東方混迷郷   作:熊殺し

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今回もバトルはありません。
異変だというのに・・・。


風神録80話

霊夢、魔理沙は共に焼き芋を頬張りながら山の頂上へと向かっていた。

普段は山に入れば哨戒天狗に見つかり次第妨害を受けるのだが、今日はその兆しが全く見られない。

何故なら・・・。

 

 

文「どうです?

私が居て助かったでしょう??

貴女達では入った瞬間から哨戒天狗に攻撃されちゃいますからね~」

 

 

今日は文が一緒に飛んでいるからだ。

彼女は山の天狗でも上級階級に位置する立場におり、殆ど顔パスでどうにかなってしまう。

実は凄く偉い天狗なのだ。

 

 

霊「あんたってそんなに凄い奴だったのね。

てっきり新聞作ってるだけだと思ってたわ」

 

魔「リュウトが言ってたろ?

未来の世界では文が天魔やってるって」

 

文「確かに次期候補ではありますが・・・」

 

魔「ホントかよぉ?

すげえなぁ」

 

 

彼女からはそのオーラが全く見えないが、人は見かけに寄らないとはこういうことを言うのだろう。

二人がそんな話をしている最中、霊夢が突然辺りをキョロキョロと眺め始めた。

まるで何かを探すかのように。

 

 

魔「どうした霊夢?

さっきから落ち着かないな」

 

霊「ねぇ、何だか凄い嫌な気配を感じるんだけど?」

 

魔「またまたぁ。

私はそんなの感じないぜ?」

 

文「私も感じませんけど??」

 

 

霊夢がふと感じた妙な気配。

それは唐突だったが、はっきりと明白に感じられた。

邪悪ではないが、良い気配でもない。

怨念?いや違う。

何か、負の感情の集合体のように感じた。

 

 

?「もしかしたら私のせいかもしれないわね」

 

霊「!」

 

 

三人の目の前に現れた赤いゴスロリ風なドレスを纏った翡翠のロングヘアの女性は言った。

彼女の周囲には、目に見えるほど黒いオーラが渦を巻いており、それが霊夢の警戒心を煽った。

 

 

霊「真っ黒な気・・・じゃない!?

この不気味な気配は一体何なの・・・・?」

 

 

お祓い棒と札を手に構える霊夢。

そして後ろでは魔理沙も八卦炉を何時でも撃てる状態にしていた。

しかし、そんな中で文だけが平然とした態度で滞空していた。

 

 

文「誰かと思えば雛さんじゃないですか。

はっは~ん?

霊夢さんが感じていたのは雛さんが集めた厄だったんですね」

 

雛「人間が山に入って来たから注意しようと思ったんだけど、文が居るなら良いかしら。

それにしても厄を感じ取るなんて、中々やるわね。

普通は感じない筈なんだけど?」

 

 

厄とは、人間がため込む不幸を引き付ける見えないオーラの事である。

この女性、鍵山雛は人間から厄を集め、年に一度それを厄払いして葬る。

彼女は流し雛という厄を吸い取る人形の付喪神なのだ。

敵でないと解ると霊夢と魔理沙は武器を仕舞った。

 

 

霊「博麗の巫女なんだから解るに決まってるでしょ。

それに、アンタが思ってる以上にえげつないわよ、それ」

 

雛「仕方ないじゃない?

これが私の仕事でもあるんだから」

 

霊「あっそ。

それより、私達急いでるんだけど?」

 

 

無駄に時間を取られたくない霊夢が少し不機嫌そうな声で雛を睨みつける。

しかし、雛はそれに全く臆する事は無かった。

寧ろそれに喜んでいるようにも思える表情をしながら、まるで媚薬にまみれたように身体をねじらせていた。

 

 

雛「あぁ、厄いわぁ♪

貴女、とっても厄いわよぉ♪」

 

魔「うぇ、何か気持ち悪い奴だなぁ」

 

文「あれが彼女の性格なんですよ。

悪い人ではないので安心してください、寧ろいい人ですから」

 

 

文の言葉を疑り深く聞く魔理沙だが、完全に引いてしまっている。

仕方ない。

初対面の人間が異常な行動をしていたら誰だって引くだろう。

 

 

雛「あ、急いでるんだっけ?

ならこれだけ持って行きなさいな」

 

 

雛がポケットから取り出したのは、流し雛の人形だった。

しかも、大量の厄が入っている。

何かの当てつけと考えた霊夢はこれに怒った。

 

 

霊「なんてものを渡そうとしてるのよ!

こんな物騒な物持てる訳ないでしょ!!」

 

雛「違うわよ、これは私から貴方達へのプレゼントよ」

 

霊「それが要らないのよ!

厄まみれじゃないの!」

 

 

お祓い棒を突き付けて激怒する霊夢。

しかし、この流し雛はそんなつもりで渡すものではなかった。

 

 

雛「これは武器よ。

ピンチになった時にこれを敵に投げつければ厄を撒き散らす爆弾になるわ。

至近距離で当たったらとんでもない不幸が降りかかる、まさに一撃必殺よ」

 

霊「ほ、本当に??

触って大丈夫なんでしょうねぇ?」

 

雛「持ってるだけでは何も起きないわ。

ただ、大きな刺激を与えると誤って爆発するかもしれないから気を付けてね。

あ、そこの金髪ちゃんの分もあるわよ?」

 

魔「げっ!?」

 

 

そう言って雛は、はい、と人形を差し出して来る。

本当に大丈夫なのか心配だが、霊夢は思い切ってそれを掴む。

・・・何も起こらなかった。

安堵して胸を撫で下ろす彼女を見た魔理沙もその後に受け取った。

 

 

雛「時間をとらせて悪かったわ。

じゃ、頑張ってね」

 

文「あれ?私の分は無いんですか?」

 

雛「ごめんなさい、二人だけだと思ってたから用意してないのよ」

 

文「あやや、そうでしたか。

一向に構いませんがね、寧ろラッキーだったと言うか(ボソッ)」

 

雛「あら、何か言ったかしら?」

 

文「いえいえ滅相も無い!」

 

霊「何で戦う前からこんなに疲れなきゃいけないのよ全く・・・」

 

魔「もう面倒事は御免だ。

早く行こうぜ」

 

霊「そうね、ちゃっちゃと終わらせて帰るわよ!」

 

 

三人はスピードを上げて山の頂上へ一直線に飛行する。

これから三人には、辛い戦いが待っている筈だ。

しかし、少女達は例え相手が神だろうと立ち向かう。

恐れていないのだ。

何故なら幾多の異変を解決して来た彼女達にとって、これは幻想郷で起きる日常の内にしか入らないから。

 

 

to be continue...

 

 

 




雛からアイテム貰いました!
何かRPGみたいな展開ですね。
てことは最後に戦うのはさしずめ魔王ですかね。
・・・あれ?あながち間違ってないような??

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