ハリー・ポッターと虹の女神   作:セバスチャン

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秘密の部屋編
Page1.出雲家の物語


 昔々、日本に「虹蛇様」という虹の神様がいました。

 虹蛇様は、大きな虹色の蛇の姿をしていました。

 国中の乾いた場所へ旅をして回っては、雨雲を作り雨を降らして大地を潤したり、入り江や川、湖や泉を作ったりするのが、虹蛇様のお仕事でした。

 お仕事が終わった後は、空に自分の体で橋を掛けて、人々や動物の心を和ませました。

 寂しがりな虹蛇様は、旅先で人々や動物とお話をするのが何より好きでした。

 ☆

 ある小さな村に、泳ぐのが大好きな女の子がいました。

 女の子は、虹蛇様が来たおかげで雨が降って川の水も増えたのに、虹蛇様が止めるのも聞かず、川に飛び込んで泳ぎ始めました。

 すると、どどーっと水が流れてきて、女の子を押し流してしまいました。

 「助けて!」

 おぼれかけた女の子が助けを求めると、虹蛇様は空から大きな尾っぽをたらし、女の子をすくって、岸まで運んであげました。

 「ありがとう」

 女の子は空を見上げて、虹蛇様にお礼を言いました。

 なんて可愛い子なんだろう。虹蛇様は、美しい女の子が好きになりました。

 なんて優しい人なんでしょう。女の子も、優しい虹蛇様が好きになりました。

 虹蛇様は人間の姿になり、女の子と結婚して、女の子の住む村で暮らすことにしました。

 虹蛇様は女の子と一緒の生活が楽しすぎて、雨を降らすという自分のお仕事を忘れてしまいました。

 ☆

 それに怒った天の大神様は、村に豪雨を降らせました。

 村は全て水に押し流され、虹蛇様以外の人間や動物は、みんな死んでしまいました。

 一人ぽっちになった虹蛇様は、悲しんで大粒の涙を流し、それらは大雨のように地面に降り注ぎました。

 すると涙の一粒ひとつぶがキラキラ輝いて、天と地を繋ぐ虹の架け橋になりました。

 虹の架け橋から、天へ運ばれた人間や動物の魂がやって来てそれぞれの体に戻り、みんな生き返りました。

 神様の力を濫用した虹蛇様は、天の大神様から罰を受け、人間の姿を奪われて元の蛇の姿に戻りました。人間や動物とお話しする力も奪われました。

 生き返った人間や動物の中には、もちろん女の子もいました。

 女の子は、寂しがりな虹蛇様を一人ぽっちにはしませんでした。愛していたからです。

 ☆

 二人は村を出て、一緒に雨を降らせる旅を続けました。蛇神様は空の上、女の子は大地の上で。

 お話しはできなくとも、二人は愛の架け橋で繋がれていたので、寂しくはありませんでした。

 やがて天の大神様は、二人の健気な愛に心を打たれ、女の子に虹蛇様との子供を生むことを許しました。

 子供は虹蛇様と同じように、人間以外のものと話ができ、死者の魂を呼び戻す「虹の涙」を一度だけ使う事が出来ました。

 女の子は子供を連れて旅を続けましたが、やがて旅路の果てに力尽き、魂となって虹蛇様の元へいき、虹蛇様の一部になりました。

 子供は旅をやめました。女の子の墓を作ると、そのそばに家を建ててそこに住み、時々やってくる虹蛇様とお話をして過ごしました。

 虹蛇様が家を訪れる度に、子供の家の周囲の空は、恵みの雨が降り、やがて晴天となって美しい虹が掛かりました。

 やがて子供の家は「人知れず雲が出てきて、そして出ていく家」だと不思議がられ、「出雲家」と呼ばれるようになりました。

 それが、出雲家の始まりだと言われています。


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