ハリー・ポッターと虹の女神   作:セバスチャン

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※作中に残酷な表現や、人を不快な気分にする恐れのある会話(今回は特に)が含まれます。ご注意ください。
※8/1 文章微調整完了しました。


Page14.闇の印を

 クリスマス休暇が終わり、新学期が始まった。医務室でマダム・ポンフリーの健康チェックを終えた後(ポンフリーは仕切りに首を傾げながら「今月中に体調が戻らなければ、本当に一度、聖マンゴに行きましょう」と念押しした)、イリスは大広間へ向かった。

 

 一足先にテーブルに着いていた三人から”ポリジュース薬作戦”の顛末を聞くと、イリスは人知れず眦に涙を浮かべた。やはりドラコは、ハリー達に『イリスが継承者』だという真実を告げなかったらしい。

 

 ――どうして助けてくれないの?私が犯人だってわかってる癖に。イリスの心の中に、唯一真実を知るドラコに対し、憤りと失望の気持ちが湧き上がる。

 

 ――でも、これで良かったのかもしれない。彼女は指先で涙を拭いながら、自嘲気味に笑った。もし本当に彼が真実を告げていたら、勘付いたリドルにどんな酷い目に遭わされるか分からないからだ。イリスはこれ以上、誰かが傷つく所など見たくなかった。自分が我慢すれば丸く治まる。彼女は自らにそう言い聞かせ、不安と恐怖に泣き叫ぶ心を、懸命に押さえつけようと努力した。

 

「前回部屋が開かれた時、継承者は捕まって”アズカバン送り”になって、今もそこにいるんだって。だから、今回もそうなるよ。きっとダンブルドアが捕まえてくれるさ」

 

 イリスの無言の葛藤に気づく事無く、ロンがソーセージにケチャップをぶちまけながら、事も無げに言った。

 

「”アズカバン”?」

 

 イリスは二つの意味で首を傾げた。一つは”アズカバン”なる不穏な響きを持つ言葉に対して、そしてもう一つは、『前回の継承者が捕まった』と言う情報に対してだ。五十年前に部屋を開いたのは、リドルとメーティスだ。今も二人が”アズカバン”という場所にいるなら、色々な話の筋が通らない。

 

「アズカバンは魔法界の刑務所だよ、イリス。極悪人が送られる、魔法界イチ”怖いところ”さ」

 

 ロンはイリスを怖がらせようとして、おどろおどろしい調子で言った。

 

「脱獄は不可能って言われてる。パパから聞いたんだけど、入れられた奴は・・・獄中死するか、気が狂った廃人になるか、どっちからしい」

 

 ロンのおふざけは予想以上の効果を上げた。イリスの只でさえ青白い顔はより一層青くなり、ブルブルと震え始めたのだ。その様子を見てロンは『怖がらせ過ぎた』と思い、慌ててフォローした。

 

「イリス。僕の話、ちゃんと聞いてた?アズカバン送りになるのは極悪人――”スリザリンの継承者”さ。君じゃないよ」

 

 フォローする筈のロンの言葉は、容赦なくイリスの心を抉り、突き刺した。彼は当然知らないが、イリスこそが”スリザリンの継承者”なのだ。――もしダンブルドアが真実に気づいたら、自分は捕えられ”アズカバン送り”になるのでは?イリスの頭の中で恐ろしい考えがグルグルと回り、暫く体の震えを止める事が出来なかった。

 

 

 その日の夜は、イリスの『動物もどき(アニメ―ガス)』の結果発表日だった。緊張した面持ちで自室のベッドに腰掛け、瞬きをした瞬間に――彼女は、夢の世界で構成された「闇の魔術に対する防衛術」の教室へと誘われていた。教壇にはリドルがいて、彼の右上には空っぽの砂時計が浮かんでいる。

 

「僕の試練は達成できたか?」

 

 リドルが穏やかに問いかけると、イリスは蒼白な表情でこくりと頷いた。――失敗は許されない。イリスは瞼を固く閉じ、集中して、全身に魔法力を行き渡らせる。

 

 魔法力は眩い金色の光となってイリスの体を包み込み、程無くして彼女は見事スニジェットに変身してみせた。イリスはリドルが差し出した掌の上にちょこんと乗ると、つぶらな瞳で彼を見上げる。リドルは口角を吊り上げ、空いている方の手の指先でクルミ程の大きさしかないイリスを愛でた。

 

「スニジェットか。”平和を愛する美しい小鳥”。蛇ではないのは少し失望したが、君らしい。これ位の大きさならば、排水管も通り抜ける事ができるだろう。諜報活動にも適している」

 

 イリスは悪戯に強く突かれてよろけたり、コロリと転がされる度に起き上がり、真摯な眼でリドルを見つめ続けた。言葉を持たぬものとなったイリスが、その美しい瞳を通して彼に伝えたい事はたった一つ――『ハーマイオニーを殺さないで』――それだけだ。やがて思いが通じたのか、それとも単純に弄るのに飽きたのか――リドルは哀れな小鳥への愛撫を止め、満足気な声でこう言った。

