東方好きの優斗と大妖精と   作:ゆう12906

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第九十話 張りぼての中には

 映姫のスペカは色とりどりのレーザーだった。映姫が右手を払うと右から左へ、左手だとその逆で、七色の光線が空気を切る。

 

 この手の攻撃は数だけの敵に効果抜群だ。東方永夜抄で例えるなら、道中は高速スペルのほうが使いやすいって感じかな。

 

 それはそうとして、式神たちがあっという間に殲滅されていく。普段はから落ち着いた足取りで学校を見て回る映姫を、今の表情からは想起できないだろう。

 

「校長、どうですかー!」

 

「ええ、今日はとっても調子がいいみたいです。……次はあなたですよ」

 

 こちらの質問に答える余裕を見せつつ、視線は大物へと向かう。

 

「ただ操られるだけの人生……今こそ終焉させ、正しい輪廻へと戻しましょう。大丈夫です、ちょっとは罪状を軽くしてあげますから」

 

 同情の色を浮かべたその顔つきは、閻魔というよりはむしろ天使か。これが彼女なりの慈悲なのであろう。

 

「それっ!」

 

 レーザーを集約させ、一点集中で大式神の額めがけて発射する。

 

 もちろん相手だって黙ってはいない。おそらく弱点であろう額をかばうように両手を突き出す。

 

「グ、グアァ……」

 

 式神から明らかに苦しそうなうめき声が漏れ出た。確実に映姫の弾幕が効いている。

 

「先生、頑張って!」

 

「ふふ、ありがとうございます。生徒の応援ほど力になるものはありません」

 

「せんせー頑張ってー」

 

「さとり先生は黙りましょうね?」

 

 さとりにツッコミを入れられるくらいには余裕があるのだろう。少し怒りを混ぜ込んだ苦笑いを向け、さらにギアを上げる。

 

「消えなさい!」

 

 背後からさらにレーザー追加。いったいどれほど隠し持っているのか。

 

 今まで何とか拮抗していた式神もさすがに力不足だ。どんどん押されていく。

 

 レーザーがだんだん細くなっていく。色が混ざりあって虹を描いていく。今は弾幕ごっこではないが、映姫の戦い方はスペルカードルールにのっとった美しいものだった。

 

「それっ!」

 

 最後の、一押し。

 

 さらに威力を上げたレーザーは式神の両手を貫通した。最後の砦が打ち破られれば残りは急所のみ。

 

 白黒ごまかさず、式神の額の中心に、着弾した。

 

「ウゴッ……」

 

 頭の重心が大きく後ろへ傾く。2頭身の頭でっかちでは一度崩れたバランスを戻せるはずもない。

 

 まず左足、すぐさま右足も続けて地面から離れる。あまり長くない腕を回して何とか立て直そうとするが、全くの無意味だった。

 

 ドシン、地面が震えた。

 

「やりました」

 

「よっし、さすがです校長」

 

「地獄の閻魔たるもの、当然です」

 

 戻ってくるときには元の穏やかな笑みに戻っていた。

 

「これで敵の攻撃が止むといいのですが……」

 

「ですね。椛、ちょっと見てくれるか?」

 

「もうすでに。特に増援らしきものは確認してません」

 

「あら、もう終わりなの?」

 

「永琳先生、矢をむやみやたらに振り回さないでください……」

 

「だってこれじゃあ霊夢とスキマが襲ってきたときよりもこざかしい……って、なによあれ」

 

「えっ?」

 

 永琳が指さしたほうを振り向くと……

 

「なんだ……」

 

「まだ終わってない……のかな」

 

 黒く小さな球体が式神の腹からポコポコ漏れ出ている。

 

 1粒1粒は小さいのだが、なにせ数がけた違いに多い。集まってどんどん大きくなっていく。

 

 いつの間にか直径2メートルほどの大きな球に変貌した。

 

 それからさらに形を変えていく。両手両足らしきものが生え、人間の形を作っていく。

 

 服、装飾、顔のパーツと、どんどん個性が表れていく。

 

 そして、とうとう、

 

「……はあ。ついたわねん♪」

 

 ソイツが完成した。

 




第九十話……何か月たったんだ一体

いろいろと苦労していまして……これからもこんな感じですけどよろしくです。

では!

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