かにそうかもしれません・・・。

ならば本気を出すまでです!!」

 

 

両手で御幣を突き出し、奇妙な詠唱を始める。

・・・彼女の周囲に風が舞い始め、足元に綺羅やかな八卦陣が現れる。

しかし、霊夢はこれといって早苗から特別な力を感じなかった。

霊力が上がる訳でもないのに、何故こんなにも大掛かりなハッタリを使ったのか。

 

 

早「貴女には到底解り得ない力です。

今、私から何も感じていないでしょう?」

 

霊「!!へぇ。

そういうことね」

 

 

一瞬で理解出来た。

早苗は神力を纏っている。

霊夢が何も感じないのは、霊夢が人間だからだ。

しかし、彼女は霊力と神力の両方を持っていた。

彼女以外にそれを持つ人間を霊夢は知っていた。

 

 

霊「アンタもリュウト達と一緒ってわけね。

でも、アンタじゃ私は倒せない」

 

早「言いますね、私の力を感じられないクセに」

 

霊「関係ないわ。

神の力が使えたところで、使う者に問題があれば只の宝の持ち腐れよ」

 

早「さっきから随分余裕な発言ですね・・・。

良いでしょう、ならその言葉、そっくりそのまま返してやります!」

 

 

現人神としての力を侮辱され、堪忍袋の緒が切れた早苗は、鮮やかな赤と青の弾幕を渦を巻くようにして霊夢に放つ。

渦は真っすぐ霊夢を巻き込もうと口を開けるが、あえて彼女はその中へ突入し、弾幕の渦を難なく避けていく。

渦の中を突破して奇襲を掛けようと考えたが、それは判断ミスだった。

霊夢は早苗の神力を感じられないが、早苗は霊夢の位置を霊力を辿って掴んでいる。

奇襲が成功する筈が無い。

案の定、渦を抜けた先には早苗はおらず、既に次の手が打たれていた。

 

 

早「見えてるんですよ!」

 

 

スペル:五穀豊穣ライスシャワー

 

 

直上から雨のように米粒のような形をした青い弾幕が降り注ぐ。

その範囲はかなり広く、その場から退避するのは不可能。

かといって避けきれるような量でも無い。

さらに早苗はもう一枚のカードを取り出して追い撃ちを仕掛けた。

 

 

スペル:九字刺し

 

 

霊夢の周囲を正方形に囲うようにレーザーの檻が出現し、ライスシャワーを避ける範囲を狭める。

只でさえ回避が困難だったのが、行動範囲を制限されてさらに困難となってしまった。

しかし、彼女はさらなる追撃の為に空へジャンプする。

 

 

早「ターゲット補足、ファイア!」

 

 

少女が使うには似つかわしくない少し厨二病めいた言葉を発しながら、霊夢に向けてレーザーを掃射する。

一直線に標的へ伸びるレーザーの速度は速く、発射から数秒で着弾した。

 

 

ドォォォォン!!!

 

 

大きな着弾音が境内に響く。

しかし手応えが無い。

爆発で舞い上がった砂埃が晴れた時、其処に霊夢の姿は無かった。

脱出していた事は既に早苗も解っていた。

ただ、次に霊夢が何処から現れるかは解らなかった。

 

 

グゥオン

 

 

零距離移動で檻から出た霊夢は早苗の直上に現れ、重力に体重を乗せた踵落としを繰り出そうとする。

瞬間移動と違い、別の空間同士を繋いで移動する技なので移動の痕跡が見えない。

ほぼ不意打ちに近い技。

・・・の、筈なのだが、早苗はそれにギリギリで反応してみせ、両腕を交差させて防いだ。

しかし、彼女にはある誤算があった。

踵落としの威力が思っていた以上に大きい事だ。

 

 

早「ウグッ!

あなた、瞬間移動まで出来るなんて本当に人間ですか?」

 

霊「少なくとも神力使ってるやつよりは人間ね。

それより、少し辛そうよ?

さしずめ防いだのは良いけど威力が大きかったって感じなんでしょうね。

少し力入れてみたし当たり前か」

 

早「へ、へぇ。

これで少し?

随分と大きく出ますね」

 

 

額から冷汗がにじむ。

これで少し?

神力を纏った体に重いダメージを与えることが出来るほどの威力だと言うのに。

もしそれが本当だとしたら、自分に勝機なんて1%も無いのではないだろうか、と。

そう考えてしまった。

 

 

霊「今のでアンタの強さが大体わかったわ。

本気を出せば数秒で倒せるけど、疲れるから手加減してあげる」

 

早「なんですって!?」

 

 

その言葉に怒りがこみあげてくる。

本気を出せば数秒でノックアウトなんて出任せに決まっている。

それなら本気を出させて、それが嘘だと認めさせてやろう。

 

 

早「だったら本気を出して私を滅多討ちにすればいいじゃないですか。

どうせ口からの出任せなんでしょう?

私を数秒で倒すなんて絶対に無理です!」

 

霊「あっそ。

ならお望み通り、本気でボコボコにしてあげる」

 

 

バゴォン!!!

 

 

その瞬間、早苗は強烈な痛みと共に意識を失った。

 

 




霊夢はこれでも本気出してません。
最初は攻撃方法から強さの大体を割り出そうとしていたところです。
なので基本的に受けに徹していたわけです。
神力を感じられればそんな事しなくても良かったんですがね~。

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