 

「イリス。実によくやった。元の姿へ戻れ」

 

 イリスは空中へ舞い上がり、光の粒子を散りばめながら人間の姿へ戻った。――約束は果たした。イリスは何度も自分に言い聞かせ、勇気を奮い立たせると、リドルをおずおずと見上げながら震える唇を開いた。

 

「陛下・・・は、ハーマイオニーは・・・」

「ああ。僕は約束を守る。彼女には手を出さないよ」

 

 リドルは、にっこりと優しげに微笑んだ。イリスの努力は、実を結んだのだ。ハーマイオニーをバジリスクから守る事が出来た。安堵感がドッとイリスを包み込み、彼女は零れ落ちる涙を拭いながら、何度もリドルに礼を言った。リドルは上機嫌な様子で指を鳴らし、空っぽの砂時計をルビーで満たした後、イリスを片手で抱き寄せ、熱を帯びた声音で語り掛けた。

 

「イリス。君は僕の予想以上に、素晴らしい成長を遂げてくれた。並みの魔法使いでも習得するのに途方もない年月を費やす『動物もどき』を、君はわずか一月足らずで成し遂げた。君の知性や魔法力は僕の教授を糧として成長し続け、留まるところを知らないようだ。今の君を、誰も”落ちこぼれ”とは呼ばないよ。監督生や首席になる事だって、今の君ならば容易い事だろう」

 

 イリスは曖昧な笑みを浮かべた。――監督生や首席になる事なんて、もうどうでもよかった。前みたいに”落ちこぼれ”とからかわれ、笑われた時期の事が、とても懐かしく愛おしく感じる。何も知らないあの頃に戻りたい。戻れるならば何を差し出したって構わない。イリスは込み上げて来る悲しみを、リドルに不審がられまいと飲み込んだ。だが、それすらも見透かしたように、彼はゾッとするような柔らかな声で、彼女に命じた。

 

「君にご褒美をあげよう。右腕を出しなさい(・・・・・・・・)

 

 イリスは何も考えず、素直に右腕を出した。リドルは片手で彼女の右腕を掴んで固定すると、空いた方の指先を押し当て、何かの呪文を囁いた。

 

 ――不意に、ジュウジュウと肉の焼ける嫌な音がした。

 

「いッ、あぁあぁああ―――ッ!!」

 

 腕に”焼き鏝”を押し付けられている――そう錯覚する程の強烈な熱さと痛みがイリスに襲い掛かり、彼女はたまらず泣き叫んだ。”拷問”と呼んでも差し支えないだろうその激痛は、リドルが指を離すと同時に、徐々に消え去っていく。イリスは全身に汗をびっしょりとかき、息を荒げて涙を零しながら、まだ痛みの余韻が残る右腕を恐る恐る見た。

 

 ――彼女の腕の前部を覆うように、髑髏と蛇をモチーフとした『刺青』が焼き付けられている。リドルは恍惚とした表情でそれを見つめ、そっと指先で輪郭をなぞった。

 

「”闇の印”――僕の思想に賛同し、忠誠を誓った優秀な闇の魔法使いや魔女――”死喰い人(デスイーター)”に与えるものだ。他の者はみな左腕だが、君は特別だ。メーティスと同じように、右腕にしてあげた。――イリス、覚えておきなさい。”本物の僕”は近い未来、必ず復活を遂げる。その時、印の色は今よりもずっと濃くなるだろう。そして、これが黒く変色したら『召集のサイン』だ。速やかに駆けつけるように。いずれは、空に”闇の印”を打ち上げる魔法も教えてあげよう」

 

 ”闇の印”――一年生の『闇の魔術に対する防衛術』の授業の時、イリスは、恐怖で吃音が五割増しになったクィレル先生から聞いた事がある。ヴォルデモート一派の証であり、残忍な死喰い人である印。それをリドルはおぞましい事に、イリスに”ご褒美”として与えたのだ。茫然と印を見つめるばかりのイリスに訝しげな目を向け、リドルは尋ねた。

 

「どうしたんだい、イリス?恐らく僕が知る中で、君は最年少の”死喰い人”になれたんだ。とても光栄な事だよ。――まさか、嬉しくないのか?」

 

 最後の声は、地を這うように低く、明確な怒気を帯びていた。イリスは途端に冷水を背中に浴びせかけられたような気持ちになり、慌てて彼を仰ぎ見た。彼の目の奥に、チロチロと赤い光が燃えている。イリスの視界の端に、溢れんばかりのルビーで輝く砂時計が目に入った。――またリドルを怒らせたら、今までの自分の努力が無に帰してしまう。

 

「う、嬉しいです。陛下・・・」

 

 だからイリスは、涙と汗と鼻水でぐしゃぐしゃに汚れた顔で、少しでも嬉しそうに見えるよう、精一杯微笑んで見せた。

 

 ☆

 

 イリスは夢の世界から覚醒した。ベッドから起き出し、恐る恐る自分の右腕を見る。『夢の世界での事だ』そう願っていたイリスの思いは打ち砕かれた。――”闇の印”は当たり前のように、そこに在った。そして、それはイリスに、もうリドルと出会う前の頃には決して戻れないと教え込めるかのように、残酷にきらめいた。

 

 ――どうして、こんなことに。

 ――どうして、私だけがこんな目に。

 ――何を、間違えたの?

 イリスは言葉もなく、ただ咽び泣いた。

 

「可哀想に。とても辛いだろう」

 

 現実世界においても、哀れなイリスに逃げ場など無かった。幻のリドルがふわりと現れて、ベッド上に蹲って泣き続けるイリスを、背後から優しく抱き締めた。彼はイリスの魂と魔法力を糧に徐々に力を増し――今や一時的ではあるが――実体を持てるまでになっていた。不意に自らの肌に触れる感覚とその声に、恐怖に怯えて息を詰まらせるイリスを、リドルは悲しげに見つめる。

 

「僕が怖いか?恐ろしくて堪らないか?」

 

 リドルは穏やかに尋ねた。イリスは躊躇ったが、彼は優しく促した。

 

「罰は与えない。正直に言ってごらん」

 

 不思議な事に、彼の声には――イリスに対する深い労りと悲しみが込められていた。イリスは震えながら、微かにこくんと頷いた。リドルは、小さなイリスを布団ごと包み込むように抱き締める。

 

「君が戸惑い、僕を拒絶しようとするのは当然の事だ。――イリス、君は十二年もの間、悪い夢を見させられていたんだよ」

 

 ――”悪い夢”?リドルの言葉の真意が掴めず、イリスは思わず彼を見上げた。部屋はルームメイト達の規則正しい寝息以外は、何も聴こえない。深々とした静寂が、リドルの静かな声を際立たせる。

 

「本来なら君は、君の父親に”従者”として然るべき教育を受け、育つ筈だった。しかし――五十年前近辺の記憶しか持たない僕には、憶測する事しかできないが――どこかで、歯車が狂ったのだろう。メーティスが僕を裏切る筈がない。――裏切ったのは、君の父親だ」

 

 リドルは忌々しげに言い放った。

 

「君は父親に裏切られたんだよ、イリス。そして、間違った環境で育てられ、間違った考えを教えられ、間違った友人を持たされた」

「ま、間違い・・・?」

「そうだ。全てが”間違っていた”」リドルは歯噛みした。

「君が魔法界の事を伏せられ、マグル界でスクイブに育てられた事も、ダイアゴン横丁でハリー・ポッターと共に行動した事も、グリフィンドール寮に入った事も、ハリー・ポッターを始めとした”純血主義”でない者達を友人とした事も。全ては、ダンブルドアによって仕組まれた事だった」

「ダンブルドアが?どうして?」

 

 イリスは思わずリドルに尋ねた。――ダンブルドアが自分に関与している?しかしそれを嘘だと言い切る事は、かつてルシウスと対峙した時の記憶を思い起こしたイリスには、出来なかった。――あの時、彼は確か『イオはダンブルドアの操り人形だ』と言っていたからだ。リドルは歯を食いしばり、イリスを抱き締める手の力を強めた。

 

「君を恐れているからだ。イリス。メーティスによく似て、彼女以上の、途方もない量の魔法力をその体に秘めている君を」

 

 リドルの言葉は、イリスのひび割れて弱り切った心に、毒のように染み込んでいく。やがてイリスは疑念を抱いた。『君を信じている』一年生の時、ダンブルドアはイリスにそう言った。あの時の言葉は――リドルの言うように――自分を警戒しているから発されたものなのか?

 

「だから君に真実を伏せ、”本当の君”を押さえつけようとした。自ら用意した下らない友情や愛情を君に与え、それこそが君の幸せなのだと、彼らこそが君の大切な人なのだと、洗脳した。

 ――だが、断じてそうではない。”本当の君”は、ヴォルデモート卿に絶対的忠誠を誓う”従者”だ。君の幸せは常に僕と共にあり、君の大切な人も僕だけだ。今までの君は”本当の君”ではなかった。ダンブルドアに仕込まれた”偽物の君"だったんだ」

 

 リドルは、慈愛に満ちた瞳でイリスを見つめた。――だがその奥には、彼女に対する常軌を逸した執着心が渦巻いている。

 

「君は、実に十二年も”間違った道”を歩まされていた。だがもう大丈夫だ。僕が少しずつ”正しい道”へ戻してやる。それまでは違和感を感じたり、辛く苦しい思いもするだろうが、我慢してほしい。きっと君は近いうち、僕に深い感謝の念を抱くようになるだろう」

 

 ☆

 

 イリスは”闇の印”がいつ友人達にバレないかと、ヒヤヒヤして毎日を過ごしていたが、幸いな事にまだ厚着をする季節だったため、印を見咎められ、不審がられる事はなかった。

 

 リドルは、しばしばイリスをスニジェットに変え、ホグワーツ内の様々な情報を集めるように命じた。諜報活動をするに当たって、みなに気づかれず、密かに移動する事のできる『排水管』は重宝するものだった。――リドルは取り分け、ダンブルドアを警戒し、彼に関する情報を集めるよう厳命した。

 

 『動物もどき』の勉強をする必要がなくなったため、休暇が終わってから、イリスは再びハリー達と行動を共にするようになった。しかし、彼女の気力や体力は――リドルに吸い上げられたり、度重なる任務で疲弊し、弱まるばかりで――結果、彼女は今まで以上に大人しくなり、それぞれ病弱なイリスを気遣ってくれる三人の後を、影のように付いていくだけになってしまった。

 

 ある時、リドルはイリスの定期報告を聞き終えると、彼女に新たな任務を言い付けた。

 

「君の仲良し三人組は、余りにも”部屋”の事を嗅ぎ回り過ぎている。少々目障りだ。僕が上手く対処しよう。”日記をハリー・ポッターに拾わせるんだ”。三階の女子トイレへ捨てろ」

 

 ――日記をハリーに拾わせる?ハリーに危害が加えられるかもしれない!大切な友人が、自分と同じように無理矢理リドルの手下にさせられる光景が思い浮かび、イリスは矢も楯もたまらず、リドルに縋り付いた。

 

「陛下、どうか、ハリーを傷つけないで!私、一生懸命頑張ります。彼を手下にしないで」

 

 リドルは可笑しそうに吹き出した。

 

「イリス。君は何を勘違いしているんだい?僕はハリーを傷つけたりしないよ。手下にするつもりもない。ただ、間違った情報を教え、彼らを遠ざけるだけだ」

 

 イリスは安心して、ため息を零した。――リドルがどんな”間違った情報”を教えるのか、疑問を抱く事すらせずに。そしてイリスは、リドルの指示通りに「嘆きのマートル」の住む女子トイレへ、日記を捨てた。

 

 

 日記はイリスが放り投げた際、偶然「嘆きのマートル」を通過したらしい。マートルはトイレ中を水浸しにして、通りがかったハリー達の注意を引き、四人の内――図らずもハリーが――マートルによって押し流され、手洗い台の下に落ちていた日記を手に取った。

 

 ロンの証言により、日記の持ち主”T・M・リドル”が五十年前に『特別功労賞』を貰った人物である事を知ると、ハリー達は当然のようにその日記に強い興味を示した。その過程でトロフィー室に赴き、ハリーとロンが「あ。君と同じファミリーネームの人も、一緒に表彰されてるよ」と指摘された時、イリスは「そんな人知らない」と逃げるしかなかった。

 

 その後、リドルは首尾良く動き、ハリーに”間違った情報”を掴ませる事に成功したようだった。――リドルの提示した”間違った情報”とは、”五十年前の殺害事件を引き起こしたのは、当時学生だったハグリッドで、怪物は彼が密かに飼っていた大蜘蛛”だと言う事を、ハリーから聞いた時、イリスは全身の血の気が静かに引いていくのを感じた。

 

 その夜、慌ててリドルに――報告もそっちのけで――ハグリッドの事を尋ねると、彼はこともなげに言った。

 

「この話は、事実だよ。本当は”部屋”を開き、”穢れた血”を殺したのは僕とメーティスだが――偶然、当時アクロマンチュラを飼っていた愚かなハグリッドに、”罪を被ってもらった”のさ。

 ――イリス。どうして泣いているんだい?彼のおかげで、僕らは”部屋”を守る事が出来たし、巨人の血を引いた彼も――本来はアズカバン行だったが――ダンブルドアの計らいで、『禁じられた森の番人』という安定した職を得る事が出来た。全く持ってイーブンな話さ。

 ハリー・ポッター達は、ハグリッドと親密なようだから、これ以上の詮索はできないだろうし――イリス。君がこれ以上へまをしなければ、新たな犠牲者は出ないだろう。つまり、ハグリッドの件が蒸し返される事はない。君の働きぶりで、ハグリッドの人生が左右されるというわけだ」

 

 リドルは残忍な笑みを浮かべ、イリスを射竦めた。――最早、イリスの肩には、彼女が支えきれない程、沢山の大切な人々の命運が掛かっていた。

 

 

 淡い陽光がホグワーツを照らす季節が、再び巡って来た。城の中には、わずかに明るいムードが漂い始めた。ジャスティンとニックの事件以来、誰も襲われてはいない。マダム・ポンフリーによると、マンドレイクのにきびが綺麗になくなったら、二度目の植え替えが始まり――その後、刈り取ってトロ火で煮るまで、そう時間はかからないそうだ。それを聞いたフィルチは明らかに嬉しそうにしていたが、イリスは戦々恐々とするようになった。ミセス・ノリスは、イリスが継承者だという事を知っている。――バレたら、自分は間違いなく、アズカバン行だ。

 

 ある夜、リドルの指示に従い、イリスは”目くらまし呪文”を掛けて男子寮に忍び込んだ。――日記を回収するためだ。部屋をそろそろ歩いて日記を探していると、ふとベッドで熟睡しているハリーが視界の端に入った。寝相が悪いらしく、布団を蹴散らしている。イリスは柔らかに微笑むと、こっそり布団を直してあげようと腕を伸ばした。

 

 ――”闇の印”を宿した、右腕で。

 

「ッ!」

 

 まるでこの手で触ったら、ハリーを傷つけてしまうように思えて、イリスは弾かれたように腕を引っ込めた。先程までの和やかな気分が、一瞬で霧散していく。イリスは忙しなく周囲を見回し、やがて彼の机に置いてある日記を発見した。日記の傍には、かつてイリスがハリーに『誕生日プレゼント』として渡した、お揃いの金色の懐中時計が置いてある。

 

『ずっと友達だ』

 

 ダイアゴン横丁で見た、ハリーの涙交じりの笑顔と言葉が思い浮かび、イリスの心の中に、熱い感情が溢れた。――大好きだ。兄のように親しみを感じられ、等身大でいれる、素朴で、でもとっても格好良い、自慢の親友ハリー。だが、もう彼と同じ立場で、”ずっと友達”でいる事はできない。気が付くと、リドルがハリーの机に腰掛け、自身の日記を差し出しながら、悠然と言い放った。

 

「君とハリーは住む世界が違うんだ。イリス。ハリー・ポッターはヴォルデモート卿の敵、つまり”君の敵”だ。もう、友達じゃない」

 

 イリスはもう反抗する気力さえ、残っていなかった。彼女は弱々しく頷くと日記を掴み、リドルと共に部屋を出た。――その翌日、ハリーは日記が盗まれた事に気づき、方々を探したものの、見つけられる事は無かった。

 

 ☆

 

 ジャスティンとニックが石にされてから、四ヶ月が過ぎようとしていた。誰が襲ったのか分からないが、その何者かは永久に引きこもってしまったと、ホグワーツ中のみんなが思っているようだった。――しかし、実際は、闇はホグワーツの奥底で、哀れな少女を一人生贄として、依然蠢き続けていた。

 

 今日は、グリフィンドール対ハッフルパフのクィディッチの試合がある。試合の準備のため、一足早く大広間を出たハリー達を見送った後、イリスは一人、グリフィンドール塔へ続く廊下をとぼとぼと歩いていた。ふと廊下の端に何か蠢くものを見つけ、近寄って目を凝らす。

 

 ――蜘蛛だ。小さな蜘蛛の集団が、壁の小さな割れ目から、外に繋がる窓枠の隙間へと、一列になって逃げていく。みんなとても慌てているようで、口々にこう叫んでいた。

 

≪逃げろ!逃げろ!あれが来る!≫≪逃げろ!逃げろ!あれが来る!≫

 

 イリスは窓の鍵を外して大きく開け、蜘蛛達がもっと逃げやすいようにしてあげた。蜘蛛達は、イリスを振り返る事無く、一目散に窓枠一杯に広がって、大移動を始める。

 

「君たちは、逃げる場所があって、いいな」

 

 それは、イリスの本心からの一言だった。数えきれない程に傷つき、摩耗し、感情を失くし掛けた彼女の瞳から、熱い涙がひとつぶ零れ落ちる。――私だって、逃げたい。でも、一体どこへ?”闇の印”も焼き付けられてしまった。イリスは血が滲むのも構わず、強く唇を噛み締めた。――あの時、ルシウスは”逆らったらイオおばさんを殺す”と言った。もし全てを見捨ててリドルから逃げられたとしても――ルシウスは、イリスの叛逆を決して許さないだろう。

 

「私は、もうどこにも、逃げる場所なんてない」イリスは絶望に満ちた声で呟いた。

「そんな事ないわ。イリス」

 

 思いもよらぬ返答に驚いて、イリスは弾かれるように振り返った。――そこには、一冊の本を抱えたハーマイオニーが立っていた。毅然とした表情を湛え、じっとイリスを見つめながら、彼女は続けた。

 

「”秘密の部屋”の怪物の正体がわかったの。”スリザリンの継承者”の正体もね」

「・・・な、何を言ってるの?」

 

 ドクン、とイリスの心臓が波打った。――彼女は、一体何を言い出そうとしているんだ?警戒するイリスを気にする事もなく、ハーマイオニーは本をパラパラとめくり、あるページを開いて見せた。

 

「――その正体は、バジリスク。ひと睨みで獲物を殺す事が出来る、恐ろしい目を持った怪物よ。ハリーは”パーセルマウス”だわ。貴方は唯一、”蛇の言葉だけがわからない”。もし、ハリーの言っていた”不気味な声”の正体が蛇なのだとしたら、話の筋は通ると思ったの。パーセルマウスのスリザリンが選んだ怪物だし、その方がしっくり来るわ。

 だけど、どうしてミセス・ノリスもジャスティンもニックも、バジリスクに襲われたのに、石になっただけで済んだのか。――考えて、分かったわ。”誰も目を直視していなかった”からよ。ミセス・ノリスの近くには水溜りがあったし、ニックはゴースト。一度死んでいるから、二度は死ねない。そしてジャスティンは、ニック越しに目を見たから、無事だったんだわ。

 ハリーは壁の中から声が聴こえると言った。恐らくバジリスクは、壁の中の排水管を移動していたのね。そして唯一の弱点は、雄鶏が時を告げる声。――最近、雄鶏が殺害される事件が二度あったわ」

 

 イリスは返す言葉もなく、じりじりと後ずさった。ハーマイオニーは静かに本を閉じると、ついに壁に当たって身動きが取れなくなったイリスに、さらに一歩近づいた。

 

「それに、一番怪しいと感じたのは、ハリーが偶然手に入れた日記よ。タイミングが良すぎるわ。”T・M・リドル”――彼は、五十年前に起きた”秘密の部屋”の事件を知っていて、ハリーに自らの記憶を見せ、その全貌を教えてくれた。当時の犯人は、ハグリッドだったと。怪物は、彼の飼っていた大蜘蛛だと。――私はすぐに、嘘だとわかったわ。それに」

 

 ハーマイオニーは、中途半端に言葉を切ると、ローブのポケットからあるものを取り出し、イリスに見せた。イリスは思わず悲鳴を上げた。――それは、かつて彼女がイリスに与えた”スケジュール表”だった。

 

「貴方、これを日記に挟んでいたの?すぐ近くに落ちていたから、ハリーたちが気付く前に、慌てて回収したわ」

「違う!挟んでなんかないっ!」イリスは我武者羅に叫んだ。

「偶然落としたんだよっ!」

「そうね。”偶然”よね」ハーマイオニーは穏やかに繰り返した。

「トロフィー室にあった、五十年前の「特別功労賞」のトロフィーやメダルに、”T・M・リドル”の名前と一緒に、貴方と同じ姓の”メーティス・ゴーント”という女性の名前が刻まれていた事も、貴方の言った通り”知らない人”――つまり、”偶然”って事よね」

 

 ――駄目だ。イリスの脳内で、警鐘が煩い程に鳴り響く。ハーマイオニーは”真実”にたどり着いてしまった。どうしよう、私がへまをしたせいで、ハーマイオニーが――リドルに気づかれる前に、何とかしないと――!イリスの手が咄嗟に自分の杖へ伸びた。

 

 イリスはリドルに”忘却呪文”も学んでいた。リドルが気付く前に、彼女の記憶を消すんだ。じゃないと彼女が、口封じに殺されてしまう。そんなイリスの葛藤を知ってか知らずか、ハーマイオニーは決定的な一言を突きつけた。

 

「イリス。貴方が、”スリザリンの継承者”なのね?」

「ば、バカな事、言わないでよ」イリスは掠れた声で唸った。

「何の証拠があって、そんなことを?」

 

 ハーマイオニーは、穏やかに微笑むと、ゆっくりと首を横に振った。

 

「貴方の誰よりも近くにいた私が、貴方の”不審な行動”に気づいていないとでも思ってた?」

「――何の騒ぎだい?」

 

 ついに、最も恐れていた事態が起こった。不意にリドルが現れ、イリスに愛想よく微笑しながら問いかけたのだ。リドルは、ハーマイオニーには見る事が出来ない。イリスはハーマイオニーがこれ以上言葉を発する前に、素早く杖を引き抜いて、杖先を彼女へと向けた。

 

「それ以上、口を開かないで。ハーミー」

 

 イリスは歯を食いしばり、厳しい口調で言ったが、杖を握る手の震えを止める事が出来ない。

 

「今から君の記憶を――」

「消すつもり?」ハーマイオニーは悠然と微笑み、杖は抜かないままだ。

 

「親友に杖を向けるなんて、貴方って随分乱暴者になったのね」

 

 リドルは微笑したまま、『親友?』と唇の動きだけで、イリスに問いかけた。

 

『この、”穢れた血”が?』

「は、ハーミーなんか、親友じゃないっ!」

 

 ――ハーマイオニーを親友と認めたら、彼女を殺すつもりだ。リドルの真意を理解すると、イリスは顔をくしゃくしゃに歪め、自分を心の中で滅茶苦茶に呪いながら、彼女が自分に間違いなく愛想を尽かしてくれるような言葉を選び取り、涙ながらに叩きつけた。

 

「この・・・このっ、”穢れた血”め!!」

 

 イリスはその言葉を叫んだ瞬間――まるで洗剤を無理矢理、嚥下したような強い吐き気や苦しみ、喉に針が刺さったような激痛を感じ、グラリと眩暈がした。”闇の印”を焼き付けられた時よりも、もっと強い痛みだ。それは、その言葉が確実に大好きな親友を傷つけるものだと、イリスが理解していたからに他ならなかった。

 

 だが、ハーマイオニーは、悲しげに顔を歪めたものの――何も言わなかった。そして静かにイリスに近づくと、彼女をふわっと優しく抱き締めた。

 

「ねえ、イリス。去年のハロウィーンを覚えている?」

 

 思いもよらぬハーマイオニーの行動に茫然とするイリスの耳元で、彼女の静かな声がした。――勿論、イリスは覚えている。だが、どうして今、去年の話をするのか皆目見当がつかない。

 

「あの時、私は、暗闇の中で一人ぽっちだと思っていた。誰も私を理解してくれる人も、助けてくれる人もいない。そんな中で、一人きりで生きていくんだって」

 

 その時の孤独な気持ちを思い出しているのか、ハーマイオニーの腕に力が籠もる。

 

「――でも、そうじゃなかった。貴方だけは、私がどんなにひどく拒絶しても、何度も、何度も、私を助けに来てくれた」

 

 イリスのひび割れたボロボロの心に、親友の暖かな言葉が染み込んでいく。気が付けばイリスはハーマイオニーの背中に手を回し――ハーマイオニーの声には嗚咽が混じり始めていた。

 

「あ、貴方は・・・っ、トロールに、命懸けで、立ち向かって、くれたわ!・・・私を、命をかけて、暗闇から救い出してくれた。その時、私、思ったの。・・・もし、貴方が私と同じように、暗闇の中に一人、取り残された時・・・今度は、私が貴方を、きっと、この命に代えても、救い出すんだって。決して、一人ぽっちには、しないって・・・!」

 

 ハーマイオニーは、涙を零し、しゃくり上げながらイリスを見つめた。イリスも咽び泣きながら、彼女を見つめ返す。――ハーマイオニーは、自分を助けようとしてくれている。あんなに酷い言葉を投げつけたのに、自分は”スリザリンの継承者”なのに――彼女はまだ、自分を親友と思ってくれているのだ。イリスの心は、大いなる歓喜に打ち震えた。

 

「イリス、貴方はとても優しい子だわ」ハーマイオニーは囁いた。

 

「そんな貴方を、こんなになるまで追いつめて、悪事に手を染めさせている者がいるっ。私は、それが許せないの・・・!勇気を出して、一緒に、ダンブルドアの所へ、行きましょう。・・・彼に真実を、話すの」

 

 イリスは矢も楯もたまらず、頷いた。――そう。頷いて、しまった。

 

 

「いけない子だ、イリス」

 

 リドルが喉の奥で笑いを堪えながら、イリスの耳元で囁いた。――途端に、イリスは全身の血を一気に引き抜かれたかのような凄まじい脱力感を感じ、その場に立っていられなくなり、くたっとハーマイオニーに身を預けてしまった。リドルが、イリスの魔法力を殆ど吸い上げたのだ。

 

「イリス、どうしたの?!しっかりして!」

 

 いくら小柄だと言っても、力を抜いた同年代の女の子を支えきれる筈もなく、ハーマイオニーはイリスを抱えながら、しゃがみ込んでしまった。少しでも気を抜けば、たちまち消えてしまいそうになる意識の中で、リドルが「嘆きのマートル」の住む女子トイレへ向かうのを、イリスは見た。チカチカと切れかけた蛍光灯のように、視界が明滅する。

 

 ――ガシャン。すぐ傍で大きな破壊音がしたが、驚いて跳び上がったのは、イリスだけだった。音の方向を見ると――夢の世界で何度も見た”砂時計”が砕け、中のルビーが床に零れ――その一粒一粒が燃え尽き、跡形もなく消えていく。イリスは絶望の悲鳴を上げた。――それはリドルの作った幻であり、彼を裏切ろうとしたイリスに向けられた”処罰実行”の合図だった。

 

「あ、ああっ、陛下、殺さ、ないで・・・!」イリスは掠れた声で泣き叫んだ。

「ハーミー、逃げて!」

「陛下?誰の事なの?馬鹿言わないで、貴方を置いて行きはしないわ」

 

 ハーマイオニーが鬼気迫った様子で問いかけ、イリスを守るように強く抱き締めた。

 

 ――誰か、通り掛かって!誰でもいい!誰か、この絶望的な状況を救って!イリスの懇願を嘲笑うかのように、廊下一体は不気味な程静まり返り、猫一匹通り掛かる気配すらない。またマートルが癇癪を起こして水を逆流させたのか、トイレの前に大きな水溜りが出来ていて、松明の光を映してその水面をキラキラと輝かせる。そこに、見覚えのある――緑色の尾っぽが、一瞬映し出された。

 

 もう間に合わない。イリスは微かに残った魔法力の続く限り、”防護呪文”を唱え、多重防壁を張ろうと試みた。

 

「プロテゴ、護れ!プロテゴ、護れ!プロテゴ、護れ!プロテ・・・っ」

 

 しかし、ほぼ全ての魔法力をリドルに奪われたイリスの体は、これ以上の魔法力の浪費は生命活動に差し障ると判断し、拒絶反応を示した。その結果、イリスは強く咳き込んだ拍子に血反吐を吐いて、もがき苦しむ事になった。生成された半透明のドーム状の盾は、二人を辛うじて包み込んではいるものの――今にも霞んで消えてしまいそうな程、儚く弱々しい。

 

「無駄だ、イリス。そんな脆弱な魔法で、バジリスクを防げるものか!」

 

 二人の周囲で、リドルの甲高い笑い声だけが不気味に反響する。ハーマイオニーは慌てて、息も絶え絶えになってしまったイリスの背中を懸命に撫で摩った。

 

「イリス、もう無理しないで!バジリスクが来るのね?」

「・・・目を・・・開け、ないで・・・!」

 

 イリスは力なくすすり泣きながら、ハーマイオニーに囁いた。――もう、彼女をバジリスクの死の魔眼から守る位しか、イリスに出来る事は残されていなかった。

 

 一方のハーマイオニーは、一人覚悟を決めた。今、自分はここで石になるか、殺される。――もう彼女を救えるのは、あの二人しかいない。彼女はイリスの親友であり、二年生イチの優等生であると同時に、”勇敢なグリフィンドール生”だった。彼女は本を手早く開いてバジリスクの部分のページを破り取ると、インクのいらない羽根ペンでハリーとロンに向け短いメッセージを書き、掌の中に握り込むと、一縷の望みを掛けてポケットから手鏡を取り出した。

 

 

 どの位、時間が経っただろう。ほんの数秒のようにも、途方もない年月が経ったようにも思えた。――イリスは、違和感を感じた。周囲はいつしか、異様な静けさに包まれている。――ハーマイオニーの声がしない。イリスは、静かに彼女から体を離した。

 

 ――ハーマイオニーは、石の様に凍り付いていた。イリスは、彼女の硝子のように固く滑らかに変質してしまった頬を撫でた。彼女の両目は、恐怖に見開き、永遠に閉じられる事はない。

 

「ハー・・・ミー・・・」イリスは現実を受け入れる事が出来ず、茫然と呟いた。

「君が僕を裏切ろうとしなければ、グレンジャーは襲われなかった」

 

 リドルはそっとイリスの傍へ近寄ると、その耳元で悪魔の様に囁いた。イリスは狂ったようにかぶりを振り、蚊の鳴くような弱々しい声で泣き喚いた。

 

「いやッ、違う、私のせいじゃ、ない・・・」

 

 自分の心を守ろうと現実を拒絶し、その場から這って逃げ出そうとするイリスを、リドルは蜘蛛のように捕えて強い力で抱き竦める。

 

「違わないよ、イリス。君のせいだ。君が僕を裏切ろうとしたからだ。君は悪い子だ。彼女が石になったのは、君のせいだ」

「や、あ・・・」

 

 そしてリドルは、身動きの取れないイリスの耳元に唇を寄せ、彼女に残酷な言葉を深々と突き刺した。――彼の非情な攻撃は、イリスの素直な心を瞬く間に蝕んでいく。腕の中で、イリスが徐々に正気を失っていく様子を面白そうに眺めながら、リドルは彼女の心が粉々に砕け散るまで、何度も何度も執拗に彼女を責め苛んだ。

 

―――――――――

――――――

―――

 

 やがて、イリスは壊れてしまった。青い瞳に僅かに残った光が消えると同時に、彼女の顔から全ての感情が拭い去られていく。イリスは抵抗する力を失くし、人形のようにリドルに抱かれるままとなった。リドルは、虚空をぼんやり見つめ、彼の言葉にも反応しなくなってしまったイリスを満足気に眺めた。

 

「君は、本当に素晴らしいよ、イリス。だが、これから僕は”早急にやらなければならぬ事”がある。そのためには、まだ良心の呵責に悩む”君の心”は邪魔でしかない。

 ――君は少し、眠っているといい。君が再び、体の主導権を取り戻した時――あの老いぼれは僕の手によってホグワーツから追い出され、君の親友・ハリー・ポッターは――バジリスクの餌食になっているだろう」

 




話が進まない(;O;)
次回こそ、部屋に行くぞ!ドラコもハリーもロンも出すぞ!リドルさん頑張れ!

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